業界毎の事例

2025/05/16

タクシー業界のM&A動向は?譲渡・譲受のメリットや相場、2024年最新事例も紹介

タクシー業界のM&A動向は?譲渡・譲受のメリットや相場、2024年最新事例も紹介

タクシー業界は、ドライバー不足や高齢化、ライドシェア企業の参入など多くの課題に直面しており、近年、その解決方法としてM&Aが注目されています。

実際、タクシー会社の間ではM&Aが活発に行われており、実施した多くの企業が問題の解消や業績の改善につながっているため、気になる方はメリットや事例などをチェックしましょう。

本記事では、タクシー業界の現状やM&A動向を分析し、メリットやデメリット、成功するためのポイント、事例などを解説します。

\資料を無料公開中/
企業価値100億円の企業の条件とは
資料
・100億円程度の譲渡価額がついたM&A事例
・企業価値10億円と100億円の算出ロジックの違い
・業種ごとのEBITDA倍率の参考例
・企業価値100億円に到達するための条件

自社の成長を加速させたい方は是非ご一読ください!
1分で入力完了!

タクシー業界の現状

タクシー業界のM&A動向は?譲渡・譲受のメリットや相場、2024年最新事例も紹介

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会が発表した「TAXI TODAY in Japan 2024」の調査によると、2022年時点でタクシー事業者数は5,580社、車両数は173,041台あり、そのうちの26,979台が個人タクシーです※1

タクシー業界の事業者数や車両数はともに、最盛期の2007年度から減少傾向が続いています。

また、帝国データバンクの「全国タクシー・ハイヤー業界動向調査」によると、タクシー会社のうちの1割超が「10年で人手が半減している」と回答しており、人手不足が大きな課題となっています※2

一部の観光エリアではインバウンドにより大手タクシー会社の売上が増えているものの、知名度の低い地方や、経営資源が乏しい中小企業では乗務員不足や乗務員の高齢化が深刻化しています。

さらに、インバウンド需要の増加やキャッシュレス決済の普及などによって、通訳や多言語対応などの追加業務や決済方法多様化に対応するコストなどが発生し、タクシー会社にとって大きな負担となっています。

このような様々な影響から、タクシー業界の半数近くが赤字経営を余儀なくされており、経営の見直しやM&Aを通じた業務再編が今後の生存戦略として注目されています。

※1出典:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「TAXI TODAY in Japan 2024
※2出典:帝国データバンク「全国タクシー・ハイヤー業界動向調査

タクシー業界のM&A動向

タクシー業界が抱えている主な問題点は以下のとおりです。

・ドライバー不足
・人件費や設備費の高騰
・ライドシェア参入による競合の増加

近年、タクシー業界では上記の問題点を解決するためのM&Aが実施される傾向があり、大手から中小企業まで、経営環境の改善を目指した動きが加速しています。

例えば、2020年にはタクシー大手の第一交通産業がメガバンクから巨額の融資を受け、積極的なM&A戦略に乗り出しました。同社は、従来の年間1,000人程度の採用規模を2025年3月期には2,400人にまで拡大する計画です。

上記の事例以外にも、ドライバーや台数増加を狙った買収や資金繰りに苦しむ会社の売却、さらに新しく始まったライドシェアに関連したM&Aが増加し、今後ますます業界全体の構造改革が進むと見られています。

タクシー会社のM&Aのメリット

タクシー会社のM&Aのメリットを譲渡側と譲受側で順番に解説します。

譲渡側のメリット

タクシー会社のM&Aにおける譲渡側のメリットは以下のとおりです。

・従業員の雇用を守ることができる
・後継者問題を解消できる
・有力グループへの参入によりさらなる事業発展が期待できる

上記を順番に解説します。

従業員の雇用を守ることができる

M&Aによって会社が存続できれば、従業員の雇用を守ることができます。

他企業に引き継がれることで、リストラのリスクを回避し、従業員は引き続き安定した職場環境を維持できます。

また、売却時の条件として雇用の継続を契約に盛り込むことも一般的です。従業員の雇用を維持したい場合はM&Aによる存続を検討しましょう。

後継者問題を解消できる

タクシー業界では、従業員の高齢化に加え、経営者自身の高齢化が深刻な問題となっています。

経営者が引退を考えても後継者が見つからないケースは珍しくなく、結果として事業の引き継ぎが滞ってしまう例も少なくありません。

M&Aによる事業譲渡を通じて適切な引き継ぎが行われれば、後継者問題を解消し、会社を存続することができます。

後継者問題を抱えるタクシー会社は、M&Aの実施を検討してみましょう。

有力グループへの参入によりさらなる事業発展が期待できる

M&Aにより有力グループの傘下に入ることで、自社の事業基盤を強化するチャンスが広がります。

現在のタクシー業界では、インバウンド需要への対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、ライドシェア企業との競争など、多くの課題に直面しており、中小企業が単独で対応するのは困難な状況になりつつあります。

有力なグループの傘下に入ることで、豊富な資金力や蓄積された経営ノウハウを活用し、タクシー業界が抱える課題に対処できる可能性が高まります。

例えば、キャッシュレス決済の導入や多言語対応のシステム整備など、中小企業単独では難易度の高い取り組みも、M&Aによって実現が可能です。

M&Aの実施によって、競争力の強化や事業のさらなる拡大が期待できると覚えておきましょう。

譲受側のメリット

タクシー会社のM&Aにおける譲受側のメリットは以下のとおりです。

・経営資源を確保できる
・ノウハウが得られる
・入構権を獲得できる

上記を順番に解説します。

経営資源を確保できる

経営資源とは、企業が事業を継続し成長させるために必要なリソースを指します。

タクシー業界における経営資源としては、ドライバーの確保や運行するタクシーの台数などが重要な要素ですが、現在のタクシー業界では経営資源が慢性的な減少傾向にあり、業界全体での課題となっています。

M&Aは経営資源を確保する有効な戦略の1つで、他社からドライバーや車両を引き継ぐことで、事業運営に必要なリソースの補充も可能です。

人手不足を解消したい場合や競争力の強化を図りたい場合は、M&Aの実施を検討しましょう。

ノウハウが得られる

M&Aによって相手企業が持つノウハウや運営方法を吸収すれば、事業の効率化や成長に役立てることができます。

特に、長年の経営で蓄積された地域に根差した顧客対応や運行管理のノウハウは、買収後の事業運営に大きな効果をもたらす可能性があります。

また、異業種からタクシー業界へ新規参入する場合、ゼロからノウハウを構築するには多くのコストと時間が必要です。

M&Aを活用できれば、既存企業の経営資源やノウハウを取得できるため、コスト削減と時間短縮につながります。

入構権を獲得できる

また、タクシー会社のM&Aの大きなメリットとして、入構権の獲得が挙げられます。

入構権とは、空港や主要駅などの特定エリアでタクシーが営業活動として乗り付けることを認められる権利です。入構権がなければ、乗客が多く集まる場所での営業が制限されてしまうケースもあり、売上のチャンスを逃してしまいます

M&Aを実施すると企業が保有する入構権もそのまま移行されるため、新規参入に伴う複雑な申請や許認可を得るための時間や手間の節約が可能です。

買収直後から既存の有力な営業拠点を活用でき、早期の売上拡大と事業安定化が期待できます。

タクシー会社のM&Aのデメリット

タクシー会社のM&Aのデメリットを譲渡側と譲受側で順番に解説します。

譲渡側のデメリット

タクシー会社のM&Aにおける譲渡側のデメリットは以下のとおりです。

・経営方針が変更される可能性がある
・雇用条件や労働条件が悪化する可能性がある
・従業員が流出してしまう可能性がある

上記を順番に解説します。

経営方針が変更される可能性がある

M&Aの実施により、異なる企業同士が1つに統合されるため、経営方針や運営体制に大きな影響を与えます。

2つの企業が異なるビジョンや方針でそれぞれ経営されていた場合、統合後に優先順位や意思決定の基準が変わることがあり、内部で混乱が生じる可能性があります。

そのため、M&A後の統合をスムーズに進めるためには、事前の適切な調整とコミュニケーションが必須です。

雇用条件や労働条件が悪化する可能性がある

M&Aによる経営方針変更に伴い、従業員の雇用条件や労働環境が悪化する可能性もある点にも把握しておく必要があります。

例えば、賃金カットや福利厚生の見直し、中には労働時間の延長などが発生するケースもあります。

従業員の不安を軽減しM&Aを成功に導くためには、労働条件について事前にしっかりと交渉し、譲れない労働条件については契約内容に盛り込むことが重要です。

従業員が流出してしまう可能性がある

M&Aによる経営方針変更や雇用条件の悪化により、従業員が不満を抱くケースは少なくありません。

突然の環境変化や将来の不透明さへの不安や不信感から、既存従業員が離職してしまうケースもあります。

タクシー会社にとって貴重な人材の流失は、事業の運営に支障をきたす可能性があります。従業員の不安を払拭し、安心して働き続けられるように対応を行いましょう。

譲受側のデメリット

タクシー会社のM&Aにおける譲受側のデメリットは以下のとおりです。

・経営統合が円滑に進まない可能性がある
・従業員が離職してしまう可能性がある

上記を順番に解説します。

経営統合が円滑に進まない可能性がある

M&A後に異なる経営方針や組織文化を統合する過程は「ポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)」と呼ばれ、M&A成功のための重要な要素として位置づけられています。

しかし、統合プロセスが円滑に進まない場合、組織内に混乱が生じ、シナジー効果をはじめとしたM&A本来のメリットが得られなくなってしまいます。

経営統合を成功させるためには、事前の十分な計画と各部門間の協力体制が必要であり、問題が発生した際には迅速に対応しましょう。

従業員が離職してしまう可能性がある

経営統合が円滑に進まない場合、従業員が新しい環境や経営方針に適応できず、不満を抱いて離職するリスクが高まります。

離職リスクを軽減するためには、譲受側企業側も積極的に従業員とのコミュニケーションを図り、不安を払拭する努力が必要です。

具体的には、M&A後の経営ビジョンや雇用条件についての情報提供や、従業員の意見を反映した職場環境づくりなどが有効な対策になります。

信頼関係の構築も行いながら、従業員が安心して働き続けられる環境を整えましょう。

タクシー会社のM&Aのプロセス

タクシー会社でのM&Aにおいても、基本的には一般的なM&Aの流れが採用されます。

以下のプロセスが基本の流れです。

1. M&A仲介会社への相談
2. マッチング
3. 交渉
4. 基本合意の締結
5. デューディリジェンス
6. 最終交渉や最終契約締結

なお、M&Aのスキームは業界や案件によって異なるため、企業ごとに適した方法を選びましょう。

▷関連記事:「M&Aの流れは?売却の検討からクロージングまで進め方を徹底解説
▷関連記事:「M&Aのスキームとは?手法ごとのメリット・デメリットや流れを紹介

M&Aにおけるタクシー会社の相場

タクシー会社のM&A相場は、地域ごとの需要や設備環境、保有車両数、従業員の状況など複数の要因によって大きく変動するため、一概に決めることは難しいです。

そのため、適切な企業価値評価を求めることが重要となります。

次の表は、企業価値の算出のアプローチをまとめたものです。

概要
コストアプローチ企業が有する資産および負債をベースにして企業価値を算出する方法
マーケットアプローチ対象企業の時価総額や、類似企業の株価、類似したM&A取引の価格などを基準に企業価値を算出する方法
インカムアプローチ企業の将来的な収益やキャッシュフローを基に企業価値を算出する方法

より高い価格での売却を目指すには、事前準備が重要です。適切な企業価値評価を行って効果的な交渉を行いましょう。

▷関連記事:「会社売却の相場とは?決め方や高く売るポイント、必要な諸経費について解説
▷関連記事:「M&Aの価格相場や算定方法とは?3つのアプローチと注意点

タクシー会社のM&Aで成功するためのポイント

タクシー会社のM&Aで成功するためのポイントは以下のとおりです。

・目的を明確にする
・経営統合を確実に進める
・信頼できる仲介会社を選ぶ

上記を順番に解説します。

目的を明確にする

タクシー会社のM&Aでは、以下のような目的を定めることが成功の鍵となります。

・ドライバーやタクシー台数の確保
・後継者問題の解決
・ノウハウや入構権の確保

目的によって、売買相手企業の選定基準や交渉内容は異なるため、M&Aの準備段階で目的を明確化しておくことは極めて重要です。

交渉プロセスにおいても具体的な条件設定が可能になり、より円滑なM&Aが実現できるようになるため、M&Aを実施する際には目的を明確にすることから始めましょう。

経営統合を確実に進める

M&A後には、スムーズに経営統合が行えるかどうかが重要となります。統合がうまく進むことで、人材が定着しM&Aによって期待されるシナジー効果や事業拡大などのメリットが最大限に発揮されます。

一方、統合に失敗すると、従業員の離職や業務効率の低下など、ネガティブな影響を招くリスクが高まります。

統合過程で従業員の感情や意見を無視せず、丁寧な対話を続け、各部門で具体的な課題を1つずつ洗い出し、組織全体が統合に対して前向きに協力できる体制を整えていきましょう。

信頼できる仲介会社を選ぶ

M&Aを成功させるためには、信頼できるM&A仲介会社を選定するのも重要なポイントです。

一般的に、M&Aのマッチングから契約締結に至るまでの一連のプロセスは、専門の仲介会社に依頼することでスムーズに進められます。

特に、売り手と買い手双方の希望条件を調整し、最適なマッチングを行うことが仲介会社の強みです。

M&Aは事前の企業価値評価や契約条件の調整など、複雑で専門的な作業が多いため、経験豊富で信頼できる仲介会社を選びましょう。

【2024年最新版】タクシー業界のM&A成功事例

タクシー業界のM&A動向は?譲渡・譲受のメリットや相場、2024年最新事例も紹介

ここからは、タクシー業界におけるM&Aの成功事例を順番に解説します。

newmo株式会社による株式会社未来都の買収

2024年7月、ライドシェア事業を展開するnewmo株式会社は、大阪の老舗タクシー会社である株式会社未来都を買収しました。

今回の買収によって、newmoグループが保有するタクシー車両数は646台に達し、買収時点で大阪府内5位の規模へと拡大しています。

また、newmo株式会社はデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や経営基盤のさらなる強化を目指すと発表しました。

今回の買収は地域内での存在感を高めると同時に、従来のタクシー業界と新興のライドシェア事業の融合を図る動きとしても注目されています。

大阪市高速電気軌道株式会社(大阪メトロ)によるナショナルタクシー株式会社の子会社化

2024年7月、大阪市高速電気軌道株式会社(大阪メトロ)は、ナショナルタクシー株式会社が新設した分割会社の株式を取得し、子会社化しました。

ナショナルタクシーは、創業から70年以上にわたって地域の交通を支えてきた老舗タクシー会社です。

株式取得後、新会社は「OMタクシー株式会社」に社名を変更し、今後は大阪メトロの経営基盤を活用しながら地域の多様な移動ニーズに応じたサービスを展開します。

デジタル化や効率化を通じて、より快適な移動環境が地域住民に提供される可能性がある事例です。

日本交通グループ関西による関西中央グループ5社の事業譲受

2024年4月、日本交通グループ関西は、高槻交通株式会社、茨木高槻交通株式会社、ユタカ中央交通株式会社、関西中央第一株式会社、関西中央旅客守口株式会社の5社から事業認可を譲り受けました。

今回の譲受により、大阪府および兵庫県における日本交通グループ関西の保有車両数は1,426台に増加し、地域内での事業基盤が一段と強化されます。

地域の需要に応じた柔軟な配車サービスや多様な交通手段との連携が可能となり、さらなる事業の成長が期待されています。

まとめ

タクシー業界はドライバー不足や高齢化、ライドシェア企業の参入など様々な課題を抱え、大きな変革期を迎えています。

業界内ではM&Aが積極的に行われており、ドライバーや車両の確保、後継者問題の解消、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進などの効果が期待できる方法です。

しかし、M&Aには経営統合の失敗や従業員の離職といったリスクも伴います。成功させるためには事前の綿密な計画と信頼できる仲介会社の協力が不可欠です。

fundbookでは、M&Aの分野において経験豊富で専門的な知識を持つアドバイザーが多数在籍しており、初期相談からクロージングまでトータル的な支援を提供しています。

また、独自に開発したM&Aプラットフォームを活用し、企業ごとのニーズに最適な候補企業を迅速かつ的確に選定します。

さらに、着手金・中間金無料の成功報酬制となっており、相談は無料なので気軽にご相談いただけます。fundbookが提供するM&Aサービスの詳細は下記リンクよりご確認ください。

fundbookのサービスはこちら(自社の譲渡を希望する方向け)

fundbookのサービスはこちら(他社の譲受を希望する方向け)

    【無料ダウンロード】自社の企業価値を知りたい方へ

    企業価値100億円の条件

    企業価値100億円の条件 30の事例とロジック解説

    本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。
    このような方におすすめです。

    自社の企業価値がいくらなのか知りたい
    ・企業価値の算出ロジックを正しく理解したい
    ・これからIPOやM&Aを検討するための参考にしたい

    は必須項目です。

    貴社名

    売上規模

    貴社サイトURLもしくは本社所在地をご入力ください

    お名前

    フリガナ

    役職

    自社の株式保有

    電話番号(ハイフンなし)

    メールアドレス

    自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談

    相談料、着手金、企業価値算定無料、
    お気軽にお問い合わせください

    他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認

    fundbookが厳選した
    優良譲渡M&A案件が検索できます

    M&A・事業承継のご相談は
    お電話でも受け付けております

    TEL 0120-880-880 受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)
    M&A案件一覧を見る 譲渡に関するご相談