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2023/10/03

EBOとは?各バイアウトとの違いや目的、メリットなど押さえておきたい基礎知識

EBOとは?各バイアウトとの違いや目的、メリットなど押さえておきたい基礎知識

M&Aには、株式取得や合併など、さまざまな手法がありますが、その中にバイアウトという方法があります。
このバイアウトは「誰が買収するか」により3種のパターンに分けることが可能です。本記事では3種の内の一つである「EBO」について、意味や他のバイアウト手法との違い、メリットやデメリットなど、抑えておきたい基本的な知識を解説します。

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EBOとは

EBOとは前述の様にバイアウトの中の1つの手法になり、『Employee Buy Out』の略称で、エンプロイーバイアウトと読みます。 企業の「従業員」が株式を取得し経営権を得る方法となり、経営者から従業員への社内承継を行う場合などに活用されます。

ただしEBOにおいては、従業員側が株式を取得するだけの資金を用意することができるかという課題があります。これについては近年、金融機関の融資以外にも、ファンドなどからの投資によりEBOを実施というケースも増えてきました。

▷関連記事:バイアウトとは?分かりやすい基礎知識から成功のポイントまで

EBOの目的

EBOを行う目的は「事業承継」と「株式非公開化」の2つが挙げられます。

▷EBOの目的 1)事業承継

昨今の日本において、帝国データバンクの調査によると調査対象の65.1%が後継者不在と回答している様に中小企業の後継者不在は非常に大きな課題となっています。
EBOを始め、MBOやLBOを用いて経営権を従業員などに移すことが出来れば、事業承継を行う事が可能です。EBOであれば従業員へ経営権を引き継ぐため、企業の方針や風土といったものはそれまでと同様になる可能性が高く、大きな混乱を生まずに承継が可能となります。

▷EBOの目的 2)株式非公開化

EBOを株式の非公開化を行う手段として使用されるケースも見られます。 株式を公開している場合、TOBにより他社から敵対的買収を仕掛けられる可能性がありますが、EBOにより株式を非公開化した場合、TOBを防ぐことが出来ます。
株式を非公開化することにより、市場から資金の調達が出来なくなるというデメリットはあるものの、株主からの経営方針への干渉や財務状況の公開や決算などが不要になるといったメリットもあります。

バイアウトの種類 -EBO・MBO・LBOの違い-

バイアウトにはEBOの他にMBOやLBOといった方法があります。
EBOは前述の様に「企業の従業員」が株式の取得を行い経営権を得るのに対し、MBOであれば「企業の経営陣」が株式の取得を行い経営権を得る手法、LBOであれば「譲受企業」が譲渡対象企業の資産や期待出来るキャッシュフローを担保とし、金融機関等から資金調達をして買収を行う手法を指します。

上記の様に、EBOとMBOの違いは株式を取得するのが「企業内部の従業員 or 経営陣」となり、EBO・MBOとLBOの違いは株式を取得するのが「企業内部 or 外部企業」となります。

▷関連記事:M&A MBO|目的から手法、成功のポイントなど抑えておきたい基礎知識
▷関連記事:LBOとは?仕組みやMBOとの違い、成功・失敗事例など分かりやすい基礎知識

EBOのメリットとデメリット

EBOとは?各バイアウトとの違いや目的、メリットなど押さえておきたい基礎知識

EBOのメリットとデメリットは以下となります。
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メリット:経営方針や風土のスムーズな引継ぎ
デメリット:株式取得のための資金調達
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▷メリット:経営方針や風土のスムーズな引継ぎ

EBOの最たるメリットは企業の従業員が引き継ぐという点で、それまでの企業の方針や風土をスムーズに引き継ぐ事が見込めるという点です。

外部企業など第三者に経営権を譲渡した場合、新経営陣の方針により企業方針などが大幅に変更される可能性はありますが、元々内部にいた従業員に引き継ぐEBOであれば、その可能性は低いといえるのでしょうか。

また第三者に引き継いだ際の上記の様な方針転換に反発し、従業員が退職するなどといったリスクも抑えられるため、営業活動に負担を掛けたり社内の混乱を招く可能性も低いでしょう。

▷デメリット:株式取得のための資金調達

EBOの最大のデメリットは株式を買い取るために多額の資金を調達する必要があるということです。会社規模が大きければその分必要な金額が上がり、従業員が個人資産から資金を捻出する事は難しくなります。

その場合、金融機関などに融資を依頼する形になりますが、必ずしも審査に通るとは限らないため、融資が行われずEBOが失敗に終わるリスクがあります。

EBOの流れ

EBOを行う際の流れは一般的に以下の様な手順となります。
EBOを検討されている方はスムーズに進めるために流れを把握しておくとよいでしょう。
————————————-
1)株式を譲渡する従業員の選定
2)株主構成の把握
3)株式評価
4)株式譲渡の交渉
5)株式譲渡の手続き
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▷1)株式を譲渡する従業員の選定

EBOを進める際にまず最初に取り組むのは、経営権を譲渡する従業員を誰にするかを選定することです。従業員の中には優秀な人材はいても、経営者としての素質も持ち合わせている人物は多くありません。

また選定の際には他の従業員への配慮も必要です。後継者に選ばれなかった従業員からの反発なども想定されるため、後継者候補として選定する従業員は納得感が高い人物である必要があります。

▷2)株主構成の把握

通常、株主は複数人いることが一般的となりますが、EBOで事業承継を行う場合、それぞれの株主がどれほどの株式を保有しているかを把握する必要があります。株主が変更とされている可能性もあるので、このタイミングで最新の情報を把握する様、努めましょう。

なお株主が1名のみであれば、対象者から株式の買い取りを行うのみとなりますので、株主構成の把握を行う必要はありません。

▷3)株式評価

続いてEBOで株式の売買を行うための基準となる株式評価を行います。
評価方法は「配当還元方法」や「純資産価額方法」など幾つかの方法がありますが、算出が難しい方法となるため、会計士や税理士といった第三者に依頼するのが一般的です。
この株式評価の結果をベースに各株主との交渉を進めるため、客観的かつ納得感のある株式評価を行うことが重要です。

▷4)株式譲渡の交渉

株式評価が完了したら、各株主と個別の株式譲渡の交渉を行います。
一定の理解を示す株主もいれば、株式の買い取り金額に不満を持たれたりするなど、スムーズに交渉が進まない可能性も十分に考えられますので、スケジュールに余裕を持たせておくのが安全です。

▷5)株式譲渡の手続き

最後に株式譲渡の手続きを行います。
株式譲渡は株式の売買交渉がまとまり、株主との合意を得た段階で成立しますが、日本の非上場企業では株式の譲渡制限が定められているケースもあり、その場合、株主との合意だけでは譲渡は成立せず、会社の承認機関の承認を要します。

また株券を発行している会社では合意の際に株券が必要になります。紛失などをしていた場合、株券の再発行手続きが必要になります。

EBOを成功させるために

株式譲渡の交渉が難航し、EBOが失敗に終わるケースもあるため、EBOを行う前には対策を練っておく必要があります。
EBOで成功させるためには、以下のポイントを抑えておくと良いでしょう。

・企業価値の妥当性を明確に
・株主が売却に応じる株価の検討
・専門家の活用

▷企業価値の妥当性を明確に

非上場企業の場合、株価は開示されていないため、明確な価格の算出は非常に困難です。
株主からするとどの程度の価格で買い取られるか、提示されている価格が正当なものなのかなど、不安を抱えている可能性があるため、こういった不安を取り除ける妥当性の高い企業価値の算定が重要となります。

この際、企業価値を行ったのが、専門家であれば株主も妥当な金額と感じ、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。

▷株主が売却に応じる株価の検討

専門家により企業価値の算出をどれだけ正確に行ったとしても、株主が株式譲渡に応じない場合、EBOは成立しません。
そのため、算出された企業価値をベースとして、それぞれの株主が株式の売却に応じる価格を探る必要があります。その際に一つの重要な指標となるのは、株主の株式取得額です。
この取得額を下回る買い取り額に設定した場合、一般的には株主は難色を示すため、それぞれの株主の株式取得額がどの程度だったかを確認し、それをベースに株価を検討するとよいでしょう。

なお株主全員から株式を買い取ることが出来るのであればEBO成立は確実になりますが、上記の様な理由から全株主が交渉に応じてくれることは稀で、資金面でも難しいものがあります。その際には過半数以上の株式取得を目標に株価の検討や交渉を行いましょう。

▷専門家の活用

EBOを進めるにあたっては、企業評価の算出や各手続き、株主との交渉など専門知識やノウハウが必要になる場面も多々あります。
そのため専門家のサポート無しでEBOを成立させることは非常に難しく、EBOの検討段階で専門家に相談するのが無難といえます。

EBOの事例

最後にEBOが活用された事例を紹介します。

▷ユニゾホールディングス

日本の上場企業として初めてEBOが成立したのがユニゾホールディングスの事例です。2020年4月にEBOの成立を発表、6月に上場廃止となっています。

ユニゾホールディングスのEBOは2019年7月に旅行会社大手である「エイチ・アイ・エス」に敵対的買収を仕掛けられたことに端を発します。エイチ・アイ・エスへ譲渡を行いたくないと考えたユニゾホールディングスの当時の経営陣は、ソフトバンクグループ傘下のファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」のTOBに賛同しましたが、フォートレス傘下での会社の解体リスクなどから撤回、更にその後米投資会社「ブラックストーン・グループ」はユニゾホールディングスの同意を条件にTOB意向がある旨を発表しましたが、同意には至りませんでした。
その様な中、ユニゾホールディングスの一部の従業員と米国投資ファンド「ローンスター」が出資して設立した「チトセア投資」がEBOを発表し、ユニゾホールディングスはこれに賛同します。最終的に1株6,000円ほどまで引き上げられた結果、ユニゾホールディングスを巡る買収合戦はチトセア投資によるEBOという形で決着しました。

▷関連記事:買収とは?手法やメリット、敵対的・友好的買収や防衛策など基礎知識を徹底網羅

まとめ

EBOは従業員が株式を買い取り、経営権の取得を行うM&A手法の一つとなります。
後継者がいない中小企業において事業承継を目的とし活用されており、従業員が後継者となるため、企業の経営理念や方針、風土に大きな変化は無く、承継がスムーズに行えるというメリットがある一方、EBO成立までには非常に多くの専門知識やノウハウが必要となります。

そのためEBOをご検討の方は、早期にM&A仲介会社や専門家に相談するとよいでしょう。

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