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2023/09/29

税務デューディリジェンス(税務DD)とは?目的やリスク、調査範囲について解説

税務デューディリジェンス(税務DD)とは?目的やリスク、調査範囲について解説

M&Aを検討するなら、なるべくリスクを減らしたいと考えるのではないでしょうか。入念な税務デューディリジェンス(税務DD)ができると、税リスクを考慮した経営やリスク自体の削減が可能です。
そこで本記事では、税務デューディリジェンスの概要や目的・実施の流れを解説します。税務デューディリジェンスを実施しないと起こり得るリスクや対策法もありますので、ぜひ最後までご覧ください。

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税務デューディリジェンス(税務DD)とは

税務デューディリジェンス(税務DD)とは、譲渡企業の「税申告の正確性や納税状況」などを明確にする、税に関する調査です。税務デューディリジェンスでは、譲受企業がM&Aを検討する際に、譲渡企業に税リスクがあるかを確認する目的で実施します。入念な税務デューディリジェンスが実施できると、M&Aの価額交渉をしたり中止したりする重要な判断材料につながるのです。
一般的には、譲受企業から依頼を受けた税理士・公認会計士・M&Aコンサル会社など、M&Aに関する専門家が税務デューディリジェンスを行います。

税務デューディリジェンス(税務DD)の目的

税務デューディリジェンスを実施することで、譲受企業は何を得られるのでしょうか。
ここでは、税務デューディリジェンスを行う目的を説明します。

【税務DDの目的】
・譲渡企業の経営状態を把握するため
・税務リスクを背負わないため
・価額の交渉を行うため
・M&A決定の判断材料にするため
・M&A後の対応策を練るため

税務デューディリジェンスでは、法人税の納税状況によって譲渡企業の経営状態を把握できます。毎年黒字が出れば、利益分の法人税を納めているはずです。反対に、繰越欠損金が出るような赤字経営の場合でも、翌年に利潤が出るのであれば節税が可能になります。

たとえ赤字経営でも、正しい税の申告ができていればM&A後の対策を練れますが、申告漏れには注意が必要です。納税の申告状況を把握しないままM&Aを実施すれば、申告漏れが発覚した場合、譲受企業が納税を負担する恐れが生じます。追徴課税が多額であれば、譲受企業には大きな負担となり、成長を見込んだM&Aのはずが経営不振に陥る可能性もあるのです。

税務デューディリジェンスによって、申告漏れのようなリスクが発覚した場合、買収価額から追徴課税額を差し引いたりM&A実施を断念したりなどの対策を要します。

税務デューディリジェンス(税務DD)を実施しないと起こり得るリスク

ここでは、税務デューディリジェンスを実施しないと起こり得るリスクを3つ紹介します。

納税を負担するリスク

先ほども述べたように、税務デューディリジェンスなしでのM&A実行は、譲渡企業の納税状況を正しく把握できないままなので、追加徴税を負担するリスクにつながります。
負担額が大きいと譲受企業の経営にも影響を与え、成長するはずが共倒れになる危険性を含むのです。

M&A手法を見誤るリスク

税務デューディリジェンスを怠るとM&A手法の選択を見誤り、支払う必要のない税金まで背負う場合もあります。「株式譲渡なら税金がかからない」と安易な考えでM&Aを実行すると、贈与税や法人税が発生することもあり納税を要するのです。また、事業譲渡を選べば「法人税・消費税・不動産取得税」などの税金を譲受企業が負担します。資金が少ない譲受企業が負担する税金を知らないままM&Aを実行すると、資金繰りが上手くいかず、経営も危うくなる可能性があるでしょう。

M&A後に予想外の費用が発生するリスク

納税申告のずさんさを知らずにM&Aを実施すれば、税申告の管理体制を立て直すため新たに人材を雇う可能性もあります。予想外の費用が発生すると、譲渡企業は資金繰りに手一杯となり、円滑な経営がままならないでしょう。

税務リスク発覚後の対策法

税務デューディリジェンスによって税務リスクが発覚した場合、譲受企業は後述の対策を検討する流れになります。

【税リスク発覚後の対策】
・買収価額の交渉
・M&A手法の変更
・M&A中止

税務デューディリジェンスによって追徴課税が発覚した場合、リスク軽減のために買収価額から差し引く交渉をするのが賢明と言えるでしょう。

検討していたM&Aの手法を株式譲渡から、事業譲渡に変更するような手もあります。
しかし、この手段は譲渡企業が難色を示すこともありますので、慎重な交渉を要するでしょう。
税リスク軽減を図った交渉を提案しても、譲渡企業が応じなければ最終的にM&A中止の検討も必要です。

税務デューディリジェンス(税務DD)の流れ

ここでは、税務デューディリジェンスの流れを説明します。
流れを事前に把握できれば、実際の税務デューディリジェンス時に身構えずに済むので、ぜひ参考にしてください。

①専門家への依頼

M&Aを検討する中で、譲受企業と譲渡企業は、独占的交渉権などの内容を含む「基本合意書」の締結をします。締結後、譲受企業は譲渡企業の税リスクを知るために、税務デューディリジェンスを検討する流れです。

税務デューディリジェンスには専門的な知識を要しますので、税理士や公認会計士などに依頼します。専門家を選ぶ際は、M&Aの経験や知識が豊富な人や企業に依頼しましょう。税務デューディリジェンスに関する確認資料は膨大で、M&Aに通じていないと調査に時間を有し、依頼料も跳ね上がる可能性があります。

デューディリジェンスは税務だけでなく、財務や法務などと合わせて調査する場合もありますので、一括して調査できる専門家を選ぶと効率良く行えます。

②調査内容の決定

専門家への依頼ができたら、税務デューディリジェンスの調査内容を決定します。
税務デューディリジェンスの調査内容は、譲渡企業が「法人なのか個人なのか」でも変わりますし、M&Aに用いる手法によっても変わります。
まずは、譲渡企業の特性を把握し、M&A実施の目的を明確にしましょう。
目的に合うM&A手法が検討できれば、おのずと調査内容が可視化できます。
調査内容は専門知識を要しますので、専門家と一緒に決定できると濃い内容の税務デューディリジェンスが可能です。

③資料開示請求・調査

調査内容が決定したら、譲渡企業に対し税務デューディリジェンスに必要な資料の開示請求を行います。資料がそろい次第、専門家による調査が行われ、調査が終われば譲受企業に結果報告される流れです。

調査依頼から結果得報告までの期間は、2週間〜4週間ほどが目安ですが、譲渡企業の規模の大きさから1ヶ月ほどかかる場合もあります。

譲受側がスムーズな税務デューディリジェンスを希望するなら、譲渡企業の繁忙期に依頼するのは避けましょう。
繁忙期に依頼が重なると、譲渡企業は資料の準備に追われ時間を要します。
お互いに納得のいくM&Aにするためにも、余裕を持たせた税務デューディリジェンスを心がけるのがおすすめです。

税務デューディリジェンス(税務DD)の調査範囲

ここでは、税務デューディリジェンスの調査範囲を3つにわけて解説します。

調査対象となる法人

税務デューディリジェンスの調査対象は、譲渡企業(買収の対象企業)です。
譲渡企業に子会社が存在する場合は、調査対象を子会社まで広げるか検討します。
子会社に調査範囲を広げる場合、調査内容も多くなるので依頼費用がかさむだけでなく、時間も要します。
また、子会社が海外に存在すると、海外の税制に詳しい専門家を探す手間が必要です。
M&A成功のために入念な税務デューディリジェンスは欠かせませんが、時間や予算には限りがありますので、経営に影響の出ない範囲で調査依頼を行いましょう。

調査対象となる税金

譲渡企業が「法人か個人か」によっても支払う税金は変わりますが、いずれにしても税務デューディリジェンスでは、税の滞納や申告漏れの調査が欠かせません。
滞納や申告漏れがM&A後に発覚すれば、譲受企業が税納付を負担するからです。
法人や個人事業主が納税する主な税金は、以下のとおりです。

【法人が支払う税金】
・法人税
・法人住民税
・法人事業税
・特別法人事業税
・消費税・地方消費税 など

【個人事業主が支払う税金】
・所得税
・住民税
・個人事業税
・消費税・地方消費税 など

株式譲渡や事業譲渡など、M&Aをどの手法で行うかによって、譲受が負担する税金額が変化するので注意が必要です。たとえば、事業譲渡によってM&Aを実施する場合、法人税や消費税・不動産取得税などを譲受企業が負担するパターンがあります。
譲受企業がM&Aによって多額な納税を背負わないためにも、税務デューディリジェンスでの綿密な調査が必要と言えるでしょう。

調査対象となる期間

基準日の直近3〜5年ほどが、税務デューディリジェンスの調査対象となる期間の目安になります。基準日の選定は、追徴課税のリスクがある「税務調査を受けていない期間」を中心に決定するのが一般的。
税務調査を受けた期間が対象でも、調査関連の資料を確認することで、M&A後の税負担のリスクがあるかを把握できるでしょう。

まとめ

今回は、税務デューディリジェンスの概要や目的・実施の流れを説明しました。
税務デューディリジェンスを行わないと、税リスクを背負うM&Aになりかねません。
専門家による税務デューディリジェンスができると、税リスクの削減だけでなく、税リスクを節税へと変更できるプラスの可能性が見つかることもあるでしょう。

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