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2023/10/03

M&Aの失敗事例10選!要因や買収側・売却側がおさえるべきポイントを解説

M&Aの失敗事例10選!要因や買収側・売却側がおさえるべきポイントを解説

M&Aは、シェアの拡大や新規市場への参入、シナジー効果の獲得など、企業の継続と成長を目的として実施されます。ただし、M&Aを成功させて事業を成長させる企業もあれば、失敗に終わり損失を出してしまう企業も存在します。

本記事では、M&Aの失敗事例10選を紹介します。また、M&Aが失敗する要因や失敗を避けるためのポイントを買収側と売却側の視点から解説しているので、ぜひ参考にしてください。

▷関連記事:日本企業のM&Aは飛躍的に増加!増えている要因や成功・失敗事例を紹介

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M&Aの失敗とは

M&Aの失敗の定義は立場により異なりますが、判断基準の1つに「当初の目的を達成できないこと」があります。例えば、「目標としたシナジー効果が得られなかった」「M&A後に業績が低迷した」「M&A後に簿外債務が見つかった」など、失敗の理由はさまざまです。

M&Aは、目的達成率が80%を超えると「成功」と判断される場合が多いですが、80%を超えたケースはそう多くありません。過去の調査によれば、目的達成率80%をクリアした企業は2~4割といわれています。M&Aは企業の成長手段として、また事業を承継する方法として有用な手法ですが、実施には慎重な検討が必要です。


▷関連記事:M&Aとは?M&Aの意味・流れ・手法など基本を分かりやすく【動画付】

M&Aが失敗する要因

それでは、どのような要因でM&Aは失敗に終わってしまうのでしょうか。ここからは、M&Aが失敗する要因を買収側企業と売却側企業に分けて解説します。

買収側企業

買収側企業が失敗する主な理由は以下のとおりです。

1. 企業買収自体が目的になってしまう
2. デューデリジェンスが不十分だった
3. M&Aで「何を得たいか」という戦略性が欠如していた
4. PMIが不十分で社員や規定を統合できなかった

M&Aは成約が目的ではありません。成約後に経営統合(PMI)を実施し、事業を成長させてこそ成功を得られます。M&Aは目的達成の手段の1つであることを把握し、最終的なゴールを見据えて戦略的に実施しましょう。

また、デューデリジェンスが不十分であり、簿外債務などがあとで見つかるケースも存在します。専門家に相談しながら進めることで、これらのリスクを事前に予測し回避できる可能性があります。

売却側企業

売却側企業が失敗する主な理由には、以下の項目が挙げられます。

1. 交渉中の不誠実な対応
2. 買い手側の要求を過度に聞き入れてしまった
3. 株主や役員(キーマン)の同意を得られなかった
4. M&Aの交渉中に大幅な業績悪化が起こった

売却側の理由には、「交渉中の不誠実な対応」や「買い手側の要求を過度に聞き入れてしまった」ケースなどがあります。M&Aでは企業や事業の売買が行われるため、買収側と売却側の信頼関係の構築は不可欠です。また、買い手側の要求を一方的に聞き入れてしまうと、M&A後に離職者が増えたり従業員のパフォーマンスが低下したりするなど、どこかにしわ寄せがいく可能性があるため、注意が必要です。

なお、失敗の要因に関する詳しい内容は以下の記事でまとめています。興味のある方はあわせてご覧ください。
▷関連記事:M&Aの成功率は2〜4割?企業買収が失敗する4つの理由と対応策

M&Aの失敗例

M&Aを成功させるために、過去の失敗事例から学ぶことはとても有用です。以下では、M&A失敗事例10選を紹介します。

NTTコミュニケーションズのM&A事例

2000年5月、NTTコミュニケーションズはアメリカのインターネット・ソリューション・プロバイダーであるベリオ社を買収しました。世界の情報流通市場への参入を図るNTTコミュニケーションズにとって、ベリオ社の買収はアメリカ市場参入の足掛かりとなるためです。

しかし、買収後のベリオ社の業績は低迷して株価が著しく低迷したことから、2001年にはベリオ社などの評価損として7870億円の特別損失を計上しています。

古河電気工業のM&A事例

2001年、古河電気工業はアメリカのルーセント・テクノロジーから光ファイバ・ケーブル部門「オプティカル・ファイバ・ソリューションズ」を買収しました。古河電気工業はこのM&Aで光関連製品市場の世界シェア第2位に躍り出ました。

しかし、ITバブル崩壊の影響を受け、2004年3月期にはのれん代の減損などで1,600億円を超える特別損失を計上しています。

新生銀行のM&A事例

2004年、新生銀行は経営再建中の信販大手アプラスの第三者割当増資約350億円を引き受け、同社の筆頭株主となりました。

しかし、過払金訴訟が相次ぐ中アプラスの業績は低迷し、2007年にはのれん代と無形資産の減損処理で1,010億円の特別損失を出し、上場以来初の赤字を記録しています。また、2010年にはさらなる減損リスクを回避するため、アプラス株を子会社へ譲渡しました。

東芝のM&A事例

2006年、東芝はイギリスのBNFLとアメリカのウェスチングハウス社を54億ドルで買収しました。グローバルな原子力発電設備・燃料関連事業を展開するウェスチングハウス社をグループ企業とすることで、原子力事業の強化を図るためです。

しかし、のちにウェスチングハウス社が巨額の赤字を抱えていたことが判明し、損失の穴埋めでメモリー事業を売却したうえに、ウェスチングハウス社向け債権を大幅に割引して売却しています。

第一三共のM&A事例

2008年、第一三共はインドの後発医薬品メーカーのランバクシーを吸収合併しました。主な目的には、当時世界的に拡大していた後発医薬品需要の取り込みと、ランバクシーが持つ販路の活用で自社の新薬売上拡大が挙げられます。

しかし、ランバクシーのずさんな生産管理体制に起因したトラブルが発生し、2009年には4,000億円弱の減損処理が行われました。最終的には、2014年にランバクシーを実質売却しています。

パナソニックのM&A事例

2009年12月、パナソニックは約400億円で三洋電機を子会社化しました。家電事業を展開する両社の技術やモノづくりを1つとし、シナジー効果を得ることが主な目的です。

しかし、三洋電機の主要な事業であった民生用リチウムイオン電池の収益が海外企業との競争で悪化します。パナソニックは2012年3月期に三洋電機ののれん減損処理額を2,500億円と見込み、当時過去最大の赤字を出しました。

資生堂のM&A事例

2010年、資生堂はアメリカの自然派化粧品会社ベアエッセンシャルを買収しました。買収の目的には、グローバル市場への進出と成長市場への積極投資などが挙げられます。

しかし、自然派化粧品の競合企業の台頭が相次ぎ、ベアエッセンシャルの売上高は伸び悩みます。2013年と2017年にはベアエッセンシャルの減損処理が発生し、最終的にはのれん代とほぼ同額の900億円超の損失を計上しました。

キリンホールディングスのM&A事例

2011年、キリンホールディングスは新市場開拓のためブラジルのスキンカリオール社を100%子会社化しました。ブラジルでビール事業や清涼飲料水事業を展開する同社の買収により、当時成長を続けていたブラジル市場でのシェア拡大が主な狙いです。

しかし、不振が続いたため特別損失として約1140億円を計上し、1949年のキリンビール上場以来初の赤字を記録しました。

マイクロソフトのM&A事例

2013年、マイクロソフト社はノキア社の携帯電話事業を72億ドルで買収しました。背景には、当時伸び悩んでいたモバイル市場での売上拡大を目指す同社の意図が挙げられます。

しかし、携帯端末事業は赤字が続き、スマートフォン市場でのシェアも3%に低迷しました。2015年には76億ドルの評価損を計上しています。

日本郵政のM&A事例

2015年5月、日本郵政はオーストラリアの物流大手トール・ホールディングスを約6,200億円で買収しました。国際物流市場への参入を企図したM&Aでしたが、同事業は業績不振で巨額の損失を計上します。2021年にはトール・ホールディングスのエクスプレス事業を、オーストラリアのファンド「アレグロ」へ約7億円で売却しています。

M&Aで失敗しないためのポイント

M&Aの失敗事例10選!要因や買収側・売却側がおさえるべきポイントを解説

M&Aでは、時として巨額の資金を要します。のちに多額の損失を計上することとならないよう、事前の準備が大切です。以下では、M&Aで失敗しないためのポイントを「買収側と売却側双方」「買収側」「売却側」の3つの視点から説明します。

買収側と売却側の双方がやるべきこと

失敗を避けるために必要なポイントには、主に以下の項目が挙げられます。

・自社の分析
・M&Aの目的の明確化
・M&Aのスキームやプロセスの整理
・相手先企業のリスト作成
・アプローチ方法(直接orマッチング)
・M&A後の経営統合(PMI)
・専門家の知識を借りる

事前の準備で特に大切なポイントは、自社の分析です。買収側であれば、自社の経営状況を分析し、どのような事業の買収が適切であるかを把握します。一方、売却側は自社の強みや課題を分析しておくと、買収側との円滑な交渉が期待できます。

なお、M&Aでは成約後の経営統合(PMI)も重要な課題です。PMIは以下の記事で詳しく解説しています。
▷関連記事:M&AにおけるPMIとは?重要性や実施のタイミング、手順を解説

買収企業側がやるべきこと

買収企業側では、主に以下の項目の準備が求められます。

・デューデリジェンスを行う
・適切な買収価格を見極める
・のれんの減損を適切に見積もる
・統合後のPMIを速やかに行えるように準備をする

中でも、デューデリジェンスの実施は重要な項目です。簿外債務の有無や資産の確認など、デューデリジェンスで得られる情報は貴重です。中小企業でデューデリジェンスにかかる費用が負担となる場合は、実施する範囲や項目を限定して行う方法もあります。

売却企業側がやるべきこと

売却企業が失敗を避けるためには、以下のポイントに注意しましょう。

・譲れない条件を主張する
・人材の流出を防ぐため早めに根回しや協議を行う
・売却の準備や計画を丁寧に行う

事業の売却を急ぐあまり、相手の条件を一方的に聞き入れるばかりでは、M&Aをうまく行うことはできません。自社にとって譲れない条件と妥協できる条件を整理し、譲れない部分は丁寧に主張することも、M&Aを成功させるポイントです。

まとめ

M&Aでは、期待していた目標を達成できず減損処理を行うなど、失敗に至るケースが数多く存在します。失敗を避けるためには、事前の準備が大切です。自社の分析や最適なスキームの選択など、プロジェクトチームを組むなどして複数の課題を着実にクリアしていきましょう。

なお、M&Aの多様な課題の解決には、専門家のサポートも役立ちます。fundbookでは、各業界に精通したアドバイザーや、公認会計士や司法書士などの有資格者が専門的な視点からの支援を提供します。M&Aでお困りの際はfundbookまでご相談ください。

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