よくわかるM&A

2025年7月7日

M&Aのクロージングとは?前提となる条件や流れ、手続きをわかりやすく解説

M&Aのクロージングとは?前提となる条件や流れ、手続きをわかりやすく解説

M&Aでは、候補企業とのマッチングや交渉、基本合意書や最終合意書の締結を経て、クロージングを行います。クロージングは経営権の移転を行う具体的な手続きであり、前提となる条件を含めた適切な対応が必要です。

本記事では、M&Aのクロージングの重要性や前提となるクロージング条件、クロージングまでに必要な流れを解説します。

\資料を無料公開中/
年間3,000回の面談をこなすアドバイザーの声をもとにまとめた、譲渡を検討する前に知っておくべき5つの要件を解説。
資料
【主なコンテンツ】
・企業価値の算出方法
・M&Aの進め方や全体の流れ
・成約までに必要な期間
・M&Aに向けて事前に準備すべきこと

会社を譲渡する前に考えておきたいポイントをわかりやすくまとめました。M&Aの検討をこれから始める方は是非ご一読ください!
1分で入力完了!

M&Aの「クロージング」とは

「クロージング」とは、最終契約書に基づく最終的な手続きのことを指します。M&Aが成約するまでの期間は短くて3ヶ月、長くて1年以上と、長期に及ぶ場合があります。クロージングは最終譲渡契約書が締結された後に行われるもので、これによって経営権の移転は全て完了となります。

「close=閉じる」という言葉から、M&Aの手続きの最終局面であることは想像できると思います。しかし、実際にどのような流れで手続きが行われるのか、M&Aを初めて検討する方にはわかりにくい部分もあります。様々な疑問を解決できるよう、ポイントごとに解説します。

M&Aのクロージングを正しく進める重要性

まず、M&Aを行ううえでなぜクロージングという手続きを正しく進めることが重要なのか、解説します。

クロージングの内容を、株式譲渡の場合を例に挙げて大まかに説明すると、譲渡企業の経営者が株式を譲渡することで経営権の移転が行われ、その対価として、譲受企業は譲渡対価の決済を行います。

譲渡対価の決済と株券・会社代表印の引き渡しなど、全て譲受が完了する日がクロージング日(Closing Date)となり、クロージングが完了した時点で正式に譲渡企業の経営権が譲受企業に移行し、M&Aの成約となります。

なお、クロージングを完了するには、法律に基づいた手続きが必要です。クロージングで手続きに不備があると法的にM&Aの有効性を証明できなくなってしまうため、抜け漏れの無いように注意しましょう。

▷関連記事:株式譲渡とは?中小企業のM&Aで最も活用される手法のメリットや手続き、事前に確認しておくべき注意点を徹底解説

M&Aのクロージング条件とは

クロージングを行ううえで、「クロージング条件」は重要なポイントです。ここでは、クロージング条件の概要と、重要である理由について解説します。

クロージング条件の概要と重要性

クロージング条件とは、M&Aが実行される前提となる譲れない一定条件のことで、「クロージングの前提条件」とも言われます。この前提条件が全て整わなければ、クロージングの手続きが進められないという点で、M&Aの成約に際して非常に重要です。

その内容は、譲渡企業と譲受企業の間で合意した最終契約書(株式譲渡契約書など)によって定められ、条件はM&Aの内容や双方の要望によって異なります。

一例を挙げると、双方の企業はM&Aの取引において、財務・税務などに関する情報や契約の目的が、一定時点の一定事項に対し真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証する必要があります。これは「表明保証の対象がクロージング日において正確であること」という条件になり、表明した内容との相違が一定時点までに発覚した場合は、交渉がストップすることになります。

他には「誓約事項の義務が全て履行されていること」「クロージングに必要な手続き(機関決定、承認手続き、組織再編など)の完了」「重要な取引先の企業から取引継続の同意を取得」「業務上の許認可の取得」などが条件としてありますが、基本的には『虚偽事項がなく、事前に取り決めたことはきちんと実行すること』という保証や約束事に関する条件です。

条件は両社が譲れないものとして提示するため、前提条件が満たされない場合、M&Aの目的が果たせなくなる可能性があります。クロージングにおいて条件が整わず、破談になったケースも存在するため、双方にとって極めて重要な要件です。

M&Aのクロージングまでの流れ

契約締結や価格調整、クロージングまでのM&Aの手続き

M&Aのクロージングまでの流れは、譲渡企業と譲受企業でそれぞれ動きが異なります。以下では、譲渡企業と譲受企業のそれぞれで、大まかな流れを説明します。

▷譲渡企業(売り手)の場合

譲渡企業は、M&Aアドバイザーなどの専門家に相談・問い合わせを行い、「どのような希望でM&Aを行うか」という点を明確にします。その際、M&Aアドバイザーに自社の機密情報を開示する場面もあり、このタイミングで自社の機密情報を外部に漏洩させないことを約束する秘密保持契約を結びます。

次に、自社の価値を算出する企業価値評価を行うための資料を提出し、M&Aアドバイザーや公認会計士などの専門家が企業価値評価を行います。並行して、譲受企業にM&Aの打診を行うため、自社を特定されない粒度の情報をまとめたノンネームシートを作成します。

その後、基本合意デューディリジェンス(調査)「最終合意」「最終契約の締結」と進み、最後に「クロージング」を行い、M&Aの成約となります。

▷譲受企業(買い手)の場合

譲受企業は、M&Aアドバイザーに相談・問い合わせを行い、「どのような企業を譲り受けたいか」というニーズを伝えます。そして譲渡企業のノンネームシートを検討し、譲り受けを希望する会社が見つかった場合は、「ネームクリア」によってより詳細な情報を得て、譲渡企業の経営者と譲受企業の経営者の最初の顔合わせの場であるトップ面談へと進みます。

基本合意後の流れは、譲渡企業の場合と同様です。M&Aの主な手続きの流れは以下の記事で詳しくまとめているため、併せてご覧ください。

▷関連記事:M&Aの手順・流れは?売却検討からクロージングまでの進め方を徹底解説
▷関連記事:中小企業のM&Aで必要な実務とは?市場動向や相談先、事前準備からポイントまで紹介

M&Aのクロージングの手続き

M&Aの最終契約の締結からクロージングまでは、クロージングの前提条件を満たすために必要な手続きを行う必要があるため、一定期間を設けるのが一般的です。ただし、最終契約締結日までに、クロージングに必要な全ての手続きが完了している場合は、同日に実施するケースもあります。

クロージングには様々な手続きが伴います。具体的には、重要な取引先との契約を承継するための同意の取得、事業に必要な許認可の取得、役員に対する借入金の返済などを行います。

その他、譲渡企業の経営者個人の保有資産を経営者が買い取ったり、株券を引き渡す代わりにM&Aの対価となる代金を決済したりします。これらの最終契約で定めた手続きが完了した段階で、譲渡企業から譲受企業に経営権が移り、正式にM&Aが成約します。

そのため、クロージングでは、これら全ての手続きを抜け漏れのないよう、正確に進行する必要があります。事前に譲渡企業と譲受企業でクロージングに必要となる項目を洗い出し、双方で確認しながら作業を進めていきます。

M&Aの手法によるクロージングの違い

M&Aには複数の手法があり、手法によってクロージングの内容は異なります。以下では、M&Aの主な手法である「株式譲渡」「事業譲渡」「合併」「会社分割」の4つの概要と、それぞれのクロージングの違いについて解説します。

▷株式譲渡

株式譲渡は、譲渡企業が譲受企業に保有する発行済株式を譲り渡してM&Aを実施する手法です。クロージングでは、株券の引き渡しや株主名簿の書き換え、譲渡対価の支払いなどが行われます。

株式譲渡でM&Aを実施すると、原則として譲渡企業の資産・負債・許認可などは株式の譲渡をもって譲受企業へ引き継がれます。次の章で紹介する事業譲渡と異なり、クロージングで資産・負債などを個別に移管する手続きが不要な点が特徴です。

▷関連記事:株式譲渡とは?他のM&A手法との違いや手続きの流れ、税金について解説

▷事業譲渡

事業譲渡は、譲渡企業が保有する事業の全部または一部を譲受企業へ譲り渡す手法です。譲受する資産・負債などを選択できるため、M&A実施後の簿外債務・偶発債務のリスクを回避しやすい点が特徴です。なお、株式を発行していない企業・個人事業主も選択可能な手法です。

一方、事業譲渡のクロージングでは、譲渡対価の支払いの他、資産・負債の引き渡し、雇用をはじめとする契約関係の移管など、個別の手続きが必要になります。

株式譲渡と比較すると手続きが必要な範囲が多岐にわたり、時間労力などのコストがかかりやすい点がデメリットです。

▷関連記事:事業譲渡とは?株式譲渡との違いやメリット・デメリットを徹底解説

▷合併

合併は、企業が有する権利義務の全てを他の企業に承継し、1つの企業に統合する手法です。譲渡企業は合併に伴い消滅します。

合併は、既存の企業に権利義務を承継する「吸収合併」と、新たに設立する企業に権利義務を承継する「新設合併」の種類があり、それぞれでクロージングの手続きに違いがあります。

吸収合併のクロージングは、株式・新株予約権の交付、金銭の振り込みなどの対価の支払いが主な内容です。

一方、新設合併のクロージングでは、新たに設立する企業の設立登記が必要です。また、金銭を対価として選択できないため、クロージングの際は株式の交付が行われます。

合併は会社法上の組織再編に該当する手続きです。したがって、債権者保護や合併に関する登記手続きが求められます。

▷関連記事:M&Aにおける合併とは?意味や手続き、種類の違いを解説

▷会社分割

会社分割は、譲渡企業の全てまたは一部の事業を分割して承継する手法です。合併と同様、会社法上の組織再編の手続きであり、「吸収分割」と「新設分割」の種類があります。

会社分割のうち、吸収分割では株式の交付や現金の支払いなどが主なクロージングの手続きです。新設分割のクロージングでは新設会社の設立登記が必要になり、新設会社の株式が対価として交付されます。
▷関連記事:「会社分割とは?メリットから意味や種類、類型までを解説

M&Aのクロージング後に行う「PMI」とは

クロージング後のリスク

クロージングによってM&Aの手続きは完了しますが、M&A成立後は譲渡企業と譲受企業の融合を指す「PMI(Post Merger Integration」が欠かせません。

PMIとは、M&A成立後に経営方針や社員の意識などを融合するプロセスのことです。M&Aの目的を達成するためには、PMIを適切に進めることが極めて重要です。適切に進められなかった場合、従業員の退職などが発生し、M&Aのシナジーを得ることが難しくなる可能性があります。

▷関連記事:M&Aにおけるシナジー効果とは?種類や成長戦略のための分析方法、成功事例を紹介

「PMI」のポイント

適切なPMIを達成するためには、M&A検討段階からPMIの計画を立てるようにしましょう。また、PMIでは会計システムなどの業務面と企業文化などの意識面の両方の融合を意識しましょう。

業務面では、M&Aによって切り替わる社内システムのオペレーションをわかりやすくしておくことや、一度にあらゆるシステムを変えるのではなく段階的に切り替えることが重要です。

意識面では、両社の従業員が相互理解できるような場を設けることや、M&A後の方向性を理解してもらえるように説明を行うことなどがあります。

M&Aのクロージング後は、PMIを適切に行うことで従業員の離職リスクなどを軽減できます。

▷関連記事:M&A(企業買収)のリスクとは?売り手と買い手双方のリスクと対処法

まとめ

クロージングは経営権の移転を全て完了させるための最後の手続きです。「これが終わればM&Aは終わり」というものではなく、M&Aの成約後も両社の関係は続くため、双方の意向をすり合わせ、慎重に進める必要があります。

また、M&Aの一連の手続きは数ヶ月〜1年以上の時間を要するケースが多いため、クロージングを含めたそれぞれの段階で計画を立て、進行することが重要です。そのために、M&Aを手がける仲介会社やM&Aアドバイザーなど、専門家への相談・サポートを受けながら手続きを行いましょう。

fundbookでは、M&Aの経験が豊富で各業界に精通したチームがM&Aの進行をサポートします。経営戦略としてM&Aを検討する企業の方は、ぜひfundbookにご相談ください。


fundbookのサービスはこちら(自社の譲渡を希望する方向け)

fundbookのサービスはこちら(他社の譲受を希望する方向け)

    【無料ダウンロード】自社の企業価値を知りたい方へ

    企業価値100億円の条件

    企業価値100億円の条件 30の事例とロジック解説

    本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。
    このような方におすすめです。

    自社の企業価値がいくらなのか知りたい
    ・企業価値の算出ロジックを正しく理解したい
    ・これからIPOやM&Aを検討するための参考にしたい

    は必須項目です。

    貴社名

    売上規模

    貴社サイトURLもしくは本社所在地をご入力ください

    お名前

    フリガナ

    役職

    自社の株式保有

    電話番号(ハイフンなし)

    メールアドレス

    自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談

    相談料、着手金、企業価値算定無料、
    お気軽にお問い合わせください

    他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認

    fundbookが厳選した
    優良譲渡M&A案件が検索できます

    M&A・事業承継のご相談は
    お電話でも受け付けております

    TEL 0120-880-880 受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)
    M&A案件一覧を見る 譲渡に関するご相談