業界毎の事例

2025/05/30

自動車整備業界のM&A動向を解説!業界が抱える課題や成功のポイント、事例も紹介

自動車整備業界のM&A動向を解説!業界が抱える課題や成功のポイント、事例も紹介

自動車整備業は、自動車の修理・整備から車検まで幅広い業務を行う業態で、許認可が必要なケースもあります。

基本的には、売上高と店舗数ともに安定性の高い業界ですが、業界としていくつかの課題を抱えており、近年はM&Aを検討する事業者も増えています。

本記事では、自動車整備業のM&A動向や業界の市場動向、今後の課題を解説し、M&Aを成功させるポイントや成功事例なども紹介します。

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自動車整備業とは

自動車整備業とは、自動車の修理・整備を総合的に行う事業および主として自動車の車体や電装品、タイヤなどの自動車関連部品の修理・整備、自動車エンジンの再生、自動車の清掃などを行う事業のことです。

また、自動車整備業では、運輸局の認可を受けることができれば車検を取り扱うこともできます。車検の取り扱いができるのは、「認証工場」と「指定工場」のいずれかとなります。

工場の種類特徴
認証工場一定の規模の作業場と作業機械、分解整備に従事する自動車整備士などを有している工場です。自社の工場では車検を行えないため、車検場への自動車の持ち込みが必要です。
指定工場認証工場のうち、自動車整備に関する一定の基準に適合する設備・技術および管理組織を有する他、自動車の検査設備を有している工場です。自動車の検査を行う自動車検査員を選任し、自動車の点検および検査が認められています。

自動車整備業の4つの業態

自動車整備業は、「専業事業場」「兼業事業場」「ディーラー事業場」「自家事業場」の4つの業態に分けられます。

自動車整備業の業態特徴
専業事業場自動車整備業の売上高が総売上高の50%超の事業場を指します。(ディーラーを除く)
兼業事業場自動車販売や部品用品販売、保険などの兼業部門の売上高が総売上高の50%以上を占める事業場を指します。(ディーラーを除く)
ディーラー事業場自動車製造会社または国内一手卸売販売会社と特約販売店契約を結んでいる企業の事業場を指します。
自家事業場主に自社が保有する車両の整備を行っている事業場を指します。

国土交通省の調査によると、令和5年6月末時点の業態別の構成比は、専業が61.6%、兼業が16.9%、ディーラーが17.7%、自家が3.8%となっており、自動車整備業の約6割が専業の事業者です
このうち、整備士の人数が2人~3人の事業者は約67%となっており、自動車整備業では比較的小規模な事業者が多い傾向があります

※出典:国土交通省「自動車整備事業場の規模

自動車整備業界の現状と市場規模

一般社団法人日本自動車整備振興会連合会が公表する「令和6年度自動車特定整備業実態調査結果の概要について」によると、自動車整備業界の売上高は6兆2,561億円です

前年度は、売上高が5兆9,072億円、前年度比にすると約6%増加しており、業界全体で売上高は増加傾向にあります。専業、兼業、ディーラー、自家の4つの業態を個別に見ても、全ての業態で売上高は増加しています。

また、事業場数は92,384社となっており、前年より535事業場(0.6%)増加しています。自動車整備業界は、売上高と事業所数ともに増加傾向にあり、安定した市場であることが特徴です。

理由としては、車検や定期点検整備などの定期的な業務が生じるため、毎年一定の利益を得られるためと考えられます。

※出典:一般社団法人日本自動車整備振興会連合会「令和6年度自動車特定整備業実態調査結果の概要について

自動車整備業界の動向と今後の課題

現状、自動車整備業界の市場規模・売上高は増加傾向にありますが、今後の課題もあります。以下では、自動車整備業界の動向と今後の課題を紹介します。

次世代車への対応

近年、自動車産業ではデジタル化とグリーン化によって、ハイブリッド車や電気自動車などの次世代車が世界的に注目されており、日本でも普及が進んでいます。

一般財団法人自動車検査登録情報協会によると、ハイブリッド車・電気自動車の保有台数は年々増加しており、今後も増えることが予想されます

このような背景の中、自動車整備業界にもハイブリッド車や電気自動車などの次世代車への対応が求められています。

しかし、次世代車に関してはメーカーから情報が公開されていない場合もあり、次世代車の整備をするためには講習を受講し、認証を得る必要があるなど、ハードルが高い状況です。そのため、自動車整備業では、次世代車に対応できる整備士の確保が今後さらに重要となります。

※出典:一般財団法人自動車検査登録情報協会「ハイブリッド車・電気自動車の保有台数推移

少子高齢化・環境保護の影響による市場縮小の可能性

日本では少子高齢化の問題が深刻になっています。2025年には、75歳以上の人口が全人口の約18%となり(2025年問題)、2040年には65歳以上の高齢者が人口の約35%を占める(2040年問題)と推測されています

また、日本では2050年カーボンニュートラルの実現に向け、各業界で環境に配慮する動きも促進されています。

このような社会課題の影響によって乗用車の台数自体も減少すると予想されており、業界自体の縮小が懸念されます。

業界が縮小すると少ない顧客を取り合う必要があるため、将来的には事業を継続するために、サービスの向上や付加価値を高めるなどの工夫が必要になる可能性があります。

※出典:厚生労働省「我が国の人口について

自動車整備業界のM&A動向

自動車整備業界では、ハイブリッド車や電気自動車などの次世代車への対応や、カーシェアリングや人口減などによる乗用車自体の台数減少によって需要低下が懸念されています。

さらに、整備士の確保も年々難しくなっており、2022年度の自動車整備士の有効求人倍率は5.02倍で、約10年で4倍以上に増加しています。このような業界の状況から、将来への不安を抱く経営者が増えています。

また、経営者の高齢化と後継者不足も深刻です。帝国データバンクによると、自動車整備業の経営者のうち、60歳以上は事業者全体の57%を占めています。そのうち後継者不在率は59.7%となっており、廃業を余儀なくされる事業者も増えています。

このような背景があり、事業の売却や事業承継の手段としてM&Aの需要が増加しています。

※出典:帝国データバンク「「自動車整備事業者」の倒産、休廃業・解散動向

【譲渡側】自動車整備業でM&Aを行うメリット

自動車整備業界のM&A動向を解説!業界が抱える課題や成功のポイント、事例も紹介

自動車整備業のM&Aを実施する譲渡側のメリットは、以下のとおりです。

・後継者不足の解消
・経営者は創業者利益を得ることができる
・既存従業員の雇用や顧客を守れる
・経営基盤を強化できる

自動車整備業界に限らず、日本では経営者の高齢化と後継者不足が問題になっています。M&Aによって第三者に事業を譲渡できれば、後継者問題を解決できます。

また、廃業すると既存従業員の働き口がなくなり、既存顧客は新たに整備工場を見つけなければなりませんが、M&Aを実現できれば、廃業せずに既存従業員や顧客を守ることができます。なお、M&Aによって大手傘下に入ることができれば、自社ではできない設備投資などを行える可能性があり、自社の経営基盤の強化にもつながります。

さらに、経営者は事業を売却することで創業者利益を得ることができ、セカンドライフや次の事業への資金獲得にもつながります。

【譲受側】自動車整備業でM&Aを行うメリット

自動車整備業のM&Aを実施する譲渡側のメリットは、以下のとおりです。

・人材不足の解消
・許認可を受けている設備を引き継げる
・シナジー効果が期待できる
・新規参入や事業拡大の時間とコストを軽減できる

譲受側は、M&Aを実施することで譲渡企業の従業員や設備を引き継ぐことができます。近年、自動車整備士が不足している状況ですが、M&Aによって貴重な整備士の確保につながります。

また、自動車整備業では許認可が必要な業務もありますが、M&Aによって許認可済みの設備を引き継ぐことができれば、スムーズに事業をスタートできる点もメリットでしょう。

さらに、同業・関連業界であればシナジー効果が期待でき、自社の発展につながる可能性があります。

自動車整備業のM&Aの流れ

自動車整備業のM&Aは、基本的に一般的なM&Aと同様の流れで行います。大まかなM&Aの流れは、以下のとおりです。

1. 検討・準備
2. マッチング・交渉
3. 最終契約

検討・準備段階では、M&Aの実行が本当に自社にとって適切か、何の目的で行うかなど、M&A実施に向けた検討を行います。

M&Aの実施を決めた後は、マッチング・交渉段階に進み、M&A仲介会社やM&Aアドバイザーと秘密保持契約を締結し、譲渡企業と譲受企業のマッチングを行います。

その後、譲渡候補企業とのトップ面談や譲受企業によるデューディリジェンスを経て最終契約に進み、問題がなければ成約・クロージングという流れです。

なお、実際にM&Aを実施する際は、各段階で様々な準備や手続きなどが必要です。M&Aの流れを詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
▷関連記事:「M&Aの流れは?売却の検討からクロージングまで進め方を徹底解説

自動車整備業M&Aの売却価格相場

譲渡企業の譲渡価額は、「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つのアプローチの中から、譲渡企業のビジネスモデルや保有資産などの実情に合わせて選択し、算出します。それぞれの特徴は以下のとおりです。

アプローチ特徴
コストアプローチ譲渡企業の純資産価値に着目したアプローチです。主な方法には、簿価純資産法や年倍法などがあります。
マーケットアプローチ株式市場やM&A市場の取引価額をもとに価格を算定するアプローチです。主な方法には、市場株価法や類似会社比較法(マルチプル法)などがあります。
インカムアプローチ譲渡企業の収益力に着目したアプローチです。主な方法には、DCF法や配当還元法などがあります。

自動車整備業のM&Aで譲渡価額の目安を考える場合、一般的には年倍法を用いることが多いです。年倍法では、「時価純資産額+営業利益×2年~5年分」で譲渡価額を算出します。

ただし、あくまでも目安となるため、実際には譲受企業が譲渡企業に対して、より高い価値を感じれば相場より高額な譲渡価額となることもあります。

M&Aの譲渡価額の相場や算出方法を詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

▷関連記事:「会社売却の相場とは?決め方や高く売るポイント、必要な諸経費について解説
▷関連記事:「M&Aの価格相場や算定方法とは?3つのアプローチと注意点

自動車整備業のM&Aを成功させるためのポイント

自動車整備業のM&Aを成功させるためのポイントは、以下のとおりです。

・自社の技術や強みを洗い出す
・早い段階から準備を進める
・専門家のサポートを受ける

それぞれを詳しく解説します。

自社の技術や強みを洗い出す

譲受企業は経営戦略としてM&Aを実施するため、シナジー効果の高い譲渡企業を求めています。そのため、譲渡企業は自社の強みや保有している技術を洗い出し、アピールすることが大切です。

自動車整備業では自動車整備士が特に不足しており、今後は次世代車への対応も必要です。自社が業界の動向に合った強みや技術を保有していれば、譲受企業の関心を引くことができるだけでなく、譲渡価額が高くなることも見込めます。

早い段階から準備を進める

M&Aは、思い立ってすぐにできるわけではありません。検討からマッチング、トップ面談、デューディリジェンスなど様々な工程を踏む必要があるため、成約までには一般的に半年~1年半以上の期間が必要です。

M&Aを成功させるには戦略的に行う必要があるため、事業承継やイグジットとしてM&Aを視野に入れるのであれば早い段階から検討し、計画的に準備を進めることが大切です。

専門家のサポートを受ける

自動車整備業のM&Aには様々な手法があり、用いられる手法によって手続きや作業が異なります。また、税務や法務、財務などの幅広い知識が必要になる他、業界の動向も考慮しなければなりません。

そのため、M&Aを検討する際は、一般的にM&A仲介会社やM&Aアドバイザーなどの専門家のサポートを受けることが一般的です。

自社のみでM&Aを成功させるのは難しい場合が多いため、検討の段階から専門家のサポートを受けながら進めましょう。

自動車整備業のM&A成功事例

自動車整備業のM&Aのイメージを掴むには、事例を見ることも手段として有効的です。以下では、自動車整備業のM&A成功事例を2つ紹介します。

株式会社オートバックスセブンによる近藤自動車工業株式会社の完全子会社化

2024年4月9日、株式会社オートバックスセブンは、近藤自動車工業株式会社の全株式の取得を決定し、株式譲渡契約を締結しました。

株式会社オートバックスセブンは、オートバックスグループのフランチャイズ本部を運営する企業です。一方、完全子会社となる近藤自動車工業株式会社は、自動車の修理・整備や販売・リース事業などを行っている会社です。

株式会社オートバックスセブンは、近藤自動車工業株式会社の完全子会社化によって、新たな事業者とのネットワーク構築や顧客獲得、収益力強化を目標としています。

株式会社D&Dホールディングスによる室蘭ダイヤモータース株式会社の完全子会社化

2021年12月16日、株式会社D&Dホールディングスは、室蘭ダイヤモータース株式会社の全株式を取得し、完全子会社化を行いました。

株式会社D&Dホールディングスは、コンサルティング業から自動車の販売、修理・整備、保険まで幅広い事業を展開している北海道の三菱ディーラーです。

一方、室蘭ダイヤモータース株式会社は、北海道の室蘭を中心に三菱自動車の製品を販売する企業です。今回の完全子会社化によって、室蘭ダイヤモータース株式会社は店舗名を室蘭店、伊達店に改名し、株式会社D&Dホールディングスの支店として営業を行っています。

株式会社D&Dホールディングスは、札幌エリアおよび旭川エリアでの三菱系列18店舗の運営実績を生かし、レンタカー需要の大きい北海道エリアの特性を活かしたビジネス展開や顧客の実情に沿った店舗運営を目指すとしています。

まとめ

自動車整備業は、自動車の修理・整備を総合的に行う事業のことを指し、国の許認可があれば車検を行うことも可能です。

現状、業界自体は売上高・事業者数ともに増加傾向にありますが、今後は次世代車への対応や需要の減少など、いくつかの課題を抱えています。

また、人材不足や将来への不安による廃業だけでなく、経営者の高齢化と後継者不足の問題も深刻です。こうした中、業界の課題解決手段としてM&Aの需要が高まっています。

M&Aでは様々な手法が用いられ、税務や法務などの幅広い知識が必要となる他、業界の動向も考慮して実施する必要があります。そのため、M&Aを成功させるには専門家のサポートを受けることが大切です。

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