人材派遣業界や人材紹介業界では、M&Aによって人手不足などの経営課題の解決を図る事例や、他企業を買収して事業拡大を図る事例が見られます。日本でM&Aが普及して件数が増える中、人材業界においてもM&Aは経営戦略上の選択肢の1つです。
本記事では、人材業界の定義や動向を紹介した上で、人材業界でM&Aを行うメリットや実際の事例を紹介します。
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安田 亮
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人材業界の定義と業界動向とは?
人材業界に関する基本的な事項として、まずは人材派遣業・人材紹介業の定義や違い、動向について解説します。
人材派遣業の定義と動向
人材派遣業とは、厚生労働大臣の許可を受けた事業者が、自社で雇用する労働者を派遣先企業に派遣する事業を指します。
厚生労働省が行った「令和5年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」によれば、人材派遣業(労働者派遣事業)の市場規模(売上高)は近年拡大傾向にあります。2023年度の年間売上高は9兆500億円で、対前年度比で3.3%増を記録しました。
少子高齢化の影響によって人手不足が多くの業界で課題となる中、派遣先件数は約80万件にのぼるなど、人材派遣に対する企業からの需要は安定した状態が続いています。
人材紹介業の定義と動向
人材紹介業とは、求人および求職の申し込みを受けて、求人者と求職者の間における雇用関係の成立をあっせんする事業のことです。その中でも紹介手数料を受け取る有料職業紹介事業者のことを人材紹介業と呼びます。
人材派遣業と人材紹介業の違いとしては、求職者の雇用契約先が異なります。人材紹介業では求職者は就業先の会社と雇用契約を結びますが、人材派遣業では派遣する会社との間で雇用契約を結び、給与も派遣する会社から支払われるという点で違いがあります。
厚生労働省が公表した「職業紹介事業報告書の集計結果」によれば、2023年度の有料職業紹介事業の年間手数料収入は約8,362億円で、過去最高を更新しました。
人材紹介業界も人材派遣業界と同様に、近年は景気回復や、IT人材、グローバル人材の需要の活発化などを背景として市場規模が拡大しています。
人材派遣会社・人材紹介会社がM&Aを活用するメリット
人材派遣会社・人材紹介会社がM&Aを行えば、売り手側(譲渡企業)・買い手側(譲受企業)のそれぞれに様々なメリットがあります。M&Aのメリットとは何か、以下で具体的に見ていきます。
売り手側(譲渡企業)のメリット
売り手側(譲渡企業)としてM&Aを行う場合、以下のようなメリットが挙げられます。
| ・後継者問題を解決できる ・廃業・倒産を回避できて雇用や取引先との関係を維持できる ・経営者は売却益を得られる ・経営者の個人保証を解除できる |
親族や社員に後継者候補がいない場合でも、M&Aを行えば外部から後継者を呼ぶことができます。
経営者が高齢化して後継者がいないと廃業を余儀なくされるケースもありますが、M&Aによって事業承継を行えば、事業を継続できて従業員の雇用や取引先との契約を維持できます。
経営者が株式を保有しているケースでは、M&Aによって株式を譲渡すれば売却益を得られ、借入に際して個人保証が設定されているケースでは個人保証を解除できる点もメリットです。
買い手側(譲受企業)のメリット
買い手側(譲受企業)としてM&Aを行う場合、以下のようなメリットが挙げられます。
| ・人材を獲得できる ・事業を拡大できる |
M&Aによって他の企業を買収すれば、人材を獲得できて人手不足を解消できます。優秀な人材を獲得できる点もM&Aのメリットの1つです。
他社を買収することで事業規模を拡大でき、収益の拡大や経営の安定化も期待できます。スケールメリットによって事業効率アップやコストダウンを図れる点や、売り手側(譲渡企業)とのシナジー効果を期待できる点もメリットといえるでしょう。
人材派遣・人材紹介業界のM&A事例
人材派遣・人材紹介業界では実際にM&Aが行われた事例が数多く見られます。以下では、人材派遣・人材紹介業界のM&A事例を3つ紹介します。
株式会社フルキャストホールディングスによる株式会社エントリーの子会社化
2026年1月30日、株式会社フルキャストホールディングス(以下「フルキャストHD」)は株式会社エントリー(以下「エントリー」)の全株式を取得し、連結子会社とすることを発表しました。
エントリーは、人材マッチング事業において顧客基盤・運営ノウハウの強化に取り組んでいる企業です。フルキャストHDは、自社とのシナジーが見込まれる事業領域への積極的なM&Aを掲げており、両社の事業基盤および方向性が合致していることから本M&Aが実現しました。
フルキャストHDグループが有する全国ネットワークや営業体制などと連携を図ることで、エントリーは、顧客企業に対する提供価値の一層の向上や取扱高の拡大・運営効率の向上、収益性改善に向けた体制強化などの効果を見込んでいます。
パーソルテンプスタッフ株式会社によるエムシーパートナーズ株式会社の子会社化
2025年12月5日、三菱ケミカル株式会社(以下「三菱ケミカル」)は、完全子会社であるエムシーパートナーズ株式会社(以下「エムシーパートナーズ」)の株式95%を、パーソルテンプスタッフ株式会社(以下「パーソルテンプスタッフ」)に譲渡すると発表しました。
パーソルテンプスタッフは、労働者派遣事業や有料職業紹介事業を手掛けている総合人材サービス会社で、エムシーパートナーズは、人材派遣業や人材紹介業を手掛けている企業です。
三菱ケミカルは人事機能のコア業務への集中を目的として人材派遣事業を切り離す形になる一方、パーソルテンプスタッフとエムシーパートナーズという労働者派遣事業・有料職業紹介事業を手掛ける同業企業がM&Aを行う形となりました。
株式会社ウィルグループによる株式会社HR CAREERの子会社化
2025年10月1日、株式会社ウィルグループ(以下「ウィルグループ」)は、株式会社HR CAREER(以下「HR CAREER」)の株式を取得して子会社化することを発表しました。
ウィルグループは、国内外で人材派遣や業務請負、人材紹介などを展開している企業であり、HR CAREERは、医療・福祉業界に特化した人材紹介会社です。
ウィルグループの国内事業売上の大部分は人材派遣が占めており、人材紹介事業は限定的な規模に留まっていました。今後人材需要の増大が見込まれる医療・福祉分野で人材紹介事業を展開するHR CAREERをグループに迎えることで、ウィルグループは持続的な人材サービスの提供を実現し、グループ全体の企業価値向上を目指します。
まとめ
人手不足が多くの業界で課題となる中、人材派遣や人材紹介に対する需要は高い状態が続いています。
人材派遣会社や人材紹介会社が収益の拡大や事業規模の拡大を図る場合、新たに従業員を採用したり販路を拡大したりすると時間がかかりますが、M&Aであれば手間やコストを抑えながら人材の獲得や事業規模の拡大が可能です。
M&Aによって自社の売却や他企業の買収を検討するときには、税務や法務など専門的な知識が必要になります。M&Aの検討は専門家へ相談することをおすすめします。
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