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2023/12/13

会社合併の種類は?目的や手続きの違い、税務上の扱いや注意点を解説

会社合併の種類は?目的や手続きの違い、税務上の扱いや注意点を解説

合併は、M&Aでよく採用される手法です。M&AのMは英語の「Mergers」、Aは「Acquisitions」の頭文字で、日本語の「合併」と「買収」を意味しています。

本記事では、会社合併の種類やそれぞれの違い、会社合併のメリットやデメリットを紹介します。会社合併の手順や注意点も説明しているので、ぜひ参考にしてください。

▷関連記事:M&Aとは?M&Aの意味・流れ・手法など基本を分かりやすく【動画付】

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会社合併とは

会社合併は複数あるM&Aの手法の1つです。以下では、会社合併の意味や目的、買収との違いを解説します。

会社合併の意味と目的

会社合併とは、2つ以上の会社を1つの会社に統合する手法です。

会社合併では、譲渡する会社の資産や負債、従業員などは譲受する会社に移転され、資産を譲渡した会社は合併後に消滅します。会社合併は、他社を完全に取得したい場合に採用される他、子会社を吸収合併してグループ内の組織再編を行う場合など、さまざまな目的で採用される手法です。

なお、会社合併で権利義務を譲受する会社は「存続会社」、権利義務を譲渡して法人格が消滅する会社は「消滅会社」と呼ばれます。

合併と買収の違い

買収とは、ある会社が他の会社やその所有する事業を買う手法です。

合併との大きな違いは、経営権が移転するのみで会社が消滅しない点です。例えば、株式譲渡で他社を買収した場合、経営権は自社に移りますが、買収した会社の法人格は消滅しません。一方、吸収合併で他社を合併した場合には、自社の法人格のみが残り、吸収した会社の法人格は消滅します。

▷関連記事:合併と買収の違いとは?M&A(合併と買収)の基礎知識

会社合併の種類

合併には「吸収合併」と「新設合併」の2種類があります。以下でそれぞれの詳細を解説します。

吸収合併とは

吸収合併とは、合併で消滅する会社の権利義務を全て存続会社が承継する手法です(会社法2条27号)。

A社がB社を吸収合併する場合、A社が存続会社となってB社が持つ権利義務をまるごと取得します。法的に1つの法人となるため、それぞれの会社が持つ資源を結合しやすい点が吸収合併の特徴です。

例えば、三菱ケミカルグループの田辺製薬株式会社は、2024年3月末を目途に完全子会社の吉富薬品株式会社を吸収合併すると発表しました。これは、精神科領域の医療用医薬品に特化したプロモーションを展開する吉富薬品を吸収合併して1つの会社となることにより、生産性のさらなる向上を目指せるためです。

なお、吸収合併は、一定の要件を満たすと一部手続きを簡略化する「簡易合併」や「略式合併」の適用が可能となります。簡易合併や略式合併をより詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

▷関連記事:【基本を網羅】吸収合併とは?メリットや手続き、登記について解説
▷関連記事:簡易合併とは?求められる要件や認められないケース、メリット・注意点を解説
▷関連記事:略式合併とは?簡易合併との違いや要件、メリット、注意点を紹介

新設合併とは

新設合併とは、合併にあたって新しく会社を設立し、それぞれの会社の権利義務を全て新設会社に承継する手法です(会社法2条28号)。

具体的には、株式会社三越が名古屋三越・千葉三越・鹿児島三越・福岡三越と新設合併し、新たに株式会社三越(新三越)を設立した事例が挙げられます。

新設合併は吸収合併と異なり、合併する会社の法人格が全て消滅してしまいます。そして、新設会社が各会社の所有していた権利義務を全て取得し、存続会社となります。

吸収合併と新設合併の違い

吸収合併と新設合併の主な違いは以下のとおりです。

項目吸収合併新設合併
消滅する法人格存続会社以外の会社の法人格全ての会社の法人格
権利義務存続会社が承継新設会社が承継
免許や許認可存続会社が引き継げる新設会社は引き継ぐことができない
登録免許税資本金の増加分に対して0.15%資本金に対して0.15%
上場の維持維持できる・法人格が消滅するため、維持できない
・合併後、新規上場の申請を行う
株主への対価株式や社債などに加え現金も可能株式または社債のどちらかのみ

吸収合併と新設合併の違いは、合併の形態だけではありません。免許や許認可の引継ぎ、株主への対価なども異なります。

会社合併のメリット・デメリット

会社合併にはどのようなメリットがあるのでしょうか。以下、デメリットとともに解説します。

会社合併のメリット

会社合併の主なメリットは以下のとおりです。

・株式を対価とする場合は資金調達が不要
・事業拡大を低コストで行える
・シナジー効果が生じやすい
・権利義務を包括的に承継できる

会社合併は、消滅会社の株主への対価に株式を採用することが会社法で認められています(会社法749条1項2号)。これにより、資金面での負担を抑える形で事業拡大できる点がメリットです。

また、合併で1つの会社となることにより、新たな付加価値の発生や事業コストの削減などのシナジー効果も見込めます。その他、権利義務を包括的に承継できるため、個別の手続きが必要な事業譲渡と比較すると、手間が少なく済みます。

会社合併のデメリット

会社合併のデメリットには、以下の点が挙げられます。

・手続きが煩雑
・PMIの負担が大きい
・株価が下がる可能性がある

会社合併は他の手法と比較すると、債権者保護手続きや株主総会の承認が必要など、手続きが煩雑な点がデメリットです。

また、合併は複数の法人が1つとなるので、PMI(経営統合)の負担が少なくありません。さらに、合併の対価で新株が交付されることにより、株価が下がる可能性があります。

会社合併の手順

会社合併の種類は?目的や手続きの違い、税務上の扱いや注意点を解説

会社合併は、契約書の作成や株主総会の承認を経て実施されます。以下では、合併の手順を吸収合併と新設合併に分けて解説します。

吸収合併の場合

吸収合併の主な手順は以下のとおりです。

1. 合併契約書の作成
2. 取締役会の決議
3. 合併契約の締結
4. 反対株主への株式買取請求通知・公告
5. 合併契約書などの備置
6. 株主総会承認
7. 効力の発生
8. 合併による登記申請
9. 事後開示書類の備置

吸収合併は消滅会社の株主へ影響を与えるため、反対株主への買取請求通知や株主総会での承認が必要となります。手続きに関する詳細について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

▷関連記事:吸収合併の手続きに必要なこと 存続会社と消滅会社で利害を残さないために送るプロセス

新設合併の場合

新設合併の主な手順は以下のとおりです。

1. 新設合併契約の締結
2. 合併契約書などの備置
3. 官報などへの公告
4. 債権者への個別催告
5. 消滅会社の株券などの提出公告
6. 株主総会の招集と反対株主への通知
7. 株主総会承認
8. 効力の発生
9. 合併による登記申請
10. 事後開示書類の備置

新設合併も、手続きの大まかな流れは似ています。ただし、吸収合併とは違い、簡易合併や略式合併を適用できない点には注意しましょう。

▷関連記事:M&Aにおける新設合併とは?定義や手続きの流れを解説

会社合併の税務上の扱い

会社合併の税務で注意したい点は、「適格合併」となるか「非適格合併」となるかです。それぞれの概要や税務上の扱いを解説します。

適格合併とは

適格合併とは、税法で定められた一定の要件を満たす合併のことです。適格合併に当てはまる場合は、消滅会社の繰越欠損金を承継できる、被合併会社の資産や負債を簿価で承継できるなどのメリットがあります。

適格の要件は、共同事業を行う場合やグループ内事業再編の場合などで細かく設定されています。詳細は以下の記事でまとめているので、ぜひ参考にしてください。

▷関連記事:適格合併とは?メリットや要件、繰越欠損金を全額引き継げるケースを解説

非適格合併とは

非適格合併は、適格合併の要件を満たさない合併のことで、法人税法上の原則的な処理が適用されます。適格合併が適用された場合と非適格合併が適用された場合の税法上の違いは、以下のとおりです。

項目適格合併非適格合併
資産や負債の移転価額帳簿価額時価
利益積立金の継承継承する継承しない
移転時の課税課税しない課税する

非適格合併の場合、移転価額は時価で評価されるため評価損益が生じます。その他、適格合併の要件を満たすと税法上のメリットが受けられます。

会社合併時の注意点

会社合併では複数の会社が1つとなるため、丁寧な計画や従業員へのフォローが必要です。会社合併を進める際は、以下の点に注意しましょう。

成功のためのPMI実施

PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)とは、会社合併後の統合プロセスを意味する用語です。文化や風土が異なる会社を統合することは容易ではありません。事前にPMIの計画を立て、丁寧に統合プロセスを進める必要があります。

PMIについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

▷関連記事:PMIとは?M&A成立後の統合プロセスについて株式譲渡を例に解説

人材流出を防ぐための従業員フォロー

会社合併後は、業務フローや勤務環境、人事制度などが異なる組織の従業員同士が1つの会社で働くことになります。環境の違いには明文化されていない企業文化や習慣も含まれるため、双方の従業員の労働環境に大きな変化をもたらします。

従業員のモチベーション低下や環境の変化による人材流出のリスクを防ぐため、十分なサポートが必要です。

簿外債務を含むリスクへの対応

会社合併では、消滅会社の権利義務は包括的に承継されます。承継されるものは資産やノウハウなどプラスの側面だけでなく、債務も含まれる点に注意が必要です。

特に、会社によっては財務諸表や損益計算書に明示されていない「簿外債務」がある場合があります。将来的に金銭負担が生じるリスクを回避するため、合併前に入念なデューデリジェンスを行いましょう。

まとめ

会社合併は複数の会社を1つにする手法で、吸収合併と新設合併の2種類があります。新たな付加価値の発生や事業コストの削減といったシナジー効果が期待できるなどのメリットがある一方、手続きの煩雑さやPMIの負担などのデメリットもあるので、自社の状況に合わせて手法を選択しましょう。

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