業界毎の事例

2025/05/22

食品卸業界のM&A動向は?現状やメリット、流れ、売却価格相場、最新事例も解説

食品卸業界のM&A動向は?現状やメリット、流れ、売却価格相場、最新事例も解説

食品卸業界ではM&Aによって事業拡大や経営基盤の強化、海外市場への進出を図る事例が見られます。

食品卸業界は消費者ニーズの多様化や物価高騰など様々な影響を受けている業界です。厳しさを増す競争環境を生き抜くうえでM&Aは経営戦略上の重要な選択肢の1つとなっています。
本記事では、食品卸業界の現状やM&A・事業承継の動向、M&Aを行うメリット、売却価格の相場、最新事例を紹介します。

\資料を無料公開中/
企業価値100億円の企業の条件とは
資料
・100億円程度の譲渡価額がついたM&A事例
・企業価値10億円と100億円の算出ロジックの違い
・業種ごとのEBITDA倍率の参考例
・企業価値100億円に到達するための条件

自社の成長を加速させたい方は是非ご一読ください!
1分で入力完了!

食品卸業界の現状と課題

まず、食品卸業とは、食品メーカーや生産者などから商品を仕入れてスーパーをはじめとした小売業などへの販売を行う業種です。

総務省の日本標準産業分類では「飲食料品卸売業」は「農畜産物・水産物卸売業」と「食料・飲料卸売業」に分けられ、以下の業種が分類されています。

【農畜産物・水産物卸売業】
米麦卸売業、雑穀・豆類卸売業、野菜卸売業、果実卸売業、食肉卸売業、生鮮魚介卸売業、その他の農畜産物・水産物卸売業
【食料・飲料卸売業】
砂糖卸売業、味そ・しょう油卸売業、酒類卸売業、乾物卸売業、缶詰・瓶詰食本卸売業、菓子・パン類卸売業、清涼飲料卸売業、茶類卸売業、その他の食料・飲料卸売業
出典:総務省「日本標準産業分類

食品卸業は、食品を生産する側と消費者に販売する側の間に入って両者をつなぐ存在であり、日本の食品の流通・安定供給を支えています。

市場環境と市場規模

経済産業省の「商業動態統計調査」によると、2023年の販売額は農畜産物・水産物卸売業界では40.7兆円、食料・飲料卸売業界では63.3兆円です。

(単位:兆円)

2018年2019年2020年2021年2022年2023年
農畜産物・水産物卸売業23.623.633.334.737.640.7
食料・飲料卸売業50.549.252.853.457.163.3
合計74.172.886.188.194.7104
出典:経済産業省「商業動態統計調査

近年の食品卸売業界の販売額は緩やかな増加傾向にあります。食品卸売業界はコロナ禍でも販売額が大きく落ち込むことはなく、着実に販売額・市場規模が拡大している業界です。

ただし、日本の人口は減少傾向にあることから、中長期的には食品卸売業界の市場規模が縮小し業界内競争は厳しさを増す可能性があります。

また、食品卸売業界では売上原価率が高く、販管費に占める物流コストの割合も高い傾向にあり、収益性の改善が課題です。

物価上昇や物流コスト上昇の影響を回避するため、小売業者の中には卸売業者を介さず生産者から直接仕入れる業者が出てきており、食品卸売業界として収益構造の改善やコスト削減を図れるかどうかが課題となっています。

M&Aの動向

近年の食品卸売業界では以下のようなM&Aの事例が見られます。

・食品卸会社同士のM&A
・隣接する業界とのM&A
・海外企業とのM&A

食品卸会社同士のM&Aは、国内での競争を勝ち抜くために市場シェア・販路の拡大、事業基盤の強化などを目的として行われるタイプのM&Aです。M&Aの実施によって複数の食品卸会社が物流網を統合して配送などを効率化すれば、コストを削減できる場合があります。

隣接する業界とのM&Aは、スーパーや飲食店などとM&Aを行うケースです。卸売業だけでなく食品の生産や販売など周辺業界の業務も一社で行うようにすれば、シナジー効果の創出や業務の効率化・コスト削減などが期待できます。

また、縮小する国内市場ではなく海外市場に商機を求めて海外企業とのM&Aを行う事例も見られます。

食品卸業界でM&Aを実施するメリット

食品卸業界でM&Aを実施すると、様々なメリットがあります。以下では主なメリットを紹介します。

譲受企業(買い手)のメリット

譲受企業(買い手)から見た場合、M&Aの主なメリットは以下の4つです。

・業界内での競争力・優位性を高められる
・新たな取引先や優秀な人材を獲得できる
・食品卸業に加えて周辺業種に進出できる
・コストやリスクを抑えながら食品卸業に進出できる

M&Aによって同業他社買収を実現できれば、買収先企業が持つ販路やノウハウ、優秀な従業員を獲得でき、事業規模を拡大できて競争力や業界内での優位性を高めることができます。

また、食品卸業界から他業種に進出する場合や他業種の企業が食品卸業界に進出する場合、新規に事業を立ち上げると、ノウハウがなく時間がかかってしまったり失敗したりするリスクがありますが、M&Aで既存企業を買収すれば、コストやリスクを抑えて新たな業界に進出することが可能です。

譲渡企業(売り手)のメリット

譲渡企業(売り手)から見た場合、M&Aの主なメリットは以下の4つです。

・大企業の傘下に入れば事業基盤を強化できて経営が安定する
・仕入や配送のコストを削減できる場合がある
・後継者不足でも事業承継によって会社を存続でき、従業員の雇用を維持できる
・事業を売却すると売却益を得られる

経営が厳しい場合でも、M&Aによって他の企業の傘下に入ったり仕入・配送などを他企業と統合して効率化したりすれば、事業基盤を強化できる場合やコスト削減によって経営状態が改善できる場合があります。

また、親族や社員に後継者になれる人がおらず廃業を検討している場合でも、M&Aで第三者に買い取ってもらうことができれば、事業を存続し従業員の雇用を守ることが可能です。

事業譲渡によって食品卸業を売却して他の事業と切り離すケースでは、売却によって得た資金を他事業に使うこともできるため、M&Aは資金獲得の手段としても有効的です。

M&Aにおける企業買収・売却の流れ

M&Aの一般的な手続きの流れは以下のとおりです。

M&Aのフェーズ流れ
検討・準備1. M&Aの相談・検討
2. M&A仲介業者の選定とアドバイザリー契約
マッチング・交渉3. ノンネーム登録や買い手への資料の準備
4. 企業価値評価の実施
5. スキームの選択
6. パートナー企業とのトップ面談
7. M&A基本合意の締結
8. デューディリジェンスと条件交渉
最終契約9. M&A最終契約締結
10. クロージング
11. M&Aの事後処理・PMI

M&Aでは専門的な知識が必要になるため、M&A仲介会社などの専門家に依頼して進めることが一般的です。仲介を依頼するM&A仲介会社が決まったら交渉相手となる企業を探します。

マッチング・交渉フェーズでは、譲渡企業(売り手)は譲受企業(買い手)に提供する資料の作成を行うとともに、売却価格を決めるために企業価値評価を実施し、合併や株式譲渡などのスキーム・手法でM&Aを行うか検討します。

他方、譲受企業(買い手)は譲渡企業(売り手)が提供する資料などをもとに買収候補となる企業を絞り込みます。

交渉相手が見つかったら実際に交渉を行ってM&Aの具体的な内容を協議し、基本的な内容について合意できればデューディリジェンスによって買い手側が売り手側の詳細な分析や調査を行いリスクの有無を確認します。その後、最終契約を締結して経営権の移行や統合作業を実施する流れです。

M&Aの流れについて詳しくは以下の記事で解説しています。あわせて参考にしてください。
▷関連記事:「M&Aの流れは?売却の検討からクロージングまで進め方を徹底解説

食品卸業界におけるM&Aの売却価格・相場の計算方法

食品卸業界のM&A動向は?現状やメリット、流れ、売却価格相場、最新事例も解説

M&Aを行う際には、「どのくらいの価格で売却できるのか」という自社の価値や業界・地域における売却価格の相場を事前に把握しておく必要があります。M&Aの売却価格を決める際、中小企業の企業価値評価の算出手法としてよく用いられるのが「年倍法」です。

年倍法では、「時価純資産+営業利益の2〜5年分」がその企業の価値の目安となります。

年倍法は、現在の純資産の金額に加え、その企業が将来生み出す価値も考慮の上評価を行います。他の企業価値評価手法と比較すると、計算方法が簡便でわかりやすい点が特徴です。

ただし、企業特有の事情や相手企業とのM&Aで期待されるシナジー効果などによっても企業価値の評価額は変わるため、一概にいくらが相場といえるわけではありません。企業価値の評価手法には様々なものがあり、どの手法を用いるのかによっても評価額は変化します。

そのため、実際の評価額の算定にあたっては、M&A仲介会社などの専門家に依頼したうえで評価手法の検討や評価額の計算を行うことになります。
▷関連記事:「企業価値評価とは?M&Aで使用される企業価値の算出方法

食品卸業界のM&Aで失敗しないための注意点

M&Aで失敗しないためには、事前の検討や対応を進める際におさえておくべきポイントがあります。以下では、食品卸業界のM&Aにおける主な注意点を紹介します。

譲受企業(買い手)の注意点

譲受企業(買い手)から見た場合、M&Aの主な注意点は以下の3つです。

・食品卸業界特有のルールや慣習を把握する
・デューディリジェンスによってリスクを洗い出す
・取引先との関係性や契約内容、特約の有無などをチェックする

食品卸業界には老舗企業もあり、社内の仕事の進め方などに暗黙のルールや慣習が存在するケースがあります。他業種の企業がM&Aによって食品卸業界に進出する場合、特有のルールや慣習を知らずに業務を行い、従業員や取引先とトラブルを起こさないよう注意が必要です。

また、M&Aを行う際には、デューディリジェンスによって法務や財務、会計など様々な視点からリスク・問題点を洗い出し、本当にM&Aを実施して問題ない先であるか、十分に確認・検討することが重要です。

譲渡企業(売り手)の取引先によっては、経営者が変わると取引を辞める先もあるため、買収後も取引を継続でき、収益を上げられるかどうかや取引契約の内容に特殊な条項は含まれていないかなど、確認しておく必要があります。
▷関連記事:「M&Aで重要なデューディリジェンス(DD)とは?種類や手順・費用や注意点を解説

譲渡企業(売り手)の注意点

譲渡企業(売り手)から見た場合、M&Aの主な注意点は以下の3つです。

・自社の強みやM&Aの目的を明確にする
・M&Aには時間がかかることを前提に早めに準備を始める
・複数のM&A仲介会社やマッチングサイトを比較して依頼先を決める

M&Aを成立させるためには、買い手企業に対していかに自社の魅力を伝えられるかが重要です。そのため、自社のアピールポイントを整理して明確にしておきましょう。

また、買い手企業と条件を交渉する際は、譲れない条件を明確にしておく必要があります。M&Aを行う目的を踏まえて、交渉時の条件も事前に整理しておくようにしてください。
さらに、M&Aでは事前の検討や交渉相手の選定、企業の統合作業など時間がかかるため、早めの準備が重要です。実際にM&Aの検討をする際には信頼できる専門家を見つけられるかどうかもM&A成功の鍵となるため、M&A仲介会社やマッチングサイトを探す際は、サポート内容や報酬体系など複数の業者を比較したうえで依頼先を選ぶようにしましょう。

【2024年最新】食品卸業界におけるM&A事例

食品卸業界では近年、実際にM&Aが行われた事例がいくつか見られました。以下では主な事例を紹介します。

オイシックス・ラ・大地株式会社による株式会社アグリゲートの連結子会社化

2024年3月、オイシックス・ラ・大地株式会社は、株式会社アグリゲートの新株予約権の行使・既存株主からの株式取得によって連結子会社化することを発表しました。

農産物の宅配サービスなどを手掛けるオイシックス・ラ・大地と東京都内に地域密着型の店舗を展開しているアグリゲートが協力することで、フードロス削減やグループ間での商品流通の取り組みの促進などの効果が期待されています。

株式会社マルイチ産商による株式会社ダイニチの子会社化

2024年9月、株式会社マルイチ産商は、株式会社ダイニチの株式および新株予約権を取得して子会社化することを発表しました。

高い養殖技術を持つダイニチを子会社化することで、マルイチ産商が中核事業の1つに位置付ける養殖魚事業の基盤を確立し、産地活性化に向けたビジネスモデルを構築することが期待されています。

まとめ

M&Aによって事業規模を拡大できれば、物流コストを抑えたり事業承継問題を解決できたりするケースがあります。近年、食品卸業界では多数のM&A事例があり、食品卸業界の企業同士でのM&Aや周辺業種の企業とのM&Aなどその内容は様々です。

M&Aを実施する際は、売却側はM&Aを行う目的や自社の強みを明確にすることが重要であり、買収側は食品卸業界や買収先企業における特有のルール・慣習を把握するとともに、デューディリジェンスによってリスクの洗い出しを行うことが重要です。

M&Aは検討すべき事項や必要な手続きが多く、会計・税務・法務など専門知識も必要になることから、M&A仲介会社などの専門家に相談・依頼して進める流れが一般的です。

fundbookでは、M&Aアドバイザーの専門的な知見やテクノロジー、AIなどを活かして、豊富なネットワークを活用しながら最適な相手を見つけて譲渡企業・譲受企業のマッチングを行っています。各業界に精通した業界専門チームが在籍するため、業界特有の環境や課題を踏まえたサポートが可能です。M&Aを検討中の方はfundbookにお気軽にご相談ください。

fundbookのサービスはこちら(自社の譲渡を希望する方向け)

fundbookのサービスはこちら(他社の譲受を希望する方向け)

    【無料ダウンロード】自社の企業価値を知りたい方へ

    企業価値100億円の条件

    企業価値100億円の条件 30の事例とロジック解説

    本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。
    このような方におすすめです。

    自社の企業価値がいくらなのか知りたい
    ・企業価値の算出ロジックを正しく理解したい
    ・これからIPOやM&Aを検討するための参考にしたい

    は必須項目です。

    貴社名

    売上規模

    貴社サイトURLもしくは本社所在地をご入力ください

    お名前

    フリガナ

    役職

    自社の株式保有

    電話番号(ハイフンなし)

    メールアドレス

    自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談

    相談料、着手金、企業価値算定無料、
    お気軽にお問い合わせください

    他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認

    fundbookが厳選した
    優良譲渡M&A案件が検索できます

    M&A・事業承継のご相談は
    お電話でも受け付けております

    TEL 0120-880-880 受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)
    M&A案件一覧を見る 譲渡に関するご相談