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2025年12月4日

TOB(株式公開買付け)規制とは?5%ルールと1/3ルールや改正内容を解説

TOB(株式公開買付け)規制とは?5%ルールと1/3ルールや改正内容を解説

M&Aなどで上場企業の株式を取得する場合、TOB(株式公開買付け)規制の適用を受けることがあります。TOB規制とは、一般的に「5%ルール」や「1/3ルール」と呼ばれるルールです。

TOB規制は、株式市場における取引の公正性を確保する目的で情報開示義務などを定めたものです。

上場株式を買い付ける際は、TOB規制の内容や適用対象となるケースと適用除外となるケースの違いを理解しておく必要があります。

本記事では、TOB規制とはどのようなルールなのか、5%ルール・1/3ルールの内容を解説するとともに、特別関係者の範囲の見直しなど2026年5月の改正内容を紹介します。

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TOB(株式公開買付け)とは

TOB(Take-Over-Bid)とは、買付者が期間・価格・予定株数などを公表した上で、証券取引所を通さずに対象企業の既存の株主から大量の株式の買付けを行うことです。主に上場企業がMBO(経営陣による経営権の取得)を目的に自社株の買付けを行うためや、他の上場企業の株式を取得するために活用される手法になります。

本来、株式の売買は市場の自由な取引のもとで行われるべきものなので、通常は株式市場で形成された価格で売買が行われます。しかし、市場の自由な取引に任せてしまうと逆に公平な取引が阻害される恐れがあるケースでは、買付価格などを事前に決めるTOBによって売買することが義務付けられています。

▷関連記事:TOB(株式公開買付)とは?目的やメリット・デメリット、LBO・MBOとの違い
▷関連記事:MBO(マネジメント・バイアウト)とは?目的やメリット、導入の流れなどをわかりやすく解説

TOB規制とは

株式の取得には一定のルールがあり、条件に該当すると買付けに関する情報を公開する義務が生じます。一般的にTOB規制と呼ばれるルールです。

M&Aなどで株式を取得するときには、TOB規制に違反して刑事罰の対象にならないように、TOB規制の目的や5%ルール・1/3ルールの内容を理解しておく必要があります。

どのような条件があるのか、以下ではルールの目的や内容を解説します。

義務的公開買付けの目的

「義務的公開買付け」とは、一定規模の株式等の買取りにおいて、法律により公開買付け(TOB)の実行を義務付けられる買付を指します(金融商品取引法27条の2)。この制度が定められている目的は、取引の情報を適切に開示することで株主に公平な株式の取引機会を設けることです。

証券取引所外で短期間に大量の株式の売買が発生する場合、もしも情報を公開しなければ、特定の株主だけに利益が生じることになったり、少数株主が不当な不利益を被ったりと、株式市場にとって不透明な取引が行われる可能性があります。

対策のために、公に買付けを行うことを明らかにする、義務的公開買付けという制度が設けられているのです。TOB規制と呼ばれる制度で、具体的には「5%ルール」と「1/3ルール」という2つのルールがあります。

5%ルール

証券取引所外で買付けを行った際、買付け後に買付者の株式等所有割合が5%を超える場合は、公開買付けを行う義務が生じます(金融商品取引法27条の2第1項1号)。

このルールが定められている理由は、株式を5%超保有する株主は、株価や経営に与える影響が大きいためです。これを「5%ルール」といいます。

ただし、5%を超える場合であっても、「著しく少数の者から買付けを行う場合」すなわち、「TOBによる買付けを行う相手方の人数と、TOB実施日前の60日以内に証券市場外にて買付けを行った相手方の人数を合わせた人数が合計10人以下の場合」には、5%ルールの適用が免除される場合があります。

1/3ルール

証券取引所内外、どちらの取引であっても、買付け後の株式等所有割合が1/3を超える場合はTOBによる実施が義務付けられています。TOB規制のうち「1/3ルール」と呼ばれるルールです。

1/3ルールには大きく3つのパターンがあります。

1つ目のパターンは、証券取引所外で取引を行うケースです。これは、60日間で10名以内の株主から買付けを行って、1/3を超える場合が当てはまります。なお、5%ルールの場合は相手方が「11名以上」、1/3ルールでは「10名以内」の場合に適用されるという違いがあります。

2つ目のパターンは、証券取引所内において「特定売買」などが行われる場合です。特定売買とは、電子取引ネットワークシステムToSTNeTやJ-NETなどを通じて行われる立会外取引が当てはまります。これにより買付けなどを行い、その後の株式等所有割合が1/3を超える場合が対象です。

3つ目のパターンは、証券取引所内・外の取引を組み合わせて「急速な買付け」を行い、株式等の所有割合が1/3を超える場合も対象になります。「急速な買付け」とは、3ヶ月の間に対象企業が発行している全株式のうち10%超相当の買付けを行った際に、そのうち証券取引所外または特定売買で5%超相当の株式取得を行い、結果として株式等所有割合が1/3を超える場合を指します。

その他のルール

上記の5%ルールと1/3ルール以外にも、いくつかルールが存在します。例えば、他の買付者が公開買付けを実施している期間中、既に株式等所有割合が1/3を超える大株主が、5%を超える株式等の買増しを行う際も公開買付けを行う義務が生じます。

なお例外的に、一定の企業グループ内での株の移転や新株予約権などの行使などについては、TOB規制の適用除外となるため公開買付けを行う必要はありません。

【2026年5月施行】TOB規制の改正内容

法改正により、2026年5月からTOB規制の内容が一部変更されます。主な改正内容は次の2つです。

・TOB規制の対象を1/3から30%へ引き下げ
・特別関係者や適用除外買付けの範囲の見直し

それぞれの改正内容について以下で詳しく解説します。

TOB規制の対象を1/3から30%へ引き下げ

TOB規制で1/3ルールが定められている理由は、株主総会の特別決議を阻止できる基本的な割合が3分の1だからです。株式の購入によって特別決議を阻止できるようになれば、企業経営に与える影響が大きいため、3分の1を基準に規制が設けられています。

しかし、現状としては、30%の議決権を有していれば多くの上場会社で株主総会の特別決議を阻止できるのが実態です。そのため、実態にあわせて規制基準も1/3から30%に変更されることになりました。

特別関係者や適用除外買付けの範囲の見直し

TOB規制の適用対象となるのかどうか、保有割合が5%や1/3(改正後は30%)を超えるか確認する際、その人の保有割合だけで判定すると規制をすり抜けることが可能です。

例えば、自分だけで保有すると基準割合を超える場合でも、親族など関係者と分けて保有すれば、各々の保有割合は基準割合を下回り、規制の適用を回避できてしまいます。

このような規制のすり抜けを防止する目的で設けられている規定が特別関係者の概念です。特別関係者とは、親族など株式の買付者と密接な関係にある一定の者を指します。5%や1/3を超えるかどうかを判定する際、本人だけでなく特別関係者が所有する株式割合も考慮することで、規制のすり抜けを防止する仕組みです。

今回の法改正では、市場内取引(立会内)も改正により、30%ルールの適用対象として新たに含まれることになります。それに伴って特別関係者の範囲も変更され、「買付者の親族並びに買付者が特別資本関係を有する法人等及び買付者に対して特別資本関係を有する法人等の役員」が形式的特別関係者の範囲から除外されます。

出典:金融庁「令和6年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等に関するパブリックコメントの結果等について

米国やEU圏におけるTOBルール

ここまでは日本におけるTOB規制について紹介しましたが、アメリカやEU諸国のTOBのルールについても見ていきましょう。

米国のTOB規制やルール

日本のTOB規制とは異なり、アメリカでは上場企業の株式を取得する場合、公開買付けや合併、その他の手法を選んでも、連邦レベル(米国証券法および独占禁止法)、そして州レベル(会社法)の両方に従うべきルールが定められています。

アメリカのルールは独自のものですが、米国連邦法を見てみると、「上場会社の株式を5%超取得する際に当該取得の開示を請求」といった日本の5%ルールと似た規則もあります。

英国型のTOBルールを採用するEU諸国

英国のルールを基礎とするEU企業買収指令によって、ヨーロッパにおけるM&Aのルールが定められています。そして英国型の原則を基に、ドイツやフランスなどのEU加盟国は自国に合った変更を加えて国内法化しているのです。

英国を例にすると、株式取得に関する「テイクオーバー・コード」というルールがあります。このルールは、「証券取引所内外を問わず、取得後30%を超える持分比率になる場合は、原則的にTOBを行い、申込みがあった全ての株式を買取らなくてはいけない」など複数の内容が定められています。

一見すると日本の1/3ルールと類似しているようですが、義務的公開買付けと全部買付(勧誘)義務(買付け後の株式等所有割合が2/3以上になる場合には、全ての株式を買取る義務)がワンセットになっている、という点が大きく異なります。

他にも、現金対価で株式を買付ける場合には買付け資金の調達ができる旨をファイナンシャルアドバイザーなどから証明してもらう必要や、TOBの対象企業は株主から承認を得ない限り、敵対的TOBへの防衛施策を打つことができないなどのルールが存在します。

まとめ

以上が、TOB(株式公開買付け)を実施する場合に必須の知識となる、「5%ルール」や「1/3ルール」の詳細です。TOB規制に抵触することがないように、適用対象となるケースと適用除外となるケースの違いや、株式の保有割合を計算する際の特別関係者の考え方について、正しく理解するようにしてください。

2026年5月からは法改正により、1/3から30%に割合が引き下げられるなど、制度が変わる点もポイントの1つです。TOBなどM&Aでは専門的な知識が必要になるため、M&Aアドバイザーなどの専門家への相談やアドバイスを求めることを推奨します。

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