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2023/10/03

M&Aを成功へと導いた企業事例を紹介!最新の動向や成功のポイントも解説

M&Aを成功へと導いた企業事例を紹介!最新の動向や成功のポイントも解説

近年、M&Aは後継者不在問題の解決策として、あるいは経営戦略の手段として、多くの企業で重要な選択肢となっています。M&Aの意思決定をするために、過去の事例を参考にしたいと考える方もいらっしゃるでしょう。

本記事では、日本企業における最新のM&A動向とともに、大企業・中小企業・クロスボーダー別に、M&Aの成功事例を紹介します。譲渡企業や譲受企業の概要、M&Aの手法、成功のポイントもあわせて解説します。

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日本企業におけるM&Aの最新動向

M&Aを成功へと導いた企業事例を紹介!最新の動向や成功のポイントも解説

MARR Onlineの調査によると、2021年の日本企業が関わるM&A件数は前年から14.7%の伸びを示し、過去最高の4,280件を記録しました。2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響から件数はやや減少しましたが、M&Aの件数はおおむね右肩上がりに増加しています。

M&A件数の内訳をみると、国内企業同士のIN-IN型が3,337件(前年比13.3%増、過去最多)にのぼり、全体の8割弱を占めています。

海外とのクロスボーダー案件は、国内企業が海外企業へM&A行うIN-OUT型が625件(前年比12.2%増)、海外企業が国内企業へM&Aを行うOUT-IN型が318件(前年比38.9%増、過去最高)という状況です。国内案件、クロスボーダー案件を問わずM&Aの件数は上昇傾向にあります。

●M&Aの今後の動向

M&Aは、今後も活発に行われる見通しです。例えば、大手企業では新規事業の開拓やシェアの拡大のための経営戦略の1つとして、M&Aが多く採用されています。DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応でIT人材を確保するためのM&Aも増加中です。

また、中小企業では後継者不在問題解消の手段として、M&Aの手法がとられるケースが増えています。政府も中小M&Aガイドラインや第三者承継支援総合パッケージの策定により、中小企業のM&Aを支援する構えです。

なお、クロスボーダーM&Aは、従来欧米企業とのM&Aを中心に実施されてきました。今後は国内市場の飽和を背景に、東南アジアへのM&Aも増加すると予想されています。

●M&Aの成功率

M&Aの件数が増加傾向にある一方で、M&Aの成功率はどのようになっているのでしょうか。

デロイトトーマツ コンサルティング株式会社の調査(2013)によると、「過去のM&A案件を振り返って、目標達成度を評価するとどのようになりますか」と質問された企業のうち、80%以上達成したと回答した企業は全体の36%にとどまりました。

M&Aは、その成約によりさまざまな効果を期待できる手法です。ただし、当初の目標を達成するためには、成約後の速やかな経営統合などいくつかのプロセスが必要となります。M&Aを成功へと導いた企業の事例を知ることは、M&Aを進める上で有益な情報となります。

出所:© 2013. For information, contact Deloitte Tohmatsu Consulting Co., Ltd

日本国内の大企業のM&A成功事例

ここからは、M&Aが業績に好影響を与えた企業の事例を解説します。初めに紹介するのは、日本国内の大企業におけるM&Aの成功事例です。

●NKKと川崎製鉄の経営統合の事例

企業の概要大手製鉄企業であったNKK(日本鋼管株式会社)と川崎製鉄株式会社
企業規模(売上高)NKK:1兆3,316億円、川崎製鉄:1兆1,157億円(2002年度)
手法持株会社のJFEホールディングス株式会社を設立し、双方がその傘下に入る
成功のポイントM&Aにより業界最大手の新日本製鉄と同規模の企業となったことなどから、スケールメリットが得られたため


2002年5月、NKK(日本鋼管株式会社)と川崎製鉄株式会社は経営統合契約書を締結したことを発表しました。経営統合当時の売上高は双方ともに1兆円を超えており、大型のM&A案件として世間の注目を集めました。

M&Aの背景にあったのは、業界最大手の新日本製鉄の存在です。新日本製鉄と渡り合うためには、コスト面や設備面などさまざまな面で競争力が必要となっていました。

NKKと川崎製鉄は、経営統合によりJFEグループを発足します。両社の持つ営業基盤や技術力の拡大、統合によるコストの削減などでスケールメリットを得たことにより、JFEグループはその後好調な業績を達成しました。

●日本電産による三菱マテリアルシーエムアイの買収事例

譲渡企業モーター・電気接点事業を展開する三菱マテリアルシーエムアイ株式会社
譲受企業モーター関連領域で高い技術をもつ日本電産株式会社
企業規模(売上高)三菱マテリアルシーエムアイ:123億円、日本電産:7,092億円(2013年度)
手法株式譲渡
成功のポイント自社と関連するモーター事業に特化したM&Aを行うことで、高いシナジー効果を得た


2013年9月、日本電産株式会社は子会社をつうじ、三菱マテリアルシーエムアイ株式会社の全株式を取得しました。三菱マテリアルシーエムアイのもつ自動車や航空機の部品加工などの高い技術を取得することが狙いです。

日本電産は三菱マテリアルシーエムアイ以外にも、モーター関連領域を中心に数多くのM&Aを実施しています。日本電産は自社の関連領域に特化したM&Aの実施により高いシナジー効果を得て、業績を伸ばしていきました。

●大正製薬によるドクタープログラムの買収事例

譲渡企業スキンケア領域を主軸とした化粧品製造販売業のドクタープログラム株式会社
譲受企業一般用医薬品を中心とした製薬業の大正製薬株式会社
企業規模(売上高)ドクタープログラム:12億円、大正製薬:2,901億円(2015年度)
手法株式譲渡
成功のポイントドクタープログラムのもつ機能性化粧品の開発力、通信販売を主とする販売経路、ノウハウを獲得することにより、経営の多角化に成功した


2016年12月、大正製薬株式会社はキョーリン製薬ホールディングス株式会社より、同社の連結子会社であるドクタープログラム株式会社の全株式を取得しました。

大正製薬はセルフメディケーション事業のなかでも通販事業を成長領域と捉えており、同領域での事業拡大を企図していました。ドクタープログラムの機能性基礎化粧品「トリニティーライン」は通信販売を販売経路としており、そのノウハウと販売経路の獲得により、経営の多角化に成功しています。

日本国内の中小企業のM&A成功事例

中小企業のM&Aでは、そもそも「M&Aが自社にとって最適か」といった初期的な事柄も大きな課題です。また、最適な候補先を見つけることにも難しさが存在します。以下では、3つの中小企業のM&A成功事例を紹介します。

●注文住宅会社の創業者による事業承継

譲渡企業木造注文住宅の設計、施行、販売を事業とする株式会社コアー建築工房
譲受企業建設工事・開発・環境整備・建設に関する企画などを事業とする三和建設株式会社
手法事業承継
成功のポイント創業者として事業の後継者をどうすべきか考え、従業員やM&Aアドバイザーとも相談し、候補先のオーナーと著書を交換して慎重に進めた結果、納得のいく承継先が見つかった


コアー建築工房は創業者の社長が35歳のときに設立した会社です。自身の後継者を考えたときに、家族承継や社員承継には難しさがあったため、M&Aによる第三者承継を検討していました。

しかし、長期間候補先を検討するも、なかなか納得できる候補先が見つかりません。一時はM&Aの検討を断念しようと考えたこともあったようです。

そうしたところに、候補先として三和建設株式会社を紹介されました。コアー建築工房の社長はM&Aアドバイザーを通じ、トップ面談をはじめとした交流の中で候補先の社長との相互理解を深め、2020年6月に無事成約をはたしています。

▷関連記事:“らしさ”まで受け継ぐ、地域に愛される創業社長のM&A

●マッチングが難しい面分業薬局の事業譲渡

譲渡企業・30年にわたり地域医療に従事してきた個人経営の調剤薬局
・特定の門前病院を持たない面分業薬局でもある
譲受企業M&Aにより、事業エリア拡大を図っている調剤薬局グループ
手法事業承継
成功のポイント面分業薬局という形態もあり、マッチングが難しいと言われ不安を感じることもあったが、積極的なサポートを提供するM&Aアドバイザーとの出会いもあり、譲渡先が見つかった


譲渡企業のオーナーが経営する調剤薬局は、さまざまな医療機関の処方箋を受け付ける「面分業薬局」として地域医療を支えてきました。しかし、60代を迎えたことをきっかけにM&Aによる事業承継を検討します。

オーナーは売り上げが不安定になりやすい面分業薬局では候補先を見つけるのは難しいという話を聞き、不安を感じることもあったそうです。しかし、積極的なサポートを行うM&Aアドバイザーとの出会いもあり、約2カ月の短期間でM&Aの成約に達しています。

▷関連記事:相手探しが難しい?面分業薬局が譲渡先と出会えた理由

●家業を守るためにM&Aを選択した運送会社の株式譲渡

譲渡企業一般貨物自動車運送事業を運営する山昭運輸株式会社
譲受企業運送事業や倉庫業などを運営する徳三運輸倉庫株式会社
手法株式譲渡
成功のポイント兼子グループの中核企業と山昭運輸の住所が番地まで同じだったこと、トップ面談で互いに好印象をもったこと、M&Aアドバイザーの細やかなサポートがあったことなどから、無事M&Aの成約につながった


山昭運輸は、2007年の自動車NOx・PM法改正による排出ガス規制の厳格化に対応するため、金融機関から多額の融資を受けてトラックの入れ替えを行いました。その入れ替えで生じた負債により資金繰りが悪化したため、税理士からの提案でM&Aを検討します。

廃業も考えていたところ、M&Aアドバイザーの紹介で兼子グループの徳三運輸倉庫株式会社と出会います。兼子グループの中核企業と山昭運輸の住所が番地まで同じであったこと、徳三運輸の社長が山昭運輸の社名を残すことを受け入れたことなどをきっかけにM&Aが成約し、山昭運輸はM&A成約後に過去最高の売上高を記録しています。

▷関連記事:二足のわらじで10年、家業を守った社長の決断

クロスボーダーM&Aの成功事例

最後に、国際間取引であるクロスボーダーM&Aの成功事例を解説します。今回紹介するJTや旭化成の事例を含め、近年では多くの企業でクロスボーダーM&Aが実施されています。

●JTによるAKI J GROUPの買収事例

譲渡企業バングラデシュでたばこ事業を展開するAki j Group
譲受企業日本たばこ産業株式会社(JT)
取得価額1,645億円
手法株式譲渡
成功のポイントAki j Groupはバングラデシュ第2位のシェアを誇るたばこ会社。JTは、RJRIやギャラハーなど多くのM&Aを手がけたノウハウをもとに、Aki j GroupとのM&A成約に成功した


2018年8月、日本たばこ産業株式会社(JT)はバングラデシュの低価格帯たばこ市場で第2位のシェアをもつAkij Groupのたばこ事業を取得しました。バングラデシュは紙巻たばこ分野で世界第8位の市場であり、JTはこのM&Aにより、紙巻販売数量が約170億本増加する見込みです。

JTはこれまでにもRJRIやギャラハーを始めとする多数のM&Aに成功しており、M&Aのためのマーケティングや統合作業の経験など多くのノウハウを有しています。JTが多くのM&Aに成功している背景には、このようなM&Aの積み重ねの歴史があります。

●旭化成によるセージ・オートモーティブ・インテリアの買収事例

譲渡企業アメリカで自動車内装材製造業を運営するセージ・オートモーティブ・インテリア
譲受企業総合化学業を主な事業とする旭化成株式会社
取得価額791億円
手法株式譲渡
成功のポイント旭化成はマテリアル事業拡大の一環として自動車分野の拡大を企図。もともと旭化成はセージ社と取引があったことから、クロスボーダーM&Aの成功へとつながった


2018年7月、旭化成株式会社はアメリカのセージ・オートモーティブ・インテリアを買収すると発表しました。旭化成は中期経営計画でマテリアル領域を重点特化する考えで、セージ・オートモーティブ・インテリアの買収により、自動車分野向けのマテリアル領域の事業拡大を図っています。

旭化成とセージ・オートモーティブ・インテリアのクロスボーダーM&Aが成功した背景には、両社がこれまで取引を続けており、良好な関係にあったことがあります。旭化成は自動車分野向けの事業の足場を固め、同分野のさらなる事業拡大を図る構えです。

企業のM&Aで成功・失敗を分けるポイント

日本電産やJTの買収事例に共通することは、いくつものM&Aを実施し、M&Aのメソッドやノウハウ、経験を自社内に蓄積していったことにあります。

また、どちらも自社の関連領域にM&Aの対象を絞り、計画的なM&Aを実施することで自社の業績向上へと繋げていきました。

そのほか、中小企業のM&Aでは、候補先が見つからない、候補先との条件がまとまらないなどの理由からM&Aが失敗してしまうケースも多くあります。そのため、自社の視線に立って、親身にサポートしてくれるM&Aアドバイザーの存在も重要となります。

企業におけるM&A成功事例のまとめ

日本では、近年M&A件数は増加傾向にあります。2021年のM&A件数は4,280件と過去最高を記録し、今後もM&A件数は増加すると想定されています。

今回は、大企業と中小企業、そしてクロスボーダー案件のM&A事例を紹介しました。特に中小企業におけるM&Aでは、自社の条件に沿う候補先を見つけることは簡単なことではありません。

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