専門的な知識が求められるM&Aでは、当事者企業同士で交渉や手続きをすることは難しく、専門家が間に入って進める流れが一般的です。そのため、まずは相談するM&A仲介会社を決めなければいけません。
国内には様々なM&A仲介会社があり、得意な業種やネットワーク数、仲介手数料の金額など、特徴は会社ごとに異なります。成約に向けた交渉や手続きをスムーズに進めてM&Aを成功させるには、自社に適した仲介会社を選ぶことが重要です。
本記事では、M&A仲介会社とはどのような会社なのか、役割や仲介手数料の相場、選ぶときのポイントを解説します。
宮川 真一
目次
M&A仲介・M&A仲介会社とは?
M&A仲介とは、M&Aアドバイザーが譲渡企業と譲受企業の間に入り、M&Aを成功に導くための中立的なサポートを行うことです。そして、M&A仲介会社とは、M&A仲介事業を営む企業を指します。
M&Aを行う際には、当事者企業同士で進めるのではなく、仲介会社に依頼して進めることが一般的です。これは全体の流れや進め方、ポイントを把握しているプロに依頼することで、双方にとって良い形でまとまると考えられるためです。
M&Aを成功させるためには、法務的な手続きから税務処理、相手企業の選定に至るまで、幅広い経験と専門的な知識を要します。また、マッチングした後も成約に向けて利害関係を調整し、複雑なプロセスを進めなければなりません。
そのため、M&Aを行うにあたっては、専門家であるM&Aアドバイザーの協力が不可欠です。
▷関連記事:M&Aとは?意味・流れ・手法・費用など基本をわかりやすく解説
▷関連記事:【2024年版】M&A事例と動向
年間3,000回の面談をこなすアドバイザーの声をもとにまとめた、譲渡を検討する前に知っておくべき5つの要件を解説。
・企業価値の算出方法
・M&Aの進め方や全体の流れ
・成約までに必要な期間
・M&Aに向けて事前に準備すべきこと
会社を譲渡する前に考えておきたいポイントをわかりやすくまとめました。M&Aの検討をこれから始める方は是非ご一読ください!
M&A仲介会社の役割
M&A仲介会社やM&Aアドバイザーの主な役割には、以下の項目が挙げられます。
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・M&Aに関するアドバイス
・M&Aの候補先の選定、提案
・企業価値(株式価値)の算定
・M&Aの相手先との交渉やスキームの構築
・デューディリジェンスの支援
・契約書類の作成支援
など
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M&Aアドバイザーの役割は、譲渡企業候補と譲受企業候補のマッチングだけではありません。
事前相談やM&A候補先の選定、企業評価、ノンネームシートや企業概要書の作成、基本合意や最終契約の締結まで、M&Aの全てのプロセスについてサポートを行います。
M&Aは通常、成立まで長期間(数ヶ月から年単位)となることが多く、M&Aを進めるにあたって会計や法務、税務、事業面などの多岐にわたる知識と経験を必要とするため、M&A仲介会社やM&Aアドバイザーを利用することが一般的です。
M&Aの相談先
M&A仲介会社以外にも、M&Aを支援する代表的な業者として、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)や、会計士・税理士・弁護士などの士業事務所が挙げられます。
それぞれの特徴についてまとめました。
▷M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&Aの仲介業務を行う会社を指します。譲渡企業と譲受企業の間に立ち、双方の希望をすり合わせながらM&Aの成約までをサポートします。
1人の担当が案件獲得から成約、PMIまで行うところや、譲渡企業と譲受企業ごとに担当を分けて、それぞれのクライアントの要望をすり合わせていくところなど、仲介会社によって体制は様々です。
また、主に中小企業の案件を扱っているため、該当分野のM&Aにおいて実績のある会社が多いです。
▷FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
FAは、M&Aを検討中の企業に対して、M&Aにおける計画の立案から成約に至るまで、一連の助言業務を行います。
大手証券会社や投資銀行などが該当し、中小企業を対象とした案件は基本的には取り扱わず、大手の上場企業や大規模な案件を対象にアドバイザリー業務を提供するのが特徴です。
その役割は、契約を結んだ譲渡企業または譲受企業の利益の最大化のサポートや専門知識を生かした法務・財務・税務面への助言や戦略立案、交渉への参加などが挙げられます。
また、外資系の投資銀行は海外企業とのクロスボーダーM&Aを取り扱うとともに、大規模な案件の中でもさらに大きなものを扱うことが多いです。
国内でも大きな話題となった、武田薬品工業によるアイルランドのシャイアー社の買収では、武田薬品工業側には野村證券、JPモルガン・チェース、エバコアの3社がつき、シャイアー側についたのはゴールドマン・サックス、シティグループ、モルガン・スタンレーでした。
▷会計士や税理士、弁護士などの士業事務所
会計士や税理士、弁護士などの士業事務所は、M&Aのプロセスにおける財務や法務といった分野で専門的な知識を持つのが強みです。
特に、M&Aの中で最難関ともいわれるデューディリジェンスについては、譲受企業がこれらの士業事務所に委託することが一般的です。
ただし、一般的に士業事務所は、デューディリジェンスなど一部の業務においては強みを発揮しますが、M&Aの全体感や経験といった面ではM&A仲介会社やFAに劣る場合もあるため、その点は注意が必要です。
▷M&A相談先の選定傾向
fundbook(当社)が実施した調査では、M&A支援機関のうち、「M&Aを進めるうえで活用したい(活用している)機関」としてM&A仲介会社が最も多く選ばれていました。
同調査では、活用したい支援機関でM&A仲介会社を選択した人のうち、「M&A支援機関を選定するうえで最も魅力的に感じる点」について「費用が適切であること」が最も多く選ばれていました。このことから、M&A仲介会社は適切な費用のもとでの支援が期待されていることがうかがえます。
回答者全体の中では、M&A支援機関を選ぶ基準として、主に「適切な費用設定」「ニーズを把握したマッチング」「担当者の信頼性」といった点が挙げられており、費用体系や金額設定などの仕組み面だけでなく、担当者の質も充実している支援機関が選ばれる傾向にあると考えられます。
また、企業が「自社の譲渡」と「他社の譲受」どちらを検討しているかにより、M&A支援機関の選定基準が異なることもわかりました。自社の譲渡を検討している企業は、「自社の譲渡」という重要な経営判断を進めるにあたり、「適切な費用設定」を特に重視してM&A支援機関を選定しており、自らが支払う費用に見合った質の高い支援を期待していることが読み取れます。
一方、他社の譲受を検討している企業は、「企業のニーズを把握したマッチング」を特に重視してM&A支援機関を選定しており、成長のために行う投資に見合うシナジー効果の実現を期待していることがわかりました。
M&Aの相談先となる支援機関は多数存在します。M&Aを成功へ導くためには、適切な費用設定のもとで自社のニーズを正しく汲み取ってくれる信頼に値する支援機関を選び、相談していくことが重要です。
▷関連記事:M&A支援機関に必要なのは「適切な費用設計」と「ニーズに沿ったマッチング」 顧客の意向を汲み支援ができるかがM&A成功の鍵 〜『M&A支援機関に求めることに関する調査』を実施〜
M&A仲介会社とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の違い
ここでは、M&A仲介会社とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の業務内容や役割、違いについて深堀りして解説します。
▷M&A仲介とFAの違い①業務内容と役割
M&A仲介会社 | FA(ファイナンシャル・アドバイザー) | |
---|---|---|
業務内容 | 相手企業を探し、交渉から成約までサポート | 成約まで一連のアドバイス(助言業務) |
立ち位置 | 譲渡・譲受企業の中立 | 譲渡・譲受企業のいずれか一方 |
契約形態 | アドバイザリー契約(仲介方式) | アドバイザリー契約(アドバイザリー方式) |
M&A仲介会社とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、どちらもM&Aの専門知識を持ち、M&A成約まで経営者をサポートする存在ではありますが、立ち位置や契約形態が明確に異なります。それぞれの役割を解説します。
M&A仲介会社の役割
仲介会社の主な役割は、「M&Aの仲介」です。譲渡企業と譲受企業の間に入り、M&Aを成約に導くための仲介業務を行います。
M&A仲介会社の特徴は、当事者双方に対して原則「中立的」「客観的」ということです。
どちらかの利益最大化を目指すのではなく、双方の条件をすり合わせて、それぞれの利益のバランスを考えたM&Aを目指します。双方の経営陣の同意のもとで進められる友好的なM&Aを成立させるためにも、中小企業などでは仲介会社に依頼することが一般的です。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)の役割
FAの主な役割は「M&Aを検討する会社へのアドバイス」です。
基本的にFAはM&Aの当事者の一方に対して、M&Aの成立に向けた助言業務を行います。FAの特徴は、譲渡企業もしくは譲受企業のどちらかとのみ契約をし、その企業の利益を最大限に考えることです。
そのため、条件面で妥協することなく理想どおりのM&A実現を後押しすることがメリットとして挙げられます。
一方、利益を最大化するために相手側に過度な要求を行うことで、交渉がまとまりにくくなる可能性があります。また、条件によっては成約までに時間がかかることや、破談になりやすいというデメリットも存在します。
不特定多数の株主から追及を受けやすい上場企業や海外企業とのM&Aでは、特にM&Aの条件の妥当さや手続きの適正さが重視されるため、FAに依頼することが多くなっています。
なお、契約自体は、M&A仲介会社もFAも「アドバイザリー契約」です。
アドバイザリー契約とは、M&Aアドバイザーのアドバイスに加え、業界や市場の調査、書類の草案作成、パートナー探し、交渉のサポート、スケジュール管理など、M&A関連全般のサポートを受けるために結ぶ契約です。
しかし、M&A仲介会社の場合は譲渡企業と譲受企業の間に立つ「仲介方式」、FAの場合はどちらか一方とのみ契約を行う「アドバイザリー方式」のように、立ち位置が異なることを覚えておきましょう。
▷M&A仲介とFAの違い②手数料(報酬)
仲介会社とFAでは契約形態に伴う手数料(報酬)にも違いがあります。
M&A仲介会社では譲渡企業、譲受企業の両方から手数料を受け取るのに対し、FAは譲渡企業、譲受企業のどちらか一方の契約をした側のみから手数料を受け取ります。
具体的な手数料はM&A会社ごとに様々な種類や料金体系があります。着手金や月額報酬の有無なども会社によって異なるため、契約前にあらかじめ確認しておきましょう。
M&A仲介を利用する際の費用の種類と手数料相場
M&A仲介会社に自社の譲渡、他社の譲受を相談する際には、各種の手数料が発生します。
手数料の設定は依頼先ごとで異なるため、それぞれの手数料が何を指すのか解説します。
M&A仲介の費用一覧
名称 | 発生時期 | 相場 |
相談料 | M&Aの正式な依頼前(初期的な相談) | 無料~数万円 |
着手金 | M&Aの正式な依頼時 | 無料~数百万円 |
中間金 | 基本合意書締結時 | 成功報酬の10~30% |
デューディリジェンス費用 | デューディリジェンス実行時 | 数十万円~数百万円 |
成功報酬 | M&A成約時 | レーマン方式によって算出 |
月額報酬(リテイナーフィー) | 毎月 | 無料~数百万円 |
▷費用①相談料
M&A仲介における相談料とは、M&A仲介を正式に依頼する前に発生する費用です。
M&Aを行う方が良いのか、条件に合う譲渡・譲受企業は見つかるのかなど、初期段階の相談に対する手数料になります。
多くのM&A仲介会社ではこの相談料は無料で設定されていますが、稀に相談料が発生する仲介会社もあるため、事前に確認しましょう。
▷費用②着手金
M&A仲介における着手金は、M&Aを正式に依頼する際の手付金として支払われる費用です。
M&A仲介会社は、依頼を受けると譲渡先・譲受先の選定などを始め、M&Aを進行させるための様々な業務を開始します。着手金は、このような業務への対価です。
相談料と同様に、着手金も無料のM&A仲介会社は多いものの、着手金が発生するM&A仲介会社も一定数存在します。
着手金は固定報酬として設定されるケースや成功報酬の●●%という形で設定されるケースもあります。
M&Aが不成約の場合でも着手金の払い戻しはありませんので、事前に確認しておくべきポイントと言えるでしょう。
▷費用③中間報酬
M&A仲介における中間報酬は、一定のM&Aプロセスが達成された場合に発生する費用となり、基本合意書が締結された際に発生するケースが多く見られます。
基本合意書は譲渡企業と譲受企業がM&Aの取引形態や対象範囲、譲渡価額などで基本的な合意に達したタイミングで取り交わされます。M&Aの中間地点で請求されるため、「中間報酬」と呼ばれています。
着手金同様、仲介会社ごとに設定が異なりますが、成功報酬の10%程度が中間報酬に設定される傾向にあります。
なお、中間報酬が無料の仲介会社も存在します。
▷費用④デューディリジェンス費用
デューディリジェンスとは買収監査を指し、企業の価値、将来の収益性、リスクの調査および分析を行うプロセスです。
デューディリジェンス費用は、調査を実施する対象や規模、依頼する専門家の数などにより、必要な費用が変動します。
あらかじめ決められた単価に対して、どの程度の工数がかかったかを掛け合わせて算出されるため、複雑な取引や大規模案件の場合、費用が高額になる傾向があります。
なお、デューディリジェンスは譲受企業が譲渡企業に対して実施するため、費用は譲受企業が負担するのが一般的です。
▷関連記事:デューディリジェンス(DD)とは?種類や手順・費用や注意点【解説動画付き】
▷費用⑤成功報酬
M&A仲介における成功報酬は、M&Aが成約した際に発生する費用となり、この成功報酬はレーマン方式で算出されます。
レーマン方式は取引金額により変化し、一般的なケースの料率は以下となります。
取引金額 | 料率 |
---|---|
5億円まで | 5% |
5~10億円まで | 4% |
10~50億円 | 3% |
50~100億円 | 2% |
100億円超 | 1% |
取引金額の起算基準は依頼した会社により異なり、会社によっては最低報酬金額を設定するケースもありますので、あらかじめ確認を行いましょう。
▷費用⑥月額報酬(リテイナーフィー)
M&A仲介における月額報酬(リテイナーフィー)は、M&Aが成立するまでの期間、M&A仲介会社へ毎月支払う手数料を指します。
M&A仲介会社により月額報酬(リテイナーフィー)が発生するか否かは異なり、毎月数百万円ほどの費用が発生するケースもあります。
M&A成立までの期間が長期化する場合、月額報酬(リテイナーフィー)が高額になることもあるため、注意が必要です。
M&A仲介会社を選ぶポイントや注意点
M&A仲介会社を選ぶ際には、以下のポイントを押さえましょう。
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・取り扱いの多い業種・地域・取引規模
・ネットワーク数や過去実績
・M&A仲介における手数料
・法務や会計などの専門家の有無
・情報管理の徹底度合い
・PMIへの対応有無
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▷ポイント①取り扱いの多い業種・地域・取引規模
M&A仲介会社によっては業界に特化して仲介を行う会社もあります。その業界に対して専門的な知識があることや、その業界同士でのマッチングが得意という点が強みです。
一方、全業種対応型の会社は、業界に縛られず相手先候補を選定できるため、業界の垣根を超えたシナジー効果を生むマッチングが期待できます。近年では、市場の縮小から異業種に参入するためにM&Aを考える譲受企業も多いため、譲渡企業としても幅広い選択肢の中からM&Aの検討を行えます。
実績が豊富な大手の仲介会社であれば、全国の様々な業界に対応するケースが多い一方、特定のエリアや業種に特化する仲介会社も存在します。仲介会社がどういった実績を有するか、依頼先を選定する際には確認しておきましょう。
▷ポイント②ネットワーク数や過去実績
M&Aの成功には「多様な選択肢」が不可欠です。
多くの相手候補企業との繋がりがあることで、より条件に合った相手先企業を見つけやすくなるためです。
M&A仲介会社は、どの程度のネットワーク数を保持しているかを公開していることが多いため、依頼先のM&A仲介会社の保有ネットワーク数は確認した方が良いでしょう。
また、成約実績やインタビューなどの事例がある場合、過去にどのようなM&Aを取り扱ったかの確認も可能です。ご自身に合ったM&A仲介会社なのか判断する1つの材料となります。
▷ポイント③M&A仲介における手数料
M&A仲介には様々な手数料が設定されています。
その中でも見るべきポイントとして、以下の3点が挙げられます。
・相談料や着手金が発生するか
・月額報酬は発生するか
・成功報酬として支払う費用はいくらか
基本的には、M&A仲介会社のホームページなどを見れば報酬体系が記載されています。
プロセスが進む中での金銭面のトラブルを防ぐためにも、M&A仲介会社に問い合わせて事前に確認しておくことをおすすめします。
▷ポイント④法務や会計などの専門家の有無
M&Aを進めるにあたり、譲受企業は、譲渡企業について、経営環境や事業内容などの実態を財務・税務・法務などの様々な観点で調査を行います。
これをデューディリジェンスといいます。
デューディリジェンスは非常に専門性が高いため、各分野の専門家により行われるケースが多く、自社だけで対応することは難しいです。
M&A仲介会社に法務や会計、税務に関する専門家がいれば、手厚いサポートを受けることが可能ですので、M&A仲介を選定する際の重要なポイントといえるでしょう。
▷ポイント⑤情報管理の徹底度合い
M&Aにおいては、多くの情報が取り扱われ、M&A仲介会社は譲渡企業と譲受企業の双方から情報を受け取っています。
相手に提出する必要のない情報を渡してしまうと問題になるケースもあるため、情報管理が徹底されている会社を選ぶことで、より安心してM&Aを進めることができます。
▷ポイント⑥PMIへの対応有無
PMI(Post Merger Integration)は、M&A実行後の両社の経営方針や業務ルール、社員の意識を融合し、スムーズにM&Aの目的を実現するためのプロセスを指します。
M&Aは成約して終わりではなく、成約後の統合プロセスが重要です。M&A仲介会社の場合、成約までサポートし、その後の統合プロセスについては業務の対象外としているケースもあります。
その場合は別途専門家を探すか、自社で対応することになります。大抵の場合は自社で対応できず、専門家を探すことになりますが、費用や手間がかかってしまいます。
PMIが必要となる可能性がある場合は、成約までのサポートだけでなくPMIも同時に提供するM&A仲介会社を選ぶことで、効率的に進めることができるでしょう。
M&A仲介を利用するメリット
M&A仲介を利用するメリットは、以下の項目が挙げられます。
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・M&Aのアドバイスやサポート
・M&Aの相手先の発掘や選定、見極め
・M&A進行の円滑なコミュニケーション
・M&Aにおける過不足のない取り決め
・M&A成約までにかかる時間や労力の軽減
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ここでは、それぞれのメリットについて解説します。
▷メリット①M&Aのアドバイスやサポート
M&A仲介会社は、M&Aや会計、法務などの多岐にわたる知識や経験を備えています。
そのため、M&A仲介会社に依頼することで経験豊富なアドバイザーの適切なアドバイスを受けることが可能です。
また、M&Aは通常の業務と並行して行われますが、M&A仲介会社に依頼することでM&Aの進行のサポートを受けられるので、通常業務に支障が出る可能性が低くなるでしょう。
▷メリット②M&Aの相手先の発掘や選定、見極め
M&A仲介は、譲渡企業や譲受企業の多くの情報やネットワークを保持しています。
そのため、M&Aの相談を行った際に最も条件に合う候補先を紹介してくれるので、M&Aの相手先を見つけやすいというメリットがあります。
また、M&Aでは譲渡価格だけではなく、M&A成立後の譲渡・譲受企業間のシナジーや経営風土が合うかどうかも重要です。
多数の情報やネットワークを持つM&A仲介を利用することで、最良の相手先を見極めることができるのもメリットの1つでしょう。
▷メリット③M&A進行の円滑なコミュニケーション
M&A仲介会社は譲渡企業と譲受企業の間に立ち、中立的な立場でM&A案件を成立させるように、調整を行います。
そのためM&A仲介会社を利用すると、利用していない場合と比較し、M&Aが円滑に進む可能性が高いといえるでしょう。
▷メリット④M&Aにおける過不足のない取り決め
M&Aにおいては、株価の交渉や従業員の待遇など、決定しなければならない事項が多岐にわたります。
また、上記には各種法律などが深く関係しており、契約後の保全を考え、契約書などを多数作成する必要があります。
M&A仲介会社が間に入ることにより、抜け漏れなく取り決めを進行したり、それぞれの取り決めにおけるリスクを把握したりすることが可能です。
▷メリット⑤成約までにかかる時間や労力の軽減
M&A仲介会社は譲渡企業と譲受企業の間に入り、両社の利益のバランスを考えてM&Aが成約するように進めます。そのため、譲受企業の候補として譲渡企業の条件に合う企業を紹介し、M&Aが成約すると見込まれる相手先を紹介します。
その結果、M&A仲介会社以外に依頼した場合に比べ、短期間で案件を進めることができます。
M&Aの仲介方式は中小企業向け
中小企業のM&Aでは、M&A仲介会社を利用するメリットが大きいとされています。メリットとしては、以下のようなポイントが挙げられます。
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・友好的な譲り受けが期待できる
・M&A成約に至るまでの包括的サポート
・規模の一致
・幅広い選択肢
・後継者不足の解消
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ここでは、それぞれの項目について解説します。
▷友好的な譲り受けが期待できる
M&A仲介会社は、交渉の初期から譲渡側と譲受側双方の希望を把握し、条件のすり合わせや客観的なアドバイスを行います。
FAは譲渡・譲受企業のいずれか一方の立場に立ち、それぞれの利益最大化を狙うのに対し、M&A仲介会社は双方の希望を聞くことにより、譲渡企業の経営陣が賛成の意思を示す状況を実現するため、友好的な譲り受けを期待できます。
▷M&A成約に至るまでの包括的サポート
企業価値の算出や、必要書類の作成、相手先企業との交渉など、複雑で専門的な知識を必要とする手続きをM&Aアドバイザーに依頼することで、自社にとって不都合な条件での契約を避けることができます。
このようにM&AアドバイザーとともにM&Aを進めることは、自社にとってリスク防止の一面もあります。
▷規模の一致
M&Aを仲介する機関ごとに、取扱うM&Aの規模は異なります。
大手投資銀行や証券会社は数十億円以上の大規模なM&Aを取り扱います。一方、M&A仲介会社では、数億円程度の中規模のM&Aを取扱うケースがほとんどです。
また、数百万円~数千万円程度の小規模M&Aに特化した仲介業者も存在するため、中小企業のM&Aは、中規模・小規模M&Aを得意とするM&A仲介会社に向いています。
▷幅広い選択肢
M&A仲介会社は、特定の業界の成約事例を多く持っていたり、中小企業の事業承継に特化していたりなど、それぞれの会社によって強みを持つ業界やM&Aの条件が異なります。
そのため、依頼したい業界に強みを持つ仲介会社の方が、検討しているM&Aのニーズに近しい優良な譲渡先企業をマッチングしてくれる可能性があります。
自社が実施するM&Aに類似した案件や同じ業界に強い仲介会社を選ぶことをおすすめします。
▷関連記事:M&Aのメリット・デメリットを買い手側と売り手側の視点からわかりやすく解説
M&Aを成功させて上記のメリットを最大限に享受するには、適切なM&Aアドバイザーの支援が必要です。自分の会社や事業に適切なパートナーを見つけ、会計や法律といった専門知識が必要となる手続きをスムーズに行うことは容易ではありません。
その点、経験豊富なM&Aアドバイザーが所属する仲介会社であれば、しっかりとしたサポートを受け、M&Aのメリットを円滑に享受できるでしょう。
▷関連記事:M&Aアドバイザリーとは?役割や業務内容、メリットなどを解説
▷後継者不足の解消
現在、日本の中小企業では経営者の高齢化と後継者不足が深刻化しています。
中には、売上や将来性も見込める状況でありながら、経営者の引退とともに廃業してしまう中小企業も少なくありません。
M&A仲介会社は一般的に事業承継のためのM&Aに対応しているため、仲介業者を活用したM&Aによる事業承継を実施することで、自身が経営を離れた後も、会社の存続が見込めます。
大企業は株主代表訴訟を避けるためにFAを利用する場合が多い
中小企業の場合、経営者(および親族)が株主である場合が多く、経営者が全株式を保有しているケースもあるでしょう。この場合は、株主代表訴訟のリスクが小さいため、M&Aがスムーズに進むことを優先して、M&A仲介会社に依頼する傾向があります。
それに対し、大企業は上場している場合が多く、不特定多数の株主が存在します。不特定多数の株主がいる場合は、M&Aの内容や価格について追及を受けやすいため、よりM&Aの条件の妥当さや手続きの適正さを重視する必要があります。
したがって、株主との訴訟に発展するリスクを回避するためにも、自社の利益を最大化する方向(自社の希望に沿う形)でのM&A成立を目指し、FAに依頼する傾向が見受けられます。
株主代表訴訟とは
会社法では、取締役等が任務を怠ったことで株式会社に損害が生じた場合、その損害を賠償する責任を負う旨が規定されています(会社法第423条第1項)。
しかし、損害の賠償を行うのは、一般的に損害を被った人や組織が賠償請求を行った場合です。
会社が損害を被って損害賠償請求を行う場合、賠償請求の意思決定をするのは会社の経営者ですが、会社の経営者自身が損害の原因を作っているケースでは、このような意思決定が行われるとは考えにくく、会社が被った損害への適切な対応は期待できません。
そこで会社法では、経営者が会社に損害を与えた際に、会社に代わって個々の株主が取締役等の責任を追及し、訴えを起こすことを認めています(会社法第847条)。一般的に株主代表訴訟と呼ばれるもので、利益の返還および損害賠償を株主が請求する訴訟です。
M&Aにおいては、例えばデューディリジェンスが不十分で事業価値の査定が適切に行われず損害が生じると、経営者の善管注意義務違反であるとして、株主代表訴訟によって責任追及を受ける可能性があります。
M&A仲介会社の利益相反問題とは
M&A においては、譲渡企業と譲受企業で双方の利益が対立する場面が多く発生します。そのため、双方と契約を結び対価を得る仲介会社は、どちらか一方の利益を優先して交渉を行う可能性があるため、利益相反の問題があると指摘されています。
利益相反とは、「一方にとっては利益となり、他方にとっては不利益となること」を指し、そのような取引は利益相反取引とされます。
ここでは、M&A仲介会社に求められる姿勢や仲介の問題点、注意すべきことについて解説します。
▷M&A仲介会社が利益相反と指摘される理由
M&A仲介会社は、譲渡企業と譲受企業の双方と契約を結び、双方から対価を得ていますが、M&Aでは譲渡企業は高額で譲渡したいと考え、譲受企業は安価で譲受しようとします。
その結果、M&A仲介会社が双方の利益を同時に満たすことは事実上不可能なため、譲渡企業と譲受企業の利益は対立し、一方にとっては利益となり、他方にとっては不利益となる状況が生まれます。
そのため、M&A仲介会社が利益相反と指摘されることがあります。
▷M&A仲介会社の利益相反を巡る問題
中小企業によるM&Aの件数が増え、中小企業のM&Aを仲介する専門業者の数が2000年代から拡大する一方で、M&A仲介会社に支払う手数料の目安が分かりにくいなど、M&A仲介に関する明確なルールがないことによる問題点も指摘されていました。
そのような中で、M&A仲介業者に対して適切な行動指針を提示するため、2020年3月に中小M&Aガイドラインが公表されました。M&A仲介における利益相反の問題も、このガイドラインの中で取り上げられた事項の1つです。
M&A仲介会社が一方の利益を優先、または一方の利益を害するリスクがあるとガイドラインの中で指摘されたことや、実際に巨額の被害を受ける事例がでてきたことなどにより、近年M&A仲介における利益相反の問題が注目されています。
▷M&Aの交渉に伴う法律行為の注意点
法律行為においては、双方の代理人になることや、一方当事者本人と他方当事者の代理人として同一の法律行為(契約の締結など)を行うことは、原則として禁止されています(民法108条1項)。
また、改正民法では、この他代理人と本人との利益が相反する行為についても原則として代理権を有しない者がした行為とみなされます(民法108条2項)。
これらのような代理行為は、双方代理と呼ばれます。法律行為に関し、双方代理を行った場合は民法上の規定に基づいて無効とされますが、通常M&Aアドバイザーの業務は、当事者に代わって契約を締結するなどの法律行為の代理ではないため、法律上の双方代理にはあたりません。
しかし、利益相反が顕在化し、仲介会社が意図的に自社または譲渡会社の利益を優先した場合には、法律上の問題が生じる場合があります。
M&A仲介に関する環境整備
以下に示すように、近年、国や業界団体によってM&A仲介に関する環境整備が進行中です。
・2020年3月:中小企業庁が中小M&Aガイドラインを策定
・2021年9月:M&A支援機関登録制度がスタート
・2021年10月:一般社団法人M&A仲介協会設立
・2023年9月:中小M&Aガイドライン改定(第2版)
・2024年8月:中小M&Aガイドライン改定(第3版)
それぞれについて詳しく説明します。
2020年3月:中小企業庁が中小M&Aガイドラインを策定
中小企業経営者の多くは、M&Aに関する知見が不充分な状況です。状況を改善するために、中小企業庁が「中小M&Aガイドライン」を2020年3月に策定・公開しました。
中小M&Aガイドラインでは、M&Aに関する基本的な事項や手数料の目安などが示されるとともに、M&A事業者の行動指針がまとめられています。
M&Aを進める際の留意点が数多く掲載されているため、M&A仲介会社への依頼を検討する場合は事前にガイドラインに目を通しましょう。
2021年9月:M&A支援機関登録制度がスタート
M&A支援機関登録制度とは、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するために設けられた制度です。中小企業庁が2021年9月に開始しました。
登録支援機関データベースに登録された事業者にM&A仲介を依頼すれば、トラブルが起こるリスクを低減できるでしょう。なお、登録機関が提供する支援を受ける場合、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)の補助対象とされます。
2021年10月:一般社団法人M&A仲介協会設立
2021年10月に、公正で安全なM&A仲介を推進する目的で、M&A仲介会社によって業界団体「一般社団法人M&A仲介協会」が設立されました。一般社団法人M&A仲介協会には、希望する事業者が所属しています。
会員企業向けに設置された苦情相談窓口があるため、会員の場合は、M&A仲介に関するトラブルが発生した際に相談することもご検討ください。
なお、トラブル時に紛争解決に動いてもらえるわけではないですが、中小企業庁では情報提供の受付はしています。
2023年9月:中小M&Aガイドライン改定(第2版)
中小M&Aガイドライン(初版)の策定から約3年が経過し、M&A仲介に関する新たな課題も出てくる中、2023年9月にガイドラインの改定が行われました。改定の主なポイントは以下のとおりです。
・仲介者・FAの手数料の整理
・M&A専門業者の質の確保・向上に向けた取り組み
・仲介契約等の締結前の書面による重要事項の説明
・直接交渉の制限に関する条項における留意点
第2版では、M&A仲介会社向けの基本事項(支援の質の確保・向上に向けた取り組み、依頼者との仲介契約・FA契約前の書面交付による重要事項説明等)を拡充し、更なる規律の浸透を促す内容に改定するとともに、中小企業向けの手引きとして仲介者・FAへの依頼における留意点等に関する内容が拡充されました。
M&A仲介会社の契約内容や手数料の分かりにくさの問題に対処するため、レーマン方式で用いる基準価額の考え方・金額の目安や報酬額の目安を確認しておくことが重要である点などが盛り込まれています。
2024年8月:中小M&Aガイドライン改定(第3版)
M&A専門業者が実施する過剰な営業・広告などの課題に対応し、中小M&A市場における健全な環境整備とM&A支援の質の向上を図る観点から、中小M&Aガイドラインは2024年8月にも改定が行われて第3版が公表されました。改定の主なポイントは以下のとおりです。
・仲介者・FAの手数料・提供業務に関する事項
・広告・営業の禁止事項の明記
・利益相反に係る禁止事項の具体化
・ネームクリア・テール条項に関する規律
・最終契約後の当事者間のリスク事項について
・譲り渡し側の経営者保証の扱いについて
・不適切な事業者の排除について
第3版では、提供する業務の内容・質とその対価となる手数料の額について中小企業向けに確認すべき事項を解説するとともに、仲介者・FAに対して求められる説明が追加されています。
【動画で解説】M&A仲介会社とは?~役割とFAとの違い~
M&A仲介会社について動画でわかりやすく紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。
【Q&A】M&A仲介のよくある質問
ここでは、M&A仲介に関するよくある質問、および、それに対する回答を紹介します。
M&A仲介業とは何ですか?
M&A仲介とは、幅広い経験と専門的な知識を持ったM&A仲介会社やM&Aアドバイザーが譲渡企業と譲受企業の間に入り、M&Aを成功に導くための中立的なサポートを行うことです。
詳細については記事内の「M&A仲介とは?」をご参照ください。
M&Aの仲介会社はどこですか?
近年、M&A仲介を行う会社は増えてきており、大手企業から新興企業まで様々な規模や特徴を持った企業があります。M&A仲介会社を選ぶ場合には、自社のM&Aの条件に適した仲介会社を選ぶとよいでしょう。
fundbookでは、豊富なネットワークを活かしながら各業界に精通した専門チームがM&Aのサポートを行っています。M&Aを検討する際はお気軽にご相談ください。
M&A仲介に関する悩みを相談できる場所はありますか?
M&Aに関してトラブルが発生した場合や不明な点がある場合は、社内でディスカッションするだけではなく、弁護士の見解を参考にしたうえで対応方針を決定してください。専門家に法的見解を示してもらえば、自社に有利な形でM&Aを進行できるでしょう。
また、国が運営する中小企業向け経営相談機関「よろず支援拠点」を活用することもご検討ください。よろず支援拠点は何度でも無料で利用できるので、予算を気にせずに相談可能です。
なお、上述したように、会員である場合は、一般社団法人M&A仲介協会が設置した窓口に相談する選択肢もあります。
まとめ
M&A仲介会社は、候補先の選定を含め、譲渡企業と譲受企業双方の意見を汲み取りサポートを行うため、M&Aがスムーズに成約しやすいというメリットがあります。
M&Aに関する幅広い知識や経験を有しているため、問題や懸念事項が生じた際でも、適切なアドバイスによって早期に解決することが期待できます。
また、M&A仲介を依頼することで、複雑な交渉や過不足のない手続きができ、M&Aにかかる時間やコストを効率化することが可能です。
M&A仲介会社以外にも、FAや金融機関など様々な支援機関があり、M&Aを行う目的や選択する手法によって、選ぶべき相談先は異なります。M&A仲介の依頼先を選定する際には、M&Aの目的や選択する手法、実績や費用面を検討し、信頼できるM&A仲介会社に相談しましょう。
仲介会社の説明に関して不明な点がある場合やトラブルが生じた場合は、弁護士に法的なアドバイスをもらうことや、一般社団法人M&A仲介協会の相談窓口を利用することもご検討ください。その他、国が設置した中小企業向け無料経営相談機関「よろず支援拠点」も、経営者に寄り添ってアドバイスをしてくれます。
fundbookでは、豊富な経験と専門知識を有したM&Aのエキスパートにより、M&Aの初歩的な相談から成約までをワンストップでサポートします。M&Aを検討している方は、一度fundbookにご相談ください。
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