「M&A」というと大企業同士の合併や、バブル崩壊後に起きた投資ファンドによる企業買収合戦などのイメージから、自社には関係のないことだと感じている方も多いかもしれません。しかし、昨今では中小企業の成長戦略のためにM&Aをする事例も増えています。また、後継者不在から、事業承継の一環としてM&Aを選ぶ事例も少なくありません。
本記事では、M&Aの概要について今一度、確認しつつ企業の合併・買収を支援する仲介会社の重要性について解説します。
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年間3,000回の面談をこなすアドバイザーの声をもとにまとめた、譲渡を検討する前に知っておくべき5つの要件を解説。
・企業価値の算出方法
・M&Aの進め方や全体の流れ
・成約までに必要な期間
・M&Aに向けて事前に準備すべきこと
会社を譲渡する前に考えておきたいポイントをわかりやすくまとめました。M&Aの検討をこれから始める方は是非ご一読ください!
目次
中小企業におけるM&Aの事例
1. 事業承継のM&A事例
株式会社温故知新による「海里村上」の事業承継
2018年8月、株式会社温故知新が九州の高級旅館の「海里村上」の事業を承継しました。
九州で指折りの名旅館と評される海里村上は、決して業績不振ではありませんでしたが、オーナーが体調面を理由に引退を決意しました。しかし、後継者が不在のため事業承継が難しい状況でした。
後継者不在の解決を目的にM&Aを実施しました。事業承継後も海里村上の建物やスタッフ、取引先などはそのまま引き継がれ、前オーナーが大切にしてきた「おもてなしの姿勢」や「清潔感」などは、旅館の精神として承継されました。
2. 中小企業M&Aが失敗してしまう事例
中小企業においても、M&Aは必ず成功するという訳ではなく、失敗してしまうケースもあります。M&Aがうまくいかなかった事例としては、次のようなものが挙げられます。
譲渡のタイミングを逃してしまった事例
自身の高齢を理由に引退を考えている企業のオーナーに対して、譲受企業がM&Aを提案したところ、既に社長がM&Aを検討しないままに廃業を決めてしまった後だったため、M&Aが行われなかった事例です。
経営者がM&Aの知識に明るくなく、比較検討を行わずに廃業という選択をすることもあります。M&Aを行っていれば、経営者には譲渡対価が入り、引退後の生活資金となっただけでなく、従業員の雇用も守られていた可能性があります。
M&Aについての知識を身につけておくことで、機会を逃さずに最適なタイミングでM&Aを決断できるでしょう。
情報開示に失敗した事例
譲渡先が決定し、M&Aの交渉が順調に進んでいる中で、情報漏えいによってM&Aが外部に流出してしまった事例です。
譲渡側の社員から不信感を抱いてしまったことから人材が流出し、最終的にM&Aは破談になりました。
経営者から社員や関係者に対して、M&Aを伝えるタイミングは非常に重要であり、事前に情報が流出しないように細心の注意を払う必要があります。
中小企業におけるM&A活用のメリットと効果
経済産業省の「2019年版中小企業白書」によると、中小企業経営者の最多年齢は1995年では47歳でしたが、2018年には69歳となり、高齢化が進んでいることがわかります。経営者が高齢化する中で課題となるのが、次世代に事業を引継ぐ事業承継です。
これまで中小企業の事業承継は、実子や親族が引継ぐケースが多くみられました。しかし、職業選択の自由を重視する風潮の広がりや、少子高齢化による国内市場の縮小や経済のグローバル化などによって競争が激化していることなどから、後継者に大きな負担がかかることを避けるために自分の代での廃業を選ぶ経営者も増えています。
日本の全企業のうち中小企業が占める割合は99.7%と高く、中小企業の廃業が増加することは日本の産業全体に大きな影響があります。そこで昨今、親族や従業員といった身内への事業承継に代わる手段として、M&Aによる第三者承継が注目されています。
事業承継問題の解決をはじめとする譲渡企業のメリット8つ
1.後継者不在を解消できる
事業承継を目的とした中小企業のM&Aにおいて、「後継者問題の解決」は大きなメリットです。実子や親族、従業員の中から後継者を選ばずとも、第三者に会社を託すことができます。
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2.友好的な関係の中で事業承継を円滑に行える
M&Aに「乗っ取り」などの敵対的買収のイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし、中小企業のM&Aにおいてはそういった事例はほとんどなく、お互いを尊重した友好的な関係の中で事業承継を円滑に行う事例がほとんどです。
3.自社の技術やノウハウを次世代へと受け継ぐことができる
中小企業がもつ独自の技術が廃業によって失われることは、産業全体に負の影響を与えます。会社や事業を引継ぐことができれば、独自の技術やノウハウを次世代につなぐことが可能です。
4.従業員の雇用を継続できる
多くのM&Aでは従業員の雇用が継続されます。安定した譲受企業に従業員を託すことで、雇用条件が改善されることも期待できます。
5.事業の成長・発展できる可能性がある
譲受けを検討している企業は、資金力があり経営が安定している企業がほとんどです。こうした企業に自社を託すことで、事業がより成長・発展する可能性もあります。
6.経営資金や創業者利益を確保することができる
会社や事業を譲渡した場合、ほとんどのケースである程度まとまった金銭を得られます。それを今後の経営資金に充てたり、創業者利益としてリタイア後のセカンドライフの生活費などとしたりすることも可能です。
7.コア事業に専念して経営力を強化できる
会社全体を譲渡するのではなく、特定の事業のみを譲渡することも可能です。コア事業以外を譲渡し、資金などをコア事業に集めるなどの「選択と集中」を行うことで経営力を強化することにつながります。
8.オーナーの個人保証を解消できる
中小企業の場合、オーナーである経営者が金融機関などからの借入れの個人保証を担っているケースが多いものです。M&Aではこうした債務を譲受企業が引継いでくれることがほとんどで、オーナーの個人保証の解消が見込めるのです。
▷関連記事:経営者が知っておきたいM&Aによる個人保証と担保の解消
企業価値向上など譲受企業のメリット5つ
1.事業を新規に立ち上げる際の負担や失敗のリスクを低減できる
事業を一から立ち上げるには時間と資金がかかります。また、最初は優れた業績が見込めないことも多々あります。M&Aによって他社がすでに確立している事業や企業そのものを譲受ければ、こうした負担やリスクを低減させることができます。
2.技術やノウハウ、人材、顧客などを確保することができる
他社の技術やノウハウ、人材、顧客をM&Aでは一挙に譲受けることも期待できます。このようにM&Aによって技術やノウハウを得ることで、成長戦略を加速させられることもあります。
3.企業のブランド力を向上できる
経営において信頼とブランドは非常に重要であるといっても過言ではありません。ブランド力を持つ企業を承継することでブランド力も移転し、自社のブランド強化にもつながります。また、優れたブランドを持つ商品やサービスを有する企業や事業を譲受けることで、そのブランドを使用することもできます。
▷関連記事:M&Aによるブランド強化 ブランドを譲受けるM&Aが盛んな背景とブランドの価値
4.既存事業を強化・拡大することができる
新規事業の立ち上げだけでなく既存の事業に関しても、他社が持つ技術やノウハウ、販売網などを譲受けることで強化・拡大につながります。
5.経営の効率化を図れる
同業種の企業でも、自社と異なる事業フェーズを強みとする企業を譲受ければ、開発から生産、販売までを一貫して行えるようになるため、事業効率の向上が期待できます。例えば、アパレル業界において販売を行っている譲受企業が、生産に強みのある企業を譲受けることで、生産から販売まで行える場合などがあります。
▷関連記事:中堅中小企業におけるM&Aのメリットとデメリット
M&Aによるシナジー効果(相乗効果)は双方にメリットをもたらす
M&Aのメリットに、譲渡(売り手)企業、譲受(買い手)企業双方にもたらされるシナジー効果(相乗効果)があります。
M&Aによるシナジー効果の例として、取引先の拡大や販売網の効率化といった「販売シナジー」、新技術の導入やノウハウの獲得、生産設備の増強などの「生産・投資シナジー」、異なる歴史や文化を持つ企業同士が融合することによる「経営シナジー(マネジメントシナジー)」などがあります。
M&A成功のために気をつけるべきポイント3つ
ここでは、M&Aの成功に向けて気をつけるべきポイントを紹介します。
1.適切なマッチング
譲渡(売り手)企業、譲受(買い手)企業ともに、当然ながら相手がいなければM&Aは成立しません。そのため、どういった相手とM&Aを行うか、マッチング相手を見極めることが重要になります。
M&Aを成功させるためにも、理念や文化の近しい企業や多くのシナジーが見込める企業などを選ぶことをお勧めします。
▷関連記事:M&Aの課題と具体的な対策。中小企業のM&Aにおける懸念点とは?
2.正確な企業価値評価
譲渡(売り手)企業、譲受(買い手)企業ともに、M&A後に想定されるリスクを詳細に明らかにしておく必要があります。そのために、「企業価値評価(バリュエーション)」や「デューディリジェンス(DD)」といった作業が大切になります。
3.M&A成立後の経営・従業員管理
M&Aは「最終契約を結べばすべて完了」というわけではありません。書類上での手続きが完了しても、その後のPMI(Post Merger Integration)と呼ばれる統合過程がM&Aの成功には欠かせません。
このPMIが適切にされなければ、想定したシナジー効果が生まれなかったり、雇用条件の変更や従業員のモチベーションの低下で優秀な人材が流出したりといったリスクも考えられます。
そうした事態を避けるためにも、双方の従業員や株主、取引先や金融機関などに丁寧な説明をし、納得してもらう必要があります。主に以下の点についてフォローしましょう。
▷関連記事:PMIとは?M&A成立後の統合プロセスについて株式譲渡を例に解説
従業員に対する「M&Aの理由、目的」などの説明
事業の存続や拡大などM&Aには目的があること、今後も雇用が継続されることなどをきちんと説明します。
モチベーションの維持管理
M&Aによって、譲渡側の社員がモチベーションを失ってしまうというケースも考えられます。こうしたモチベーションの低下の一因になりかねない雇用条件の変更に関しては譲受企業に事前に希望を伝えることも大切です。
また、譲受企業も、経営陣だけでなく従業員にも、M&Aの目的について意識を統一できるようにきちんと説明しましょう。
統合後のマネジメント
PMIを急ぐばかりに、従業員に大きな負担がかかることもあります。例えば、複数の社内システムを一度に変えてしまうことで、従業員はその変更への急な対応に迫られます。そこで、すべてのシステムを一度に変えず、段階的に変更していくようにすることで、従業員に大きな負担がかかることを避けられます。
中小企業におけるM&Aをお考えなら
M&Aを実施するにあたり、マッチング先の選定から、「企業価値評価(バリュエーション)」や「デューディリジェンス(DD)」、税務や財務、法務などの幅広い専門知識が必要とされるため、自社のみで行うことは難しいでしょう。多くの場合、M&Aをサポートする仲介会社に依頼します。
弊社にいただくご相談事例
FUNDBOOKでは、M&Aに関するさまざまな相談を無料で承っています。ここでは、中小企業におけるご相談例の一部をご紹介します。
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Aさん(関西・介護事業)
介護施設を経営しています。売上は1億円を超え、安定しています。最近では訪問介護サービスにも着手し、多くの利用者にも恵まれ、今後も増えていくことを見込んでいます。
すぐに事業承継をする必要はありませんが、後継者として期待していた子供が別の業種に就職してしまい、事業を継ぐ予定はありません。そのほかの親族にも後継者が見当たらないため、今のうちから譲渡できるお相手を探しています。
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Bさん(関西・クリーニング事業)
地域密着型のクリーニング店を営んでいます。フランチャイズにより複数店舗を運営し、最近では宿泊施設のリネン類などを請け負って、大口の顧客も確保しています。ドミナント戦略を取り入れた配送の効率化やスピード化、自社工場の稼働率アップなど、業務効率化に取り組んでいます。
工場の拡大などで借入金がありますが、売上は順調に伸びています。しかし、コア事業へ専念するため、譲渡を検討しています。クリーニング事業を担ってくれる企業を求めています。
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Cさん(中部・金属加工業)
金属加工業を営んでいます。長年培った高い技術力とノウハウをもとに、顧客のニーズに合わせてオーダーメイドで製品を作り、高い顧客満足度を達成しています。
しかし、事業を継ぐ後継者が不在のため、当社の技術力と雇用を確保し、事業の承継・発展を委ねられる、信頼のおける譲渡先を探しています。
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多様なマッチングと経験豊富なアドバイザリーサポート
FUNDBOOKでは、プラットフォームによる多様なマッチング、経験豊富なM&AアドバイザーによるM&Aの仲介業務を行っています。FUNDBOOKでは、お客様がM&Aの知識を深め、納得の上で具体的に検討を進めて欲しいという思いから、成功報酬型のレーマン方式を採用しており、相談料・着手金・月額報酬は頂いておりません。
「後継者が不在だから今後の為にM&Aの相談をしたい」「経営戦略としてM&Aを考えたい」といったお悩みからM&Aを検討している経営者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
▷参考:企業情報 | FUNDBOOK(ファンドブック )M&A仲介サービス
まとめ
M&Aの概要について確認しつつ、企業の合併・買収をサポートする仲介会社の重要性について見てきました。信頼できるM&Aアドバイザーを交えて、譲渡側・譲受側それぞれの企業が将来の事業を担うパートナーとしてしっかりと関係を構築することが重要です。
FUNDBOOKでは、M&Aに関するご相談を承っています。ご検討を始める段階でぜひ無料相談をご利用下さい。また、無料でダウンロードできる「幸せのM&A 入門ガイド」という資料もご用意しています。こちらも是非お役立てください。