M&A 保険

表明保証保険とは?(表明保証違反による損失補てん)

表明保証保険(Warranty and Indemnity insurance、W&I)とは契約の当事者あるいは対象会社、もしくはその事業に関して表明違反が判明し、被保険者が経済的被害を被った場合に保険金を請求できるものです。表明保証保険が多く活用されているアメリカでは、保険金額の2%から3.5%の保険料が設定されることが多いといわれています。

株式譲渡契約書などにおいては、M&Aを行う相手に表明保証違反があった場合、当事者はそれによって被った損害に対して表明保証保険契約で定めた部分については金銭的な賠償・補償の約束がされます。

また表明保証保険には、譲受企業が保険契約者となる「買主用表明保証保険」と譲渡企業が保険契約者となる「売主用表明保証保険」の2つがあります。近年よく利用されているのは買主用表明保証保険です。

本記事では、表明保証保険とは何か、譲渡企業、譲受企業が受けられるメリットや注意すべき点などを紹介します。

M&A後に生じるリスクを軽減する方法

M&Aを行う際には、さまざまなリスクが発生し、場合によっては経済的損失を被る可能性があります。ここでは、そのようなリスクを軽減する方法を紹介します。

▷関連記事:M&A(企業買収)のリスクとは?成功へ導くリスク回避の極意

基本合意について(基本合意書を取り交わす)

M&Aを進める上で、トップ面談の後に譲渡企業と譲受企業の双方が合意している条件などが明記された基本合意書を取り交わします。この合意は、M&Aの成約に向け最終契約の締結やデューデリジェンス、クロージングなどを円滑に進めるために結ばれるのです。

通常、基本合意書には独占交渉権の付与や売買予定価格、交渉期間などが記載されます。

証明および保証について(開示情報の正確性を保証)

多くの場合、M&Aを行う際に作成する契約書には表明保証条項が規定されています。表明保証条項とは、クロージングの際に、契約の当事者あるいは対象会社、もしくはその事業に関する過去、現在または未来における事実において、真実であることを表明し、かつその内容を保証するものです。

一般的にクロージングは、M&Aを行う相手に表明保証の違反がないことを前提として行われます。そのため、表明保証の違反が判明した場合、当事者にクロージングを行う義務は発生せず、契約を解除できます。

▷関連記事:M&Aがクロージングするまでの手続きや期間とは?クロージング条件のポイントも解説

表明保証保険の仕組み

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ここでは表明保証保険の仕組みと、譲渡企業、譲受企業が受けられるメリットとデメリットを紹介します。

保険の仕組みについて

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先述の通り、表明保証保険は譲渡企業または譲受企業に表明保証違反が判明し、被保険者が経済的に被害を被った場合、保険金を請求できるもののことです。経済的損失は保険会社が補償します。

買い手と売り手のメリットについて

表明保証保険を利用することによるメリットを譲受企業と譲渡企業に分けて紹介します。

譲受企業が表明保証保険を利用するメリット

譲受企業が表明保証保険を利用するメリットは主に3つあります。

1つ目は、M&Aの交渉をスムーズに行えるという点です。譲受企業は表明保証保険を利用することで、仮に譲渡企業の表明保証違反が発覚しても、保険会社が損失を補償してくれます。そのため、譲渡企業は表明保証の提供や情報の開示を行いやすくなり、交渉を円滑に進められます。

2つ目は、M&A実施後のリスクを回避できます。譲受企業にとっては、譲渡企業に表明保証違反があった場合に発生する損害に対し、備えをしておくことでリスクヘッジになります。

3つ目は、譲渡企業に対して補償請求を行いやすくなる点です。M&A実施後に譲受企業に損害が生じた場合、譲渡企業に対して補償を請求し、回収するには時間と労力がかかります。また、譲渡企業にも少なからず抵抗される可能性もあります。

表明保証保険を利用することにより、譲受企業は譲渡企業に対する訴訟などの請求という煩雑な手続きを回避できるため、比較的短い期間で保険金を回収できます。

譲渡企業が表明保証保険を利用するメリット

譲渡企業が表明保証保険を利用するメリットは主に2つあります。

1つ目は、クリーンエグジットを実現できる点です。クリーンエグジットとは、後日賠償請求を受けるリスクを排除した上で、当該事業から完全に撤退することを指します。譲渡企業は、表明保証保険を利用することによりM&A実施後の補償リスクを保険会社が負ってくれるため、クリーンエグジットができます。

2つ目は、エスクローの設定を回避できます。エスクローとは、譲渡企業と譲受企業の間に金融機関などの第三者を介して、特定の条件を付けて譲渡金額を決済する仕組みのことです。

譲受企業は金融機関などの第三者にエスクロー勘定を開設し、譲渡代金を入金しておきます。そして、譲受企業と設けた一定の条件が満たされた場合に入金しておいた金銭などを譲渡企業に支払います。

これまでは、譲受企業は表明保証違反の発生に備えてエスクロー口座に譲渡対価を預託するケースが一般的でした。表明保証保険を利用することにより、エスクローの設定を行う場合よりも早期に譲渡企業は譲渡対価を得ることができます。

このエスクローの設定を回避し譲渡対価を早期に得るために、表明保証保険を利用するケースがあります。

保険加入の方法について

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一般的に、表明保証保険に加入する方法としては以下の手続きが必要とされてます。

  1. 対象企業に関する資料について、保険会社と秘密保持契約を締結し情報共有する
  2. 保険会社から法的拘束力のない見積もりを提示してもらう
  3. 保険会社の引受審査
  4. IMなどの資料(デューデリジェンスの対象となるものを含む)の共有
  5. 株式譲渡契約書などの共有
  6. 保険会社からの質問とそれに対する回答
  7. 保険会社との電話会議や面談
  8. 保険会社から正式な見積もりを提示してもらう
  9. 保険契約の締結

表明保証保険に加入する手続きは短くとも3週間ほどかかります。また、実際には複雑な手続きがあることも多いため、詳しくはM&Aアドバイザーや弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

保険加入の注意点について

ここまでは表明保証保険に加入することで、表明保証の違反が判明した場合に保険金を請求できることを説明しました。しかし、表明保証の対象となっていても、表明保証保険の対象とはならない場合もあります。

一般的に表明保証保険の対象とならないケースは、被保険者またはM&Aの担当者が事前に認識していた表明保証の違反やデューデリジェンスが行われない項目に違反があった場合などがあります。

これらに関しても、不明点がある場合などは専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

M&Aでは、相手の企業による表明保証の違反により損害を被ることがあります。M&Aの成約後にそのような状況になってしまう可能性もあるため、リスクヘッジをしておいた方がよいでしょう。

表明保証保険の加入を検討している方は、仕組みやメリット、注意すべき点を確認しておくことをお勧めします。また、加入方法など専門の知識が必要となるため、詳しくはM&Aアドバイザーや弁護士などの専門家に相談しましょう。