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2023/09/26

M&A(企業買収)のリスクとは?売り手と買い手双方のリスクと対処法

M&A(企業買収)のリスクとは?売り手と買い手双方のリスクと対処法

M&Aは譲受企業にとっては外部の経営資源を獲得でき、譲渡企業にとっては後継者問題を解決できる等、さまざまなメリットのある手法です。
ただし、異なる企業が1つになることから、M&Aの成功には多くの課題があります。M&Aのリスクを事前に知っておくと、M&Aを進める上で発生するトラブルや課題を回避しやすくなります。

本記事では、M&Aで起こりうるリスクを財務リスク・法務リスク・経営リスク・人材リスクの4つの視点から紹介し、リスクを回避するための方策を解説します。

▷関連記事:M&Aとは?M&Aの目的、手法、メリットと流れ【図解付き】

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M&Aで起こりうるリスク

M&Aに関するリスクには、主に「財務リスク」、「法務リスク」、「経営リスク」、「人材リスク」があります。いずれも譲渡企業(売り手)、譲受企業(買い手)の双方が交渉を進めるにあたって意識しておく必要があります。
それぞれのリスクにはどういったものがあるのか、項目ごとに解説します。

▷財務リスク

財務リスクとは、M&Aで譲渡される資産や債務等の財務面のリスクのことです。
具体的には、以下のような財務リスクがあります。

項目内容
・簿外債務・貸借対照表に計上されない(簿外)債務のこと
・中小企業では、賞与引当金や退職給付引当金等が貸借対照表に計上されていないことが多い
・偶発債務・M&A時には債務として計上されていなくても、将来的に債務となるリスクのあるもののこと
・係争中の損害賠償や第三者への債務保証等が該当する
・資産の実在性に関するリスク・貸借対照表に計上されているものの、実際には存在していない、または現金化が難しいといった資産のこと
・除去された資産が帳簿に反映されていない場合や回収できない性質の債権だった場合等がある

例えば、譲受企業の場合、M&Aで簿外債務や偶発債務を引き継いでしまうと、譲渡企業に代わって債務を履行しなければなりません。
簿外債務や偶発債務が多額である場合、財務状況に大きな影響が出ることもあるでしょう。また、譲渡企業の場合でも、M&A成約後に簿外債務が見つかれば譲受企業から損害賠償請求されてしまう可能性があります。

財務リスクには、上記以外にも粉飾決算がなされているリスク、評価損のリスク等も想定されます。
そのため、M&Aの際には事前に財務諸表の内容を洗い出す、十分なデューディリジェンスを行うといった対策が必要です。

▷関連記事:必ず確認しておきたい、貸借対照表に計上されない「簿外債務」とは
▷関連記事:デューディリジェンス(DD)とは?種類や手順・費用や注意点【解説動画付き】

▷法務リスク

法務リスクとは、対象企業の法律的な側面に関するリスクです。
M&Aでは、以下のような法務リスクが想定されます。

項目内容
・株式に関するリスク・会社の設立から現在に至るまでの株式の移転に瑕疵がある、株券の発行がなされていない等のリスク
・取引先との契約に関するリスク・経営上、重要な取引先との契約がM&Aにより継続が難しくなる、自社にとって不利な契約を結んでいる等のリスク
・資産契約に関するリスク・事業に不可欠な賃貸不動産の契約がM&Aにより継続に制限がかかる等のリスク
・許認可に関するリスク・許認可の種類やM&Aのスキームにより、許認可を承継できない等のリスク

譲受企業の側からみると、M&Aをしたにもかかわらず事業に必要な許認可を承継できなければ、事業を継続できません。
M&Aの目的を達成できないケースも考えられるので、事前に許認可を承継できるスキームであるのかの確認が重要です。また、譲渡企業の場合、株式に関する法務的な問題等が見つかれば、譲渡金額を下げられてしまう恐れがあります。
最悪のケースでは、M&Aの成立自体が困難になる可能性もあります。

したがって、事前に自社に法務的な問題がないか確認し、問題がある場合は適正な形に改善する対策が必要です。

▷経営リスク

経営リスクとは、事業の経営や従業員のマネジメント等、経営全般に関するリスクのことです。
具体的には、以下のような経営リスクが考えられます。

項目内容
・雇用に関するリスク・未払いの残業代が多額に残っている、労働時間の管理が適切に行われていない等のリスク
・事業の将来性や収益性に関するリスク・将来的に他業種からの参入が見込まれる場合、成長分野であっても事業の収益性に不安がある等のリスク
・経営統合に関するリスク・M&A後の経営統合(PMI)において、企業文化や業務フローの統合が上手くいかない等のリスク

例えば、譲渡企業の雇用管理がしっかりとなされておらず、未払いの残業代が残っていたり、社会保険の手続きが適切に行われていなかったりすれば、M&A後に労務トラブルが発生するリスクがあります。
トラブルは企業のイメージを損なってしまう他、労働基準監督署から是正勧告を受ける恐れもあるので、事前に確認しておきたい箇所です。
一方、譲渡企業の側からみても、M&A後に問題が発覚した場合には経営上の責任問題を追及されることが考えられます。

▷人材リスク

人材リスクとは、M&Aの実施による従業員や役員への影響のリスクです。
例えば、以下のようなリスクが考えられます。

項目内容
・従業員のモチベーションに関するリスク・M&Aにより労働環境が変わると、将来への不安感等から従業員のモチベーションが低下するリスクがある
・結果、従業員の生産性が上がらない、従業員が大量離職する等のリスクがある
・従業員の人件費に関するリスク・従業員のモチベーションが低下しないよう、労働条件の良いほうへ合わせると、人件費が増大する可能性もある
・従業員の運用に関するリスク・M&Aでは人材評価や労務管理の異なる企業が統合するため、統合作業を行ってもその後の運用が上手くいかない場合もある

譲受企業で重視したい人材リスクは、従業員のモチベーションに関するリスクです。
M&Aでは異なる組織文化や風土を持つ企業が統合するため、従業員への影響も大きいものとなります。従業員のモチベーションや組織モラルが低下することも考えられるため、従業員が抱える不安への対処が必要です。
また、譲渡企業の場合は従業員の雇用が継続されるのか、雇用条件は維持されるのか等の点は懸念されるところでしょう。
従業員の雇用維持を譲渡の条件とすることも可能なので、トップ面談や条件交渉の際に譲受企業の経営者の方と交渉してみる必要があります。

M&Aで起こりうるリスクを回避するには

ここまでご紹介してきたように、M&Aではさまざまなリスクが想定されます。
M&Aで起こりうるリスクを回避するためにはどのような対策を行えば良いのでしょうか。

以下では、4つの方法をピックアップしてリスク回避のための対策を紹介します。

▷デューディリジェンス(DD)の実施

M&Aのリスク回避で欠かせないプロセスがデューディリジェンス(DD)です。
デューディリジェンスとは譲渡企業の企業価値や将来性、リスクを調べる事前調査のことで、具体的には以下のような種類があります。

・財務デューディリジェンス
・法務デューディリジェンス
・ビジネス(事業)デューディリジェンス
・人事デューディリジェンス
・税務デューディリジェンス
・ITデューディリジェンス

デューディリジェンスは、一般的に会計士や弁護士、税理士や中小企業診断士等、各分野の専門家に依頼して実施されます。
専門的な知見から精査することにより、譲渡企業の実態を細かく分析できるため、リスク回避へとつながります。

▷関連記事:デューディリジェンス(DD)とは?種類や手順・費用や注意点【解説動画付き】

▷表明保証条項の規定

表明保証条項とは、契約に関する事項が正確であると表明する条項のことです。
補償に関する条項も規定されることが一般的で、表明した事項に反したことがあれば補償を請求できます。

例えば、表明保証条項で譲渡企業が簿外債務はないことを表明していれば、M&A後に簿外債務が見つかったとしても、この条項により譲受企業は損害賠償を請求できるわけです。
そのため、表明保証条項はデューディリジェンスを補完したり、リスクを分散したりする機能も持ち合わせています。

▷早期からのPMIの準備

PMIは「Post Merger Integration」の略称で、M&Aが成立した後に譲渡企業と譲受企業の経営方針や業務フロー、従業員の意識などを統合するプロセスのことです。
M&Aで起こりうるリスクには、企業の経営統合に関する項目も多く存在します。PMIの成功はM&Aの成功と言えるほど重要なものです。 PMIはM&A成約後から実施されますが、M&Aの早い段階からPMIを視野に入れた準備をしておくと、経営統合をスムーズに行え、さまざまなリスクに対応できます。

▷関連記事:PMIとは?M&A成立後の統合プロセスについて株式譲渡を例に解説

▷M&Aアドバイザーなど専門家の活用

M&Aで起こりうる財務リスクや法務リスク、経営リスク等に対処するためには、それぞれに対する専門的な知識が必要です。経営者の方やリスク担当者の方だけでは、対応しきれない部分もあるでしょう。そのようなときは、M&A仲介会社等の専門業者の活用が有効です。
例えば、fundbookには経験豊富で専門知識のあるM&Aアドバイザーが在籍しており、各社の状況に応じた丁寧なサポートを提供しています。

まとめ

M&Aは譲渡企業と譲受企業の双方に大きなメリットをもたらす可能性がある一方、いくつかのリスクも存在する手法です。
今回は財務、法務、経営、人材等の4つの視点から起こりうるリスクを紹介しました。M&Aを実施する際には、各視点からリスクがないか精査し、対策を練る必要があります。最終契約前にデューディリジェンスを十分に実施し、表明保証条項を規定する等の方策を行いましょう。

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