帝国データバンクが発表する「全国企業「後継者不在率」動向調査」では、日本における2023年の後継者不在率は2014年からの調査開始以来過去最低の53.9%と発表されました。
調査では、事業承継における就任経緯について、これまで最も多かった「同族承継」を2023年は「内部昇格」が上回り最も高い割合を占めたことがわかりました。
内部昇格による事業承継のほかにM&Aを活用した事業承継も増えており、事業承継の手法としてM&Aを選ぶ企業が増えていることがうかがえます。
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目次
2024年1月|M&A事例
▷積水ハウスによる米住宅会社の買収
2024年1月、大手住宅メーカーの積水ハウスは戸建住宅事業を手掛ける米国の住宅会社のM.D.C.ホールディングスを米国子会社を通じて約49億ドル(約7200億円)で買収することを発表しました。
積水ハウスはこれまで米西部や南部で事業買収を通じて事業展開を続けてきましたが、今回の買収で米東部への進出が行われます。
▷松竹とTBSホールディングスの資本業務提携
2024年1月、映像事業、演劇事業などを手掛ける松竹とテレビ放送などを手掛けるTBSホールディングスが資本業務提携することで合意したことを発表しました。
この提携により両社の協力関係をより強化し、映像コンテンツにとどまらずエンターテインメントにおける幅広い分野でのシナジー発揮を目指します。
2024年2月|M&A事例
▷オリックスによる三徳船舶の買収
2024年2月、大手金融サービス企業のオリックスは大阪市の中堅海運企業である三徳船舶を買収することを発表しました。買収額は約3000億円とみられ、オリックスとしては事業承継目的のM&Aで過去最大規模の買収となります。
今回の買収により、オリックスは船舶リース事業をさらに強化させていく方針です。
▷イオンとウエルシアホールディングスとツルハホールディングスの資本業務提携
2024年2月、大手流通企業のイオンは子会社であるドラッグストア最大手のウエルシアホールディングスとツルハホールディングスの経営統合に向けて資本業務提携を締結することを発表しました。
この資本業務提携により、日本最大のドラッグストア連合体が誕生し、国内事業の強化のみならず海外展開も見据えています。
2024年3月|M&A事例
▷NTTドコモによるオリックス・クレジットの買収
2024年3月、大手通信サービス企業のNTTドコモはオリックス傘下の信販会社であるオリックス・クレジットを買収することを発表しました。NTTドコモは792億円でオリックスから66%の株式を取得します。
今回の買収により、ドコモが有する会員基盤とオリックス・クレジットの金融事業のノウハウを掛け合わせ、幅広い金融サービスの提供を目指す方針です。
▷東京センチュリーによるNTT GDCの買収
2024年3月、大手リース企業の東京センチュリーは米国子会社を通じて、NTTグループ傘下で米国でデータセンター事業を手掛けるNTT Global Data Centersを子会社化しました。
今回の買収により、東京センチュリーはNTTグループとの米国におけるデータセンター事業の共同運営を推進する方針です。
2024年4月|M&A事例
▷ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスによるいなげやの買収
2024年4月、食品スーパーを展開するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスは同じくスーパーを展開するいなげやを株式交換により完全子会社化することを発表しました。
競争激化が予想される首都圏において、顧客ニーズによりスピード感をもって応え続け成長していくために、経営統合を通じて新たなビジネスモデルの進化を推進していくことが必要だという判断から実施されました。
▷信越化学工業による三益半導体工業の買収
2024年4月、化学メーカーの信越科学工業は半導体材料の加工・販売を手掛ける持分法適用会社の三益半導体工業に対しTOBを実施し、完全子会社化することを発表しました。
完全子会社化によって両社の協力体制を強化し、ノウハウや設備の共有による生産能力向上や販路拡大など様々なシナジー発揮が期待されます。
2024年5月|M&A事例
▷小野薬品工業によるデシフェラ・ファーマシューティカルズの買収
2024年5月、大手製薬企業の小野薬品工業はナスダック上場の米バイオ薬品企業であるデシフェラ・ファーマシューティカルズを買収することを発表しました。買収金額は24億ドル(約3700億円)になります。
今回の買収により、小野薬品は新薬候補を確保するとともに、米国における自販体制の構築を目指す方針です。
▷かんぽ生命保険と大和証券グループ本社の資本業務提携
2024年5月、日本郵政傘下のかんぽ生命保険と大手証券企業の大和証券を傘下に有する大和証券グループ本社が資本業務提携を結ぶことを発表しました。かんぽ生命が大和証券グループ傘下の大和アセットマネジメント株の20%を取得し、持分法適用会社とします。
今回の提携により、かんぽ生命の一部の資産運用を大和証券に委託するほか、投資顧問分野への本格的な参入を促進していくなど、資産運用分野での協業を深めていくとしています。
2024年6月|M&A事例
▷キリンホールディングスによるファンケルの買収
2024年6月、大手飲料メーカーのキリンホールディングスは、健康食品大手のファンケルをTOBにより買収し、完全子会社化することを発表しました。買収金額は約2100億円になります。
ビール市場が伸び悩む一方で、健康食品市場は世界で拡大している中、今回の買収によりキリンホールディングスはファンケルからノウハウを獲得し、ビール中心の経営から舵を切り健康食品事業を強化していく方針です。
▷ブラックストーンによるインフォコムの買収
2024年6月、米投資ファンドのブラックストーンは、電子漫画配信サイト「めちゃコミック」を運営するインフォコムをTOBにより買収することを発表しました。買収額は約2800億円で、インフォコムの取得を目的に設立された会社を通じて買収が行われます。インフォコムの親会社にあたる帝人はTOBには応募せず、TOB成立後、自社株買いに応じる形で全株の売却を行います。
今回の買収により、電子コミック事業で知的財産を持つ独自コンテンツを増やし、アニメ化やグッズといった多方面展開を進めていく仕組みを作る方針で、ブラックストーンの投資先のノウハウも活かし、海外事業にも進出していくことも視野に入れています。
2024年7月|M&A事例
▷横浜ゴムによるグッドイヤーの事業買収
2024年7月、大手タイヤ・ゴムメーカーの横浜ゴムは、米タイヤ大手のグッドイヤーが手掛ける鉱山・建設機械向けのタイヤ事業の買収を発表しました。買収金額は約1400億円になります。
今回の買収により、横浜ゴムは農業・林業車両用タイヤ、産業・港湾車両用タイヤ、鉱山・建設車両用タイヤなどといったOHTの全カテゴリーでブランド商品が揃うことになり、ポートフォリオが強化されます。また、横浜ゴムが持っていなかった大型・超大型タイヤの商品開発力と生産力を獲得できます。
▷アインホールディングスによるFrancfrancの買収
2024年7月、コスメ分野に強みを持つドラッグストア「アインズ&トルペ」を展開するアインホールディングスは、インテリア雑貨店の全株式を取得し子会社化することを発表しました。買収額は約500億円になります。
両社は出店エリアや主要顧客層、価値観に類似性があり、販売商品のカテゴリーが異なるため補完関係となっています。今回の買収によって、商品面での連携や両業態の併設店舗の出店などを通じてシナジー効果を発揮させていきます。