よくわかるM&A

2025/04/30

M&Aに資格は必要?種類・難易度や相談時に知っておきたい注意点も紹介

M&Aに資格は必要?種類・難易度や相談時に知っておきたい注意点も紹介

M&Aを行う際は、関連資格を有する専門家のサポートを受け必要な対応や手続きをスムーズに進めることができます。

M&Aの手法には、株式譲渡・事業譲渡・会社分割・株式交換・合併・第三者割当増資など様々な種類があり、自社に適したM&Aを行うためには専門家によるサポートが欠かせません。

本記事では、M&Aにおける資格の必要性やM&Aに関連する民間資格・国家資格の種類・難易度、M&Aアドバイザーを選ぶときのポイントを紹介します。


▷関連記事:「M&Aとは?意味・流れ・手法・費用など基本をわかりやすく解説

松浦 絢子
本記事を監修した専門家
松浦 絢子
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。様々なメディアにおいて多数の執筆実績がある。
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M&Aにおける資格の必要性

結論からいうと、M&Aは、資格を持っていなくても実施することが可能です。

さらに、M&Aに対して助言したり実務をサポートしたりする場合も、現時点では資格を持たずに業務にあたることができます。

ただし、実際にM&Aを進める際は、財務・税務・法務など幅広い専門知識が必要になるため、M&Aのサポートを行う立場である場合は特に、資格などの勉強を通して専門知識を身に付ける必要があります。

資格を取得すればM&Aに必要な知識・スキルが身に付く

M&Aのサポート業務には、企業の経営状況を把握する財務諸表の読解をはじめ、財務会計に関する知識や企業経営、M&Aに関連する法令理解など、多種多様な専門スキルが必要です。

M&Aの関連資格を取得すれば、業務で必要になる知識を効率的に身に付けることができます。

相談・依頼する専門家を決める際の判断材料になる

M&Aの相談先は、実際に会って話した担当者の印象やM&Aの実績数など、多数の要素を比較検討して決めるのが一般的です。中でも資格の有無や保有する資格の種類についてのヒアリングは、相談先を決める上で非常に重要な事項です。相談先が資格を持っている場合、M&A成立に向けたサポートをより安心して任せることができます。

M&Aに関連する民間資格

M&Aに関連する民間資格は、弁護士や公認会計士などの国家資格に比べてM&A分野に、より特化した資格となっています。

ここでは、4つのM&Aに関連する民間資格について、試験内容や難易度、受験費用などの概要を紹介します。

▷M&Aスペシャリスト資格

資格名M&Aスペシャリスト資格
協会・企業一般社団法人日本経営管理協会
試験内容M&A実務・職業倫理・法務・会計・税務
受験費用(税込)11,000円
その他費用(税込)資格取得支援講座あり(77,000円)

M&Aスペシャリスト資格は、一般社団法人日本経営管理協会が認定するM&Aの実務に特化した民間資格です。中小企業のM&A・事業承継で特に重視される事業譲渡や合併に関するスペシャリストといえます。

M&Aスペシャリスト資格所有者は弁護士や公認会計士、税理士など様々な専門分野の講師から実践型の講義を受けているため、事業価値の評価や具体的なM&Aの手続きなど、多くのサポートが可能です。

試験範囲にはM&A実務や法務、会計、税務などが含まれ、M&Aに関連する幅広い知識が求められるため、難易度は比較的高い資格です。

▷M&Aエキスパート認定資格

資格名M&Aエキスパート認定資格
協会・企業一般社団法人金融財政事情研究会
試験内容【スタンダード】事業承継関連税制・事業承継関連法制・M&A基礎知識/関連会計・M&A関連法制・総合問題
受験費用(税込)【スタンダード   】7,700円
【アドバンス    】11,000円
【プロフェッショナル】11,000円
その他費用(税込)アドバンス/プロフェッショナルは養成スクールあり(132,000円)

M&Aエキスパート認定資格は、一般社団法人金融財政事情研究会が企画・認定している民間資格です。

M&Aエキスパート認定資格の特徴は、「スタンダード」「アドバンス」「プロフェッショナル」という3つのスキルに資格が分類されている点です。

スタンダードは「事業承継・M&Aエキスパート」という名称で、資格所有者は中小企業M&Aや事業承継の基本知識を身に付けています。アドバンスは「事業承継シニアエキスパート」、プロフェッショナルは「M&Aシニアエキスパート」と呼ばれ、資格保有者は事業承継・中小企業M&Aの実務ノウハウを習得した人材です。

難易度は、基本的な知識が問われる「事業承継・M&Aエキスパート」から「事業承継シニアエキスパート」、「M&Aシニアエキスパート」の順で高くなり、「M&Aシニアエキスパート」は事業承継実務に関する最難関資格となっています。

▷関連記事:「M&Aシニアエキスパートとは?認定制度の内容や難易度、試験内容を解説
▷関連記事:「事業承継・M&Aエキスパート認定試験とは?資格取得の難易度や金融業務への活かし方

▷JMAA認定M&Aアドバイザー

資格名JMAA認定M&Aアドバイザー
協会・企業一般社団法人日本M&Aアドバイザー協会
試験内容講座修了時に修了試験(講座受講/一般社団法人日本M&Aアドバイザー協会による審査あり)
受験費用(税込)198,000円
その他費用(税込)入会金(33,000円)月会費(132,000円・年間一括払い)

JMAA認定M&Aアドバイザーとは、一般社団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)が認定する民間資格です。JMAA認定M&AアドバイザーはM&Aに関する実務経験などJMAAが定める一定の要件を満たし、M&A実務スキル養成講座を修了すると取得できます。また、資格認定条件としてJMAAの正会員になる必要があります。

▷事業承継士

資格名事業承継士
協会・企業一般社団法人事業承継協会
試験内容事業承継に特化した内容
受験費用(税込)9,900円
その他費用(税込)入会金(11,000円)年会費(11,000円)事業承継士資格取得講座(330,000円)

事業承継士は一般社団法人事業承継協会が認定する資格です。事業承継に特化した資格で、事業承継の税務や財務、法務など総合的なサポートを提供します。

受験資格は、「弁護士や公認会計士、土地家屋調査士や行政書士など一般社団法人事業承継協会が認めた国家資格を有している方、またはそれと同等の知識・能力があると判断される方」と設定されています。

また、この「同等の知識・能力があると判断される方」の判断基準は、経営者と直接面談する立場でコンサルティングや財務・会計アドバイスを実務として5年以上行っていた経験のある方など、いくつかの規定があります。さらに、MBAも国家資格と同等と見做している資格の1つです。いずれにしても、受験のハードル自体は高い資格となっています。

事業承継では「会社の事業承継」のみならず、「経営者個人の相続」という視点も必要です。また、弁護士や税理士、公認会計士など各専門家のコーディネートも重要です。事業承継士の有資格者はこのような多角的な視点から、経営者をサポートするノウハウを修得しています。

▷関連記事:「事業承継士とは?事業承継アドバイザーとの違いや相談するメリットを解説

M&Aに関連する国家資格

M&Aに資格は必要?種類・難易度や相談時に知っておきたい注意点も紹介


M&Aに関する国家資格は、弁護士や公認会計士、税理士などが挙げられます。M&Aに限らず、法務・財務・税務など専門的な知識を有する点が特徴です。
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・弁護士

・公認会計士

・税理士

・司法書士

・社会保険労務士

・ファイナンシャルプランナー

・中小企業診断士

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以下では、各資格の内容やM&Aにおける立場、M&Aとの関わり、試験の難易度を紹介します。

▷弁護士

弁護士は法律に関するあらゆる業務を取り扱う、法律の専門家です。

M&Aにおいては、例えば基本合意書や秘密保持契約書、最終契約書など、法的知識が必要不可欠な契約書作成の際に活躍します。また、合併・分割など会社法に定められた組織再編のスキーム選択に関する法的な観点からの助言も行います。
M&Aを実施する前に譲渡企業を調査する「デューディリジェンス」では特に、企業法務に精通した弁護士が欠かせません。デューディリジェンスで発覚した、許認可が必要な事業への対応など、M&Aの多くの場面で頼りになる存在です。

また、M&A進行中や事後トラブルが発生した場合の対応などにも重要な役割を果たします。

弁護士になるためには司法試験に合格する必要があります。様々な領域の法律に関する知識が問われる難易度が高い試験で、受験資格は法科大学院修了者又は予備試験合格者のみです。司法試験の受験料は28,000円ですが、それとは別に受験資格を得るために通う法科大学院や予備試験受験の費用がかかります。

▷関連記事:「M&Aにおける弁護士の役割は?メリットや費用を解説

▷公認会計士

公認会計士は財務や会計の高度な知識を有する資格であり、M&Aにおけるデューディリジェンスや企業価値の算定、財務諸表の内容の確認など、M&Aを財務・会計の側面から支える専門家です。

特にM&Aでは財務的な側面が重視される場面が多いことから、M&Aの財務だけでなく、公認会計士がFA(ファイナンシャルアドバイザー)としてM&Aの戦略から成約までの総合的なサポートを提供するケースがあります。なお、公認会計士事務所が母体となるM&Aアドバイザリーも多く存在します。

公認会計士になるためには試験に合格する必要があります。公認会計士試験の受験料は19,500円で、受験資格は特にありません。年齢・性別・学歴を問わず受験できますが、財務会計論や監査論、租税法など幅広い知識が問われる難易度の高い試験です。

▷関連記事:「M&Aにおける公認会計士の役割と業務

▷税理士

税理士は税務に関する幅広い知識を有する専門家です。

税理士が相談先の場合、M&Aの譲渡時にかかる法人税・所得税など税務に関してアドバイスを受けられます。税務に関するアドバイスは税理士の独占業務となるため、きわめて重要な存在です。

なお、税理士は財務や会計などの分野にも精通する方が多いことから、公認会計士と役割が重複する部分もあり、企業価値算定や資産価値算定でも役割を果たします。既に顧問税理士がいる場合は、M&Aの初期段階からアドバイスを受けることができ、M&Aの身近な相談先として活躍します。

税理士になるためには税理士試験に合格する必要があり、会計学2科目と税法3科目の計5科目で合格する必要があります。受験料は1科目目が4,000円で、2科目目は5,500円、3科目目は7,000円…のように、1,500円ずつ加算されていきます。1科目ごとの受験が可能ですが、いずれの科目も難易度が高く5科目合格するまでに数年かかる場合もあります。

▷関連記事:「M&Aにおける税理士の役割と業務

▷司法書士

司法書士は法律の専門的な知識を持ち、特に登記業務で強みを発揮する専門家です。

M&Aでは合併や会社分割の登記申請手続、事業譲渡の際の不動産の所有権移転登記手続、抵当権抹消登記手続など、登記が必要となるケースが多く、司法書士の専門知識が活かされる場面が多くあります。また、法務デューディリジェンスに参加するケースもあります。

司法書士になるためには司法書士試験に合格する必要があります。民法や不動産登記法、会社法など様々な領域の法律に関する知識が問われ、合格率は約5%以下と難易度が高い試験です。受験料は8,000円で、受験資格は特にありません。

▷社会保険労務士

社会保険労務士は人事や労務に関する専門知識を有する専門家です。

M&Aで行うデューディリジェンスの調査範囲に人事・労務や社会保険・労働保険の納付状況などを含めるケースもあり、その際は社会保険労務士が大きく活躍します。

M&A締結後には、従業員との雇用契約内容の見直しや結び直しが発生するケースがあるため、人事労務に関する専門知識が欠かせません。

社会保険労務士になるためには試験に合格する必要があります。社会保険労務士試験を受験するには一定の受験資格を満たす必要があり、受験料は15,000円です。科目数は8つで、難易度は高く合格率は例年6〜7%程と低くなっています。

▷中小企業診断士

中小企業診断士は中小企業の経営相談、経営状況の診断や指導、助言を行う専門家です。
中には、中小企業に対する経営指導の一環として、M&Aに関する業務を行う中小企業診断士も存在します。

M&Aや事業承継を含め、経営全体に悩みを持つ中小企業経営者におすすめの専門家です。

中小企業診断士になるためには、1次試験(マークシート方式)と2次試験(筆記・口述)に合格したうえで、実務補習・実務従事の要件を満たす必要があります。合格率は1次試験が30%前後、2次試験が20%前後です。いずれの試験にも合格する必要があるため難易度は高い資格といえます。

M&Aアドバイザーを選ぶときのポイント

ここまでM&Aに関連する資格を紹介しました。では、実際にM&Aのサポートを依頼する場合どのような基準で依頼する専門家を選べばよいのでしょうか。

以下では、M&Aアドバイザーを選ぶときのポイントを4つの視点で解説します。

▷各専門家の強みや得意分野を理解する

専門家にM&Aの相談をする場合、まずはその専門家の強みや得意分野を把握することが重要です。

弁護士であれば法務、税理士であれば税務というように、それぞれの分野で深い知識がありますが、M&Aについての全体的なサポートはできない場合もあります。

M&Aのサポートを依頼する場合は、自社の状況とM&Aの対象企業を考慮して、どのような資格を有する専門家に依頼するのがベストか、十分検討する必要があります。

▷保有資格以外にM&Aの実績も確認する

M&Aについて相談する場合は、専門家にM&Aの実績があるか事前に確認しましょう。M&Aに関する資格を有していたとしても、M&Aについて豊富な実務経験があるとは限りません。

例えば、弁護士には離婚や交通事故などM&A以外の実務に携わる弁護士も多く存在します。過去の実績を確認し、M&Aの実務経験があるか確認しておきましょう。

▷報酬体系を比較する

M&Aのサポートを専門家に依頼する場合、かかる費用の種類や各種手数料の金額は専門家ごとに異なります。

M&Aアドバイザーに依頼する際は報酬体系をよく確認するようにしましょう。着手金や中間金、成功報酬など、どのタイミングでいくら手数料がかかるのか、複数の依頼候補先を比較することをおすすめします。

▷関連記事:「M&Aの手数料相場は?成功報酬の計算方法や仲介会社の報酬体系も解説
▷関連記事:「M&Aにかかる手数料はどのくらい?費用相場や種類、計算方法を解説

▷相談に親身になってくれるか確認する

M&Aは一般的に、数ヶ月~1年以上という長い期間をかけて実施します。また、譲渡先や譲受先の選択、譲渡価格の決定、候補先との条件交渉などM&Aの成約までには複雑なプロセスがいくつも存在します。

M&Aをスムーズに進めるためにも、自社の状況に真摯に耳を傾け親身に相談に乗ってくれる相談先であることは、とても重要な要素です。M&Aに関する実務経験や資格の有無、費用だけでなく、実際に会って話したときの印象も踏まえて相談先を選ぶことをおすすめします。

まとめ

M&Aに関連する資格には、M&Aスペシャリスト資格やM&Aエキスパート認定資格などの民間資格、弁護士や公認会計士、税理士などの国家資格があります。M&Aに関する専門知識を有する専門家に相談することで、法務・税務など幅広い知識が必要となるM&Aをスムーズに進めることができます。

M&Aの相談先やサポート先を選択する際は、各専門家の強みを理解してM&Aの実績を確認し、自社に適した依頼先を選ぶことが大切です。

fundbookでは高い専門性と豊富な実績を有するM&Aアドバイザーチームが、M&Aの初期的な相談から成約までサポートします。法務・財務・税務などの専門知識を有したエキスパートによる総合的な支援が可能です。

また、経営者様一人ひとりの悩みや課題に寄り添い、5年後、10年後を見据えた方針をご提案します。報酬体系は着手金無料、基本合意まで報酬をいただかない成功報酬制です。M&Aに関してお悩みの方は、ぜひ一度fundbookまでご相談ください。

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