よくわかるM&A

2023/12/06

略式合併とは?簡易合併との違いや要件、メリットと注意点を紹介

略式合併とは?簡易合併との違いや要件、メリットと注意点を紹介

略式合併とは、吸収合併などを行う際に株主総会での手続きを簡略化できる制度です。会社法の施行とともに可能となり、近年ではスムーズな組織改編などを目的に多くの企業で採用されています。

本記事では、略式合併の概要や簡易合併との違い、要件やメリットを紹介します。略式合併の例外や要件を満たしていても認められないケースなど、具体例も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

▷関連記事:M&Aにおける合併とは?意味や手続き、種類の違いを解説
▷関連記事:合併時の株主総会で承認が必要なケースや必要書類を弁護士が解説

略式合併とは?

略式合併とは、特別支配関係にある会社を吸収合併する場合などに、被支配会社の株主総会の承認を省略できる制度です。

通常、合併は重大な組織再編を伴うため、株主総会での特別決議が必要です(会社法795条1項)。特別支配関係にある会社間の合併では、被支配会社の株式の多くを支配会社が保有しているため、株主総会を開催した場合も問題なく承認されると予想されます。

2006年に施行された会社法では、略式合併の制度を設けて、上記のようなケースで株主総会の承認を省略して組織再編を行うことを認めています。

略式合併と簡易合併の違い

略式合併と簡易合併は、一定の要件を満たす場合に株主総会の承認を省略できる点で共通しています。

略式合併と簡易合併の主な違いは、その要件にあります。

略式合併の要件は議決権がベースとなっている一方、簡易合併の要件は合併の対価がベースです。また、略式合併は特別支配関係にある会社で採用されるのに対し、簡易合併は比較的小規模の会社を合併する際に採用されます。

略式合併の要件は次の章で紹介します。また、簡易合併の詳細は以下の記事でまとめているので、あわせてご確認ください。

▷関連記事:簡易合併とは?求められる要件や認められないケース、メリット・注意点を解説

略式合併の要件

略式合併の要件は以下のとおりです。

・存続会社が消滅会社の議決権の90%以上を保有している場合
・消滅会社が存続会社の議決権の90%以上を保有している場合

存続会社とは合併後も法人格が残る会社で、消滅会社は合併後に法人格がなくなる会社です。なお、議決権の要件が90%とならない例外もあるため、あわせて解説します。

存続会社が消滅会社の議決権の90%以上を保有している場合

存続会社が消滅会社の議決権を90%以上保有している場合、存続会社は消滅会社の「特別支配会社」となります。特別支配会社とは、単独、あるいは100%子会社またはその他これに準ずるものとして法務省令で定める法人と合算して、ある株式会社の総株主の議決権の9割以上を保有する会社のことを指します。

この場合、合併契約にかかる消滅会社の株主総会の特別決議を省略できます(会社法784条1項本文)。先述のように、議決権を90%以上保有する関係にある会社では、支配会社が被支配会社を実質的にコントロールできているためです。

なお、A社がB社の株式を100%保有し、かつB社がC社の議決権を90%以上保有している場合も、A社はC社の特別支配会社となります。そのため、A社がC社を合併する場合は略式合併の適用が可能です。

消滅会社が存続会社の議決権の90%以上を保有している場合

消滅会社が存続会社の議決権の90%以上を保有し、特別支配会社である場合は、存続会社の株主総会の特別決議を省略できます(会社法796条1項)。

つまり、合併の存続会社または消滅会社のどちらかが相手方の特別支配会社であれば、被支配会社の株主総会の承認決議を要しない(略式合併を適用できる)仕組みとなっています。

定款で特別支配会社に90%を超える割合を定めている場合

議決権の例外となるのは、吸収合併の当該会社が90%を超える割合を定款で定めている場合です。この場合、90%ではなく、定款で定めた割合を保有する必要があるので注意しましょう。

例えば、定款で、特別支配関係には95%以上の議決権が必要と定められている場合は、略式合併の要件も95%以上の議決権を保有する必要があります。

要件を満たしていても略式合併ができない場合

略式合併は、特別支配関係にある会社であれば全ての会社に適用できるわけではありません。

略式合併は吸収合併の他、吸収分割や株式交換などの手法で認められている制度です。新設合併や新設分割、株式移転など、新設型の組織再編では認められていないので注意しましょう。

また、合併対価の全部または一部が譲渡制限株式であり、以下のケースに該当する場合も適用できません。

1. 被支配会社が消滅会社になる場合で、当該会社が公開会社であり、かつ種類発行株式会社ではない
2. 被支配会社が存続会社になる場合で、当該会社が公開会社ではない

特別支配関係にあっても、譲渡制限株式の交付などにより影響がある場合には、株主総会を省略できないので覚えておきましょう。

略式合併のメリット

略式合併とは?簡易合併との違いや要件、メリットと注意点を紹介

略式合併の主なメリットは以下のとおりです。

・消滅会社もしくは存続会社での株主総会の承認が不要
・簡易合併との併用で双方の株主総会手続きが不要となる場合もある
・迅速に事業再編ができる

各メリットの詳しい内容を紹介します。

消滅会社もしくは存続会社での株主総会の承認が不要

略式合併を活用すると、存続会社が消滅会社の特別支配会社である場合は「消滅会社での株主総会の特別決議」、消滅会社が存続会社の特別支配会社である場合は「存続会社での株主総会の特別決議」が不要です。

合併では、原則として消滅会社と存続会社の双方で株主総会の特別決議が必要ですが、略式合併の適用によりどちらかの株主総会の開催を省略できるメリットがあります。

簡易合併との併用で双方の株主総会手続きが不要となる場合もある

存続会社が消滅会社の特別支配会社で、かつ簡易合併の要件を満たす場合には、存続会社の手続きを簡易合併の手続きで、消滅会社の手続きを略式合併の手続きで行うことも可能です。

つまり、存続会社と消滅会社の双方の株主総会を省略でき、合併手続きを大幅に簡略化できます。合併をスムーズに行いたい場合にメリットの大きい手法です。

実際に、略式合併と簡易合併の併用はいくつかの企業で活用されています。

例えば、2023年7月28日に発表された株式会社ティーガイアによる完全子会社キャリアデザイン・アカデミーの吸収合併や、2023年9月29日に発表された株式会社SUBARUによる完全子会社スバルITクリエーションズの吸収合併で、略式合併と簡易合併の併用が採用され、双方の株主総会を開催することなく合併が行われています。

迅速に事業再編ができる

株主総会の開催は、召集のための取締役会の開催や株主への招集通知発送、当日の会場手配や進行の手続きなど、大きな労力や手間がかかります。一方が相手方の特別支配関係にあるにもかかわらず、形式的に株主総会を開催していては、費用面も時間面も実務上大きな負担になります。

略式合併を適用すれば、費用・時間の大幅なコストダウンにつながり、それにより迅速な組織再編が可能となるでしょう。

略式合併の注意点

略式合併の主な注意点は以下のとおりです。

・株主総会決議が必要となる場合がある
・逆取得で例外的な会計処理が必要となる場合がある
・一定の条件下で差止請求が認められている

各注意点の詳細を解説します。

株主総会決議が必要となる場合がある

先述のように、議決権の90%以上を保有して特別支配関係にあったとしても、合併の対価が譲渡制限株式である場合には、略式合併を適用できないケースがあります。この場合、通常どおり株主総会の特別決議が必要となる点に注意が必要です。

逆取得で例外的な会計処理が必要となる場合がある

逆取得とは、吸収合併で消滅会社が取得企業となり、存続会社が被取得企業となるケースのことです。逆取得となる場合、個別財務諸表や連結財務諸表で、通常と異なる例外的な会計処理が必要となるケースもあります。

一定の条件下で差止請求が認められている

略式合併では、簡易合併とは違い少数株主に対する異議手続きが定められていません。そのため、以下のような条件下で略式合併をして少数株主が不利になる場合、消滅会社の株主には差止請求が認められています(会社法784条の2)。

・吸収合併が法令や定款に違反する場合
・合併対価が消滅会社または存続会社の財産状況やその他の事情に照らして著しく不当である場合

まとめ

2006年に施行された会社法では、組織再編行為の適用範囲拡大や要件の緩和がなされ、略式合併(略式組織再編)の制度が新たに規定されました。

要件を満たして略式合併を活用すると、被支配会社での株主総会の開催が不要となり、合併の手続きを簡略化できます。ただし、合併は株式譲渡と比較すると手続きが複雑になりやすい側面があり、状況によっては略式合併が適用できないケースもあるので注意しましょう。

合併を迅速かつ問題なく進めるためには、専門家の活用も有用です。fundbookでは経験豊かなアドバイザーや士業専門家が丁寧なサポートを提供します。合併で不明点があるときは、fundbookまで一度ご相談ください。

fundbookのサービスはこちら(自社の譲渡を希望の方向け)

fundbookのサービスはこちら(他社の譲受を希望の方向け)

    【無料ダウンロード】自社の企業価値を知りたい方へ

    企業価値100億円の条件

    企業価値100億円の条件 30の事例とロジック解説

    本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。
    このような方におすすめです。

    自社の企業価値がいくらなのか知りたい
    ・企業価値の算出ロジックを正しく理解したい
    ・これからIPOやM&Aを検討するための参考にしたい

    は必須項目です。

    貴社名

    売上規模

    貴社サイトURLもしくは本社所在地をご入力ください

    お名前

    フリガナ

    役職

    自社の株式保有

    電話番号(ハイフンなし)

    メールアドレス

    自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談

    相談料、着手金、企業価値算定無料、
    お気軽にお問い合わせください

    他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認

    fundbookが厳選した
    優良譲渡M&A案件が検索できます

    M&A・事業承継のご相談は
    お電話でも受け付けております

    TEL 0120-880-880 受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)
    M&A案件一覧を見る 譲渡に関するご相談