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2023/10/03

敵対的買収とは?仕組みやメリット・デメリット、事例や防衛策を解説

敵対的買収とは?仕組みやメリット・デメリット、事例や防衛策を解説

買収はM&Aの手法の1つですが、買収にも株式譲渡やTOB(株式公開買付)、第三者割当増資など、さまざまな方法があります。このうち、買主・売主・対象会社の全員から合意を得たTOBを「友好的買収」、合意なく買主が一方的に行うTOBを「敵対的買収」といいます。

敵対的買収を仕掛けられた場合、何も対策を講じていないと、条件に関わらずそのまま買収されてしまうため、万が一に備えて、防衛策や事前にできる対策を理解しておいたほうが良いでしょう。

本記事では、敵対的買収の基礎知識や事例を解説し、敵対的買収を仕掛けられた場合の対処法や、事前にできる対策を紹介します。敵対的買収について知りたい方は参考にしてください。

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敵対的買収とは

買収はM&Aの手法の1つであり、買収先企業との関係性から、敵対的買収と友好的買収に大別されます。

敵対的買収とは、買収先企業と株式の売買についての合意がない状態で株式を買い集めることを指し、買収先企業の実質的な支配が目的です。一般的には、議決権が行使できる総発行株式の50%超の取得を目指します。

合意がない状態で経営権を強引に取得するため、買収される側にとって「敵対的」と呼ばれています。

敵対的買収での株式の買い集めは、証券取引所を通さない取引となる株式公開買付(TOB)の形で行われるため、買収先企業は株式を公開している上場企業です。

敵対的買収では、TOBの株式価格が市場価格より高くなる傾向にあるため、株主が株式売却をする可能性も考えられます。しかし、事前に合意をしていないため売却に応じないケースも多く、買収が失敗に終わる可能性が高いのも特徴です。

ちなみに、友好的買収は、買収する側・される側の双方が合意している買収を意味します。

敵対的買収のメリット

敵対的買収を行うメリットには以下のようなことが考えられます。

・企業規模の拡大
・事業におけるシナジー効果
・早期の組織再編

各項目を解説するので参考にしてください。

企業規模の拡大

事業の成長には、人・物・ノウハウが欠かせません。買収先企業が同じ領域の事業を展開しているのであれば、買収によって既存の事業をより強化できます。

また、新規領域への進出を計画している場合は新規開拓する必要がなく、手間やコストを削減できるでしょう。

事業におけるシナジー効果

買収では、買収先の資源によって、以下に挙げるシナジー効果が期待できます。

・販売シナジー:販路の拡大やブランドイメージの活用
・生産シナジー:仕入れ・物流コストの削減
・投資シナジー:研究の効率化や技術・ノウハウの統合
・経営シナジー:より戦略的な経営が可能

ただし、顧客や従業員への配慮を怠ると契約の解除や離職が発生し、思うようなシナジー効果が発揮されない可能性があるため注意しましょう。

早期の組織再編

たとえ既存の経営陣の方針が企業の成長を阻害するものであっても、組織が大きい場合はすぐに改革を行えません。しかし、買収が成功すれば買収先の経営陣を刷新できるため、早期の組織再編が可能です。

敵対的買収のデメリット

敵対的買収でのデメリットには以下のようなことが考えられます。

・成功率が低い
・買収後の内部統制が難しい
・ネガティブな印象が付きまとう

以下で、各項目を詳しく解説します。

成功率が低い

敵対的買収はTOBで株式を買い集めるため、市場の株価より高値が付けられる傾向にあります。したがって、友好的買収よりも多額の株式取得資金が必要になります。

また、合意を得ずに行うため、買収先企業が何かしらの防衛策を講じる可能性が高く、買収が失敗に終わるリスクもあります。

買収後の内部統制が難しい

敵対的買収は強引にM&Aを行うため、買収後に従業員が大量に離職してしまう可能性があります。買収先が専門的な領域である場合、従業員の流出は特に大きな痛手となるでしょう。

既存従業員への待遇や労働環境については十分に配慮し、しっかり説明して理解を得なくてはいけません。

ネガティブな印象が付きまとう

敵対的買収は、簡単に言うと資本力で強引に買収先企業を取り込むことです。したがって、買収側企業に対する世間のイメージが悪くなる可能性があります。

イメージが悪くなると既存の事業にも影響が生じかねないため、買収するに至った経緯や買収が社会全体に及ぼすポジティブな影響などについて、プレスリリースなどで丁寧に説明をし、世間からの理解を得ることが大切です。

狙われやすい企業の特徴

敵対的買収とは?仕組みやメリット・デメリット、事例や防衛策を解説

敵対的買収を仕掛けられやすい企業には、次のような特徴があります。

・企業価値に対して株価が安い
・社会的に価値の高い技術や特許を有している
・警戒が甘い

どんなに買収しやすくても、買収する企業に価値がなくては買収する理由がありません。買収によって短期間で株価の上昇が見込める企業や、他社にはない魅力的な事業やコンテンツを展開している企業など、買収によって利点がある場合は狙われる可能性が高いです。

また、短期間で業績を伸ばし、敵対的買収に対する十分な備えをせずに上場した企業も、ターゲットになりやすい傾向があります。

敵対的買収の事例

ここからは、敵対的買収の代表的な事例として、成功事例1つ、失敗事例を2つ紹介します。事例を知ることで、敵対的買収がどのようなものなのかイメージできるでしょう。

大手企業同士の敵対的TOBが成立した伊藤忠商事とデサントの成功事例

2019年3月、筆頭株主であった伊藤忠商事は、デサントの成長戦略について、デサント経営陣との建設的な協議を行えないと判断し、敵対的TOBを実施しました。

成功要因には、伊藤忠商事がすでにデサントの株式の30%を保有していたことに加え、買い付け上限が40%だったため、従来のTOBに比べて成立ハードルが低かったことなどが挙げられます。

ホワイトナイトの存在に助けられた王子製紙と北越製紙の失敗事例

2006年9月、製紙1位の王子製紙は、経営統合することで北越製紙の導入した最新鋭の設備を共同利用し、需給バランスを保つという交渉を行いましたが、交渉が決裂したため、敵対的TOBに踏み切りました。

しかし、北越製紙の第三者割当増資を三菱商事が引き受けたと同時に、製紙第2位の日本製紙も北越製紙の株式を取得したため、TOBは不成立となり、敵対的買収は失敗に終わっています。

奇襲に奇策で対応したライブドアとニッポン放送の失敗事例

2005年2月、ニッポン放送がフジテレビの株式を大量に保有していたことから、ライブドアは企業価値に対して株価が割安なニッポン放送の株式を取得し、間接的にフジテレビを支配下に置こうとしました。ライブドアは当時、規制が厳しくなかった東証の時間外取引という奇襲で、ニッポン放送の株式の35%を取得します。

追い込まれたニッポン放送は、自らが保有するフジテレビの株式を現SBIホールディングスに「貸株」として提供し、ライブドアがフジテレビの経営に口を出せないよう取り計らいました。

ライブドアはニッポン放送株の過半数を取得しましたが、両社間で事態打開の協議が進められ、両社は資本提携と業務提携などについて基本合意に達しました。

ライブドアが当初設定していた「フジテレビに対する影響力の行使」という目的は達成できず、敵対的買収は失敗しています。

敵対的買収を仕掛けられた場合の防衛策

事例でもあるように、敵対的買収には防衛策が存在します。主な防衛策の名称と特徴は以下のとおりです。

・ホワイトナイト:友好的な第三者に自社株式の大量取得をしてもらう
・クラウンジュエル:収益性の高い事業や価値のある資産を売却し、買収意欲を削ぐ
・パックマンディフェンス:敵対的買収を仕掛けてきた企業に対して、逆に買収を仕掛ける

なお、いずれも敵対的買収を完全に防衛できるわけではなく、一定のリスクをはらんでいるため、買収を仕掛けられないよう対策を講じておく必要があるでしょう。


▷関連記事:買収防衛策とは?買収防衛策の種類や具体例・事例
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敵対的買収を仕掛けられないための対策

敵対的買収を仕掛けられた後に防衛策を講じていては後手に回ってしまうため、あらかじめ買収を仕掛けられないための対策や予防策を講じる必要があります。対策や予防策には以下の4つがあります。

・株式非公化:MBO・LBOなどによる、株式の非公開化をすることで、他企業が株式の買い集めをできない状態にする
・ポイズンピル:予め定めた条件を満たした場合、既存の株主が、時価より安い価格で新株を購入できる権利を付与しておく
・ゴールデン(ティン)パラシュート:事前に経営陣(従業員)の退職金を巨額にすることで、買収コストの引き上げを行う
・黄金株の発行:株主総会や取締役会において重要議案を否決できる特別な株式を発行することで、敵対的買収者の提案を拒否させる

上記の対策を講じているにも関わらず買収を仕掛けられた場合に備え、ホワイトナイトになってくれるような企業との付き合いを密にするなども、有効な対策といえます。

まとめ

敵対的買収は、買収先企業の合意を得ずに大量の株式を取得し、買収先企業を支配下におく手法です。

仕掛けられた際の防衛策が存在するため失敗に終わるケースも多いですが、買収側の企業にとってメリットが大きいため、油断していると足下をすくわれかねません。敵対的買収を仕掛けられる前に、あらかじめ対策や予防策を講じておくようにしてください。

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