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2026年6月3日

M&Aのデューディリジェンス(DD)とは?流れ・やり方から調査項目、費用まで解説

M&Aのデューディリジェンス(DD)とは?流れ・やり方から調査項目、費用まで解説

デューディリジェンス(DD)とは、M&A成約間近の段階で行われる事前調査のことです。譲受企業が譲渡企業に対して、税務や法務など様々な角度から資産価値を測ります。

デューディリジェンスは、譲渡企業の「価値の適正確認」や「事前のリスク把握」に役立つため、譲受企業にとって非常に重要な工程です。

また、譲渡企業にとっても、最終的な譲渡価額に影響する可能性があるため、細心の注意を払って臨む必要があります。

本記事では、M&Aで重要なデューディリジェンスの意味や目的、流れ・やり方から調査項目、費用までわかりやすく解説します。

安田 亮
この記事を監修した専門家
公認会計士・税理士・1級FP技能士
安田 亮
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
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M&Aの過程で行うデューディリジェンス(DD)とは

デューディリジェンスとは、譲渡企業に対して企業の価値、将来の収益性、リスクの調査および分析を行う事前調査です。英語では「Due Diligence」と表記され、頭文字を取って「DD」と記載される場合や日本語では「デューデリ」と略して呼ばれる場合があります。

デューディリジェンスでは、譲受企業が譲渡候補企業の経営環境や事業内容などの実態を財務・税務・法務など様々な観点から調査し、資産価値を測ります。その結果を受け、譲受企業はM&Aのスキームの検討や譲渡価額の見直し、露見した問題への対処法の取り決めなどを行うため、デューディリジェンスはM&Aの最終段階における重要な工程です。

デューディリジェンスの調査結果は、最終的な譲渡価額に影響を及ぼします。そのため、譲渡企業は自社の事業構造や内部統制についての詳細を再度把握するなど、入念な準備を行う必要があります。

▷関連記事:M&Aとは?M&Aの意味・流れ・手法など基本を分かりやすく解説

デューディリジェンス(DD)の目的

デューディリジェンス(DD)を行う目的は、「M&Aに伴うリスクを事前に把握すること」であり、「M&A成立後に想定外のリスクが発覚することを防ぐこと」です。

例えば、デューディリジェンスを行った結果、簿外債務が存在することが発覚すれば企業価値評価に影響する可能性があります。判明したリスクや事象の内容によっては、株式取得による企業買収ではなく事業譲渡など他のスキームへの変更が必要になることもあります。

また、「譲渡企業が保有する技術の取得を目的にM&Aを検討していたものの、期待する水準ではなかった」ことがデューディリジェンスで判明するようなケースも起こり得ます。目的が達成できないのであればM&Aの中止も含めて検討しなければいけません。

未払い残業代や訴訟リスク、取引先との不適切な契約など、リスクを事前に把握することでトラブルを回避でき、株主などステークホルダーへの説明責任を果たすことができます。

デューディリジェンス(DD)が行われるフェーズと期間

M&Aの一般的な流れは以下のとおりです。デューディリジェンス(DD)は、M&Aにおける成約までの流れの中で④基本合意フェーズの「基本合意契約の締結後」に行われ、コストや作業量を鑑みて調査項目を決定していきます。

【M&Aの流れ】
1. 相談
2. 検討
3. トップ面談
4. 基本合意
5. デューディリジェンス
6. 最終合意
7. 最終契約締結・クロージング

デューディリジェンスでは、数週間~数ヶ月(2週間〜2ヶ月ほど)の間に、専門家による調査とマネジメントインタビューが行われるのが一般的です。調査場所は、譲渡企業側の会議室などで行われるケースが多いです。

M&A成約の可否を分ける重要な調査であるため長い時間をかけて調査を行う印象もありますが、中小企業規模であれば、さほど時間がかからない場合もあります。

デューディリジェンスに臨む際は、スムーズに調査を行えるように、譲渡企業、譲受企業の双方が必要な資料を事前に揃えたうえで臨むようにしましょう。

デューディリジェンス(DD)の費用目安

デューディリジェンス(DD)にかかる費用は一般的に譲受企業が支払います。また、かかる費用は対象とする企業や調査内容によって異なるため、明確な相場がありません。

依頼する専門家の経験やレベルによっても費用は大きく変わります。弁護士や公認会計士、税理士などの専門家に依頼する場合は費用が高額になる傾向があり、信頼できるレベルの高い専門家であればあるほど、それだけ費用も高額になります。

中小企業のデューディリジェンスでは、法務と財務、税務デューディリジェンスを行うことが一般的です。依頼内容や依頼する専門家によっても差がありますが、これらだけでも100万円~200万円以上の費用が必要です。状況に応じてその他のデューディリジェンスを加える場合は、さらに費用がかかります。

主な調査(事業・財務・法務・税務・人事・IT)の目安費用は、以下のとおりです。

調査の種類1時間あたりの費用総額
事業2~10万円30~300万円ほど
財務2~5万円100~500万円ほど
法務2~5万円70~200万円ほど
税務2~5万円35~200万円ほど
人事2~5万円44万円~

デューディリジェンス(DD)の種類

企業の実態を細かく調査するデューディリジェンス(DD)において、その調査項目は多岐にわたります。
主要な項目は「事業」「財務」「税務」「法務」「人事」「IT」の6種類で、それぞれに専門的な知識が必要になる場面も多く、専門家(弁護士や公認会計士、税理士など)に依頼するケースが一般的です。
以下では、多くのM&Aの案件で行われるデューディリジェンスの項目を紹介します。

事業デューディリジェンス

事業デューディリジェンスとは、企業を包括する市場全体を鑑みたうえでの評価調査で、別名「ビジネスデューディリジェンス」とも呼ばれます。

市場における対象企業、つまり競合内での立ち位置などを確認したうえで、事業の将来性を見極め、経営計画の実現やM&Aの目的と適合しているかを調査します。

事業デューディリジェンスでは、以下のような内容を調査します。

・業界や市場などの譲渡企業を取り巻く環境
・特定企業への依存度

また、事業デューディリジェンスは、目的に応じて以下のように細分化されます。

「売上」に注目する場合:コマーシャルデューディリジェンス(市場性の評価が目的)
「内部環境」に注目する場合:オペレーションデューディリジェンス(買収後のコストやリスクの精査が目的)

▷関連記事:ビジネスデューディリジェンス(ビジネスDD)とは?目的や進め方について解説

財務デューディリジェンス

財務デューディリジェンスとは、財務的観点からの調査です。貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書など主な財務諸表を基にして、対象企業の財政状態について調査し、将来的に期待できる収益性や、不正な取引や経理処理がないかなどのリスクを洗い出して確認します。

財務デューディリジェンスでは、以下のような内容を調査します。

・回収不能債権や貸倒懸念債権などの有無
・回収不能債権や貸倒懸念債権などの回収見込み
・額簿外債務の有無
・会計処理の適正性

▷関連記事:財務デューディリジェンス(財務DD)とは?目的や流れ、チェックリストを解説

税務デューディリジェンス

税務デューディリジェンスとは、M&A前の税務申告に関わるものと、M&A後にかかる税についての調査です。株式譲渡の場合、税務リスクを引き継ぐことになる譲受企業にとっては、特に重要なものとなります。
譲渡企業が「申告漏れ」や「納税処理の誤り」などの事象を過去に起こし、そのことがM&A後に発覚した場合は、ペナルティが課され損失を被る場合があります。そのため、適正な申告や納税がされているかという調査は非常に詳細に行います。

税務デューディリジェンスでは、以下のような内容を調査します。

・決算報告書、税務申告書などの基本資料の調査
・申告漏れなどの税制上のリスク
・税務処理の適正性

▷関連記事:税務デューディリジェンス(税務DD)とは?目的やリスク、調査範囲について解説

法務デューディリジェンス

法務デューディリジェンスでは、譲渡企業が締結している事業関連の権利や債権・債務について、法務上の問題やリスクの有無を調査します。
法的リスクを抱えていると、訴訟が起きた際に莫大な時間とコストがかかってしまいます。また、企業への風評被害にも繋がり、経営に悪影響を及ぼす可能性があるため、入念に調査を行います。

法務デューディリジェンスでは、以下のような内容を調査します。

・法令遵守の確認
・営業・生産・人事などに関する訴訟リスクの確認

▷関連記事:法務デューディリジェンス(法務DD)とは?目的や費用、チェックリストを解説

人事デューディリジェンス

人事デューディリジェンスとは、人事制度やマネジメントの実態調査です。従業員数や人件費だけではなく人事システムや労使関係など、労務に関する調査もこの中に含まれ、両者の人事制度や労働条件の融合の際に活用されます。

また、人事デューディリジェンスの調査は、M&A後の組織再編においてとても重要です。経営融合前後の制度やマネジメントの相違における社員のモチベーション低下など、人事面のリスクを想定したうえで準備を整える必要があります。

人事デューディリジェンスでは、以下のような内容を調査します。

・組織・従業員の構成
・年金・退職金関連
・評価・報酬などを含めた人事制度
・福利厚生・雇用条件

▷関連記事:M&Aにおける人事の課題とは?人事デューディリジェンスや人事PMIを解説

ITデューディリジェンス

ITデューディリジェンスでは、譲渡企業が採用している情報管理システムの取り扱い方法を調査、分析します。既存システムとの統合における活用法や、それにかかる作業量やコストを考慮し、基幹業務に関するシステムをどのように結合すれば良いかを検討します。

M&A成約までの限られた時間で詳細かつ専門的な調査を行う必要があるため、実際には全項目の調査は行わず、特に中小企業では、事業、財務、税務、法務の4項目のデューディリジェンスを行うことが一般的です。

上記で説明したデューディリジェンスの項目と比べると、ITデューディリジェンスは主要な項目ではありませんが、下記のようなデューディリジェンスも実施される場合がありますので一例としてご紹介します。

環境デューディリジェンス

環境汚染のリスクや、それが発覚した際の企業の評判に及ぼす影響などを調査します。環境汚染への対応が必要となる懸念がある場合、多額のコストが見込まれるため、それに関連する事業を切り離す、もしくは企業価値を下げるという判断の基になる調査です。

知的財産デューディリジェンス

譲渡企業が特別なノウハウにより特許権やその他の産業財産権、著作権などを取得している場合、それらの価値調査、分析が行われます。
しかし、知的財産には形がないため、価値を測る評価基準はとても難しく、調査を専門家に依頼する必要があります。

顧客(カスタマー)デューディリジェンス

新規顧客と既存顧客の調査のことです。M&Aのデューディリジェンスで用いられることはそれほど多くありませんが、顧客の本人確認などを行い、マネーロンダリングなどの有無を調査するために実施するケースが一般的です。

不動産デューディリジェンス

譲渡企業が所有する不動産の分析と調査を指し、不動産鑑定業務ともいいます。不動産はデューディリジェンス時の周囲の環境や地価によって大きく変動するため、不動産鑑定士などによる分析、評価を行います。

M&Aにおけるデューディリジェンス(DD)の流れ・やり方

一般的にデューディリジェンス(DD)は次のような流れで進めます。

1. 調査に向けた事前準備を行う
2. 資料分析・ヒアリングを実施する
3. 調査結果をもとに対応策を検討する

以下では、デューディリジェンスを実施する際の実際の流れに沿ってやり方を解説します。

1. 調査に向けた事前準備を行う

デューディリジェンスでは、譲受企業が譲渡企業に対してM&Aに関わる資料開示請求を行い、譲渡企業は要請に応じて資料開示を行います。

譲渡企業に資料開示請求をするにあたり、譲受企業側ではあらかじめ調査すべき事業領域の検討や絞り込みが必要です。法務や税務など各分野の専門家を集めて調査チームを編成し、重点的に調査すべき項目や調査範囲を決定します。

また、調査をスムーズに進めるためには、調査のスケジュールや進め方などやり方を明確化することも大切です。譲受企業がデューディリジェンスのやり方を明確に提示することで、譲渡企業も調査実施スケジュールを踏まえて資料準備など必要な対応をスムーズに進められます。

2. 資料分析・ヒアリングを実施する

譲渡企業から提出された資料を基に譲受企業は分析を行います。財務上の問題はないか、法的なリスクはないかなど、M&Aを進めて本当に問題がないのか確認する重要なステップです。

また、譲渡企業の経営者や幹部、譲渡企業の重要顧客など、主要な関係者にヒアリングを実施するとともに、工場や研究施設など重要施設について実地調査を行います。

事業や取引の実態、企業文化など、資料からではわからない事項でも、譲受企業がヒアリングや現地調査を行うことで現状を確認することができます。

3. 調査結果をもとに対応策を検討する

調査を行った結果、問題点やリスクが見つかった場合は、どのように対応するか譲受企業において検討が必要です。M&Aの手法(スキーム)の変更や買収価格の引き下げなど、契約条件の変更で対応するのか、M&A自体を中止すべきなのか、対応を検討します。

譲受企業が対応策を決めたら、譲渡企業と調整・協議を行い、必要であれば追加の調査を実施した上で、最終的な契約内容を決定する流れになります。

デューディリジェンス(DD)に関する注意点

デューディリジェンス(DD)を実施する際の主な注意点は次の3点です。

・規模に応じた適切な調査範囲を設定する
・調査項目に優先順位をつけて実施する
・情報漏洩を防ぐために管理を徹底する

それぞれの注意点について以下で詳しく解説します。

規模に応じた適切な調査範囲を設定する

デューディリジェンスは、対象企業の規模や事業の特性に応じて適切な範囲で実施することが重要です。

調査項目を増やして調査範囲を広げれば、リスクを見落とす可能性が下がって安心ですが、調査にかかる手間やコストが膨らみ、M&Aの成立までに時間がかかりすぎる場合があります。一方で、調査範囲を狭めすぎると、重大なリスクを見逃して後々にトラブルになりかねません。

M&Aでは、リスク分析が重要になる一方で、スピード感も大切になるので、両者のバランスを踏まえてデューディリジェンスの実施範囲を設定するようにしましょう。

調査項目に優先順位をつけて実施する

後から重大なリスクが発覚して問題が起きないようにするためには、特に重点的に確認すべき項目は何か、調査項目に優先順位をつけてデューディリジェンスを実施することが重要です。

リスクが含まれると自社にとって影響や不利益が大きい項目については、入念に調査を実施する必要があります。

また、優先順位を明確にした上でデューディリジェンスを実施すれば、限られた時間の中で効率的に調査を進めることができます。

情報漏洩が起きないように管理を徹底する

デューディリジェンスでは、譲渡企業の人事制度や財務状況などの様々な情報を入手します。一度情報が漏洩してしまうと取り返しのつかないことにもなりかねないため、譲受企業では情報の管理に十分な注意が必要です。

万が一、情報漏洩が生じると、M&Aの破談や、契約違反による損害賠償請求のリスクもあります。情報管理の重要性を専門家や社内関係者に周知し、資料を保管している社内システムへのアクセス権限を関係者のみに制限するなど、情報管理を徹底するようにしてください。

まとめ

M&A成立後に想定外のリスクが発覚することを防ぐ目的で実施するデューディリジェンス(DD)では、財務・税務・法務など様々な観点から譲受企業が譲渡企業を調査します。

調査によって問題が見つかった場合、契約条件の見直しやM&Aの中止の検討が必要になるケースもあるだけに、デューディリジェンスはM&Aの流れの中でも重要な工程の1つです。

M&Aが成立した後になって問題が発覚してトラブルにならないように、デューディリジェンスで調査を実施する項目の種類や範囲を適切に設定する必要があります。M&Aの検討や交渉では専門的な知識が必要になるので、専門家に相談・依頼して進めることをおすすめします。

fundbookでは、M&Aアドバイザーの専門的な知見やテクノロジー、AIなどを活かし、豊富なネットワークを用いながら最適な相手を見つけて譲渡側・譲受側のマッチングを行っています。M&Aを検討中の方はfundbookにお気軽にご相談ください。

M&A解説動画|デューディリジェンスとは?押さえておきたい基礎知識

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