昨今、後継者不在の解決や成長戦略の一環としてM&Aが活用されることが多々あります。
2018年には3,850件、金額は29兆8,802億円と件数、金額ともに過去最高となりました。1993年のM&A件数は397件であり、M&Aが活発化しているといえます。
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幸せのM&A入門ガイド
・M&Aの成約までの流れと注意点
・提案資料の作成方法
・譲受企業の選定と交渉
・成約までの最終準備
M&Aによる事業承継をご検討の方に M&Aの基本をわかりやすく解説した資料です。
目次
M&Aの業界・業種別動向
M&Aは譲渡企業においては、後継者不在の解決、事業承継、譲渡益の獲得といった目的が主に挙げられます。譲受企業では、業容の拡大、新規事業の立ち上げ、人材確保などがM&Aの理由になります。
しかし、どういった目的がありM&Aが行われるのかは、業界によってさまざまです。本記事では、業界によって異なるM&Aの傾向を解説します。
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調剤薬局業界の事例と傾向
調剤薬局業界は、医療費削減政策などによる収益の減少、薬剤師の不足、個人経営の薬局での経営者の高齢化や後継者不足の問題を抱えています。こうした状況を受けて、大手企業は地方への店舗拡大やスケールメリットによる収益の増加、薬剤師確保のためのM&Aを数多く行っています。
譲渡をする側は中小規模が多く、業界再編への対応や後継者不足の解決を目的として、大手企業の傘下に入ることが多いです。また、国内の高齢化に伴い一定の成長が見込まれるため、異業種からの参入のためのM&Aも行われています。
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介護業界の事例と傾向
介護業界は、高齢者が2025年には3,626万人まで増加し、4人に1人が高齢者になる試算などから成長が見込まれています。今後の成長が予想されることから、異業種の企業が参入するM&Aが多いことと、既存事業のサービスの質を高めることを目的に医療法人とM&Aが行われることがあるという特徴があります。
また、昨今の介護制度の改正の影響を受けて、同業種間でのM&Aも増加していて、今後はM&Aがますます活発化すると予測されます。
▷関連記事:【2020年】介護業界のM&A事例11選!専門家による解説付き【最新版】
Web・IT業界の事例と傾向
ECや情報処理、通信などIT業界は年々、ビジネス領域を拡大しています。昨今では、AIやビッグデータ、IoTなどの技術力が求められる分野の成長が見込まれ、幅広い人材が求められています。
しかし、2020年には先端IT分野では約4万8,000人、情報セキュリティ分野では約19万3,000人もの人材不足が予想されています。こうした状況を受けて、人材不足を解決するためのM&AがIT業界では活発化しています。
また、個人で運営するWebサイトを譲渡するサイトM&Aも盛んになっています。
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不動産・建設業界の事例と傾向
耐震、耐火や省エネなどの機能を持つ「スマートハウス」が2010年代においてはニーズが高まりましたが、人口の高齢化・減少によって、新築を含め賃貸や不動産管理など不動産・建築業界は縮小することが予想されています。
特に、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後の業界動向を不安視する声も多くなっています。M&Aによって業績の改善を図るケースや、大手企業の傘下に入ることで財務基盤やブランドの強化を目指すM&Aが注目されています。
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教育業界の事例と傾向
教育業界は、少子化によって縮小が見込まれていますが、子供ひとりあたりにかけられる教育費は増加しているため、急激ではなく緩やかな縮小が予想されています。こうした状況の中、大手学習塾・予備校、個別指導塾が売上を伸ばす一方で、地方の中小規模の学習塾・予備校にとっては厳しい状況が続いています。
最近では、動画学習事業や通信教育事業を行う企業の参入もあり、より一層競争は激化するとみられ、そうした状況に対応するM&Aが行われています。
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美容業界の事例と傾向
美容・理容業界においては、投資ファンドや東京などの都市への出店拡大を目指す地方企業、異業種から参入をする大手企業を譲受企業とするM&Aが活発化しています。
また、化粧品業界では製品開発スピードの加速などによって、国内での競争が激化しています。そのため、M&Aによってブランドの強化や事業規模の拡大を目的に海外進出を図る企業が増加しています。参入コストが低いことやインターネット通信販売が拡大したことなどから、異業種から参入する企業も存在します。
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広告業界の事例と傾向
広告業界は、従来のマスコミ広告の減少とインターネット広告の著しい成長に伴い、インターネット広告やIT分野の強化が重要になっています。また、業界として急速に海外展開が進んでいます。
こうした状況を受け、デジタル化とグローバル化に対応するためのM&Aが加速することが見込まれています。特に、株式会社電通と株式会社博報堂DYホールディングスの国内大手2社のM&Aが活発に行われています。
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ゲーム業界の事例と傾向
ゲーム業界は数少ない成長産業のひとつといわれています。しかし、ゲームのコンテンツ寿命が短くなる、慢性的な人材不足であるといった課題を抱えています。
ゲームのコンテンツ寿命が短くなることから、新しいゲームを新たに開発するのではなく、すでに収益を上げているコンテンツを獲得するためのM&Aが行われています。また、人材においても自社で育てるのではなく、優秀な人材の確保を目的にM&Aが行われることがあります。
▷関連記事:ゲーム業界におけるM&Aの動向とは M&Aを行う目的、実際の事例を解説
エネルギー業界の事例と傾向
近年エネルギー業界では、電力販売、都市ガス販売の自由化といった規制緩和がされています。この影響によって、LPガス業界では都市ガスやオール電化へ消費者が流出し、市場は縮小傾向です。今後の縮小に対応するM&Aが行われています。
また、太陽光発電業界においては、法律の改正によって売電権利のみを持つ企業やメンテナンスを行わない企業は存続できなくなるため、太陽光発電のメンテナンス事業を持つ企業などの譲り受けニーズが高まっています。
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人材業界の事例と傾向
国内労働人口の減少などによって多くの企業が慢性的な人材不足になっているため、人材業界へのM&A需要は増加すると考えられています。
また、人材業は大規模な設備投資が不要であるため、資産の多くが現金であるという特徴があり、その現金をもとに投資が行われやすい業界ともいえます。例えば、異業種の企業や派遣先企業を子会社化するケースがあります。
一方で、人材業は資産が把握しやすいことから、譲り受けニーズが高くM&Aが活発な業界です。
▷関連記事:【2019年最新版】人材業界のM&A事例10選!専門家による解説付き
食品・飲食業界の事例と傾向
食品業界は消費者の健康志向化やニーズの多様化、人口減少による需要の減少などの課題を抱えています。こうした状況の中、新たな商品ブランドの獲得や海外販路を得るためのM&Aが盛んに行われています。
また、飲食業界においても健康食の台頭、人口減少といった同様の課題を抱える一方、人材不足が深刻化しています。消費者のニーズに応えながら、人材確保、コストカット、効率化を目指してM&Aを実施するケースが増えています。
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士業業界の事例と傾向
会計士事務所、税理士事務所は高齢化が進んでいる業界のひとつです。実際、2014年の全国の税理士の半数以上を60代以上が占めています。また、税理士の数は増加している一方で、主な顧客である中小企業は減少にあり、競争が激化しています。
激化する競争への対応、後継者不在の解決、大手グループの傘下に入り経営を安定させるといったことを目的にM&Aが活発に行われています。譲受企業は新たな地域への進出や顧客、人材確保などをするためにM&Aを行っています。
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まとめ
M&Aが実施される理由は、業界によって異なります。M&Aを成功に導くためには、自社が属する業界ではどのようなM&Aが多いのか、業界や社会の動向など多くの知識が欠かせません。
自社にとってM&Aは有益であるかを判断する際は、そうした知識が必要になるため、M&Aアドバイザーなどに相談して判断することをお勧めします。
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