ブリッジローンは、急な資金調達が必要な場合に活用されることのあるローンです。ブリッジローンは比較的短期間のうちに資金を調達できますが、一般的なローンや融資制度とは異なる側面を持ちます。
本記事では、ブリッジローンの特徴やM&Aで活用されるシーン、メリットとデメリットや活用の流れ・事例を解説します。ブリッジローンを活用する際に注意すべきポイント、あわせて検討したい資金調達の方法なども紹介するので、M&Aに必要な資金調達でお困りの方はぜひ参考にしてください。
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ブリッジローンとは
ブリッジローン(Bridging loan)とは、資金調達に時間がかかる場合に短期間限定で融資されるローンのことです。資金調達の橋渡し的な役割を果たすことから「ブリッジ(橋)」が使われており、ブリッジファイナンスとも呼ばれます。また、資金を「つなぐ」意味から「つなぎ融資」と呼ばれる場合もあります。
ブリッジローンは通常、融資のお金が入ってくるまでや売掛金や未収金などの債権が回収できるまでなど、一定の条件のもとで活用される融資です。ブリッジローンは一般的な融資と比べると、高い金利や遅延損害金が設定される傾向にあります。
M&Aにおけるブリッジローン
M&Aでは、ブリッジローンは企業が買収を行う際に必要な資金を投資銀行や商業銀行から借り入れるときに活用される場合があります。例えば、緊急にキャッシュが必要だが手元資金だけでは足りないとき、M&Aの進行過程で譲渡企業の企業価値が当初の予想を超えていることが判明し、追加の資金調達が必要になった時などです。
またブリッジローンは、多額の買収資金が必要な企業を買収する場合にSPC(特別目的会社)とともに活用される場合もあります。
SPCがブリッジローンにより高利率で買収資金を借り入れ、買収後にSPCと対象会社を合併して返済する仕組みです。SPCが資金調達を行うので、資金調達のリスクを自社が負わなくてよいメリットがあります。
▷関連記事:SPC(特別目的会社)とは?導入目的や手続き、メリット・デメリットを分かりやすく解説
ブリッジローンのメリット
ブリッジローンのメリットは、短期間で多額の資金を調達できる点です。一般的に、金融機関から融資を受ける際には所定の手続きや審査が必要で、すぐに融資を受けるのは簡単なことではありません。ブリッジローンは比較的短期間で資金調達ができるため、緊急に資金が必要な状況に柔軟に対応しやすくなります。
また、ブリッジローンは保証人が不要なケースが多い点もメリットです。多くの融資では保証人や連帯保証人が求められます。ブリッジローンはあくまで短期間で、本来の資金調達ができるまでの橋渡しの資金であることなどから、保証人をつけない場合が多く存在します。
ブリッジローンのデメリット
ブリッジローンのデメリットは、一般的な融資よりも金利が高く設定される傾向にある点です。通常の融資と比較すると、資金調達に多くのコストが必要な点には注意しましょう。また、遅延損害金や事務手数料も高い場合が多くなります。万が一、返済できなかった場合のリスクへの配慮も重要です。
その他、ブリッジローンは融資期間が短期間であり、一括返済が原則である点もデメリットです。融資を受ける際には具体的な目的が必要であり、一括返済するための根拠を示すことも求められます。短期間で多くの資金を調達できる反面、いくつかの制約がある点には留意してください。
ブリッジローン活用の流れ
ブリッジローンの特性を理解するために、個人の住宅建築でブリッジローンを活用する場合を例に仕組みをご紹介しましょう。
個人が住宅を建築する際には、多額の資金が必要です。土地の購入に支払うお金の他、建築着工の際に建設会社へ支払う資金、建築の途中で支払う中間金などが必要な場合があります。ただし、住宅ローンの融資のお金は住宅が完成した後でしか受け取れません。
このような場合に役立つのがブリッジローンです。住宅の建築でブリッジローンを活用する大まかな流れは以下のようになります。
1.ブリッジローンと住宅ローンの申込み
2.ブリッジローンから融資を受けたお金で土地代金や住宅建築の着工金、中間金などを支払う
3.住宅が完成後、住宅ローンの融資を受ける
4.住宅ローンから融資を受けたお金で、ブリッジローンを返済する
上記のように、ブリッジローンを活用すると、手元に十分な資金がない場合でも住宅を建築することができます。これはあくまで個人の例ですが、ブリッジローンの大まかな仕組みを表す一例となっています。
●ブリッジローン活用の事例
それでは、ブリッジローンが実際にM&Aで活用された事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
例えば、2006年1月、花王株式会社が産業再生機構からカネボウ化粧品の株式を取得するときに、ブリッジローンを活用しています。
花王株式会社は、カネボウ化粧品が負っていた借入債務の再調達を含めた取得資金を、ブリッジローンと手元資金により調達しました。花王株式会社はその後三井住友銀行やゴールドマン・サックス証券会社、みずほコーポレート銀行を共同主幹事とするシンジケート・ローンにより、ブリッジローンを返済しています。
また、2021年4月、パナソニックが米ブルーヨンダーの株式を取得する際にもブリッジローンは活用されています。
パナソニックはもともとブルーヨンダー社の株式の20%を保有していましたが、残りの80%を追加取得し、同社を完全子会社化しました。買収にかかった資金約71億ドルのうち、約35億ドルを手元資金で賄い、残りの資金をブリッジローンで調達しています。パナソニックはブリッジローン分を劣後債に借り換えています。
ブリッジローン活用のポイント
ブリッジローンはあくまで緊急避難的な資金調達となっています。そのため、以下で紹介するようなポイントに注意しましょう。
●明確な目的や返済の根拠が必要
ブリッジローンは住宅建築の例からもわかるように、明確な目的や返済の根拠が必要です。例えば、融資や債権の目途が立っているが入金までには時間がかかる場合、将来的な入金が見込めるが金融機関から融資が受けられない場合などに活用されます。目的や返済の根拠を示せない場合、ブリッジローンを活用できない場合もあります。
●ハイリスクハイリターンである
ブリッジローンは比較的短期間で多額の融資を受けられる反面、高い金利や高い遅延損害金が設定されるケースが多くなります。
ブリッジローンは受けられるメリットは大きいですが、「資金調達で多くのコストがかかってしまう」「万が一、返済できなかった場合には多くの遅延損害金を払わなければならない」など、高いリスクがある点には十分に注意してください。
●専門家のアドバイスも検討
ブリッジローンはハイリスクハイリターンな側面を持つため、別の資金調達の方法も併せて検討することも重要です。M&Aを実施する場合を含め、資金調達にはさまざまな方法があります。具体的には以下のような方法です。
・公募増資
・株主割当増資
・第三者割当増資
・金融機関からの借り入れ
・LBO(レバレッジド・バイアウト)
例えば株式会社であれば、新規発行株を特定の第三者に引き受けてもらう「第三者割当増資」の方法があります。第三者割当増資は、非上場であり公募増資ができない中小企業やベンチャー企業の資金調達として検討しやすい方法です。
また、LBO(レバレッジド・バイアウト)を活用すると、譲受予定企業の将来的なキャッシュフローを担保に金融機関から資金調達が可能な場合もあります。
資金調達の方法で不明な点がある場合は、専門家にアドバイスを求めてみましょう。特にM&Aの経験豊富な専門家であれば、自社のM&Aに合った資金調達方法が見つかるケースもあります。
▷関連記事:M&Aを目的として資金調達する方法とは?一般的な調達手法やLBO、MBOについても解説
●ブリッジローン以外の融資も検討
その他、ブリッジローン以外にも以下のような融資制度・ローンがあります。
・日本政策金融公庫の融資制度
・金融機関の事業者向けローンやビジネスローン
・不動産を所有している場合は不動産担保ローン
ブリッジローンとの主な違いは、ブリッジローンよりも比較的低い金利で融資が受けられること、返済期間を長期間確保できることです。
特に日本政策金融金庫の事業承継・集約・活性化支援金(中小企業事業)の制度を活用すると、最大7億2千万円の融資が、設備資金で返済期間20年、運転資金で返済期間7年の条件で融資が受けられる場合があります。融資には所定の手続きが必要となりますが、M&Aの資金に活用できる融資制度です。
まとめ
ブリッジローンとは、短期間限定で資金調達までの間をつなぐローンのことを指しています。
ブリッジローンは比較的早い手続きで多額の資金を調達できるメリットがある一方、金利や遅延損害金が高く設定されるなどデメリットがあります。明確な目的や返済の根拠を示せない場合はブリッジローンを活用できないこともあるので、注意が必要です。
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