経営・ビジネス

2023/09/14

割引現在価値とは?算出方法をわかりやすく解説

割引現在価値とは?算出方法をわかりやすく解説

M&Aや投資の際に考慮する要素の一つに、割引現在価値というものがあります。この割引現在価値の理解は、対象会社の価額がどの程度になるのかの予測を立てやすくし、M&Aを成功へ導く手助けになるでしょう。

本記事では、「割引現在価値とはどういったものであるか」やその算出方法について、また、M&Aとどのような関わりを持つのか解説していきます。

▷関連記事:M&Aとは?M&Aの目的、手法、メリットと流れ【図解付き】

服部 大
この記事を執筆した専門家
服部大税理士事務所 服部 大
2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界の数少ない若手税理士として、顧問先の会計や税務だけでなく、創業融資やクラウド会計導入支援、補助金申請など、若手経営者を幅広く支援できるよう奮闘している。執筆や監修業務も承っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。
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割引現在価値とは?意味と定義

割引現在価値とは、将来得られる価値を現在受け取るとしたらどの程度の価値になるかを計算したものになります。

将来受け取ることが予測される金額の価値は、現在の金額の価値とは異なります。なぜなら、お金の価値は時間軸によって変化するからです。というのも、例えば、今の10,000円を年利10%の定期預金に預けたとしたら、1年後には11,000円になっています。

この場合、現在の10,000円と1年後の11,000円は同価値、つまり今の10,000円の方が将来の10,000円より1,000円価値が大きいということになるのです。このようにお金の価値は時間によって変化するという考え方があります。また、この変化する価値を、割引率を用いて計算したものが割引現在価値になります。

また、現在価値という言葉もありますが、現在価値と割引現在価値は基本的に同義で用いられます。現在価値の具体的な算出方法については後述しますが、まずは、正味現在価値と将来価値について説明していきます。

割引率とは

割引率とは、割引現在価値の算出にあたり将来受け取る金銭を現在価値に割り引く際、その割り引かれた金額を1年あたりの割合で示したものになります。ディスカウントレートともよばれます。

割引率の数値によって、現在価値の大きさも変動します。例えば1年後に1,000万円受け取れる場合に、金利が10%・20%・30%だったときの現在価値を計算してみると、下記のような計算方式となります。

【金利が10%】1年後に受け取る1,000万円の現在価値=1,000÷(1+0.1)^1≒909万円
【金利が20%】1年後に受け取る1,000万円の現在価値=1,000÷(1+0.2)^1≒833万円
【金利が30%】1年後に受け取る1,000万円の現在価値=1,000÷(1+0.3)^1≒769万円

割引率の種類

割引率にはいくつかの種類があり、例えばM&Aや事業に対する投資では、株主が要求する最低限の利益である「株主資本コスト」や株主と債権者の双方を考慮した割引率「WACC」などの指標を割引率に用いるケースがあります。

どの割引率を用いるのが適切かは、複数の割引率を用いながら、比較検討することをお勧めします。

正味現在価値(NPV)とは

正味現在価値(NPV)とは、主に投資の際に、投資を実行することによって将来どれだけの利益が得られるのかを示す指標になります。そのため投資の際の判断において重要な要素です。

計算方法としては、将来発生すると見込まれる収益を現在価値に割り引いた合計額から投資額を差し引いた残額で表され、理論的には、NPV=0ならそのプロジェクトに投資しても利益は出ないということであり、NPVが0より上なら利益が生まれ、その場合、投資計画を実行すべきと判断する考え方です。

NPVを用いて投資を判断する際のメリットとしては、投資判断する際の共通の尺度として現在価値を用いて比較できる点です。投資のタイミングや金額が異なる際に、すぐに比較し判断できるという点ではわかりやすいといえるでしょう。

逆にデメリットをあげるとすれば、現在価値の元となる割引率に大きく左右されるという点です。割引率自体が一定ではなく変化していくもののため、5年後10年後も同じ数値、基準で使えるものではありません。

将来価値とは

将来価値とは、現在価値に対応して使われる概念です。現在価値を元に、金利や期待収益率などを用いて将来得られるキャッシュフローなどを計算することで求められます。

現在価値を将来価値から求める際に使う割引率と、現在価値から将来価値を求める際に使う期待収益率は表裏一体の関係になっています。混同しやすいですが、基本的には利率の表現の仕方が違うだけで同じものと捉えて問題ありません。

▷関連記事:期待収益率とは?意味・計算式からM&Aにおける期待収益率について解説

現在価値の算出方法と企業評価

現在価値の算出方法と、企業価値の算出に現在価値がどのように関わってくるかを説明します。

現在価値の計算式

現在価値の計算式についてですが、以下のように計算することができます。

現在価値=n年後の価値÷(1+割引率)^n年(期間)

ポイントとしては、将来の価値については大きいほど、割引率と年数については小さいほど、現在価値が大きくなりやすいということです。

先述した例のように年利10%で1年間預け、10,000円が11,000円になって返ってきた例をもう一度振り返って考えてみるとわかりやすいかもしれません。このことを単純に数式で表すと、現在の10,000円=1年後の11,000円になります。つまり、1年後の11,000円の割引現在価値は10,000円ということがいえます。

では、1年後の10,000円の現在価値はいくらになるでしょうか。上記の計算式にあてはめて考えてみましょう。

現在価値=10,000÷(1+0.1)^1=9,090

これにより1年後の10,000円を10%で割り引いた現在価値は9,090円になります。

買収価格における企業評価の算出方法

M&Aを行う際の買収価格は、企業評価を元に決定されます。これは企業価値評価(バリュエーション)と呼ばれ、一般的に評価方法はコストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチの3種類に分けられます。

コストアプローチは、企業の保有している資産および負債をベースにして株式価値を算出する方法です。純資産を基にしているため客観性に優れた評価を行うことができ、中小企業のM&Aにおいてはコストアプローチを採用することが多くあります。その中でも「簿価純資産法」と「時価純資産法」の2つがよく用いられます。

▷関連記事:【図解付き】企業価値評価におけるコストアプローチとは?メリット・計算方法・他の方法との違いを解説

マーケットアプローチは、株式市場やM&A市場における取引価額を基準に算定する評価方法です。非常に客観的な価値を算定することができますが、中小企業と同じビジネスモデルで同規模の上場企業を探し出すことが難しいという欠点があります。
その中でも「類似企業比較法(マルチプル法)」「市場株価法」「類似取引比準法」などがよく用いられます。

▷関連記事:企業価値評価の一つ、マーケットアプローチとは?よく使われる計算方法やシミュレーションも解説

インカムアプローチは、譲渡企業に今後見込まれる収益やキャッシュフローから、リスクなどを考慮して企業価値を算出する評価方法です。そのため本記事で取り扱った割引現在価値の算出は必須です。

▷関連記事:【徹底解説】企業価値評価の手法の一つ、インカムアプローチとDCF法の計算方法を解説

M&Aにおける企業価値の考え方

ここまで割引現在価値について解説しましたが、実際にM&Aでの企業価値評価を行う際には、インカムアプローチで算出される場合が多いです。

上述したように、企業価値評価の方法は他にもコストアプローチやマーケットアプローチなどがあります。どのアプローチで算出するかは、企業の特性や現状、今後の展望など、企業価値を構成するさまざまな要因をもとに総合的に判断しますが、特に中小企業のM&Aにおいてはインカムアプローチが主に活用されます。

インカムアプローチの場合、具体的な算出方法は、評価対象企業(以下、譲渡企業)から期待される収益(利益、配当、キャッシュフロー等)を、譲渡企業の割引率を織り込み現在価値に換算して企業価値評価を行うやり方になります。

この場合、将来の会社の収益獲得能力を企業価値に反映させやすく、会社独自の収益性等をもとに価値を測定するため、会社が持つ将来の収益獲得能力や固有の性質を評価結果に反映できるのが特徴です。

簡潔に述べると、その企業に投資した場合結局いくら回収できるか、という考え方にもとづいています。

ただし、これらのアプローチを用いて企業価値評価を算出したとしても、それがそのまま譲渡価額になるわけではありません。M&Aを実施するにあたり、譲渡企業、譲受企業ともに「譲渡価額がいくらになるのか」という点は、交渉の進行を左右する重要なポイントです。

最終的な譲渡価額は、その後のデューディリジェンスの結果を踏まえ、様々な要素から総合的に判断した上で、M&Aアドバイザーを介した交渉により決定されます。

▷関連記事:M&Aの最後にして最大の難関。「デューディリジェンス(DD)」を徹底解説

まとめ

割引現在価値の算出は、投資家からみた企業の価値判断の基準としてだけではなく、M&Aにおける企業価値評価をするうえでも重要な要素になります。M&Aを検討している場合、企業価値評価に大きく関わってくる割引現在価値への理解は、成約のために重要であるといえるでしょう。

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