M&A 基本

M&Aには乗っ取りや強引な買収など、マイナス面の印象を持たれている方もいるかもしれません。そういったイメージがあるために、自社にとってのメリットを把握していながらも、M&Aに踏み出せないこともあるでしょう。

確かに知識不足の状態でM&Aに望めば、自社にとって望ましくない結果になってしまうかもしれません。こうした状況を回避するためにも、そして、自社の成長のためにも、経営の知識としてのM&Aの基本的な目的や始め方を知っておきましょう。

M&Aの基本。M&Aとは?

<M&Aの種類>

なぜM&Aをするのかという説明の前に、まず、M&Aの基礎知識について説明します。

M&Aとは「Mergers and Acquisitions(合併買収)」の略で、資本の移動を伴う企業の合併と買収を指した言葉です。この合併と買収にはさまざまな違いがあります。

合併とは、複数の会社を統合して1つにする手法です。合併には、既存の会社を存続会社とする「吸収合併」と新たに新設した会社を存続会社とする「新設合併」の2種類があります。

合併には2社で行う場合や3社以上で行う場合などがありますが、統合して1つの会社となる手法です。また、合併は包括的な承継となるため、消滅会社の権利義務のすべてが存続会社に引き継がれます。加えて、消滅会社が合併後に消滅するという特徴があります。

一方、買収は他の会社や事業を譲受けることを指し、株式取得や事業譲渡の手法があります。この株式取得には株式譲渡第三者割当増資株式交換株式移転が含まれます。株式譲渡は中小企業のM&Aにおいて、よく活用される手法です。

買収は経営権が移動するのみであるため、合併と異なり実施後にも譲渡企業の法人格が存続します。合併と買収、それぞれの違いやメリット・デメリットを把握して、自社にとって最善の選択を行うことが大切です。

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M&Aを行う理由は事業承継やイグジット、経営戦略などさまざま

近年、事業承継を目的としたM&Aが活発化しています。その背景には、日本企業の66.4%が後継者不在という社会的な問題があります。後継者がいない、見つからないという理由から廃業を検討している中小企業の経営者も少なくありません。

M&Aによって第三者に事業を承継することで、後継者が不在であっても事業を存続させることができます。また、従業員も譲受企業に引き継いでもらうことで、雇用も継続できます。

また、投資回収(資金回収)を行うためのイグジット(EXIT)を目的とするケースもあります。イグジットとは、創業者やファンドなどが株式を売却して、利益を得ることです。具体的には、M&Aによるバイアウト(売却)*1やIPO(新規株式公開)*2によりキャッシュを手にします。

一方、譲受企業においては、経営戦略としてM&Aを行うこともあります。M&Aによって新規事業を立ち上げたり、新たな販路や技術・ノウハウを得たり、優秀な人材の確保が見込めるのです。新規事業の立ち上げにおいては、自社のみで行うよりも、一般的には短期間で立ち上げを実現することができます。

*1 バイアウト:対象企業の株式を買い取ることで、経営権を取得し買収すること
*2 IPO:非上場の企業が証券取引所に上場して、新規に株式を公開すること

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M&A以外の承継手段

事業承継やイグジットを目的とする場合には、M&A以外の方法もあります。そのため、自社にとってどの手段が適しているかを検討する必要があります。また、M&A以外の手段を知ることで、M&A自体の利点が見えてくることもあります。

M&A 基本

事業承継の場合は親族承継や従業員承継など

事業承継を行う場合には、M&A以外の手段として、親族承継や従業員承継があります。親族承継とは、子供や配偶者など親族に事業を引き継ぐことです。

しかし、職業を自身で選択することが社会的に受け入れられてきていることなどから、親族への承継は減少傾向にあります。また場合によっては、相続税や贈与税など多額の税金を納める必要があることも減少の一因とも考えられます。

他方、従業員承継は自社の役員や従業員に引き継ぐ事業承継のことです。一般的に、役員や従業員への承継は取引先や従業員の理解を得やすいため、承継がスムーズに進められます。ただし、従業員承継にもデメリットがあります。

従業員に承継をするには、オーナーが保有している株式を譲渡することになるため、その対価としてまとまった金銭などが必要です。そのため、多額の資金を準備することが従業員にとって難しいことがあります。

また資金が十分に用意できず、経営者ではない旧オーナーが株式を持ち続ける状態、つまり会社の所有と経営の分離が発生してしまうことがあります。こうした分離が発生した場合、旧オーナーは発言権を有しているため、株式総会などにおいて、引き継いだ経営者が思い通りに意思決定できない可能性が生じます。

このように親族承継や従業員承継は実施が難しいケースも多く、そうした場合にもM&Aは選択肢のひとつになります。

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イグジットの場合はIPOもその一つ

IPOは「Initial Public Offering」(新規株式公開)の略で、非上場企業が新規に株式を証券取引所に上場することを指します。

IPOはイグジットの手段としても用いられる手法です。金融市場から広く資金調達ができるうえ、上場することで社会的地位向上や信用の獲得が見込めます。

しかし、IPOには多くの時間とコストを要するうえ、株主が不特定多数になるため、自社の意思決定がスムーズにできなくなることもあります。

▷関連記事:IPO(新規上場)とM&Aの違いとは?エグジットの手段としてのメリットとデメリット

M&Aの始め方。意思決定をする前に検討すべきこと

M&Aは後継者が不在であっても、事業承継ができるなどの多くのメリットがあります。しかし、いざM&Aをするとなると、「まず何をしたらいいのだろう」と、立ち止まってしまう経営者の方々も少なくありません。

そのためにM&Aを実行するまでには、必要な時間や費用、M&Aを進めるうえで必要な情報など、事前に準備しておくべきことがあります。

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M&Aを行う妥当性を見極める

M&Aのメリットのみに着目して、たったひとつの選択肢としてM&Aを選ぶのは得策ではありません。自社にとって適した選択肢であるかを、他の選択肢と比較、検討する必要があります。常に複数の選択肢を用意し、その中から適した選択をしましょう。

例えば事業承継の場合は、M&Aや親族承継、従業員承継などのメリット、デメリットを把握しましょう。そして、M&Aが適した選択だと判断した場合、M&A実施のための行動に移ります。

▷関連記事:M&Aのやり方とは?ポイントを押さえて効果的に活用する

概算の金額を把握する(企業価値の評価)

自社の企業価値については、概算を事前に把握しておくことをお勧めします。事前に自社の企業価値を知っておけば、譲渡先との交渉の目安にもなります。

企業価値評価(バリュエーション)*3の算出方法は上場企業と非公開会社で異なってきます。上場企業の場合は、株価と株式数を掛けることでおおよその金額を出すことが可能です。しかし、非公開企業の株式は証券市場に流通していないため、上場企業と同じ方法では価値を知ることができません。

非公開企業の場合は、将来性とリスクを考慮した「インカムアプローチ」、資産価値に注目する「コストアプローチ」、相場価格から算出する「マーケットアプローチ」といった手法から企業価値の評価をすることが一般的です。

▷関連記事:企業価値評価とは?M&Aで使用される企業価値の算出方法

従業員への開示は最後に行う

M&Aにおいて重要なことのひとつに情報漏えい対策があります。

M&Aを検討していること、交渉を進めていることが従業員に知られると、「自分の会社は大丈夫だろうか」「M&A後の待遇、労働条件はどうなるのだろうか」と不安を与えてしまう可能性があります。また、従業員が不安に感じて、M&A成立前に会社を辞めてしまうような事例もあります。

こうした、従業員への情報漏えい対策のために、M&Aでは秘密保持契約を結び、M&Aの実施期間中は情報漏えいに注意しながら、トップ面談、デューデリジェンス、契約と進めていきましょう。

▷関連記事:情報漏洩対策の重要ポイント。M&Aで欠かせない「秘密保持契約書」とは

まとめ

譲渡企業のM&Aの多くは後継者不在の解決や事業承継、経営者利益を獲得するためといった理由です。一方、譲受企業は事業拡大や新規事業への参入などのためにM&Aを実施します。特に譲渡企業においては、M&Aによって第三者に承継することで、後継者が不在であっても事業を存続できます。

M&Aには経営者自身の視点だけでは、気が付かない重要な点も多くあります。M&Aの専門家であるM&Aアドバイザーなどに相談しながら進めることをお勧めします。

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