経営・ビジネス

2023/09/14

特定目的会社(TMK)とは?設立の手順やメリット・デメリットについて解説

特定目的会社(TMK)とは?設立の手順やメリット・デメリットについて解説

不動産投資にご興味のある方であれば、特定目的会社(TMK)という用語を聞いたことがあるかもしれません。

元来流動性の低かった資産である「不動産」の証券化を行い、特定目的会社(TMK)を利用することで資金調達を行う手法です。
特定目的会社(TMK)を設立することで、いくつものメリットが期待できます。

本記事では、特定目的会社(TMK)について、設立の手順、メリット・デメリットを解説していくとともに、特定目的会社(TMK)の目的や仕組み、事例なども紹介します。

・関連記事:M&Aとは?M&Aの意味・流れ・手法など基本を分かりやすく【動画付】

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特定目的会社(TMK)とは

特定目的会社(TMK)とは?設立の手順やメリット・デメリットについて解説

特定目的会社(TMK)とは、資産の流動化に関する法律(資産流動化法)に基づいて設立される法人です。
TMKは、特定目的会社のローマ字表記であるTokutei Mokuteki Kaisha の頭文字をとった略称で表現されます。

特定目的会社(TMK)は、あらかじめ資産流動化計画に定められたことしかできず、資産の売買については裁量がほとんどありません。一般法人のような従業員も存在しない特殊な法人です。
証券化の例としては、企業が本社ビルなどを証券化する場合などがあります。

特定目的会社(TMK)の目的

特定目的会社(TMK)の目的は、もともと資産を保有していた会社が、資産とその資産を保有するのにかかる負債を特定目的会社に譲渡することにより、もともと保有していた会社の財務状況を改善することです。

不動産や債券などの資産を保有するオリジネーター(原資産保有者)が、特定の資産を保有することを目的として特定目的会社(TMK)を使います。
その資産を特定目的会社(TMK)に譲渡して事業主体の財務諸表に記載しない(オフバランス化)ようにし、資産が生み出すキャッシュフローを原資とします。

特定目的会社(TMK)の仕組み

オリジネーターが特定の資産を特定目的会社に売却し、特定目的会社(TMK)がその資産から得られるキャッシュフローや資産価値を裏付けとした資産対応証券を発行することにより、資金調達を図る仕組みとなっています。

資産の管理処分は外部の信託会社等に委託しなければならないが、特定目的会社(TMK)は資産を流動化する器にすぎないため、一般法人に比べて組織の簡素化が図られています。

特定目的会社(TMK)と特別目的会社(SPC)の違い

特別目的会社(SPC)とは、特定の目的のために設立される法人のこと。
英語表記にすると、Special Purpose Companyで、頭文字をとってSPC(エスピーシー)と呼ばれます。

特定の資産を流動化することは同じなのですが、
特定目的会社(TMK)は「モノありき」の証券化といわれ、不動産だけに限られます。
特別目的会社(SPC)は「カネありき」の証券化といわれ、不動産だけでなくさまざまな資産を流動化させることができます。
特別目的会社(SPC)の定義の中に包含されるものが特定目的会社(TMK)となります。

名前が似ているので、注意が必要です。

▷関連記事:SPC(特別目的会社)とは?M&AにおいてSPCを導入するメリット・デメリット

特定目的会社(TMK)と株式会社の違い

特定目的会社(TMK)と株式会社の大きな違いは、事業活動の範囲に制限があるかどうかです。
株式会社は活動の範囲に制限がなく、事業をするために従業員の雇用も行います。

特定目的会社(TMK)は、資産流動化法という不動産などの資産を流動化する法律に基づいて設立される法人なので、活動の範囲が資産保有に限定されます。営業活動を行わないので、従業員を雇用することはできません。
株式会社の発行証券は株式や債券なのに対し、特定目的会社(TMK)は資産担保証券(ABS)となります。

特定目的会社(TMK)の設立方法

特定目的会社(TMK)の設立の流れは、通常の会社と同じく会社を登記する必要があります。

流れとしては、

  1. 弁護士や公認会計士、司法書士などの各専門家に特定目的会社(TMK)設立の相談
  2. 登記人による定款の作成
  3. 定款の作成・認証
  4. 発起人による特定出資の払込み
  5. 登記申請・完了


というのが大まかな設立の流れとなります。

▷SPC法での設立

SPC法に則って進めるため、特定目的会社(TMK)の設立と同じ流れです。

  1. 弁護士や公認会計士、司法書士などの各専門家に特定目的会社(TMK)設立の相談
  2. 登記人による定款の作成
  3. 定款の作成・認証
  4. 発起人による特定出資の払込み
  5. 登記申請・完了


その他の条件や手続きは、以下の通りです。

  • 資本金は10万円以上
  • 内閣総理大臣への届出が必要
  • 登録免許税は3万円
  • 定款印紙が必要
  • 取締役1人に加え、監査役1人が必要
  • 会計監査法人が必要な場合もある
  • 資産流動化計画の作成が必要
  • 業務開始届出の提出が必要


設立には専門知識が必要となるため、専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。

特定目的会社(TMK)を設立するメリット・デメリット

特定目的会社(TMK)とは?設立の手順やメリット・デメリットについて解説

特定目的会社(TMK)を設立するメリット・デメリットとは、一体どのようなものでしょうか?
この章では、特定目的会社(TMK)のメリット・デメリットについてそれぞれ解説していきます。

▷特定目的会社(TMK)設立のメリット

特定目的会社(TMK)設立のメリットは、主に5つあります。

  • 資産のオフバランス化ができること
  • 資金調達の多様化が図れること
  • 資産を倒産から守れること
  • 税金の特例措置があること
  • 自己資本比率を維持すること


それぞれ解説していきます。

①資産のオフバランス化ができること

オフバランス化とは、会社の貸借対照表(バランスシート)から不動産などの資産や負債を切り離すことをいい、特定目的会社(TMK)を設立して、そこへ資産や負債を移し、特定の資産を切り離すことが出来ます。
貸借対照表がスリム化されることで、総資本利益率や自己資本比率といった財務指標を向上させることが可能となります。

高額な負債(借り入れ)を負って取得した資産(ex.不動産)所有していると、負債比率が上がり、自己資本比率が下がってしまうことがあります。
資産や負債を特定目的会社(TMK)に移し、切り離すことで資産のオフバランス化が図れ、事業に必要な運転資金や設備資金に必要な融資が受けやすくなります。

②資金調達の多様化が図れること

特定目的会社(TMK)を設立し、不動産などの保有資産を証券化することにより、多くの投資家から資金調達できるようになります。

不動産証券化は、オリジネーターの信用力に依存しないで、証券化する資産が優良であれば、その資産の信用力により与信判断することが可能となる。

そのため、有利な条件による銀行融資が受けやすくなったり、多くの投資家から資金調達ができやすくなったりします。

③資産を倒産から守れること

事業がうまくいかなくなり倒産することになった場合、企業は所有している不動産などの資産を売却して精算しなければなりません。

特定目的会社(TMK)を設立し不動産を移しておけば、万が一会社が倒産しても不動産を精算することなく、特定目的会社(TMK)の資産として守られます。
特定目的会社(TMK)は事業活動を行わないため、倒産することは原則あり得ません。特定目的会社(TMK)に資産を移し、資産を証券化することによって、資産を所有し続けることにより生じるさまざまなリスクから回避することができます。
また、投資家にとっては投資選択の幅が広がり、投資機会が増えることにも繋がります。

④税金の特例措置があること

特定目的会社(TMK)を設立することで、税制面での優遇措置がとられています。
法人税法では配当を損金に算入することはできません。資産流動化法では、一定の要件を満たせば利益の配当の額を損金に算入することができるため、課税される利益は少額になります。
ほとんど税金を課せられることなく、不動産から得られた収益を投資家に配当することができます。

一方で、配当金を受け取った投資家は、受取配当金の益金不算入の規定を除外する取扱いがあります。
一定の要件を満たせば不動産取得税や登録免許税などについても軽減措置があり、特定目的会社(TMK)の段階での課税を軽減する仕組みが整備されています。

⑤自己資本比率を維持すること

自己資本比率とは、会社経営の安全性を測る指標です。
自己資本比率が高いほど、借りているお金が少なく企業の純資産が多いことを示し、財務的安全性は高いといえます。

企業が金融機関から借り入れした場合、企業の負債額が増加し自己資本比率が下がります。
特定目的会社(TMK)を設立すると、負債を抱えるのは企業ではなく特定目的会社(TMK)となるため、企業の自己資本比率を維持することができます。金融機関からの信頼に繋がり、融資を受けやすくなります。

▷特定目的会社(TMK)設立のデメリット

特定目的会社(TMK)設立のデメリットは、主に2つあります。

  1. 設立や維持にコストがかかること
  2. 開始するまで時間がかかること

 
それぞれ説明していきます。

①設立や維持にコストがかかること

特定目的会社(TMK)の設立の最大のデメリットは、設立や維持にコストがかかることです。
特定目的会社(TMK)の設立はSPC法に基づきますので、10万円以上の資本金を用意する必要があり、会社設立の登録免許税に3万円かかります。

また、最も費用として大きくなるのが専門家への依頼費用です。特定目的会社(TMK)の設立は専門的な知識が必要になりますので、弁護士や公認会計士などの各専門家に依頼する費用も発生します。

その他に、投資家に利益を分配する際の公認会計士などの監査にも維持コストが必要です。

②開始するまでに時間がかかること

特定目的会社(TMK)の設立から始まり、業務開始届出や資産流動化計画の作成・届出などの手続きに時間がかかります。資産流動化法上の提出書類などもあることから、資産の取得予定日を逆算し、無理のないスケジュールを組む必要があります。
 
特定目的会社(TMK)の設立には、これらの費用や時間がかかることを十分理解したうえで設立することが大切です。

特定目的会社(TMK)を設立した事例

特定目的会社(TMK)とは?設立の手順やメリット・デメリットについて解説

特定目的会社(TMK)が使われた事例は、以下の通りです。

  • 森ビル株式会社による六本木ヒルズの建設
  • 松竹株式会社による歌舞伎座の建て替え
  • 株式会社ホテルオークラによるホテルオークラの建て替え


それぞれ解説していきます。

▷森ビル株式会社による六本木ヒルズの建設

不動産開発など規模が大きくなる場合、外部から資金を調達するために特定目的会社(TMK)を設立します。

六本木ヒルズの総事業費は約2,700億円。そのうち約1,000億円を森ビル株式会社が出資し、残りの1,700億円を、設立した特定目的会社「六本木ヒルズ・フィナンシャルコープ株式会社」がデット・ファイナンスで調達しました。

特定目的会社(TMK)があることで、負債を抱えることなく、不動産の権利や収益を得ることができます。
このような大型プロジェクトの資金調達において、特定目的会社(TMK)の設立は有効です。

▷松竹株式会社による歌舞伎座の建て替え

歌舞伎座の建て替えは、親会社の松竹株式会社が100%出資の特定目的会社(TMK)を設立しました。
劇場やオフィスなどが入る複合ビルを、総事業費約430億円を投じて建設しています。

建て替えの目的は、観客の入場料値上げを行わないようにするためです。
建て替え後は、安定した家賃収入が入ってくるようになり、映画や観劇よりも不動産の営業利益の方が多くなっています。

▷株式会社ホテルオークラによるホテルオークラの建て替え

ホテルオークラが竣工してから50年が経ち、老朽化が目立ってきたため、本館の建て替えを実施しました。総事業費約1,100億円の大型プロジェクトで、東京オリンピック2020開催に間に合うように建設されました。

建て替え後、ホテル内にオフィス階層を作り、オフィスフロア部分を信託財産化し、特定目的会社(TMK)に売却することになりました。
株式会社ホテルオークラは、その売却収入を借入返済にあてるという流れです。


上記事例のように特定目的会社(TMK)を設立し、有効活用することで、大きな負債を抱えることなく資産のオフバランス化が図れます。
2021年10月31日現在で、956の事業者が特定目的会社(TMK)として登録しています。

▷参考:特定目的会社届出一覧

まとめ

以上、特定目的会社(TMK)について、設立の手順、メリット・デメリットについて解説してきました。
特定目的会社(TMK)を設立することで、企業は負債を抱えることなく不動産収入を得ることができます。

ただし、設立するには複雑な仕組みでコストがかかり、SPC法に則って進めなければなりません。
特定目的会社(TMK)を設立するには、高度な専門知識が必要となってきます。
 
特定目的会社(TMK)の設立を検討し始めたときにオススメなのが、会計や法律などの専門知識を持ったアドバイザーを活用することです。 
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