M&Aとは?メリットや手法、流れなど成功するための全知識を解説

2018/06/19

M&A(エムアンドエー)は、「Mergers and Acquisitions」を略した言葉。日本語に訳すと「合併と買収」になります。複数の会社が1つになったり、ある会社がほかの会社を譲り受けたりする経営戦略です。

しかしニュースに取り上げられるM&Aの話題から、M&Aに対して「大企業間でのマネーゲーム」「業績不振の救済策」といったネガティブな印象を抱いている方もいるかもしれません。

一昔前はM&Aに否定的な時代もありましたが、現在は中小企業が抱える後継者不在問題の解決や、新しい事業を興すための資金調達方法として再評価されてきています。

本記事では、M&Aのメリットや手法、手順などについて網羅的に紹介します

 

知っておきたいM&Aのメリット・デメリット

この項目では、会社を譲り渡す側(譲渡企業)と譲り受ける側(譲受企業)、それぞれの視点からM&Aのメリットとデメリットを紹介しましょう。

 

譲受企業におけるM&Aのメリット

M&Aのメリットは「ビジネスを加速させる」こと。譲受企業と譲渡企業が協力し合い、お互いの利益を最大化できます。その理由を細分化すると、以下の3つが大きな要因です。

 

  • 新規事業への参入
  • 既存事業の強化
  • 事業拡大に伴うコスト削減

 

近年、多くの企業は、既存事業の強化を行いつつ、新たな成長戦略を描くために、新規事業への参入を検討しています。

しかし、新規事業へ参入する際はもちろん、既存事業を拡大する際にも、技術開発や従業員の教育といった金銭的なコストに加え、時間的なコストもかかります。M&Aによって実績のある企業を譲り受けることで、新規事業へ参入する際でも、迅速的かつ効率的に譲渡企業の資産である人材や資源を引き継ぐことができるため、最終的に事業拡大に伴うコストを削減できるのです。

 

譲受企業におけるM&Aのデメリット

長い時間をかけてM&Aを成約しても、以下のようなデメリットが発生してしまう場合もあります。

 

  • 融合に時間がかかる
  • 優秀人材の流出
  • シナジーが生まれない
  • のれん代の減損リスク

 

企業にはそれぞれ異なった社風や文化があります。そのため、複数の企業が1つになるためには、長い時間が必要です。譲受企業と譲渡企業がお互いの文化を受け入れつつ、利益につなげるために、多くのすり合わせを行わなければならないからです。

両社の従業員間にある心理的な障壁がなくなって相乗効果が生まれるまで、想定以上に時間がかかってしまう可能性があります。

また、「のれん代の減損リスク」は最も注意すべきポイントです。のれん代とは、譲渡企業の収益力を評価してなされるもので、譲渡企業のノウハウや将来得られるであろう利益といった無形資産の一種のこと。企業を譲り受けるときの価格は、「のれん代」と「純資産」を合算したものになります。

M&Aにおいては、譲渡企業の純資産額に一定額を上乗せした価格が付くことも多いですが、企業統合によるシナジーが生まれなかったり、優秀な人材が流出してしまったりして、当初見込んでいた収益が生じない可能性が高まると、こののれん代について損失を計上する必要があります。

このような「のれん代の減損リスク」も考慮しながら、慎重に譲り受ける企業を選ぶ必要があります。

 

譲渡企業におけるM&Aのメリット

M&Aによる譲渡企業のメリットは以下のようにまとめられます。

 

  • 事業承継問題の解決
  • 企業基盤の強化
  • 個人保証の解除
  • 創業者利益の実現
  • 従業員の雇用が守られる

 

現在、大企業のみならず中小企業においてもM&Aに注目が集まっている理由は、多くの企業が抱えている「後継者問題」が解決できる可能性が高いからです。

日本では少子高齢化が進み、中小企業の経営者も徐々に高齢化しています。そして、国内の人口減少にともない、国内の市場は縮小が避けられない状況です。

また、一般的に中小企業の経営は不安定なことが多いことから、親族や従業員への承継も難しく、後継者不在のまま廃業・倒産してしまうケースが増えてきています。このような後継者問題を解決すると、今までの事業を存続させることでき、従業員の雇用を守ることができます。

また、経営者が会社の債務を連帯保証人している場合、個人保証から解放され、引退後の生活資金も得られる可能性が高いのです。

M&Aは、こうした課題解決だけでなく、M&Aで受け取る対価により新規事業を興すためという、資金調達手法としても盛んになっています。

譲渡企業のこうしたメリットが徐々に浸透してきているからこそ、M&Aの件数が増えてきているのです。

 

譲渡企業におけるM&Aのデメリット

譲渡企業にとって、多くのメリットがあるM&Aですが、デメリットも存在します。代表的なものを以下に紹介します。

 

  • 買い手が見つかるかどうかの問題
  • M&A成約後の従業員と組織の問題

 

現在、譲受企業が新規事業への参入や既存事業の拡大を目的に、M&Aに対して前向きになっています。そのため、交渉がはじまると譲渡企業にとって良い条件で成約できるケースが多いですが、そもそも買い手が見つかるかどうかの問題があります。

M&Aの際は、これまでの実績よりも将来性が重要視されることが多いため、自社の事業や業績、市場の動向に注意を払う必要があるでしょう。

また、M&Aの手法によっては、従業員は譲受企業と再契約が必要になることもあります。その際に、従業員にとって不利益な契約内容に変更を求められることもあります。M&A後も自社の従業員を守るためには、M&A後の労働条件は確認しておくことが必要です。

 

M&Aをする場合に知っておくべき3つのこと

M&Aのメリットやデメリットをふまえた上で、次はM&Aを理解するために知っておきたい「手法」や「流れ」などをご紹介します。

 

知っておくべきこと①:M&Aの手法

M&Aの手法は広義と狭義の2つに分けられます。M&Aのなかで最も一般的な手法である「企業譲渡」を狭義でのM&A、「株式の持ち合い」や「合弁企業の設立」を広義でのM&Aと呼びます。

一般的な中小企業のM&Aというと、この中の「狭義のM&A」を指す場合がほとんどのため、この記事では「狭義のM&A」を中心に紹介します。

最も一般的なM&Aの手法である「企業譲渡」には大きく5つの手法があります。

 

株式譲渡

「株式譲渡」は、M&Aにおいて最も一般的な手法です。譲渡企業(A社)の株主(株主A)が譲受企業(B社)に対して50%超の株式を譲渡することで、A社はB社の子会社となります。

会社の所有者が変わるだけなので、会社に属する従業員や資産、契約などを全て承継できるのがメリットです。

 

事業譲渡

2つ目の手法が、企業全体ではなく、特定の事業だけを譲渡する「事業譲渡」です。譲渡企業の経営者が一部の事業だけを譲渡したい場合や、譲受企業が赤字の事業を承継したくない場合などに利用されます。

株式譲渡と会社のすべてを譲渡する手法ですが、事業譲渡の場合、各種契約の結び直しや許認可の再申請、従業員の再雇用などが必要となるため、株式譲渡より手続きが複雑な手法です。譲渡企業の経営者にとっては手間がかかる手法です。

 

株式交換

「株式交換」は、譲渡企業(図のA社)が譲受企業(図のB社)の100%子会社となる会社法上の組織再編行為のことを指します。

株式交換といっても単純に株式の交換を行うということではなく、株主A全員から、B社が発行済株式全部を譲り受けるというM&Aの手法です。B社が上場企業の場合は、株主Aが譲渡対価として完全親会社となるB社の株式を受け取るケースもありますが、B社が未上場企業の場合には、現金で譲渡対価を受け取るケースが一般的です。

また、株式譲渡との違いとして、株式譲渡の場合は、A社を完全子会社とするためにはA社の株主全員の同意を得る必要があります。しかし、株式交換の場合は、原則としてA社の株主総会における特別決議(原則として過半数以上の出席、出席した株主の3分の2以上の賛成が必要)での株式交換の実施が可能だという点が挙げられます。

 

 

第三者割当増資

「第三者割当増資」とは、譲渡企業(A社)が新たに株式を発行し、特定の第三者(図のB社)に株式を割り当てることを指します。B社はA社から出資を受けることにより、財務基盤を強化することができるのです。

株式交換との違いとして、第三者割当増資はあくまで A社の既存株主とB社が共に経営をしていくという位置づけです。株式譲渡と比較するとスピード感があり、比較的容易にM&Aが可能ですが、完全譲渡を希望する際には、第三者割当増資ではなく株式譲渡や株式交換によるM&Aをする必要があります。

 

会社分割

特定の事業を承継させる方法としては、「会社分割」という方法もあります。会社分割とは、譲渡企業の特定の事業をほかの会社に承継させる手法です。

会社分割と同時に新しく設立する会社に切り出す場合を「新設分割」といい、切り離された事業が既存の会社に承継される場合を「吸収分割」といいます。

M&Aで新設分割を用いる場合、新設分割により交付された株式を譲受企業に譲渡するという方法があります。もっとも、この手法は企業再編として利用される場合が多く、中小企業が事業承継するためのM&A手法としてはあまり一般的ではありません。

 

合併

「合併」は、複数の会社を1つの会社に統合することです。合併しようとする会社が全て解散して、合併と同時に新しく設立する会社に解散した会社の資産や権利を承継する「新設合併」と、1つの会社がほかの会社の資産や権利を承継する「吸収合併」の2つに分けられます。

しかし、合併も企業再編の意味合いが強く、中小企業の事業承継にはあまり利用されていないのが実態です。

 

知っておくべきこと②:M&Aの手順

次は、M&Aが実際にどのような手順で進んでいくのか、譲渡企業のケースをご紹介します。

引退を考えている中小企業の経営者にとって、M&Aは最後の大仕事です。通常半年から1年、長い場合には2年程度かかるM&Aをスムーズに進めるために、全体の流れを先に掴んでおきましょう。

 

準備フェーズ(M&Aの方針・目的の決定~交渉準備まで)

M&Aにあたって、譲渡条件の方針決定や、客観的な企業価値を固めるのが準備フェーズです。このプロセスを「案件化」といいます。

このフェーズでまとめた情報をもとに譲受企業とのマッチングが行われるため、M&Aで最も重要な時期といっても過言ではありません。スムーズかつ丁寧に準備を進める必要があります。

 

交渉フェーズ(ノンネームシートでの打診〜基本合意契約まで)

準備フェーズでまとめた情報をもとに、譲受企業へ打診するフェーズです。まずは譲渡企業の概要を匿名で伝えるノンネームシート(匿名概要書)で打診し、興味を示した譲受企業だけに秘密保持契約を締結した上で詳細情報を開示します。

話が進むと、経営者同士が顔を合わせるトップ面談が行われます。トップ面談は、M&Aを行う背景などをお互いが共有し、金銭や契約上の利益だけでなく、人として信頼できる相手かどうかを確認するのが最大の目的です。

交渉フェーズまでは複数の会社と並行して交渉を行うことが多いです。その中から最終的に契約したい企業を選び、M&Aの概要を取り決める基本合意契約を結びます。

 

最終契約フェーズ(買収監査『デューデリジェンス』〜M&Aの成約まで)

最終契約フェーズは、細かい契約内容を詰めていくことになります。デューデリジェンスという買収監査を行った後、譲渡企業と譲受企業がお互いに納得できる条件をすり合わせます。最終契約で調印すると、M&Aが成約します。

 

知っておくべきこと③:M&Aアドバイザーの重要性

M&Aでは、多くの資料を準備したり、譲受企業と交渉する必要があるなど、想像しているよりも多くの業務が発生します。譲受企業とのやり取りに時間がかかりすぎてしまうと、その間に市場環境や譲渡企業の状況に変化が生じることも多く、交渉が難航する可能性があります。

加えて、M&Aを成功させるには、法務や税務・財務、人事労務などの各面について検証し、譲渡を実行することが重要です。これらのチェックをしないまま最終契約を締結した場合、取り返しのつかない問題に発展してしまうこともあります。

また、ほとんどの譲渡企業の経営者にとっては、はじめてのM&Aとなるでしょう。M&Aに興味がある場合、または不安がある場合、専門のM&Aアドバイザーに相談してみましょう。M&A業務のサポートだけでなく、M&Aへの疑問や不安といった心理的な相談にも乗ってくれるアドバイザーがほとんどです。

M&Aはスムーズに進行しても半年から1年程度の期間がかかるため、M&Aアドバイザーは仕事をこなしてくれるだけでなく、心から信頼できるアドバイザーを見つけましょう。

 

M&Aアドバイザーが教える「M&Aで注意すべきこと」

− Q1.交渉を成功させる心構えは?

A.譲渡企業は、「譲り受けてもらえる会社」であることが大切です。しかし、M&Aをはじめると、M&A業務に追われて通常業務がおろそかになり、業績を落としてしまう企業もあります。

M&Aの準備をはじめたら、これまで以上に業績を伸ばすことを目指しましょう。そして、譲受企業に「価値のある会社」であることをアピールしましょう。

 

− Q2.各相談窓口との違いとは?

A.M&Aの相談に乗ってくれるのは、M&Aアドバイザーだけではありません。顧問税理士や弁護士、公認会計士、地元の商工会議所や金融機関もM&Aの相談を受け付けています。しかし、それらはM&Aの専門家ではありません。M&Aの経験がある場合にも、それぞれの専門分野に特化していて、M&Aの手続全体には携わっていないことも多いです。そのため、相談をする際には、経験の有無や何を強みにしているかを確認する方が確実です。

M&Aアドバイザーを決めるときは、いくつかの相談先と話してM&Aの知識や経験、人柄などを比較検討してから選ぶとよいでしょう。

 

−Q3.従業員への告知はいつ行うべき?

A.M&Aにおいて、従業員への告知タイミングは非常に重要です。下手な伝え方をしてしまうと、従業員のモチベーションの低下や退職につながる可能性があります。

というのも、準備フェーズや交渉フェーズでは、方向性がまだ明確になっておらず、また、交渉の相手方との秘密保持義務の関係もあるため、基本的にM&Aの交渉を進めている旨を従業員に対して正しく説明することが難しいからです。

そのため、M&Aを進めている事実を伝えるのは自社のキーマンに限定し、従業員に伝えるタイミングは基本合意後がよいでしょう。M&Aの意図と自社に残ってほしい旨を前向きに伝える必要があります。

そのほかの従業員への告知は、最終契約後に行うことが一般的です。このときは、M&Aの意図や従業員が財産であること、今後どうなるのかについて、真摯に説明する必要があります。

 

まとめ

M&Aは、もはや大企業間だけのものではありません。中小企業がより成長するための戦略でもあり、後継者問題を解決する1つの事業承継の手法でもあります。

しかし大企業でさえ、M&Aに慣れた経営者はほとんどおらず、専門のM&Aアドバイザーと一緒に手続きを進めていることがほとんどです。譲渡企業の経営者は、社外のM&Aアドバイザーを活用すると、社内への情報漏洩リスクの回避や、業務上のさまざまなサポートを受けられるといったメリットを享受できます。

M&Aは、企業価値が高いときに行うほど、有利な条件で成約が可能です。少しでも事業承継や事業拡大を検討しているなら、早い段階からM&Aを視野に入れて、専門のM&Aアドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか。

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