M&A 銀行

M&Aを行う際の相談先の1つとして「銀行」があります。M&A以外にも、企業に関わる業務として融資も扱っているため、経営者の方にとっては身近な存在かも知れません。そのため、M&Aの検討において比較的早い段階で相談先の候補に挙がることもあるでしょう。

しかし、銀行によるM&Aアドバイザリー業務は、他の相談先と比べ比較的手数料が高く設定されていることや、数億〜数十億円規模のM&Aを主に扱っていることが多いため、必ずしも全ての企業が相談できるわけではありません。

本記事では、銀行のM&Aアドバイザリー業務の特徴やM&Aアドバイザーの業務範囲・報酬の仕組み、銀行に相談する上での注意点について解説します。M&Aの相談先は複数存在し、それぞれで特徴が異なります。銀行への相談を検討される際には、その特徴を理解した上で相談することをお勧めします。

なお、本記事においては、銀行を預金業務や企業への融資を主要な事業とする「商業銀行」と、債券や株式などの証券の売買や引受業務を行い、投資家に販売する「投資銀行」の2つに分けて記載します。

M&Aにおける銀行の役割

M&Aにおける銀行の役割について紹介します。

資金融資・調達について(主に譲受企業)

商業銀行の場合、譲受企業に対してM&Aのアドバイザリー業務だけでなく融資も行います。多くの場合、株式や事業の譲受けには多額の資金が必要となるので、資金が潤沢ではない譲受企業の場合には魅力的な相談先といえるでしょう。

また、銀行はさまざまな観点から「M&Aの成約後に融資した資金を回収できるかどうか」を判断した上で融資を行います。もし融資を行わないという判断になった場合には、リスクが高いM&Aだと考えることもできます。

その際には、M&Aの実行自体を見直すことも検討しましょう。なお、投資銀行は融資を行っていません。

M&Aアドバイザリー業務について(主に譲渡企業)

銀行は財務だけでなく、税務や法務などM&Aの手続き全般に関して、相談からM&A成約までサポートします。

弁護士や税理士にM&Aの相談をすることも可能ですが、法務や税務など一部の知識しか持ち合わせていないことが多く、M&A全般に関して相談することは難しいこともあります。その点、銀行の場合は、M&Aの専門部署を持っていることもあります。

しかし、あくまで本業は融資であるため、M&Aに関する知見があるか確認する必要があるでしょう。

▷関連記事:M&Aの相談は銀行、証券会社、税理士、弁護士、M&A専門家など、どこにすればいいのか?費用の違いは?

銀行のM&Aアドバイザリー業務における役割

M&A 銀行

次に、銀行のM&Aアドバイザリー業務における役割や特徴について解説します。

業務の特徴

各銀行によって対象とする企業や詳細な報酬額は異なりますが、一般的に銀行は大規模なM&Aを得意とします。メガバンクなどの規模が大きい銀行のM&Aアドバイザリー業務の手数料は、特に高く設定されていることが多いです。

そのため、数億〜数十億円以上の売上の企業を主な顧客として設定しており、規模が小さな中小企業は相談することが難しい場合があります。また、中小企業がM&Aを行う場合は手数料の負担が重くなってしまう場合もあります。

自社の相談にも乗ってくれるかどうかは、実際に相談をして確認してみるのも良いでしょう。また、銀行はM&Aに限らず、融資などに関してさまざまな相談を受けています。そのため、幅広い顧客網があり、多種多様な規模・業種の企業に対してM&Aの実施を打診することが可能です。

相手探しはM&Aにおいて非常に重要であり、選択肢の幅が広いほど、シナジー効果が期待できる相手を見つけやすく円滑にM&Aを進行できます。

銀行の報酬体系について

銀行の報酬額・料金体系は各銀行によって異なりますが、銀行の報酬は主に3つの要素から成り立っています。銀行によってそれぞれの料金設定は異なるため、必ず契約前に確認するようにしましょう。

  • 相談料・着手金
  • M&Aの業務を依頼した時点で、最初に発生するのが相談料・着手金です。M&Aを進めるためのさまざまな準備にかかる料金として定められています。仮に成約しなかった場合にも、多くのケースで返金されることはありません。

  • 中間報酬
  • M&Aの相手先が見つかり、基本合意を結んだ時に支払う報酬です。一般的には、成功報酬の10%程度が発生します。基本合意の締結後、デューデリジェンス、最終合意、クロージングなど最終局面に進み、M&Aの成約へと進んでいきます。

  • 成功報酬
  • M&Aの最終契約を締結し、成約した時点で発生する報酬です。銀行やM&A仲介会社などは、譲渡金額によって報酬料率が変わる「レーマン方式」によって成功報酬を定めています。

▷関連記事:M&Aアドバイザーに支払う料金・報酬の相場は?成果報酬・レーマン方式などの種類と確認のポイント

銀行を通してM&Aを行うときの注意点

M&A 銀行

ここまで銀行を通したM&Aの特徴に触れてきましたが、最後に銀行を通してM&Aを行う際の注意点について解説します。

譲受企業へのM&A支援は利益を優先する可能性もあるため注意が必要

M&Aのアドバイザリー業務によって収益を上げる銀行が増えていますが、あくまで銀行の本業は「融資」であり、M&Aの業務は「その他の業務」とされています。

特に地域金融機関は、融資のみではなく蓄積された情報や外部とのネットワークを活用してコンサルティング機能を発揮することにより、顧客企業の事業拡大や経営改善などに向けた最大限のサポートを行うことが求められています。

そして、M&Aなどによって事業を成長させることができれば、銀行は長期的な取引関係を継続的に築くことができます。

そのため、銀行は譲受企業に長期的に融資を行うために、譲渡価額を低めに設定することで、譲受企業がM&Aを実行しやすいように誘導する可能性もあるため注意が必要です。

譲渡企業へのM&A支援は「利益相反取引」になるので注意が必要

仮に譲渡、譲受側の両社と銀行がアドバイザリー契約を結んだ場合、銀行は融資の回収のためにも譲受企業に有利になるように動きかねません。このM&Aアドバイザリー業務は、銀行法及び金融商品取引法の規定に基づく利益相反管理*1の対象となります。

そのため、一方が極端に損失を被る事態が起こる可能性は低いものの、利益相反であることは理解しておきましょう。

対策として、相談は銀行にして、M&Aの実行はM&A仲介会社などを活用するのも手段の1つです。

▷関連記事:M&Aで企業が選ぶべきは仲介会社やFA、マッチングサイトのどれ?

*1 利益相反管理:顧客の利益を不当に害することがないように、利益相反を適切に管理すること。

まとめ

本記事では、M&Aのアドバイザリー業務を依頼する上での銀行の特徴や報酬体系、注意点を解説しました。

幅広い取引先を持っていることや、M&Aのフロー全体を相談できること、譲受企業においては融資を受けられる可能性があることといったメリットを持っていますが、手数料が高く、大企業が主な顧客であることに注意しなければいけません。

料金や報酬体型は銀行によって異なるため、相談前に必ず確認するようにしましょう。