M&Aで自社譲渡や他社譲受を検討している方の中には、候補先となる企業が見つからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
実際、多くの企業経営者の方が同様の悩みを抱えています。M&Aにおけるマッチングの課題は、中小企業白書(2018年版)でもすでに指摘されている問題です。
しかし、近年はオンライン上でM&Aの候補先を探せるマッチングサイトの登場により、この傾向が改善されつつあります。
本記事ではM&Aのマッチングサイトを検討されている方へ向け、概要や種類、メリットや手数料・利用料金などを詳しく解説します。
宮川 真一
幸せのM&A入門ガイド
・M&Aの成約までの流れと注意点
・提案資料の作成方法
・譲受企業の選定と交渉
・成約までの最終準備
M&Aによる事業承継をご検討の方に M&Aの基本をわかりやすく解説した資料です。
目次
M&Aマッチングサイトとは
M&Aマッチングサイトとは、オンライン上で譲渡企業や譲受企業を探せるサービスのことです。
M&Aマッチングサイトでは、オンライン上でマッチングできるプラットフォームを提供しています。
様々な企業案件が登録されているため、譲渡企業・譲受企業がそれぞれ自社の希望条件に合致する候補先の企業を探すことが可能です。
M&Aマッチングサイトは個人M&Aにも活用しやすい
近年、後継者不足などの影響を受けM&Aが増加傾向にあります。また、個人で企業を買収する「個人M&A」も多く見られるようになりました。
後継者不足に悩む企業が増え、その解決策としてM&Aによる承継を検討する経営者が増加したこと、個人でも企業を買いやすい環境が整い始めたことが要因として挙げられます。
その1つがM&Aマッチングサイトです。M&Aマッチングサイトでは数百万円程度の小規模な案件を取り扱っており、個人でも情報収集やM&Aが行いやすくなっています。
▷関連記事:【弁護士監修】M&Aは個人でもできる?小規模案件の探し方と事業継承の注意点
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M&Aマッチングサイト利用時の流れ
M&Aマッチングサイトは、次のような流れで利用します。
1:マッチングプラットフォームに登録
2:マッチングに必要な情報を匿名で登録
3:気になる企業を見つけたら交渉をリクエスト
4:条件がまとまればマッチング成立
匿名登録の際、譲渡企業は希望条件やセールスポイントを、譲受希望の場合は買収希望条件などを記載します。
本来「マッチング」は交渉の席に就くことを指しますが、本記事ではサイト利用でのM&Aの流れ全体を「マッチング」と呼んでいます。
マッチングした後に秘密保持契約を結んで資料を検討し、デューディリジェンスをして、条件交渉をすることになるため、調査と条件交渉は、自己責任となりますが、今回に関してはサイト利用でのM&Aの流れ全体をマッチングと呼んでいます。
マッチングサイト利用時は、マッチング後に秘密保持契約を結んで資料を検討、デューデリジェンスを行って条件交渉に至るため、調査と条件交渉は自己責任となります。
▷関連記事:M&Aとは?M&Aの手法や流れ、メリットを解説【動画・図解付き】
▷関連記事:「デューデリジェンス(DD)」とは?種類や手順・費用目安や注意点までくわしく解説
M&Aマッチングサイトの種類
M&Aマッチングサイトは提供するサービスにより様々な種類がありますが、大きく2つのタイプに分類できます。
1)一般的なマッチングプラットフォーム
2)M&A仲介+マッチングプラットフォーム
1)一般的なマッチングプラットフォーム
譲渡企業と譲受企業がマッチング可能なプラットフォームのみを提供するタイプです。M&A戦略の立案やデューデリジェンス支援など、専門的なサポートは原則として行いません。
そのため、M&Aに関する専門的なサポートを希望する場合は、別途M&Aアドバイザーや士業と契約することになります。
一般的なマッチングプラットフォームのメリットは、譲渡・譲受企業の案件情報が多く、比較的コストがかからない点です。
ただし、アドバイザーと契約する場合は、マッチングサイトの利用料金とアドバイザーの報酬の両方を支払う必要があります。
2)M&A仲介+マッチングプラットフォーム
プラットフォームから譲渡・譲受企業を選び、その後、マッチングプラットフォームのアドバイザーの仲介によりM&Aを進めるタイプです。
仲介+プラットフォーム型の魅力は、譲渡・譲受企業のマッチングから成約まで、アドバイザーのサポートを受けながらワンストップでスムーズにM&Aを進められる点です。
一般的なマッチングプラットフォームと異なり、プラットフォームに掲載するノンネームシートや企業概要書の作成までサポートするサイトもあります。
M&Aマッチングサイトのメリット
M&Aマッチングサイトはオンライン上で譲渡先・譲受先を探せるため、様々なメリットがあります。
ここでは、次の3つのメリットを解説します。
1)選択肢が豊富
2)スピーディなM&Aが可能
3)候補先企業を探す労力やコストを削減できる
1)選択肢が豊富
一般的なM&Aサービスでは、マッチングする候補先を各M&Aサービスが抱える案件から選択する方法が基本です。
M&Aサービスが紹介可能な案件には、業種・地域・案件数などの点で限りがあります。M&Aマッチングサイトはプラットフォーム上で広く会員を募ることから、数多くの企業会員・案件を所有しています。
そのため、豊富な選択肢からマッチング候補を選ぶことができ、より自社の条件・ニーズに合った企業とのM&Aが可能です。
2)スピーディなM&Aが可能
マッチングサイトはプラットフォームを活用して候補先を探すため、成約までのスピードが早いという特長があります。
一般的にM&Aには6~12ヶ月が必要といわれていますが、マッチングサイトを利用すると、その期間を短縮できることがあります。
3)候補先企業を探す労力やコストを削減できる
候補先企業を探す作業には、通常多くの労力やコストがかかるものです。
仮に一般的なM&Aサービスに依頼しても、条件に合う候補先が見つからなかった場合は、着手金のみを支払って契約を終了する可能性もあります。
特に中小企業の経営者がM&Aにためらいを感じてしまうのは、上記のような敷居の高さも一因でしょう。
マッチングプラットフォームをうまく活用できれば、多くの労力を省くことができます。
また、豊富な選択肢から候補先を選べるため成約率も高く、最終的なコストの削減も可能です。
M&Aマッチングサイトのデメリット
M&Aマッチングサイトにはデメリットも存在します。利用する前にデメリットも把握し、注意すべき点を押さえておきましょう。
主なデメリットは以下の3点です。
1)サポート内容にばらつきがある
2)情報拡散の可能性がある
3)マッチング相手が見つかるまでに時間がかかることがある
1)サポート内容にばらつきがある
M&Aマッチングサイトには様々なサービスが存在します。
M&A仲介サービスやファイナンシャルアドバイザーを介したM&Aとは異なり、M&Aマッチングサイトでは専任担当が付くケースは稀です。候補企業探しからクロージングに至るまで、フルサポートにならない場合もあります。
また、M&Aには法務や会計といった専門知識が必要ですが、これらをサポートするM&Aマッチングサイトは非常に少ないです。
M&Aマッチングサイトの中には、弁護士や公認会計士のような士業のアドバイスをオプションで提供するサービスもあります。利用しようとしているサービスがどのようなサポート内容となっているか、事前に確認しましょう。
2)情報拡散の可能性がある
M&Aマッチングサイトでは、プラットフォーム上に自社の売却情報を掲載するため多数の会員の目に留まります。
一般的に、開示される内容は企業を特定できないノンネーム情報ですが、記載した内容や情報によっては企業が特定されてしまうリスクもあります。
万が一、重要な情報が拡散されてしまった場合、企業の信用低下や従業員の離反につながりかねません。掲載する情報については、どういった情報であれば問題ないかを熟慮しましょう。
3)マッチング相手が見つかるまでに時間がかかることがある
メリットとして「スピーディなM&Aが可能」という点を挙げましたが、一方で候補先企業が見つかるまでに非常に時間を要するケースもあります。
M&A仲介サービスなどでは、候補先企業の選定は基本的にアドバイザーがサポートしてくれます。けれども、M&Aマッチングサイトでは、自社で全てを賄う必要が出てくるため、活動量によっては長期間に及ぶ可能性もあります。
また、情報拡散の可能性を恐れるあまり、譲渡企業がプラットフォームに開示する情報を曖昧なものばかりにしてしまうと、譲受企業の目に留まりづらくなります。なかなかオファーが来ない可能性もあるでしょう。
そのような部分をサポートする体制がないサイトでは、マッチングまでに時間がかかってしまうこともあります。
M&Aマッチングサイトの費用
M&Aマッチングサイトの利用費用は、プラットフォームにより様々です。
ここでは、一般的なマッチングプラットフォームと仲介+プラットフォーム型に分け、それぞれの大まかな傾向を紹介します。
▷一般的なマッチングプラットフォームの費用
一般的なマッチングプラットフォームでの費用は、サイトによって様々です。
次のような費用が発生する可能性があります。
・初期費用
・月額費用
・手数料・成功報酬(成約価額の数%)
・着手金など
このうち、譲受企業側の費用にはいくつかのパターンがあります。
・月額費用のみ
・手数料・成功報酬のみ など
また、専門家への相談、デューデリジェンスや契約書作成のサポートなどを利用した場合、別途手数料がかかるマッチングサイトも多いです。
なお、譲渡企業側の費用は、手数料・利用料金が無料に設定される傾向があります。
▷仲介+プラットフォーム型の費用
仲介+プラットフォーム型の費用は、基本的にアドバイザーへの手数料という形で支払います。プラットフォームそのものの利用は無料となっているマッチングサイトが多いためです。
アドバイザーへの手数料は個別に設定されており、着手金や成功報酬などで構成されています。成功報酬は、成約価額に応じて手数料率が乗算されるレーマン方式が一般的です。
仲介+プラットフォーム型では、譲渡希望の場合もそれぞれに費用が発生するケースが一般的です。不動産仲介などとは違い、M&Aの仲介にはライセンスは不要で、業法や監督官庁もありません。
したがって、業者によって、手数料は大きく異なる場合もあります。ご利用の際は手数料や利用料金をしっかり確認しましょう。
M&Aマッチングサイトの選び方
M&Aマッチングサイトを選ぶポイントは、主に次の3つです。
・企業の登録案件数
・業種や対象地域
・サポート体制
M&Aマッチングサイトを利用する際の参考としてください。
▷企業の登録案件数
マッチングプラットフォームに登録している企業数を重視する選び方です。譲渡企業と譲受企業それぞれの案件数が多いほど、取引の可能性が広がり、最適な候補先を見つけやすくなります。
利用するM&Aマッチングサイトを決める前に、企業の登録案件数やユーザー数を確認しておきましょう。
▷業種や対象地域
マッチングサイトの中には、飲食業や不動産業など特定の業種に強みを持つサービスもあります。また、東南アジアの企業とのクロスオーバーM&Aに特化したマッチングプラットフォームのように、得意とする対象地域も多種多様です。
そのため、利用を検討しているマッチングサイトがどのような案件を得意としているか事前に確認してください。選択に迷う場合は、業種・対象地域を問わず幅広く取り扱っているマッチングサイトがおすすめです。
▷サポート体制
よりスムーズにM&Aを進めるためには、マッチングサイトのサポート体制をチェックするのも重要です。
例えば、次のような観点でサポート内容を確認してみてください。
・FAやM&Aアドバイザーへの相談が可能か
・各種専門家の紹介が可能か
・書類作成のサポートがあるか など
また、サポートを受ける場合に別途料金が発生するかどうかもチェックしておきましょう。
代表的なM&Aマッチングサービス【7社】
代表的なM&Aマッチングサービスを7社ご紹介します。
サービス名 | fundbook(当社) |
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URL | https://fundbook.co.jp/ |
タイプ | 仲介+プラットフォーム |
特徴 | M&AアドバイザーとM&Aプラットフォームを掛け合わせた”ハイブリッド型仲介サービス”を提供。マッチングにおける属人性を排したフェアなM&Aを、着手金無料で実現。 |
サービス名 | SMART |
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URL | https://www.strike.co.jp/smart/ |
タイプ | 仲介+プラットフォーム |
特徴 | 1998年にSMARTをオンライン上に開設。日本全国から場所を問わず、オンラインを活かした意外性のあるマッチングを実現。 |
サービス名 | BATONZ |
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URL | https://batonz.jp/ |
タイプ | 一般的なマッチングプラットフォーム |
特徴 | 日本最大級のM&Aマッチングプラットフォーム。多数の譲渡案件・会員を抱えており、累計成約数2,000件以上を誇る。 |
サービス名 | TRANBI |
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URL | https://www.tranbi.com/ |
タイプ | 一般的なマッチングプラットフォーム |
特徴 | 日本最大級のM&Aマッチングプラットフォーム。多数の譲渡案件を掲載し、多数の会員を抱えており、累計成約数2,000件以上を誇る。 |
サービス名 | M&Aサクシード |
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URL | https://ma-succeed.jp/ |
タイプ | 一般的なマッチングプラットフォーム |
特徴 | Visionalグループが運営するM&Aマッチングプラットフォーム。完全審査制で掲載案件の質を高めつつ、公募など独自の取り組みを展開。 |
サービス名 | M&Aクラウド |
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URL | https://macloud.jp/ |
タイプ | 一般的なマッチングプラットフォーム |
特徴 | M&A仲介業者の登録が不可となり、譲渡・譲受企業の直接のやり取りに特化したM&Aマッチングプラットフォーム。IT系の譲渡案件が豊富。 |
サービス名 | スピードM&A |
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URL | https://speed-ma.com/ |
タイプ | 一般的なマッチングプラットフォーム |
特徴 | 譲渡価額 1円~50億円まで様々な規模の譲渡案件が掲載されているM&Aマッチングプラットフォーム。プライベートチャット機能で、スピーディなやり取りを実現。 |
M&Aマッチングサイト以外のM&A相談先
M&Aマッチングサイト以外にM&Aの相談が可能なサービスには、次のようなものがあります。
・M&A仲介会社
・M&Aブティック
・弁護士や会計士などの士業事務所
▷M&A仲介会社
M&A仲介会社は譲渡企業と譲受企業の間に入り、M&Aを成功に導くための中立的なサポートを行う企業です。
M&Aにおいてはマッチング後に成約に向けた利害関係の調整などの複雑なプロセスが存在しますが、M&A仲介会社を利用するとマッチングから成約に至るまでのM&Aの全てのプロセスでサポートを受けることが可能です。
▷関連記事:M&A仲介とは?仲介会社のメリットや選び方、FAとの違い【動画付き】
▷M&Aブティック
「M&Aブティック」とは、M&Aの相談から成約までを総合的にサポートする専門家集団のことです。
銀行や証券会社、コンサルティングファームなどがM&Aブティックにあたります。
なお、ファイナンシャルアドバイザー(FA)はM&Aのサポート業務にあたる個人を指します。
M&AブティックやFAについて詳しく知りたい方は、次の関連記事もぜひご覧ください。
▷関連記事: M&Aブティックとは?仲介会社との違いや主な業務内容をわかりやすく解説
▷関連記事:M&AにおけるFAの役割とは?M&A仲介とFAの違い
▷弁護士や会計士などの士業事務所
弁護士や会計士などの士業事務所は、M&Aのプロセスにおける法務や財務の専門的な知識を持っています。
特に、M&Aの中で最難関ともいわれるデューデリジェンスについては、譲受企業からこれらの士業事務所に委託することが一般的です。
▷関連記事:M&Aにおける弁護士の役割と業務
▷関連記事:M&Aにおける公認会計士の役割と業務
▷関連記事:M&Aにおける税理士の役割と業務
まとめ
M&Aのマッチングサイトとは、オンライン上で譲渡企業や譲受企業を探せるサービスです。
各マッチングサイトで提供しているマッチングの場(プラットフォーム)では、様々な業種・地域の企業と交渉ができます。マッチングサイトには多数の企業案件が登録されているので、候補先の選択肢も豊富です。
また、M&Aにかかる時間や労力、コストを削減できる可能性もあります。
一方で、マッチングサイトならではのデメリットや注意点も存在します。マッチングサイトを利用する際には、自社の状況・条件に適したサイトを選択しましょう。