
親族内や社内に後継者がいない場合でも、M&Aマッチングサイトを活用すれば事業の承継先を見つけられる場合があります。
M&Aマッチングサイトとはオンライン上でM&Aの候補先企業を探せるサービスのことで、サイトに登録されている企業の中から、譲渡企業や譲受企業を探すことができます。M&Aマッチングサイトは、後継者不足に悩む中小企業が事業承継先を探すときに活用できる方法の1つです。
本記事では、M&Aマッチングサイトのメリット・デメリットや利用時の流れ、複数のマッチングサイトの中から利用するサイトを選ぶ際のおすすめの比較方法を解説します。

安田 亮
https://www.yasuda-cpa-office.com/
幸せのM&A入門ガイド

・M&Aの成約までの流れと注意点
・提案資料の作成方法
・譲受企業の選定と交渉
・成約までの最終準備
M&Aによる事業承継をご検討の方に M&Aの基本をわかりやすく解説した資料です。
目次
M&Aマッチングサイトとは
M&Aマッチングサイトとは、オンライン上で譲渡企業や譲受企業を探せるサービスのことです。
M&Aマッチングサイトでは、オンライン上でマッチングできるプラットフォームを提供しています。
様々な企業案件が登録されているため、譲渡企業・譲受企業がそれぞれ自社の希望条件に合致する候補先の企業を探すことが可能です。
M&Aマッチングサイトを利用するケース
M&Aマッチングサイトを利用するケースとしては、事業拡大や事業承継のためにM&Aを検討する場合が挙げられます。
企業が新しい分野に進出するケースでは、M&Aによって他社を買収すればスムーズに事業を拡大できる点がメリットです。ゼロから事業をスタートさせる場合と比較すると、既存の企業が持つノウハウを取り込むほうが、事業拡大に伴う手間や時間を削減できます。
また、後継者が不在で廃業せざるを得ない場合でも、M&Aマッチングサイトを利用して売却先企業が見つかれば、事業を後世に残すことができ、従業員の雇用も守ることができます。
M&Aマッチングサイトは個人M&Aでも活用しやすい
近年、後継者不足などの影響を受けてM&Aが増加傾向にあります。また、個人で企業を買収する「個人M&A」も多く見られるようになりました。
後継者不足に悩む企業が増え、その解決策としてM&Aによる承継を検討する経営者が増加したこと、個人でも企業を買いやすい環境が整い始めたことが要因として挙げられます。
現在では全国47都道府県に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」でM&A・マッチング支援が行われている他、M&A仲介会社をはじめとする民間企業でもM&Aマッチングサービスを展開する企業が増え、以前と比較してM&Aに関する相談がしやすくなりました。
M&Aマッチングサイトもその1つです。M&Aマッチングサイトでは数百万円程度の小規模な案件を取り扱っており、個人でも情報収集やM&Aが行いやすくなっています。
▷関連記事:【弁護士監修】個人M&Aとは?メリット・注意点や小規模案件の探し方を紹介
M&Aマッチングサイト利用時の流れ
M&Aマッチングサイトは、次のような流れで利用します。
1. マッチングプラットフォームに登録
2. マッチングに必要な情報を匿名で登録
3. 気になる企業を見つけたら交渉をリクエスト
4. 条件がまとまればマッチング成立
匿名登録の際、譲渡企業は希望条件やセールスポイントを、譲受企業は買収希望条件などを、それぞれ記載します。気になる企業があれば交渉をリクエストし、相手が応じればM&Aに向けた交渉が始まる仕組みです。
一般的にM&Aマッチングサイトでは、相手企業と交渉を開始する時点で秘密保持契約を結び、相手企業から提示された資料を基に双方が検討を行います。その後、条件交渉を行い基本合意書の締結やデューディリジェンスを実施し、交渉がまとまれば成約に至ります。
▷関連記事:M&Aとは?意味・流れ・手法・費用など基本をわかりやすく解説
▷関連記事:M&Aで重要なデューディリジェンス(デューデリジェンス:DD)とは?種類や手順・費用や注意点を解説
M&Aマッチングサイトの種類
M&Aマッチングサイトは提供するサービスにより様々な種類がありますが、大きく2つのタイプに分類できます。
1)一般的なマッチングプラットフォーム
2)M&A仲介+マッチングプラットフォーム
1)一般的なマッチングプラットフォーム
譲渡企業と譲受企業がマッチング可能なプラットフォームのみを提供するタイプです。M&A戦略の立案やデューディリジェンス支援など、専門的なサポートは原則として行いません。
そのため、M&Aに関する専門的なサポートを希望する場合は、別途M&Aアドバイザーや士業と契約することになります。
一般的なマッチングプラットフォームのメリットは、譲渡・譲受企業の案件情報が多く、比較的コストがかからない点です。
ただし、アドバイザーと契約する場合は、マッチングサイトの利用料金とアドバイザーの報酬の両方を支払う必要があります。
2)M&A仲介+マッチングプラットフォーム
プラットフォームから譲渡・譲受企業を選び、その後、マッチングプラットフォームのアドバイザーの仲介によりM&Aを進めるタイプです。
仲介+プラットフォーム型の魅力は、譲渡・譲受企業のマッチングから成約まで、アドバイザーのサポートを受けながらワンストップでスムーズにM&Aを進められる点です。
一般的なマッチングプラットフォームとは異なり、プラットフォームに掲載するノンネームシートや企業概要書の作成までサポートするサイトもあります。M&Aの成約まで一貫してサポートを受けたい場合は仲介+プラットフォーム型がおすすめです。

M&Aマッチングサイトを利用するメリット
M&Aマッチングサイトはオンライン上で譲渡先・譲受先を探せるため、様々なメリットがあります。
ここでは、次の3つのメリットを解説します。
1)選択肢が豊富
2)スピーディなM&Aが可能
3)候補先企業を探す労力やコストを削減できる
1)選択肢が豊富
一般的なM&Aサービスでは、マッチングする候補先を各M&Aサービスが抱える案件から選択する方法が基本です。
M&Aサービスが紹介可能な案件には、業種・地域・案件数などの点で限りがあります。M&Aマッチングサイトはプラットフォーム上で広く会員を募ることから、数多くの企業会員・案件を所有しています。
そのため、豊富な選択肢からマッチング候補を選ぶことができ、より自社の条件・ニーズに合った企業とのM&Aが可能です。
2)スピーディなM&Aが可能
マッチングサイトはプラットフォームを活用して候補先を探すため、成約までのスピードが早いという特長があります。
一般的にM&Aには6~12ヶ月が必要といわれていますが、マッチングサイトを利用すると、その期間を短縮できることがあります。
3)候補先企業を探す労力やコストを削減できる
候補先企業を探す作業には、通常多くの労力やコストがかかるものです。
仮に一般的なM&Aサービスに依頼しても、条件に合う候補先が見つからなかった場合は、着手金のみを支払って契約を終了する可能性もあります。
特に中小企業の経営者がM&Aにためらいを感じてしまうのは、上記のように多大な労力がかかるということも一因でしょう。
マッチングプラットフォームをうまく活用できれば、多くの労力を省くことができます。
また、豊富な選択肢から候補先を選べるため成約率も高く、最終的なコストの削減も可能です。
M&Aマッチングサイトを利用するデメリット
M&Aマッチングサイトにはデメリットも存在します。利用する前にデメリットも把握し、注意すべき点を押さえておきましょう。
主なデメリットは以下の3点です。
1)サポート内容にばらつきがある
2)情報拡散の可能性がある
3)マッチング相手が見つかるまでに時間がかかることがある
1)サポート内容にばらつきがある
M&Aマッチングサイトには様々なサービスが存在します。
M&A仲介サービスやファイナンシャルアドバイザーを介したM&Aとは異なり、M&Aマッチングサイトで専任担当が付くケースは稀です。候補企業探しからクロージングに至るまで、フルサポートにならない場合もあります。
また、M&Aには法務や財務といった専門知識が必要ですが、これらをサポートするM&Aマッチングサイトは非常に少ないです。
M&Aマッチングサイトの中には、弁護士や公認会計士のような士業のアドバイスをオプションで提供するサービスもあります。利用しようとしているサービスのサポート内容を事前によく確認しましょう。
2)情報拡散の可能性がある
M&Aマッチングサイトでは、プラットフォーム上に自社の売却情報を掲載するため多数の会員の目に留まります。
一般的に、開示される内容は企業を特定できないノンネーム情報ですが、記載した内容や情報によっては企業が特定されてしまうリスクがあります。
万が一、重要な情報が拡散されてしまった場合、企業の信用低下や従業員の離反につながりかねません。掲載する情報については、どういった情報であれば問題ないかを熟慮しましょう。
3)マッチング相手が見つかるまでに時間がかかることがある
メリットとして「スピーディなM&Aが可能」という点を挙げましたが、一方で、候補先企業が見つかるまでに非常に時間を要するケースもあります。
M&A仲介会社を利用するケースでは、候補先企業の選定は基本的にアドバイザーがサポートしてくれます。しかし、M&Aマッチングサイトでは一般的に専門家によるサポートはないので、自社で全てを賄わなければいけません。M&Aマッチングサイトを通じた活動に十分な人員や労力を割けないなど、活動量によっては相手先が見つかるまで時間がかかる場合があります。
また、情報拡散のリスクを恐れるあまり譲渡企業がプラットフォームに開示する情報を曖昧なものにすると、譲受企業の目に留まりづらくなりオファーが来ない可能性もあります。
マッチングサイトによっては相手先企業を早く見つけるためのサポートを受けられることもありますが、そのようなサポート体制がないサイトでは、マッチングまでに時間がかかることがあります。
M&Aマッチングサイトの費用

M&Aマッチングサイトの利用にかかる費用は、プラットフォームにより様々です。
ここでは、一般的なマッチングプラットフォームと仲介+プラットフォーム型に分け、それぞれの大まかな傾向を紹介します。
▷一般的なマッチングプラットフォームの費用
一般的なマッチングプラットフォームでは以下のような費用がかかります。
・初期費用
・月額費用
・手数料・成功報酬(成約価額の数%)
・着手金など
このうち、譲受企業側の費用にはいくつかのパターンがあります。
・月額費用のみ
・手数料・成功報酬のみ など
また、専門家への相談やデューディリジェンス、契約書作成のサポートなどを利用した場合、別途手数料がかかるマッチングサイトも多いです。
なお、譲渡企業側の費用に関しては手数料・利用料金が無料に設定される傾向があります。
▷仲介+プラットフォーム型の費用
仲介+プラットフォーム型では、基本的にアドバイザーへの手数料という形で利用料を支払います。プラットフォームそのものの利用は無料となっているマッチングサイトが多いためです。
アドバイザーへの手数料は個別に設定されており、着手金や成功報酬などで構成されています。成功報酬は、成約価額に応じて手数料率を乗じるレーマン方式が一般的です。
仲介+プラットフォーム型では、譲渡希望の場合もそれぞれに費用が発生するケースが多くなっています。不動産仲介などとは違い、M&Aの仲介にはライセンスは不要で、業法もありません。
したがって、手数料の金額や報酬体系は業者によって大きく異なる場合があります。マッチングサイトを利用する際は手数料や利用料金をしっかり確認しましょう。
M&Aマッチングサイトの選び方と比較ポイント
M&Aマッチングサイトを利用する際は、様々なサイトを比較して自社に合ったサイトを選ぶ必要があります。M&Aマッチングサイトを選ぶ際は、特に以下の4点を確認してサイトを比較するのがおすすめです。
・企業の登録案件数
・業種や対象地域
・サポート体制
・料金体系
▷企業の登録案件数
マッチングプラットフォームに登録している企業数を重視する選び方です。譲渡企業と譲受企業それぞれの案件数が多いほど取引の可能性が広がり、最適な候補先を見つけやすくなります。
利用するM&Aマッチングサイトを決める前に、企業の登録案件数やユーザー数を確認しておきましょう。
▷業種や対象地域
マッチングサイトの中には、飲食業や不動産業など特定の業種に強みを持つサイトがあります。また、東南アジアの企業とのクロスボーダーM&Aに特化したマッチングプラットフォームのように、得意とする対象地域も多種多様です。
そのため、利用を検討しているマッチングサイトがどのような案件を得意としているか事前に確認・比較するようにしましょう。選択に迷う場合は、業種・対象地域を問わず幅広く取り扱っているマッチングサイトがおすすめです。
▷サポート体制
よりスムーズにM&Aを進めるためには、マッチングサイトのサポート体制をチェックするのも重要です。
例えば、次のような観点でサポート内容を確認してみてください。
・FAやM&Aアドバイザーへの相談が可能か
・各種専門家の紹介が可能か
・書類作成のサポートがあるか など
▷料金体系
仲介+プラットフォーム型のマッチングサイトであれば、利用料は無料のケースが多く、追加機能や専門的なサポートなどのオプションを利用すると追加料金がかかることが一般的です。
手数料の種類や金額など報酬体系はマッチングサイトによって異なるので、利用前に複数のサイトを比較して確認しておきましょう。
おすすめのM&Aマッチングサービス
M&Aマッチングサービスを利用して自社に最適な売却先や買収先を見つけるためには、登録企業数が多いサイトや豊富なネットワークを持つ仲介会社を利用するのがおすすめです。
少しでも多くの企業を比較することで、自社により適した企業が見つかる可能性が高くなります。
仲介+プラットフォーム型のM&A仲介事業を行っているfundbookは、豊富なネットワークを活かしたプラットフォームマッチングが魅力です。日本全国約25,000社の譲受企業ネットワークをもとにアドバイザーの専門的な知見やテクノロジー、AIなどを活用しながらマッチングを行い、多くの候補先から最適な企業を選択できます。
100名以上のアドバイザーが在籍しているため、各業界に精通した業界専門チームによるサポートが可能です。M&Aによる事業承継や事業拡大を検討中の方はfundbookにお気軽にご相談ください。
M&Aマッチングサイト以外のM&A相談先

M&Aマッチングサイト以外にM&Aの相談が可能なサービスには、次のようなものがあります。
・M&A仲介会社
・M&Aブティック
・弁護士や会計士などの士業事務所
▷M&A仲介会社
M&A仲介会社は譲渡企業と譲受企業の間に入り、M&Aを成功に導くための中立的なサポートを行う企業です。
M&Aではマッチング後に成約に向けた利害関係調整などの複雑なプロセスが存在しますが、M&A仲介会社を利用すると、マッチングから成約に至るまでのM&Aの全てのプロセスでサポートを受けることが可能です。
▷関連記事:M&A仲介会社とは?FAとの違いや選び方・メリット、手数料の相場を解説
▷M&Aブティック
「M&Aブティック」とは、M&Aの相談から成約までを総合的にサポートする専門家集団のことです。
銀行や証券会社、コンサルティングファームなどがM&Aブティックにあたります。
なお、ファイナンシャルアドバイザー(FA)はM&Aのサポート業務にあたる個人を指します。
M&AブティックやFAについて詳しく知りたい方は、次の関連記事もぜひご覧ください。
▷関連記事:M&Aブティックとは?仲介会社との違いや主な業務内容をわかりやすく解説
▷関連記事:M&AにおけるFAの役割とは?M&A仲介とFAの違い
▷弁護士や会計士などの士業事務所
弁護士や会計士などの士業事務所は、M&Aのプロセスにおける法務や財務の専門的な知識を持っています。
特に、M&Aの中で最難関ともいわれるデューディリジェンスについては、譲受企業からこれらの士業事務所に委託することが一般的です。
▷関連記事:M&Aにおける弁護士の役割は?メリットや費用を解説
▷関連記事:M&Aにおける公認会計士の役割と業務
▷関連記事:M&Aにおける税理士の役割とは?依頼する業務やメリット、選び方をわかりやすく解説
まとめ
M&Aのマッチングサイトとは、オンライン上で譲渡企業や譲受企業を探せるサービスです。
各マッチングサイトで提供しているマッチングの場(プラットフォーム)では、様々な業種・地域の企業と交渉ができます。マッチングサイトには多数の企業案件が登録されているので、候補先の選択肢も豊富です。M&Aにかかる時間や労力、コストを削減できる可能性もあります。
一方、マッチングサイトならではのデメリットや注意点も存在します。マッチングサイトを利用する際には、自社の状況・条件に適したサイトを選択しましょう。