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2023/09/29

事業承継税制の会社要件とは?間違えやすい従業員の定義や数え方も詳しく解説

事業承継税制の会社要件とは?間違えやすい従業員の定義や数え方も詳しく解説

事業承継税制では前提となる経営円滑化法の認定を受けるため、いくつかの要件を満たさねばなりません。中でも会社要件は複数あり、従業員数の定義や数え方を押さえておく必要があります。

本記事では、会社要件と間違えやすい従業員の定義、数え方にフォーカスして解説します。従業員数証明書が必要なタイミングや従業員数を扱う際の注意点も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

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事業承継税制の会社要件とは

事業承継税制とは、非上場会社の株式などを相続・贈与したときの納税の猶予や免除が受けられる制度です。事業承継の際の税負担を大きく軽減できる制度ですが、利用する際には「事業承継する会社」「先代経営者」「後継者」それぞれに要件を満たす必要があります。

以下では、事業承継税制の会社要件を解説します。

中小企業者である

事業承継税制の会社要件の1つ目は事業を承継する会社が「中小企業者である」ことです。事業承継税制は中小企業の事業承継の円滑化を目的としており、大企業は対象となりません。「中小企業者」の定義は下記のとおりです。

業種分類中小企業者(下記のいずれかを満たすこと)
資本金の額又は出資の総額常時使用する従業員
製造業その他3億円以下300人以下
製造業のうち、ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)3億円以下900人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)5,000万円以下100人以下
ソフトウェア業・情報処理サービス業3億円以下300人以下
旅館業5,000万円以下200人以下

「中小企業者」を判断する際は、まず自社がどの業種に分類されるかを確認しましょう。業種の分類は日本標準産業分類を参考に、分類項目名から自社の業種にあてはまるものを探して判断します。

なお、「中小企業者」は中小企業基本法でも定義されていますが、事業承継税制の「中小企業者」は中小企業基本法の定義よりも範囲が拡大しています。要件を確認する際は注意してください。

▷関連記事:中小企業とは?中小企業基本法における定義や利用できる国の施策、今後の展望を解説

従業員数が1人以上(もしくは5人以上)である

事業承継税制の適用を受けるためには、相続や贈与の際に「常時使用する従業員」が1名以上いる必要があります。会社の特別子会社が外国会社に該当する場合は5人以上です。

なお、常時使用する従業員は通常イメージする「従業員」とは異なり、間違いやすい部分です。後述する「事業承継税制の会社要件における従業員の数え方」の章で詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。

損益計算上の売上が1円以上ある

直近の事業年度の損益計算書で、1円以上の売上があることも事業承継税制の要件です。「売り上げがない」、すなわち営業実態がない会社は事業承継税制の適用を受けられません。

また、営業外収益や特別利益は対象から除外されます。これは、営業実態がないのにもかかわらず、預貯金の利子や配当、土地の売却益がある会社を事業承継税制の適用から除外するためです。

なお、事業承継税制の適用を受けて納税が猶予されている期間中に売上が0円となった場合は、取消事由に該当し、適用が取り消されます。猶予されていた税額を納付しなくてはならなくなるので、注意が必要です。事業承継税制の取消事由については、下記の記事で詳しくまとめています。

▷関連記事:事業承継税制の取消事由とは?注意点とあわせて詳しく解説!

資産管理会社ではない

資産保有型会社や資産運用型会社などの「資産管理会社」は事業承継税制の適用外です。

資産保有型会社とは、特定資産の帳簿価額の合計額が資産の帳簿価額の総額の70%以上の会社です。また、資産運用型会社は、特定資産の運用収入が総収入額の75%以上の会社が該当します。

なお、資産管理会社に該当する場合であっても、下記の3つの要件を全て満たしていれば、事業承継税制の活用が可能です。

1: 常時使用する従業員の数が5人以上であること

2: 事務所、店舗、工場その他、これらに類するものを所有している又は賃貸していること

3: 贈与の日(相続の開始日)まで、「商品販売など」「商品販売に必要な資産の所有又は賃貸」「これらの業務に類するもの」を3年以上にわたって行っていること

例えば、資産管理会社の主な例に不動産会社が想定されますが、上記の要件を満たすと、不動産会社でも事業承継税制による納税猶予が可能となります。

上場会社や風俗営業会社などではない

上場会社や風俗営業会社は、事業承継税制の対象となりません。

なお、事業承継税制の「風俗営業会社」は、⾵俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)の性風俗関連特殊営業を経営する会社です。ソープランドやテレクラなどの会社は事業承継税制を活用できませんが、その他の風営法対象の会社、例えばパチンコ会社やゲームセンター会社などは事業承継税制を活用できます。

特定特別子会社に上場会社や大会社、風俗営業会社がない

自社が上場会社や風俗営業会社に該当しなくても、特定特別子会社に上場会社や大会社、風俗営業会社がある場合は、事業承継税制の適用外です。

特定特別子会社とは、中小企業者や後継者、後継者と生計を一にする親族などが、総株主議決権数の過半数を保有する会社です。事業を承継する会社の子会社だけでなく、後継者や生計を一にする親族(例えば、同居している兄弟など)などの子会社も範囲に入っている点に注意しましょう。

後継者以外が拒否権付株式を持っていない

拒否権付株式とは、いわゆる「黄金株」のことです。例えば、後継者の長男以外に、次男が黄金株を保有している場合、事業承継税制の対象外となります。

事業承継税制の会社要件における従業員の数え方

事業承継税制の会社要件における「常時使用する従業員」は、会社に在籍する従業員と必ずしもイコールではありません。以下では、事業承継税制における「常時使用する従業員」の数え方を解説します。

社会保険加入者の数を数える

事業承継税制での「常時使用する従業員」は、社会保険に加入している従業員です。日本年金保険機構から送付される「厚⽣年⾦保険の標準報酬⽉額決定通知書」を参考に、社会保険加入者の数を数えましょう。

なお、「厚⽣年⾦保険の標準報酬⽉額決定通知書」では70歳未満の常時使用する従業員数を確認できますが、70歳以上75歳未満の従業員の数を確認できません。

70歳以上75歳未満の従業員を雇用している場合は、「健康保険の標準報酬⽉額決定通知書」もあわせて確認してください。健康保険の標準報酬決定通知書を確認すると、70歳以上75歳未満で社会保険に加入している従業員を数えられます。

役員や短時間労働者を差し引く

社会保険に加入している従業員数を把握したら、そこから役員の数を差し引きましょう。役員は従業員ではないからです。ただし、従業員との兼務役員は差し引く必要がありません。

また、フルタイム従業員の4分の3未満の労働時間で働く、パートタイマーやアルバイトの従業員が社会保険に加入している場合も、差し引く必要があります。近年、短時間労働者への社会保険適用が拡大されており、事業承継税制の要件に該当しない従業員が、標準報酬決定通知書に含まれているケースがあるので、注意しましょう。

75歳以上の従業員の場合

社会保険に加入している従業員数を把握したら、そこから役員の数を差し引きましょう。役員は従業員ではないからです。ただし、従業員との兼務役員は差し引く必要がありません。

また、フルタイム従業員の4分の3未満の労働時間で働く、パートタイマーやアルバイトの従業員が社会保険に加入している場合も、差し引く必要があります。近年、短時間労働者への社会保険適用が拡大されており、事業承継税制の要件に該当しない従業員が、標準報酬決定通知書に含まれているケースがあるので、注意しましょう。

75歳以上の従業員の場合

75歳以上の従業員でも、後期高齢者保健医療の被保険者や船員保険の被保険者など、社会保険加入者は従業員数に加えることができます。ただし、正社員と同等の雇用実態があることが前提です。従業員として証明する際は、2ヶ月を超える雇用契約書と給与明細書などを準備しましょう。

事業承継税制における従業員数の証明手続き

従業員数証明書は、事業承継税制の前提となる認定申請の際に提出します。特例措置で申請するか、一般措置で申請するかで、従業員数を記載する日時が異なるので注意しましょう。

特例措置 ・贈与や相続を行った時点の従業員数
一般措置・以下の2つの時点の記載が必要贈与・相続を行った時点の従業員数贈与・相続認定申請基準日

テンプレート・雛形などを参考に従業員数証明書を作成し、必要な日時と従業員数を記載してください。提出の際には、「厚生年金保険の標準報酬月額決定通知書」と「健康保険の標準報酬月額決定通知書」、「その他の資料」を添付しましょう。

事業承継税制の会社要件における従業員数の注意点

最後に、事業承継税制に関する従業員数で注意したい点を解説します。

適用後5年間で平均8割の雇用維持ができない場合

事業承継税制では事業承継後5年間に平均で8割の雇用維持義務があり、未達成の場合は猶予された税の納付が必要です。これは「雇用確保要件」と呼ばれています。

ただし、雇用を確保し続けることは並大抵のことではありません。そのため、事業承継税制の特例措置が講じられた際には、雇用確保要件が弾力化され、5年間の雇用平均が8割を達成できなくても、猶予は継続されることとなりました。要件の緩和による事業承継税制利用の円滑化が目的です

なお、雇用確保要件が緩和されたとはいえ、雇用維持ができなかった場合には理由の報告が必要です。また、原因が経営悪化であった場合には、認定支援機関の指導や助言を受けなければなりません。

ここで大切なのが、雇用確保要件の弾力化は特例措置のみで認められているということです。一般措置の場合は、雇用確保要件が維持されている点も覚えておきましょう。

通知書送付以降に従業員数が変わった場合

従業員数証明書の数は「健康保険・厚⽣年⾦保険被保険者標準報酬⽉額決定通知書」で確認しますが、決定通知書には当年の7月1日時点での社会保険加入者が記載されています。

そのため、贈与または相続までの間に社会保険加入者数に変更があった場合は、従業員の数を適宜増減させましょう。

また、従業員数証明書を提出する際には、資格取得確認書、または資格喪失確認通知書の写しを準備し、増減があった時系列に合わせて添付してください。

まとめ

事業承継税制では複数の会社要件があり、従業員の数え方1つとっても制度の定めにしたがって準備する必要があります。

一方で、事業承継税制の適用を受けられれば、贈与税や相続税の猶予・免除が受けられます。メリットが大きい制度ですので、積極的に活用しましょう。

「事業承継税制を活用したいけれども、手続きが難しそう」と感じるときは、専門家への相談も有効です。fundbookでは、公認会計士や税理士、司法書士などの有資格者をはじめ、専門的な知識を有した人材がスムーズな手続きをサポートします。事業承継やM&Aで不明な点がある際は、ぜひfundbookまでご相談ください。

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