よくわかるM&A

2023/09/15

海外M&Aとは-事例や目的・手法・メリット

海外M&Aとは-事例や目的・手法・メリット

海外M&Aとは

海外M&Aは譲渡企業、または譲受企業のいずれか一方が海外企業となるM&Aを指します。国境を越えてM&Aを行うことからクロスボーダーM&Aとも呼ばれます。

海外M&Aは、国内のM&Aに比べて大規模案件となることが多く、要因としては海外M&Aを行う日本企業は海外展開を見据えた大手企業が多い点が挙げられます。

また海外M&Aは件数があまり多くないように考えられがちですが、日本におけるM&Aの全体推移と同様、海外M&Aも増加傾向にあります。

海外M&Aは日本企業と海外企業との取引になるため、風習や言語だけでなく、税制や法制度なども異なります。そのため、海外M&Aを実施する際は、国内のM&Aより幅広い知識が必要です。

本記事では、海外M&Aを実施する目的や手法、メリット・デメリットなどを解説し、海外M&Aの最新事例も紹介します。

・関連記事:M&Aとは?M&Aの意味・流れ・手法など基本を分かりやすく【動画付】

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海外M&Aの目的

日本企業が海外M&Aを実施するのは、主に以下のような目的があります。
———————-
1)グローバル市場の開拓
2)新製品の開発
3)経営コストの削減
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ここでは、それぞれの目的について解説していきます。

1)グローバル市場の開拓

海外M&Aを実施することで、日本企業は海外市場に日本の商品やサービスを持ち込むことが可能になります。

譲渡企業が拠点とする地域のマーケットを開拓することが期待できるだけでなく、当該地域で未発達の業種や事業の場合は競合企業が少ないため、大きな利益を得られる可能性があるでしょう。

また、譲渡企業が有する顧客基盤や技術、人材の獲得、ビジネスモデルの獲得などにより、譲受企業は利益面だけでなく、企業としてもさらなる成長を期待できるかもしれません。

2)新製品の開発

海外M&Aによって、自社では有していない技術やノウハウ、まだ日本では知られていない商品や技術などを獲得できる可能性があります。

このような無形資産(研究開発、ノウハウ、技術、ブランド等)を獲得・転用することで、譲受企業は新製品の開発を期待でき、さらに大きな利益を得られる可能性があります。

3)経営コストの削減

近年、日本には安価な海外製品や食品などが多く輸入され、価格競争が激化している傾向があります。

国内では人件費などのさまざまな要因によって経営コストが高くなってしまうため、価格競争への対応が難しいという企業も少なくありません。

しかし、M&Aによって海外進出を行うことで、人件費や原材料費といったコストを抑えられる可能性があります。

また、日本より税率の低い国もあるため、法人税などの税負担が軽減されるケースもあります。このようなコスト削減を目的に、海外M&Aを実施して海外へ拠点を移す企業も増えています。

海外M&Aのタイプ

譲渡(売り手)企業譲受(買い手)企業
OUT-IN型国内企業海外企業
IN-OUT型海外企業国内企業
IN-IN型国内企業国内企業


海外M&Aには、大きく分けて「OUT-IN型」と「IN-OUT型」の2つの種類があり、2020年-2021年にかけては特にOUT-INの増加率が高い傾向となっています。
各種類の特徴は以下のようになっています。

・OUT-IN型:譲受企業が海外企業、譲渡企業が国内企業

・IN-OUT型:譲受企業が国内企業、譲渡企業が海外企業

なお、国内企業同士のM&Aは「IN-IN型」と呼ばれます。

海外M&Aの手法・流れ

海外M&Aも国内のM&Aも、M&Aの基本的な流れは以下のようになります。

1)譲渡企業と譲受企業のマッチング

2)秘密保持契約の締結

3)基本合意と買収監査

4)最終合意

5)クロージング

海外M&Aで利用される手法については、国内のM&Aでも用いられることが多い株式譲渡が多くなるものの、国内のM&Aではあまり見られない「三角合併」や「LBO(レバレッジドバイアウト)」といった手法が用いられるケースもあります。それぞれの手法について、下記で説明します。

▷三角合併

M&Aによる合併には、合併によって存続する会社(存続会社)と消滅する会社(消滅会社)があります。

三角合併とは、存続会社が消滅会社に対価として現金や自社の株式を渡す代わりに、存続会社の親会社の株式を対価として交付する手法です。

例えば、海外に子会社を持つ日本企業が三角合併を用いて海外M&Aを行う場合、子会社と海外の譲渡企業を合併させた後に自社株を対価として消滅会社の株主に支払うことになります。

会社法上では、存続会社から消滅会社へ交付することのできる対価の種類には制限がないため、このような手法が可能となります。株式譲渡によるM&Aでは多額の現金が必要となりますが、三角合併では多額の現金を用意しなくともM&Aが可能になるメリットがあります。

▷LBO(レバレッジドバイアウト)

LBOとは、譲受企業が譲渡企業の資産や今後期待される収益、キャッシュフローを担保として金融機関などから資金調達を行い買収する手法です。

譲渡企業の資産や将来の収益を担保として金融機関などから資金調達ができるため、限られた自己資本でもM&Aが可能となるメリットがあります。

ただし、LBOによるM&Aを行った後に業績が落ちてしまった場合は、巨額の借金が残ってしまうリスクがあることに注意が必要です。

関連記事:LBOとは?MBOとの違いと仕組み・手法から事例まで解説

海外M&Aのメリット・デメリット

ここでは、日本企業が海外M&Aを実施するメリットとデメリットを解説します。

日本企業が譲渡側になるケースと譲受側になるケースに分けて紹介するので、参考にしてください。

▷譲渡企業のメリット・デメリット

日本企業が譲渡企業となる場合のメリットは、自社の譲渡により譲受企業から対価として現金や株式を得られる点です。

M&Aによって資金調達が可能となるため、新規事業の資金や自社を建て直すための資金として活用することも可能です。

一方、デメリットは、M&Aの手法次第で譲受企業と既存の従業員の間で雇用契約を結び直さなくてはいけない可能性があることです。

従業員に不利な契約内容となることもあるため、M&A後も従業員を守るために譲渡企業は労働条件などを確認しておく必要があるでしょう。

▷譲受企業のメリット・デメリット

日本企業が譲受企業となる場合、海外進出により利益の向上が見込めるのはもちろんですが、事業拡大や新規事業の立ち上げにかかる手間や時間を抑えられる可能性があることも大きなメリットです。

海外進出となると、その国の風習や言語の他に税制や法制度なども異なるため、手続きに多大な時間と労力がかかります。

しかし、海外M&Aを実施することで、事業内容によっては許認可が必要となる場合もありますが、許認可を承継できて、手続きの手間や時間を軽減できる場合もあります。

デメリットには、譲渡企業が拠点とする地域の情報を集めておかなければM&Aが成功しにくい点が挙げられます。M&Aが成功しなければ見込んでいた利益を得られない可能性があるため、M&Aの担当者はしっかりと現地の情報を収集する必要があるでしょう。

海外M&Aの注意点

海外M&Aとは-事例や目的・手法・メリット

ここでは日本企業が海外M&Aを実施する際の注意点を紹介します。

▷国内M&Aにはない懸念点に注意する必要がある

海外M&Aでは、譲渡企業と譲受企業の間で商習慣や文化、言語の違いがあるのはもちろん、物理的な距離も遠くなるため、国内のM&Aより労力やコストが必要となります。

また、日本と海外では税制や法制度、会計制度にも違いがあり、デューディリジェンスの範囲や内容も多岐に渡るため、その手続きが複雑になる可能性があります。現地の情報を正確に把握できていないままM&Aを進めてしまうと、M&A成約後にトラブルが発生する可能性もあるため、海外M&Aを実施する際は、事前に現地の情報を収集する必要があります。

▷M&A成立後のPMIが難しい

海外M&Aに関わらず、M&Aに期待されるメリットの1つとしてシナジー効果(相乗効果)があります。

十分なシナジー効果を得られるかは、M&A後の統合プロセス(PMI)が適切に行われるかにかかっているといっても過言ではありません。

しかし、海外M&Aは、譲渡企業と譲受企業で風習や言語などが異なるため、国内のM&AよりPMIが難しくなります。そのため、海外M&Aを検討する場合は、早い段階からPMIを見据えた体制を整えておくことが重要になります。場合によってはトップ自らが前面に出て、時間と労力をかける必要もあるでしょう。

関連記事:PMIとは?M&A成立後の統合プロセスについて株式譲渡を例に解説

関連記事:シナジー効果とは?M&Aを成功させるシナジーの種類や事例と評価方法

▷海外M&Aには高度な分析力と経営判断が必要

国内のM&Aと同様に、海外M&Aにおいても「自社に適した相手企業」を探すことが重要です。

海外M&Aでは、譲渡企業と譲受企業の物理的な距離が離れている分、国内のM&Aに比べて検討・実行時には高度な分析と経営判断が必要となる他、譲受企業はM&A成立後に高い経営管理能力も求められます。そのため、海外M&Aを検討する際は、海外M&Aに詳しい仲介会社などの専門家にサポートを依頼するのがよいでしょう。

【最新版】海外M&Aの事例

年々増加傾向にある海外M&Aですが、近年でも大企業が海外M&Aを成立させています。

ここでは海外M&Aの最新事例を2つ紹介します。

▷サッポロホールディングスによる米ストーンブリューイングの持分取得

2022年6月、サッポロホールディングスは米孫会社Sapporo U.S.Aを通じ、米ストーンブリューイングホールディングス傘下のクラフトビールメーカーであるストーンブリューイングの子会社化を発表しました。

ストーンブリューイングはビール類製造販売事業や酒類卸事業を保有していますが、酒類卸事業を切り離しストーンブリューイングホールディングスの新設子会社に譲渡後、Sapporo U.S.Aがストーンブリューイングの持ち分を取得する予定です。

サッポロホールディングスは、ストーンブリューイングが保有する工場の取得により「サッポロブランド」の成長の後押しやストーンブリューイングのStone IPAといった有力ブランドを獲得することで、北米における酒類事業の更なる拡大を目指すとしています。

▷ソニー・インタラクティブエンタテインメントによるバンジー(アメリカ)の買収

2022年2月、ソニーの子会社 ソニー・インタラクティブエンタテインメントはバンジー買収を発表しました。

買収価額は約4100億円となります。

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは2021年だけでゲーム開発会社を5社買収し、PS向けソフト開発を強化していますが、バンジーはその中でも最大規模の買収となります。

本M&Aによりバンジーのゲーム開発や人材採用を強化するほか、ゲームで培った知的財産を様々なエンタメに展開するとしています。

▷日立製作所によるグローバルロジック社の買収

2021年7月、日立製作所が米国のグローバルロジック社(GlobalLogic社)を96億ドルで買収したことを発表しました。

グローバルロジック社は、世界各地のエンジニアリングセンターやデザインスタジオで働く2万1,000人以上のプロフェッショナルの人材を擁している企業です。

日立製作所は、オペレーションの現場にあるOT(オペレーショナルテクノロジー)のデータと販売などのビジネスデータを融合するIoTプラットフォ-ム「Lumada(ルマーダ)」事業に注力していますが、今回の買収によって「Lumada」事業をグローバルに展開していくことが可能になります。

また、グローバルロジック社が展開するデザインスタジオやソフトウェアエンジニアリングセンターを加えることで、鉄道やエネルギーなどの社会インフラのデジタルトランスフォーメーションが加速することも期待されています。

▷セブン&アイ・ホールディングスによるマラソン・ペトロリア社の事業買収

2020年8月、セブン-イレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂などを傘下に持つ日本の大手流通持株会社セブン&アイ・ホールディングスは、米国のマラソン・ペトロリア社(MPC 社:Marathon Petroleum Corporation)からコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ」を210億ドルで買収することに成功しました。

MPC 社は主に「スピードウェイ」ブランドにて、米国において約 3,900店舗(2019年12月時点)を有しています。

この買収によって7-Eleven, Incは約1万4,000店舗となり、米国の人口の多い50 の都心部のうち 47 の地域に店舗網を有することになりました。

▷海外M&Aのその他の事例

2022年に行われた海外M&Aや日本国内のM&Aについて、以下の記事にまとめています。

様々な事例がありますので、ぜひご参考にしてください。

・関連記事:【2022年版】最新のM&A事例と動向

まとめ

海外M&Aは、グローバル市場の開拓や経営コストの削減など、さまざまな目的で実施されます。

日本では、「In-Out型」が増加傾向となっていることからも見てとれるように、海外進出を見据えて海外M&Aを検討する企業が今後も増えると考えられています。

しかし、海外M&Aは国内のM&Aと比べてリスクが高くなる他、より幅広い専門知識が必要となります。

そのため、海外M&Aを検討する際は、海外M&Aの実績が豊富な仲介会社などの専門家に相談・依頼をするのがおすすめです。

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