M&Aにより自社譲渡や他社譲受を検討している方のなかには、「投資銀行」についてご存じの方も多いと思います。
投資銀行は、M&Aを検討する企業に対して助言を行ったり、顧客の企業に対してファイナンスの提案をしたりなど、さまざまな金融活動を行う企業です。
本記事では投資銀行の概要を始め、M&Aにおける役割や投資銀行が対象とするM&A案件の動向、投資銀行に属する部門の特徴など、投資銀行について詳しく解説します。
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M&Aをご検討の方はもちろん、自社をもっと成長させたい方やIPOをご検討の方にもお役立ていただける資料ですので、ぜひご一読ください。
目次
投資銀行とは
投資銀行とは、大口顧客の証券引受業務や資金調達業務、M&Aの仲介業務などを実施する金融機関のことです。「銀行」の名称はつけられていますが、業務内容は銀行というより証券会社と似ています。
これは、投資銀行がもともとアメリカで独自に成長した金融機関であることに由来しています。投資銀行(Invest Bank)は南北戦争の資金調達のためアメリカの大商人が証券引受に関わったことから始まったといわれています。
時が流れてもその性質は変わらず、現在でもゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの投資銀行に引き継がれています。
なお、日本では投資銀行は証券業の一種との認知が一般的です。また、大手銀行や大手証券会社が投資銀行部門を設置し、投資銀行の業務を担うケースもあります。
▷商業銀行との違い
商業銀行とは、市中から調達した預金を原資に、貸し出しや手形の割引などの業務を担う金融機関です。一般的に「銀行」と聞いてわたしたちがイメージする銀行とは、この商業銀行のことを指すことが多いでしょう。
投資銀行と商業銀行の大きな違いは、預金を取り扱うかどうかにあります。商業銀行は預金業務を取り扱うのに対し、投資銀行は基本的に預金業務を取り扱いません。
そのため、商業銀行は「預金銀行」と呼ばれることもあります。また、銀行法で定められている「普通銀行」は商業銀行のことを指しています。
M&Aにおける投資銀行の役割
M&Aにおいて、投資銀行は主にM&Aアドバイザリーのサービスを提供しています。M&Aアドバイザリーサービスとは、M&Aを行う企業に対して専門的な知識をもとにアドバイスを行うサービスのことです。
具体的には、M&Aの初期段階における戦略立案や市場環境の分析、M&A候補先企業へのアプローチや候補先企業との交渉、デューディリジェンスやクロージングなど、各段階で専門的なアドバイスを行います。企業の経営戦略を視野に入れた総合的なサポートが特徴です。
投資銀行は、外資系投資銀行を中心に、主にM&Aのなかでも規模の大きい案件を取り扱います。そのため、リサーチ会社が発表する金額ベースのM&Aランキングでは、上位に多くの外資系投資銀行が入る傾向にあります。
投資銀行が関わるM&Aの動向
近年、投資銀行の対象となるような大型のM&Aは増加傾向にあります。2018年の武田薬品工業によるアイルランド・シャイアーの買収案件(取引金額6.2兆円)、2016年のソフトバンクグループによるイギリス・アームの買収案件(取引金額3.3兆円)はその代表的な例でしょう。
投資銀行の存在感も健在です。リフィニティブが公表する2021年日本企業関連公表案件ベースのアドバイザリーランキングでは、ゴールドマン・サックスが約6兆円で首位を獲得しています。また、JPモルガンも約3.7兆円で4位に食い込むなど、大型のM&A案件の多くにかかわっています。
投資銀行におけるM&Aアドバイザリー部門や他部門の特徴
投資銀行が取り扱う業務にはさまざまな種類があり、運営主体により異なります。
ここでは、多くの外資系投資銀行や、大手証券会社・大手銀行の投資銀行部門に見られる4つの部門(M&Aアドバイザリー部門、IPO部門、ECM部門、DCM部門)を中心に、投資銀行業務の特徴について解説します。
部門名 | 主な役割 |
---|---|
M&Aアドバイザリー部門 | 大手企業や公的機関、ファンドなどの大型案件を対象とし、M&Aを検討する企業に対して経営戦略を含めた適切なアドバイスを実施。M&Aによる企業の譲渡・譲受だけでなく、事業のリストラクチュアリングやLBO、企業防衛などのサービスを提供している場合もあり。 |
IPO部門 | 企業が株式を上場する際に公開予定の株式の販売を引き受け、株式の上場をサポートを行う。 |
ECM部門 | 公募増資や第三者割当増資、転換社債型新株予約権付社債など、エクイティ性のある手法による資金調達を提案・サポートを行う。 |
DCM部門 | 民間企業や政府系機関などさまざまな団体を対象に、普通社債や劣後債、ミディアム・ターム・ノートやハイブリッド債券など、デット性のある手法による資金調達を行う。 |
▷M&Aアドバイザリー部門
投資銀行のM&Aアドバイザリー部門は、大手企業や公的機関、ファンドなどの大型案件を対象とする点が大きな特徴です。グローバルに事業を展開する機関が多いため、クロスボーダー案件も得意としています。
投資銀行は最先端で専門的な知識とノウハウを持っており、M&Aを検討する企業に対して経営戦略を含めた適切なアドバイスを行います。ただし、基本的には企業の譲渡・譲受の契約までを対象としており、M&A後のPMI(経営統合)はサポートしていないところが多い状況です。
なお、投資銀行によっては、M&Aによる企業の譲渡・譲受だけでなく、事業のリストラクチュアリングやLBO、企業防衛などのサービスを提供している場合もあります。
▷IPO部門
IPOとはInitial Public Offeringの略称で、新規株式公開のことです。投資銀行では企業が株式を上場する際に公開予定の株式の販売を引き受け、株式の上場をサポートする業務を実施しています。
株式を上場するためには、証券取引所のさまざまな規定をクリアしなければなりません。上場審査の通過には、企業の経営にまで関わり、事業計画や人事管理など業務の中枢部分の改善が必要な場合もあります。
▷ECM部門
ECM(エクイティ・キャピタル・マーケット)部門とは、資金を株式(エクイティ=株式資本)により調達する部門のことです。
企業では、事業の拡大や新規事業の開拓で多額の資金が必要となる場合があります。このとき、公募増資や第三者割当増資、転換社債型新株予約権付社債など、エクイティ性のある手法による資金調達を提案・サポートするのが、ECM部門の業務です。
なお、株式による資金調達はM&Aを実施する際の資金調達に採用されるケースもあります。
そのため、M&Aともかかわりのある部門です。IPOの実現は1つのディールに1年から数年かかるともいわれる困難な事業です。投資銀行のIPO部門は、専門的な立場から企業のIPO実務を支えるサービスを提供しています。
▷DCM部門
DCM(デット・キャピタル・マーケット)部門とは、資金を債券(デット=負債)により調達する部門のことです。
民間企業や政府系機関などさまざまな団体を対象に、普通社債や劣後債、ミディアム・ターム・ノートやハイブリッド債券など、デット性のある手法による資金調達を取り扱っています。
企業における債券による資金調達は数多くなされており、投資銀行のなかでも受注する案件の多い業務です。とりわけ、外資系投資銀行や日本の投資銀行では、DCM部門が当該機関の収益の多くを占める場合もあります。
M&Aアドバイザリー部門の業務の流れ
投資銀行のM&Aアドバイザリー部門では、戦略の立案からクロージングまでの各段階で、専門的な観点からアドバイス業務を行います。投資銀行により提供されるサービスは異なるため、一般的なM&Aアドバイザリー部門を想定し、その主な流れを解説します。
▷M&Aにおける戦略の立案
M&Aの初期段階は、どのような経営戦略のもとにM&Aを進めていくか検討する段階です。事業を拡大するために同業企業の買収を進めていくのか、事業ポートフォリオの転換に向け異業種企業に対してM&Aを行うのか、具体的な方針を定めます。
M&Aの戦略立案には、市場環境の分析や候補企業とのシナジー効果の分析も大切です。M&Aアドバイザリー部門では、このような戦略立案に適宜アドバイスやサポートを提供します。
▷候補先の検討と基本条件の交渉
M&Aの戦略方針が定まったあとは、具体的な譲受先・譲渡先の候補企業を選定する段階に移行します。M&Aの候補企業の選定は、M&Aの成功にもかかわる重要な事項です。M&Aアドバイザリー部門の助言を受けつつ、慎重に候補先を検討することとなります。
また、多くの場合、候補先企業の検討とアプローチと同時にM&Aの基本事項も検討します。取引スキームを株式譲渡とするのか事業承継で行うのか、M&A全体のスケジューリングをどのようにするかなどが、主な検討事項です。
候補先企業が決まると、実際に基本的な条件に関する交渉を開始します。M&Aでは、基本的な条件交渉がまとまった段階で基本合意書を結ぶのが一般的です。
▷デューディリジェンスと最終契約
デューディリジェンスとは、M&Aの契約を最終的に結ぶ前に、譲受企業が譲渡候補企業に実施する企業調査のことです。デューディリジェンスでは、譲渡候補企業の価値や将来性、リスクなどを、財務・法務・税務など複数の観点から調査します。
デューディリジェンスは財務諸表や帳簿を見るだけではわからないさまざまな企業価値を把握するために重要なステップです。弁護士や税理士など第三者の専門家に依頼する場合もあり、M&Aアドバイザリー部門により依頼する専門家の調整サポートが実施されるケースもあります。
デューディリジェンス終了後は、最終的な契約を結ぶ段階です。デューディリジェンスで得られた結果を反映させ、最終的な合意内容を契約書に盛り込みます。
▷クロージング
クロージングとは、最終契約で締結された契約内容にもとづき、実際に経営権を移転する手続きのことです。法的な手続きや最終契約で合意された規定事項を実際に執り行います。
クロージングは、M&Aのプロセスで交渉された事項を法的に有効なものとする重要な手続きです。クロージングが完了すると、M&Aの手続きは完了となります。
M&Aで投資銀行を利用するポイント
M&Aで投資銀行を活用するのは、上場企業での大型M&AやクロスボーダーM&Aなどが一般的です。
大型案件のM&Aやクロスボーダー案件のM&Aでは、不特定多数の株主や多岐にわたる事業への対応など、法的・財務的なリスクを回避してM&Aを進める必要があります。このような場合に、投資銀行のM&Aアドバイザリー部門が活用されるケースが多くなっています。
なお、一般的なM&Aではこの限りではありません。M&Aをサポートするサービスには、投資銀行のM&Aアドバイザリー部門のほか、M&Aを専門的に取り扱うM&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社などがあります。
▷関連記事:M&A仲介とは?費用やFAとの違い、仲介会社の選び方まで
例えばfundbookでは、M&Aの経験豊富で専門的な知識をもつアドバイザーがM&Aの初期的な相談から成約まで丁寧なサポートを提供しています。独自のプラットフォームを持つため、M&Aの候補先も多様性のある案件から選択可能です。
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まとめ
投資銀行は、大口顧客の証券引受業務や資金調達業務、M&Aの仲介業務などを主体に、投資家向けのファンドの運用などの投資活動も実施する企業です。M&Aにおいては、主にM&Aアドバイザリーのサービスを提供しています。
投資銀行のM&Aアドバイザリー部門の対象は、主に大型案件やクロスボーダー案件が対象です。もし、一般的なM&Aを検討しているなら、M&Aの専門企業であるM&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社も選択肢となります。
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