会社と会社のつながりを示す用語には、「関連会社」や「子会社」などいくつかの種類が挙げられます。関連会社は、他の会社から経営に関して重要な影響を受けている会社です。関連会社の判定には、法律で基準が定められています。
本記事では、関連会社の定義や判定基準、関係会社や子会社との違い、メリットやデメリットを解説します。各用語の違いを知り、仕組みを正しく理解しましょう。
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関連会社の定義
関連会社とは、他社から財務および事業の方針の決定について重要な影響を受けている会社です。
「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第8条第5項では以下のように定義されています。
この規則において「関連会社」とは、会社等及び当該会社等の子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の会社等をいう。 |
例えば、富士通株式会社における株式会社富士通ゼネラルや富士通リース株式会社は関連会社の一例です。関係会社は、財務諸表などの計算書類を作成する際に、持分法の適用対象となります。
関連会社の判定基準
関連会社の判定は、他社が保有する自社の議決権保有比率で判定されます。他社の議決権保有比率が20%以上の場合、自社はその会社の関連会社です。議決権保有比率が20%未満の場合も、一定の要件を満たすと関連会社とみなされます。
議決権保有比率 | 関連会社の判定基準 |
20%以上の場合 | 議決権以外の要件なし |
15%以上20%未満の場合 | 次のいずれかに該当する必要がある ・役員などへの就任 ・重要な融資の実施 ・重要な技術の提供 ・重要な販売・仕入れなど、事業上の取引の存在 ・その他、財務・事業の方針の決定に対して重要な影響を与える事実が存在 |
15%未満の場合 | 特定の者の議決権とあわせて自己所有等議決権数が20%以上となり、上記の要件に該当する必要がある |
関連会社と関係会社(グループ会社)の違い
関連会社について理解する際は、「関係会社」や「子会社」との違いも押さえておきましょう。関係会社(グループ会社)は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第8条第8項で以下と定義されています。
この規則において「関係会社」とは、財務諸表提出会社の親会社、子会社及び関連会社並びに財務諸表提出会社が他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等(第十七項第四号において「その他の関係会社」という。)をいう。 |
出典:e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」
すなわち、関係会社(グループ会社)は親会社や子会社、関連会社と自社を関連会社とする他社の総称です。関係会社(グループ会社)という枠組みのなかに、親会社や関連会社などが位置付けられる関係となっています。
関連会社と子会社の違い
関連会社と子会社の大きな違いは、関連会社は「他社から重要な影響を受ける会社」であるのに対し、子会社は「他社(親会社)に支配されている会社」である点です。子会社の判定基準は次のようになっています。
議決権保有比率 | 子会社の判定基準 |
50%以上の場合 | 議決権以外の要件なし |
40%以上50%未満の場合 | 次のいずれかの要件に該当する必要がある ・自己所有等議決権数割合が50% ・(親会社の役員が占める)役員などの数が50%超 ・重要な財務・事業の方針の決定を支配する契約などが存在する ・資金調達総額に占める融資額が50%超 ・その他、財務・事業の方針の決定の支配が推測される事実がある |
40%未満の場合 | 自己所有等議決権数が50%以上でかつ上記のいずれかの要件に該当する場合 |
関連会社の場合は計算書類の作成における持分法の適用対象となりますが、子会社の場合は連結の対象となる点も違いです。
なお、子会社には「完全子会社」や「連結子会社」などのいくつかの種類があります。以下でそれぞれの内容を解説します。
完全子会社
完全子会社は、親会社が発行済株式の100%を有する子会社です。親会社が実質的に支配しており、計算書類を作成する連結の対象となります。
連結子会社
連結子会社は、親会社が50%超100%未満の議決権を保有し、連結の対象となる子会社のことです。親会社とは支配関係にあります。議決権が50%以下でも、議決権保有比率が40%以上で実質的な支配関係がある場合は、連結子会社となります。
非連結子会社
非連結子会社とは、子会社の要件を満たす場合でも、一定の要件で連結の対象から外すことのできる子会社のことです。
例えば、支配が一時的な場合やグループ全体への影響度が低い場合は、連結の対象から外すことができます。ただし、議決権20%~50%の非連結子会社は持分法適用会社となり、計算書類の作成時には持分法が適用されます。
持分法適用会社とは
関連会社と子会社の取り扱いのポイントは、「持分法が適用されるか」「連結の対象となるか」という点です。
持分法が適用される会社は「持分法適用会社」と呼ばれ、計算書類の作成時には持分法が適用されます。
持分法適用会社の場合、当該会社の純資産および損益は、議決権を保有する会社の持分比率に応じて財務諸表に反映されます。一方、連結の対象となる子会社の場合、親会社は子会社の資産や負債、収益や費用のすべての項目を合算することが必要です。
持分法適用会社と連結子会社の違いは以下の記事でまとめているので、あわせてご確認ください。
▷関連記事:「持分法適用会社とは?連結子会社との違いや適用範囲、メリットや注意点を解説」
関連会社設立のメリット
企業が関連会社を設立すると、以下のようなメリットを受けられます。
・意思決定が効率化できる
・財務上のリスク分散ができる
・事業承継しやすい
意思決定が効率化できる
通常、会社は規模が大きくなればなるほど意思決定に関与する人が増え、決定までに時間がかかります。その点で、関連会社として組織を分化すると、意思決定を効率的に行いやすくなるメリットがあります。
財務上のリスク分散ができる
新しい事業などを行う場合は、必ずしも成功するとは限りません。場合によっては債務を負うリスクが伴います。このとき、新事業を担う関連会社を新たに設立すれば、ブランディングの差別化が行いやすいだけでなく、万一事業が芳しくなかった場合も、自社への財政的ダメージを軽減しやすくなります。
事業承継しやすい
関連会社を設立して事業承継の候補者に経営を任せると、候補者は経営ノウハウを蓄積できます。また、事業承継で候補者が複数いる場合にも、自社や関連会社を候補者それぞれに承継できるメリットがあります。
▷関連記事:事業承継とは?基礎知識と成功に向けたポイント
関連会社設立のデメリット・注意点
関連会社の設立はメリットだけではありません。以下のデメリットには注意してください。
・不祥事が生じた場合は親会社も影響を受ける場合がある
・親会社に依存する可能性がある
不祥事が生じた場合は親会社も影響を受ける場合がある
関連会社は、組織上は親会社と分離しているものの、世間一般からは同じグループとして受け取られるケースも多いです。組織を分けたことでガバナンスが低下し、結果不祥事が生じると、自社もブランドイメージの低下など影響を受ける場合があります。
親会社に依存する可能性がある
関連会社が取り扱う事業が親会社からの発注で多くを占められる場合、関連会社の業績が親会社に依存する可能性が挙げられます。経営の健全性の観点からは、関連会社が幅広く仕事を受注できるように戦略を立てる必要があるでしょう。
まとめ
関連会社は議決権保有比率の20%以上を他の会社が保有しており、経営や財務の方針で重要な影響を受ける会社です。関連会社は財務諸表などの作成時に持分法の適用対象となるので注意しましょう。
関連会社や関係会社、子会社などの用語は、M&Aで自社の事業を譲渡する場合、または他社の事業を譲受する場合にも大切な用語です。それぞれの違いは正確に把握しておきましょう。
例えば、M&Aを実施して他社を自社の関連会社とする際には、自社の事業とシナジーのある会社の選択や、どの手法を採用するかの検討が求められます。
M&Aの場面では専門的な知識を求められることもあるため、不明点がある場合には専門家に相談することをおすすめします。fundbookは豊富なネットワークとプラットフォームにより、最適なマッチングをサポートします。M&Aをご検討の方は、ぜひfundbookまで気軽にご相談ください。