M&Aとは

M&Aとは?意味と定義

M&A(エムアンドエー)とは「Mergers and Acquisitions」(合併買収)の略で、資本の移動を伴う企業の合併と買収を指した言葉です。

狭義的な意味においては、吸収合併新設合併などの企業の「合併」と、株式譲渡新株引受第三者割当増資株式交換などの手段を通じた会社・事業の「買収」がM&Aを指します。広義的な意味では、事業の多角化などを目的とした資本提携(資本参加、合弁会社設立など)を含む、企業の経営戦略を指す場合もあります。

ここでは、M&Aの種類やメリット・デメリット、成約までの流れ・手続きの手順、成功させるための基礎的な知識から、税金・税務・法務などの専門知識、M&A仲介サービスの費用まで、網羅的に解説します。

もくじ

M&Aの目的は大きく分けて4つ

事業承継などの後継者問題の解決を目的としたM&A

家業を継がずに、希望に沿った職業に就くことが社会的に受け入れられるようになった時代背景や、少子高齢化などの影響によって、多くの中小企業が後継者問題に直面しています。こうした後継者不在の企業が増える中で、第三者に会社や事業を承継するM&Aが解決策として注目されるようになりました。

従業員や親族へは承継できない状況であっても、M&Aによって第三者に承継することで、自社を存続できるのです。

従業員や親族へ承継できない状況であるかの判断方法は、まず後継者候補の存在の有無を確認します。そのうえで、後継者候補に経営者としての資質が備わっているか、本人に経営者になる意思があるのかを判断します。経営者としての資質と意思を持つ候補者がいる際は、親族内承継や従業員などへの親族外承継を選択することもできます。

一方で、そもそも後継者候補がいない場合や候補者に経営者としての資質、経営者になりたい意思がない場合は後継者不在となり、事業承継の方法としてM&Aが選択肢に挙げられます。

こうした後継者不在の状況であっても、M&Aによって会社が存続することで、ほとんどの場合において従業員の雇用を継続できたり、技術やノウハウを残したり、取引先への影響を抑えることができます。

また、会社が存続することによって、ほとんどの場合で従業員の雇用を継続できたり、技術やノウハウを残したり、取引先への影響を抑えることができます。詳細は「譲渡企業のメリットは事業承継問題の解決や企業基盤強化」にて解説しています。

▷関連記事:事業承継を成功させる方法とは?事業承継としてのM&A

新規事業などの会社の成長戦略を目的としたM&A

譲受企業においては、成長戦略のためにM&Aを選択することがあります。例えば、新規事業を立ち上げる際に、自社で一から行わずにすでにその事業を行っている企業を譲り受けることで、ノウハウや人材、販路などを一挙に獲得できます。

自社で新たに事業を立ち上げる場合には、そうしたノウハウなどを築くことは一朝一夕では難しく、時間やコストが多くかかる場合もあります。

また、M&Aによって企業の規模が大きくなることで、規模の利益や規模の経済性(スケールメリット)を得られることがあります。

規模の利益や規模の経済性は、生産や仕入れなどが多くなることで、生産においてはひとつ当たりの生産コストの削減、仕入れでは大量に仕入れることでひとつ当たりの仕入れコストを下げることなどを指します。こうした規模の利益や規模の経済性を目的に、M&Aを成長戦略の一環として行う企業も存在します。

時間やコストを抑え、新規事業の立ち上げや規模の経済性を得られるため、成長戦略としてM&Aを選択するのです。

また、時間やコストを抑え、新規事業の立ち上げや既存事業の強化ができるため、成長戦略としてM&Aを選択するのです。また、時間の短縮が期待できることは、市場の変化の激しい現代では、大きなメリットになり得ます。詳細は「譲受企業のメリットはビジネスの加速」にて解説しています。

▷関連記事:成長戦略としてのM&Aとは?経営基盤を安定させる選択肢

経営再建などを目的としたM&A

M&Aは経営の再建や事業の整理を目的に行われることもあります。複数の事業を行っていて、一部の事業の業績が芳しくないことによって会社全体の経営状況が優れない際に、その事業を事業譲渡や会社分割のスキームを用いて、他社に譲渡することも可能です。

潤沢な資金を持っていたり、経営基盤が安定していたりする企業の傘下に入ることで、譲受企業の資金やノウハウを活用して経営状況を改善できることもあります。また、自社の経営状況が優れないことで、譲渡先が見つからないといったイメージがありますが、適切な経営方針や将来性を持つことによって、相手先を見つけやすくなります。

譲受企業においては、赤字状態の企業を譲り受けることで節税効果を得られるケースもあり、経営の再建を要する企業とM&Aを行うことがあります。

▷関連記事:M&Aを行う目的とは?注目される理由をメリット・デメリットと共に解説

個人・サラリーマンの人生戦略を目的としたM&A

昨今では、上述のような企業同士のM&Aだけではなく、個人によるM&Aも注目されています。個人によるM&Aは譲り渡す側と譲り受ける側で目的が異なってきます。

譲り渡す側では、譲渡対価の獲得や、譲渡対価によって次の事業を始める資金とすることなどが目的として挙げられます。また、事業承継を目的に飲食店や美容サロン、病院、薬局などの小規模な事業を譲り渡すこともあります。

一方、譲り受ける側としては、事業を一から立ち上げるのではなく、既に存在する事業を譲り受けて立ち上げのリスクや時間を抑えることを目的としたり、投資の一環として譲り受けることがあります。

また、昨今では小規模なM&Aを対象とした支援サービスが充実してきたことも個人のM&Aを後押ししているといえます。

M&Aのメリット・デメリット

譲渡企業と譲受企業の視点からM&Aを実施するメリット、デメリットを紹介します。

譲受企業(買い手)のメリット・デメリット

譲受企業から見たM&Aのメリット、デメリットは以下の通りです。

譲受企業(買い手)のメリット 譲受企業(買い手)のデメリット
  • 新規事業への参入
  • 既存事業の強化
  • 事業拡大に伴うコスト削減

譲受企業のメリットはビジネスの加速

譲受企業がM&Aを行うメリットは「ビジネスを加速させる」ことができるという点です。譲受企業と譲渡企業が協力し合い、ノウハウやリソースを共有していくことで、利益を最大化することができます。

近年、多くの企業は、既存事業の強化を行いつつ、新たな成長戦略を描くために、新規事業への参入を検討しています。しかし、新規事業へ参入する際はもちろん、既存事業を拡大する際にも、技術開発や従業員の教育といった金銭的なコストに加え、時間的なコストもかかります。

M&Aによって実績のある企業を譲り受けることで、新規事業へ参入する際でも、迅速的かつ効率的に譲渡企業の資産である人材や資源を引き継ぐことができるため、最終的に事業拡大に伴うコストを削減できるのです。

▷参考:M&Aサービス(譲受をご希望の方)

一方で、M&Aが成約に至っても、デメリットが発生してしまう場合もあります。

譲受企業のデメリットは見込んだ収益が出せないリスク

譲受企業がM&Aを行う際には、「見込んだ収益が出せないリスクをどこまで軽減させるか」がポイントです。

企業にはそれぞれ異なった社風や文化があるため、複数の企業が1つになるためには、長い時間が必要です。譲受企業と譲渡企業がお互いの文化を受け入れつつ、利益につなげるためには、多くのすり合わせを行わなければなりません。

両社の従業員間にある心理的な障壁がなくなり、相乗効果(シナジー)が生まれるまでには、想定以上の時間を要する可能性があります。

シナジー効果とは、相乗効果や協働作用を指し、単純な総和以上の結果が生み出されることを意味します。M&Aにおいては、複数の企業が連携したり共同で事業を行うことで、単独で行うよりも大きな成果や成長をもたらすことをいいます。

また、「のれん代の減損リスク」は最も注意すべきポイントです。のれん代とは、譲渡企業の収益力を評価して算出されるもので、譲渡企業のノウハウや将来得られるであろう利益といった無形資産の一種です。企業を譲り受けるときの対価は、「のれん代」と「純資産」を合算した価格になります。

そして、M&Aにおいては、譲渡企業の純資産額に一定額を上乗せした価格が付くことも多くあります。しかし、企業統合によるシナジーが生まれなかったり、優秀な人材が流出したりなど、当初見込んでいた収益が生じない可能性が高まると、のれん代について損失を計上する必要があります。

譲受企業が譲渡企業を選ぶ際には、「のれん代の減損リスク」も含めた慎重な選択が重要です。

譲渡企業(売り手)のメリット・デメリット

M&Aによる譲渡企業のメリット、デメリットは以下のようにまとめられます。

譲渡企業(売り手)のメリット 譲渡企業(売り手)のデメリット
  • 事業承継問題の解決
  • 企業基盤の強化
  • 個人保証の解除
  • 創業者利益の実現
  • 従業員の雇用が守られる
  • 最適な買い手が見つかるかといった問題
  • M&A成約後の従業員と組織の問題

譲渡企業のメリットは事業承継問題の解決や企業基盤強化

現在、大企業のみならず中小企業においてもM&Aに注目が集まっている理由は、多くの企業が抱えている「後継者問題」が解決できる可能性が高いからです。日本では少子高齢化が進み、中小企業の経営者も徐々に高齢化しています。そして、国内の人口減少にともない、国内の市場は縮小が避けられない状況です。

また、一般的に中小企業の経営は不安定なことが多いことから、親族や従業員への承継も難しく、後継者不在のまま廃業・倒産してしまうケースが増えてきています。このような事業承継に伴う後継者問題を解決すると、今までの事業を存続させることができ、従業員の雇用を守ることができます。

▷関連記事:中小企業を廃業から救う「事業承継」にM&Aを使うメリット

多くの経営者は会社の連帯保証人として登録されていますが、そちらに関してもM&Aを実施することにより個人保証から解放され、引退後の生活資金も得られる可能性があります。

M&Aは、こうした課題解決だけでなく、M&Aで受け取る対価により新規事業を興すためという、資金調達の手法としても盛んに行われています。譲渡企業のこうしたメリットが徐々に浸透してきているからこそ、M&Aの件数が増えてきているのです。

▷関連記事:M&Aの課題と具体的な対策。中小企業のM&Aにおける懸念点とは?
▷参考:M&Aサービス(譲渡をご希望の方)

譲渡企業にとって多くのメリットがあるM&Aですが、一方でデメリットも存在します。

譲渡企業のデメリットは良い譲渡先企業が見つからないリスク

現在、譲受企業は新規事業への参入や既存事業の拡大を目的に、M&Aに対して積極的になっています。そのため、交渉がはじまると譲渡企業にとって良い条件で成約できるケースが多いですが、そもそも本当に良い譲渡先の企業が見つかるかどうかの問題があります。

M&Aの際は、これまでの実績よりも将来性が重要視されることが多いため、自社の事業や業績、市場の動向に注意を払う必要があるでしょう。また、M&Aの手法によっては、従業員は譲受企業と再契約が必要になることもあります。その際に、従業員にとって不利益な契約内容に変更を求められることもあります。

M&A成約後も自社の従業員を守るためには、M&A後の労働条件を確認しておくことが重要です。

▷関連記事:M&Aで譲渡された企業の社員は その後どうなる?
▷関連記事:中堅中小企業におけるM&Aのメリットとデメリット
▷関連記事:M&Aにおける買い手の狙いは?目的・メリット・成功事例を紹介
▷関連記事:M&Aの売却時にリスクを減らす方法

上述のようなメリットを期待してM&Aは実施されます。このM&Aには複数の手法があります。以下では手法について紹介します。

M&Aの手法と種類

M&Aにおける手法の種類は以下の図の通りです。一般的な中小企業のM&Aは、狭義的な定義である「企業譲渡」を指し、手法として「株式譲渡」が多く用いられます。第三者への事業承継を目的としたM&Aにおいても、一般的なのは株式譲渡による企業譲渡です。

<M&Aの種類>

一方で、広義的な定義のM&Aである「株式の持ち合い」や「合弁企業の設立」などの資本提携全般においては、取引する各企業の経営戦略に基づき、資本関係を決定します。

次は、最も一般的なM&Aの手法である企業譲渡から、活用される機会の多い6つの手法を紹介します。

▷関連記事:M&Aの方法はどのようなものがあるか?特徴を理解し最適な手法を選ぶ
▷関連記事一覧:M&A関連の用語解説

①M&Aの最も一般的な手法である「株式譲渡」

株式譲渡

「株式譲渡」は、会社を譲り渡す側(A社)の株主(株主A)が、譲り受ける側(B社)に対して50%超の株式を対価と引き換えに譲渡することで、A社がB社に承継される手法です。これによりA社はB社の子会社となります。

この株式譲渡を行える企業形態である株式会社とは、株式を発行して投資家から資金を調達して事業活動を行う企業のことです。

中小企業では経営者などが自社の株式の大半を保有していることが多いため、会社は経営者が持っていると思われますが、法律的な観点では、株式会社は経営者のものではなく、出資をしている株主が保有しているといえます。

そのため、株式譲渡は基本的に、会社の所有者が変わるだけであり、会社に属する従業員や資産、契約などを全て承継できるのがメリットです。

対価の取り決めは企業価値の算出によって定めますが、企業価値を測るためには譲渡企業の将来性・収益性やM&Aによるリスクについて調査(デューデリジェンス)し、把握する必要があります。

▷関連記事:M&A(企業買収)のリスクとは?成功へ導くリスク回避の極意

②特定事業だけを譲渡する「事業譲渡」

事業譲渡

「事業譲渡」は、企業全体ではなく、特定の事業だけを譲渡する手法です。譲渡企業の経営者が一部の事業だけを譲渡したい場合や、譲受企業が赤字の事業を承継したくない場合などに利用されます。

株式譲渡は会社のすべてを譲渡する手法ですが、事業譲渡の場合、各種契約の結び直しや許認可の再申請、従業員の再雇用などが必要となる場合が多く、株式譲渡より手続きが複雑です。譲渡企業の経営者にとっては手間がかかる手法ですが、事業譲渡は実施後も譲渡企業の経営権を持ち続けられるのが利点です。

▷関連記事:事業譲渡と株式譲渡の違いとは?メリット・デメリットとM&Aの手法として判断するポイントを解説

③子会社化に用いる「株式交換」

株式交換

「株式交換」は、譲渡企業(A社)が譲受企業(B社)の100%子会社となる会社法上の組織再編行為を指します。

株式交換といっても単純に株式の交換を行うということではなく、A社の株式を保有している株主A全員から、B社の発行済株式と交換して全株式を譲り受けるというM&Aの手法です。B社が上場企業の場合は、株主Aが譲渡対価として完全親会社となるB社の株式を受け取るケースもありますが、B社が未上場企業の場合には、現金で譲渡対価を受け取るケースが一般的です。

また、株式交換と株式譲渡との違いは、実施の決定に必要となる株主の同意の範囲が挙げられます。

株式譲渡の場合、A社を完全子会社とするためにはA社の株主全員の同意が必要です。しかし、株式交換の場合は、原則としてA社の株主総会における特別決議(原則として過半数以上の出席、出席した株主の3分の2以上の賛成が必要)によって、株式交換の実施が可能です。

④複数の会社を統合する「合併」

合併

「合併」は、複数の会社を1つの会社に統合することです。合併しようとする会社が全て解散して、合併と同時に新しく設立する会社に解散した会社の資産や権利を承継する「新設合併」と、既存の会社がほかの会社の資産や権利を承継する「吸収合併」の2つに分けられます。

上述の株式譲渡や事業譲渡などは買収に含まれ、この合併と組み合わせてM&A(合併と買収)とよばれます。買収では基本的に譲渡企業の法人格がM&A後も存続しますが、合併では吸収される側の法人格はM&A後に消滅します。

また、実務においては、新設合併は事業に必要な許認可の取得など手続きが複雑になるため、吸収合併が多く活用されています。

⑤出資による財務基盤の強化として用いる「第三者割当増資」

第三者増資割当

「第三者割当増資」とは、譲渡企業(A社)が新たに株式を発行し、特定の第三者(B社)に株式を割り当てることを指します。B社はA社から出資を受けることにより、財務基盤を強化することができます。

株式交換との違いとして、第三者割当増資はあくまでA社の既存株主とB社が共に経営をしていくという位置づけです。株式譲渡と比較するとスピード感があり、比較的スムーズにM&Aを行えますが、完全譲渡を希望する際には、第三者割当増資ではなく株式譲渡や株式交換によるM&Aを行う必要があります。

⑥企業再編として利用されることが多い「会社分割」

会社分割

特定の事業を承継させる方法としては、「会社分割」という方法もあります。会社分割とは、譲渡企業の特定の事業をほかの会社に承継させる手法です。会社分割と同時に新しく設立する会社に切り出す場合を「新設分割」といい、切り離された事業が既存の会社に承継される場合を「吸収分割」といいます。

M&Aで新設分割を用いる場合、新設分割により交付された株式を譲受企業に譲渡するという方法があります。もっとも、この手法は企業再編として利用される場合が多く、中小企業が事業承継するためのM&A手法としてはあまり一般的ではありません。

M&Aの手順・流れは準備・交渉・最終契約の3フェーズ

次は、M&Aが実際にどのような手順で進んでいくのか、おおまかなM&Aの流れについて概要をご紹介します。

▷関連記事:M&Aの実務フローと成功のための事前準備や心構え

<M&A成約までの主な流れ>

譲渡企業

M&A仲介会社

譲受企業

準備フェーズ

相談/問い合わせ

M&A
仲介会社

相談/問い合わせ

秘密保持契約の締結・
アドバイザリー契約締結

買いニーズ登録

各種資料の提出

ネームクリア

企業価値評価の実施・
企業概要書の作成

 

ノンネーム登録

ノンネーム検討

交渉フェーズ

 

秘密保持契約の締結

 

企業概要書の確認

 

アドバイザリー契約締結

 

トップ面談

 
 

基本合意

 

最終契約フェーズ

 

デューデリジェンス

 
 

最終合意

 
 

最終契約の締結・
クロージング

 
 

ディスクロージャー

 

M&Aの流れ、および期間は以下の記事でも詳しく解説しています。

▷関連記事:M&Aを検討する前に知っておきたい、M&Aの流れと手順
▷関連記事:M&Aの一般的な手続きの流れ 検討~クロージングまで
▷関連記事:M&Aの期間はどれくらい見ておくべき? 概ねの期間と最短で行う条件

準備フェーズ:M&Aの検討、方針や目的の決定まで

M&Aにあたって、譲渡条件の方針決定や、客観的な企業価値を固めるのが準備フェーズです。

このフェーズでまとめた情報をもとに譲受企業とのマッチングが行われるため、M&Aで最も重要な時期といっても過言ではありません。スムーズかつ丁寧に準備を進める必要があります。

実際に譲受企業に打診する際に使用する「ノンネームシート(匿名概要書)」や「企業概要書(IM)」もこのタイミングで作成します。

交渉フェーズ:ノンネームシートでの打診から基本合意契約まで

準備フェーズでまとめた情報をもとに、譲渡企業から譲受企業へ打診するフェーズです。

ロングリストから実際に交渉する譲受企業を絞り込み、最終的に契約を結ぶ1社に絞り込んでいきます。

まずは譲渡企業の概要を匿名で伝えるノンネームシートで打診し、興味を示した譲受企業だけに秘密保持契約を締結した上で詳細情報を開示します。話が進むと、経営者同士が顔を合わせるトップ面談が行われます。

トップ面談は、M&Aを行う背景などをお互いが共有し、金銭や契約上の利益だけでなく、人として信頼できる相手かどうかを確認することが最大の目的です。

交渉フェーズまでは複数の会社と並行して交渉を行うことが多く、その中から最終的に自社を譲り渡したい相手企業を選びます。その後、M&Aの概要を取り決める基本合意契約を結びます。

▷関連記事:中小企業M&Aのカギを握るマッチング。成功に導くコツとは
▷関連記事:M&Aにおける条件交渉のチェックポイント。契約の前に確認したいこと

最終契約フェーズ:デューデリジェンス(買収監査)M&Aの契約書による成約まで

最終契約フェーズは、細かい契約内容を詰めていくことになります。デューデリジェンス(買収監査、DD)を行い、M&A後のシナジーや想定されるリスクを調査、分析した後、譲渡企業と譲受企業がお互いに納得・合意できる条件をすり合わせます。最終契約書で調印すると、M&Aは成約となります。

※ただし、譲渡企業が取引先と交わしている契約書にチェンジオブコントロール条項が含まれている場合は、対応のため契約締結から決済までに一定の期間を設ける場合もあります。

▷関連記事:【M&Aの必要書類と契約書】M&Aの書類作成手続きをプロセスに沿って解説
▷関連記事:株式譲渡契約書(SPA)とは?株式譲渡制限や株券不発行の場合の手続きについて具体的に解説
▷関連記事:M&Aがクロージングするまでの手続きや期間とは?クロージング条件のポイントも解説

M&A成立後の統合作業(PMI)

M&Aの法律上の手続きは、上述の最終契約の締結によって完了します。しかし、M&A後の統合プロセスであるPMIは、M&Aの成功に欠かすことができません。社内システムや人事評価制度、就労規則といったハード面と、従業員のM&Aへの理解や企業文化などのソフト面の両方の統合を図ります。

PMIが十分にされず、従業員が不安に感じて離職した場合には、M&Aの目的を達成することが難しくなります。

また、例えば社内システムの変更などは、従業員は通常の業務をしながら、対応をする必要があるため、変更する期間を長く設けるなどの配慮も重要です。そのため、M&Aの手続きとあわせて、PMIの準備を進めることをお勧めします。

▷関連記事:PMIとは?M&A成立後の統合プロセスについて株式譲渡を例に解説

M&Aはこのような手順と流れで行われます。M&Aの手続きでは、法律や税金などの専門知識や高い交渉力が求められます。そのため、M&A仲介会社にサポートを依頼して進めることが一般的です。

では、M&A仲介会社に依頼をする場合、どのくらいの費用が必要になるのでしょうか。

M&Aサービス・費用と知っておきたい会計・税務の基本

M&A関連のサービスを利用する場合は、M&A専門のアドバイザリー、仲介、コンサルティングから、証券会社やメガバンクのM&A専門部署まで、M&Aの認知の広がりとともに、多様な業種が参入しています。

M&Aの関連サービスは、仲介サービスが主流となっており、報酬体系(手数料)は概ねイニシャルコスト・マイルストーンフィー・成功報酬の3パターンです。

▷関連記事:M&Aで企業が選ぶべきは仲介会社やFA、マッチングサイトのどれ?
▷関連記事:M&Aにおける銀行の役割とは?成功させるための特徴と注意点を紹介

<M&Aサービスの主な報酬パターン>

イニシャルコスト 相談料・着手金・月額報酬など
マイルストーンフィー 段階的指標を定めて発生する中間報酬
成功報酬 取引金額に応じて報酬料率が変わる(レーマン方式)など

M&Aにかかる料金などに不明点がある場合は、相談を無料で行える会社もあるため、早い段階で専門家からアドバイスを受けながら進めることも検討しましょう。

なお「FUNDBOOK」では、成功報酬制を採用しております。また、お客様がM&Aの知識を深め、納得して具体的に検討を進めて欲しいという思いから、相談料・着手金・月額報酬を頂いておりません。

また、M&Aに必要なコストはサービスの利用だけではありません。その要となるのが「会計」と「税務」です。

先述の通り、M&Aには様々な手法があり、どの手法を選択するかによって、譲渡企業、譲受企業の経営者が必要となる仕訳はそれぞれ変わります。

仕訳(会計処理)は主に「個別会計」「連結会計」「税務会計」の3種類

具体的に、M&Aを行う際の会計処理の方法は大きく「個別会計」「連結会計」「税務会計」の3種類に分けられます。

個別会計は、M&Aの対象となる譲渡企業、譲受企業双方が仕訳をし、多くの会計基準が設定されています。

連結会計は、親会社、子会社を一つのグループとして捉えた場合の会計処理です。例えば合併など企業の結合の際には「パーチェス法」が一般的な会計方法とされています。

税務会計は、税法に従って企業の課税所得を決定するための会計です。上述の2つの会計とは異なり、あくまで税法を前提とした会計処理を行います。

▷関連記事:M&Aの費用の相場・目安は?会計処理や仕訳、税務面まで解説
▷関連記事:M&Aと会計。仕訳(会計処理)と税務、のれんの扱い方

相続税や贈与税などに関連する税務

M&Aを行う際に、選択する手法や、相手先=承継先が親族や従業員などの場合と、第三者への場合で課税される税金の種類や費用も大きく異なります。

一般的に課税される税金としては、「相続税」「贈与税」「法人税」「消費税」「登録免許税」「不動産所得税」などがあります。

経営者が得られる取得対価に大きな差が生じるため、税金に関する知識は身につけておいた方がいいでしょう。

▷関連記事:株式譲渡にかかる税金って何があるの?その種類や計算方法を徹底解説
▷関連記事:事業承継にはどれくらいの費用がかかる?
▷関連記事:M&Aの税務、税金の基礎知識。株主譲渡、事業譲渡など手法で異なる注意点

M&A案件の探し方

最適なM&Aの相手は、M&Aを成功させるために欠かせません。相手探しを自社のみで行うことは、情報漏えいのリスクや候補数に限りがあることなどから難しいといえます。一般的に相手探しの相談先には、銀行や証券会社、弁護士や会計士などの士業、M&Aのマッチングサイト、M&A仲介会社などが挙げられます。

  • 銀行、証券会社
  • M&Aの専門家による支援が受けられますが、上場企業などの大企業を主としているため、中小規模の企業ではサポートが受けられないことがあります。

  • 弁護士や会計士などの士業
  • 法律や会計の専門的な知識を有しているが、M&Aの全体の支援は受けらないことがあります。

  • マッチングサイト
  • 案件が掲載されたサイトを介したマッチングのみの支援で比較的安価ですが、M&Aの具体的な支援は行っていないことが多いです。

このように、それぞれメリット、デメリットがあります。しかし、譲渡を検討している企業の多くはM&Aが初めてということが多いため、相談から相手探し、法的手続き、成約までサポートを受けられるM&A仲介会社がお勧めです。

また、昨今では、個人による譲り受けや譲り渡しの仲介を手がける業者も存在します。一度、仲介会社に相談し、目的や条件を洗い出し、多くの候補企業から相手探しをすることで、円滑にM&Aを進められるでしょう。

▷関連記事:マイクロM&Aの成功ポイント

M&Aアドバイザーが教えるM&Aを成功させるポイント

話を聞いたM&Aアドバイザー


石川章太郎

石川 章太郎

エグゼクティブセールス本部
ディレクター

インディアナ大学ブルーミントン校会計学部卒。Ernst & Youngのサンフランシスコオフィスにて会計監査業務に従事。米系上場・未上場企業および日系企業の米国子会社の主査として監査業務に携わる。日本に帰国後、独立系M&AアドバイザリーファームGCA株式会社にて、主にクロスボーダー案件のM&Aアドバイザリー業務に従事。株式会社BuySell TechnologiesでM&Aプラットフォーム事業の立上げを行い、株式会社FUNDBOOKに創業メンバーとして参画。米国公認会計士(USCPA)。

Q1.交渉を成功させる心構えは?

A.譲渡企業は、「譲り受けてもらえる会社」であることが大切です。

しかし、M&Aをはじめると、M&A業務に追われて通常業務がおろそかになり、業績を落としてしまう企業もあります。M&Aの準備をはじめたら、これまで以上に業績を伸ばすことを目指しましょう。そして、譲受企業に「価値のある会社」であることをアピールしましょう。

Q2.銀行や会計士などの各相談窓口とM&Aアドバイザーの違いは?

A.M&Aの相談に乗ってくれるのは、M&Aアドバイザーだけではありません。顧問税理士や弁護士、公認会計士、地元の商工会議所や金融機関もM&Aの相談を受け付けています。

しかし、それらはM&Aの専門家ではありません。M&Aの経験がある場合にも、それぞれの専門分野に特化していて、M&Aの手続全体には携わっていないことも多いです。そのため、相談をする際には、経験の有無や何を強みにしているかを確認する方が確実です。M&Aアドバイザーを決めるときは、いくつかの相談先と話してM&Aの知識や経験、人柄などを比較検討してから選ぶとよいでしょう。

Q3.事前準備としてできることは?

A.M&Aを実施する理由や動機、譲れない条件をまずは固めておきましょう。

そうすることで、アドバイザーとの折衝や譲受企業とのマッチングをスムーズに行えます。また、可能であれば自社の株式を集約しておくこともおすすめです。

実際にM&Aを行う際の意思決定がスムーズになり、通常半年から2年ほどかかると言われるM&A実施期間の短縮につながります。また、株券発行会社の場合は、適切に株券が発行されているか確認しておきましょう。

Q4.赤字や債務超過がある場合はどうすればよいか?

A.赤字や債務超過だからM&Aできない、ということはありません。

重要なのは、そのような状態となっている理由や背景です。ここには、投資状況や市場動向、季節要因なども含まれます。

しっかりと理由や原因を整理しておくことで、「自社であれば改善、立て直しができる」と考える譲受企業が見つかる可能性があります。

Q5.従業員への告知はいつ行うべき?

A.M&Aにおいて、従業員への告知タイミングは非常に重要です。

下手な伝え方をしてしまうと、従業員のモチベーションの低下や退職につながる可能性があります。というのも、準備フェーズや交渉フェーズでは、方向性がまだ明確になっておらず、また、交渉の相手方との秘密保持義務の関係もあるため、基本的にM&Aの交渉を進めている旨を従業員に対して正しく説明することが難しいからです。

そのため、M&Aを進めている事実を伝えるのは、最終契約後に行うことが一般的です。告知の際はM&Aの意図と自社に残ってほしい旨を前向きに伝える必要があります。M&Aの意図や従業員が財産であること、今後どうなるのかについて、真摯に説明しましょう。

Q6.事業承継の手段について決めかねている場合は?

A.会社の状況にもよるので、専門家に相談しましょう。

事業承継の手段は3つあります。
親族承継、従業員承継、第三者承継(M&A)の3つです。

後継者がいる場合は親族承継ができます。その方に経営者としての資質があるのか見極めましょう。

従業員承継も同様に、経営者となる資質の有無を問われます。また、今後の経営を長期的に行ってもらうためには、若い年齢であることも重要です。その上で会社を任せるに足る能力を持ち、本人に継ぐ意思があり、そのうえ会社を譲り受けられる財力が必要です。ほとんどの場合、現実的な選択肢とは言えないでしょう。

そのため、親族や従業員に後継者がいない、もしくは継がせたくない場合、第三者への承継(M&A)が最も現実的な手段となります。

その他にはIPOという手段もありますが、IPOには厳しい基準があり、この選択肢を取れる会社は限られます。IPO直後に経営者が引退することも難しいでしょう。

もちろん会社の状況によって判断基準は異なりますので、親族・従業員への承継についても選択肢に入れながら、まずはアドバイザーに相談してみるのはいかがでしょうか。

Q7.どのタイミングで相談すれば良い?

A.M&Aを意識したタイミングで、準備を始めることをお勧めします。

M&Aの成約には一定の期間が必要です。自社にM&Aの必要性が生じてから検討をするのでは、適切なタイミングでの譲渡が叶わない可能性もあります。

アドバイザーに相談し企業価値評価を行っておくことで、自社の現段階の価値を把握できるというメリットもあります。それによりM&Aを実施する最適なタイミングも明確になるでしょう。

後継者不在によるM&Aを検討している方も、イグジットを検討している方も、初期段階で企業価値評価を行っておくことをお勧めします。

▷関連記事:企業価値評価とは?M&Aで使用される企業価値の算出方法

これまでのM&Aと現状・市場背景から見る課題

一昔前までは「身売り」や「敵対的買収」のイメージが強かったM&Aですが、時代の流れと共に変化しています。

近年では、少子高齢化や人口減少による中小企業の経営者の高齢化や後継者不在の問題が深刻になっています。

帝国データバンクによる『2017年後継者問題に関する企業の実態調査』によると、約33万社の内、22万社以上が「後継者不在」だと回答しました。一方で、経営者の平均年齢は2016年時点で61.19歳と年々上昇しています。

廃業と雇用の喪失が大きな課題

それに伴い、国内の中小企業では、後継者が見つからないために事業が黒字でも廃業せざるを得ないケースが増加しています。

親族や従業員への事業承継が出来なければ、あとは廃業かM&Aという選択肢しかありません。しかし、廃業をすると、従業員の雇用など新たに様々な問題が発生します。

2025年までに経営者が70歳を超える事業体のうち、法人の31%、個人事業者の65%が廃業し、約127万社で後継者不在が問題になるとされています。そのため、現状のままいくと2025年までに、累計で約22兆円のGDP(国内総生産)と約650万人の雇用が失われると予測されています。

そのような背景もあり、中小企業が抱える後継者不在の問題の解決や、新しい事業を興すための資金調達方法といった経営戦略としてM&Aは評価されてきています。中小企業庁の調査によると、日本のM&A件数は2017年に3,000件を超え、2018年のM&A件数は3,850件、金額は29兆8,802億円と、件数・金額ともに過去最高を更新しました。

M&Aは、もはや大企業間だけのものではありません。中小企業がより成長するための戦略でもあり、後継者問題を解決する1つの事業承継の手法でもあります。

しかし大企業でさえ、M&Aに慣れた経営者はほとんどおらず、専門のM&Aアドバイザーと一緒に手続きを進めていることがほとんどです。譲渡企業の経営者は、社外のM&Aアドバイザーを活用すると、社内への情報漏洩リスクの回避や、業務上のさまざまなサポートを受けられるといったメリットを享受できます。

M&Aは、企業価値が高いときに行うほど、有利な条件で成約が可能です。少しでも事業承継や事業拡大を検討しているなら、早い段階からM&Aを視野に入れて、専門のM&Aアドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか。

また、ご検討をより具体化していくためにも、以下のような具体事例をご用意しました。M&Aに関して、より一層の理解が深まれば幸いです。

M&Aの成約事例の一部はこちら

「3ヵ月のスピード成約――会社発展のためのM&Aという選択」

通常、約半年から2年とも言われる企業同士のM&A。わずか3ヵ月でのスピード成約となったM&Aの仲介アドバイザーを担当した田中が、譲渡企業の元代表取締役社長に「M&Aを検討し始めたきっかけ」や「譲渡後の変化」についてお話を伺いました。

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「“売る”のではなく“バトンを繋ぐ”――経営者同士の想いの先にあるものとは」

インタビューの舞台は京都府八幡市。「八幡(やわた)」という市名は、市内に鎮座する日本三大八幡宮の一社、石清水八幡宮に由来します。経営に対する想い、文化を重要視し、人を大事にするM&Aがここにあります。

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「M&Aプラットフォームがつなぐ“縁”――想いを託し、見守っていきたい」

2018年10月29日、有限会社信濃設備機工と株式会社塚腰運送のM&A成約式が、長野県諏訪市のRAKO華乃井ホテルで開かれ、譲渡側である信濃設備機工の小井出則夫社長、恵美子専務ご夫妻、譲受側である塚腰運送の塚腰智之社長、塚腰高秀副社長が出席されました。

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「地域の患者様のためにーー両者の想いが繋いだ”夢を叶えるM&A”」

瀬戸内の穏やかな海に囲まれた香川県の小豆島で「調剤薬局げんきまん」を創業し、17年間経営されてきた平井先生と、2018年8月に同薬局を譲り受けた株式会社あけぼの関西・森社長にお話を伺いました。

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上場戦略としてのM&Aーー未来へつなぐ新たな選択肢

M&A成約から半年、BTCオーナーの大木塁会長とインテグラルの取締役パートナーで現在BTCの取締役を務める水谷謙作氏のお二人に、上場戦略としてのM&Aについてお話を伺いました。

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