経営・ビジネス

2023/10/02

キャピタルゲイン課税とは?基本事項から損失が出た場合・国外転出時の手続きまで解説

キャピタルゲイン課税とは?基本事項から損失が出た場合・国外転出時の手続きまで解説

資産運用で得たキャピタルゲインには、所得税や住民税がかかります。資産運用を考えている方や始めたばかりの方の中には、キャピタルゲイン課税について気になっている方もいるのではないでしょうか。

海外移住をする際は、資産に税金がかかるケースがあるため、資産を持つのであれば国外転出時の税金についても知っておく必要があるでしょう。

本記事では、キャピタルゲイン課税の基本的な仕組みや節税方法を解説する他、海外移住時の税金なども紹介します。

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キャピタルゲインとは資産の売却差益

キャピタルゲインとは、有価証券や不動産などの資産を売却して得られる売却差益のことです。例えば100万円で取得した株式を150万円で売却した場合、差額の50万円がキャピタルゲインとなります。

キャピタルゲインは、短期間で大きな利益を狙える反面大きな損失が生じる可能性もあるため、ハイリスク・ハイリターンが特徴です。

また、キャピタルゲインと同じく、投資で得られる利益にはインカムゲインもあります。インカムゲインとは、資産の保有で得られる利益のことで、株主配当や不動産の賃貸収入などが該当します。

キャピタルゲインとは違い、インカムゲインはマイナスになることがなく、安定した収益が期待できるため、ローリスク・ローリターンが特徴です。

キャピタルゲイン課税の仕組みと主な投資

キャピタルゲインには、金額に応じて所得税(復興特別所得税含む)と住民税が課税されます。

所得税は、各種所得金額を合計した総所得金額に税率をかけて算出する総合課税が原則ですが、キャピタルゲインの多くは他の所得金額と合計せずに、分離して税額を計算して確定申告をする申告分離課税です。

ここでは、キャピタルゲインが生じる主な投資について、それぞれの税区分や課税方法、計算式、税率を紹介します。

株式投資の税金

区分譲渡所得
課税方法申告分離課税
税率20%
・所得税:15%(復興特別所得税含めた場合は15.315%)
・住民税:5%
計算式1. 譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+委託手数料等)
2. 譲渡所得税額=譲渡所得金額×税率

株式投資のキャピタルゲインは、譲渡所得に該当します。課税方法は申告分離課税となり、課税所得金額に一律の税率をかけた金額が納税額となります。

なお、平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額に2.1%乗じた額を所得税とあわせて申告・納付します。復興特別所得税を含めた場合の税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。

投資信託の税金

投資信託のキャピタルゲインは、株式投資と同様に譲渡所得に該当します。課税方法は申告分離課税のため、一律の税率をかけた金額を納税します。

区分譲渡所得
課税方法申告分離課税
税率20%
・所得税:15%(復興特別所得税含めた場合は15.315%)
・住民税:5%
計算式1. 譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+委託手数料等)
2. 譲渡所得税額=譲渡所得金額×税率

不動産投資の税金

不動産投資のキャピタルゲインも譲渡所得に該当し、申告分離課税ですが、不動産の場合は「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」で税率が異なります。

  • ・長期譲渡所得:土地や建物を売った年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年を超える場合
  • ・短期譲渡所得:土地や建物を売った年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年以下の場合

区分譲渡所得
課税方法申告分離課税
長期譲渡所得の税率20%
・所得税:15%(復興特別所得税含めた場合は15.315%)
・住民税:5%
短期譲渡所得の税率39%
・所得税:30%(復興特別所得税含めた場合は30.63%)
・住民税:9%
計算式1. 譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(一定の場合)
2. 譲渡所得税額=譲渡所得金額×税率

FXの税金

FXのキャピタルゲインは雑所得となりますが、「先物取引に係る雑所得等」の特例が適用されるため、申告分離課税になります。

区分雑所得
課税方法申告分離課税
税率20%
・所得税:15%(復興特別所得税含めた場合は15.315%)
・住民税:5%
計算式1. 差益(所得)=為替差益+スワップポイント-(取引手数料+諸費用)
2. 所得税額=差益(所得)×税率

為替差益とは、売却したときの為替レートの違いで得られる利益を指し、スワップポイントとは、売却したときの金利差によって得られる利益を指しています。

仮想通貨(暗号資産)の税金

仮想通貨(暗号資産)のキャピタルゲインは雑所得に該当します。FXと違って特例が適用されないため、課税方法は総合課税となります。

また、所得税の税率は累進課税のため、総所得金額が高額になるほど税率も高くなり、最高税率は45%です。

区分雑所得
課税方法総合課税
税率・所得税:総所得金額に応じて変動
・住民税:10%
計算式1. 課税所得金額=総収入金額-必要経費
2. 所得税額=課税所得金額×税率

なお、雑所得についても復興特別所得税がかかります。

M&A(株式譲渡)を行う場合の税金

M&Aを行った場合にかかる税金は、スキームによって異なります。例えばM&Aで最も利用される株式譲渡で得た売却益は譲渡所得に該当し、申告分離課税です。税率も株式投資や投資信託と同様です。

区分譲渡所得
課税方法申告分離課税
税率20%
・所得税:15%(復興特別所得税含めた場合は15.315%)
・住民税:5%
計算式1. 譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+委託手数料等)
2. 譲渡所得税額=譲渡所得金額×税率

なお、上記では個人譲渡の場合を紹介していますが、M&Aに限らず法人の場合には税率が異なる場合もあるため、不明点がある場合は専門家への相談をおすすめします。

▷関連記事:【株式・事業譲渡などM&Aの税金】節税や税務、最新の税制変更を解説

確定申告が不要な場合

キャピタルゲインを得たときは、基本的に確定申告が必要です。

所得税法によって「毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得に対して、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告をして納税する」ことが定められています。

ただし、キャピタルゲインを得ていても確定申告が不要な場合があります。ここでは、確定申告が不要な場合を紹介します。

特定口座(源泉徴収口座)を開設して株や投資信託の売買をする場合

株式投資や投資信託などでは、金融商品取引業者などに口座を開設します。口座には一般口座の他に特定口座があり、特定口座には簡易申告口座と源泉徴収口座の2つがあります。

源泉徴収口座の場合、口座内の譲渡益について「申告不要」を選択することが可能で、申告不要を選択すれば確定申告は不要です。

  • ・一般口座:確定申告必要
  • ・簡易申告口座(特定口座):確定申告必要
  • ・源泉徴収口座(特定口座):確定申告不要(申告不要を選択した場合)

非課税口座(NISA・つみたてNISA)で取引する場合

NISAやつみたてNISAは、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品(株式や投資信託など)から得られる利益が非課税になる制度です。NISAやつみたてNISAで得たキャピタルゲインは非課税になるため、確定申告の必要はありません。

年収2,000万円以下かつ給与所得以外の所得が20万円以下の給与所得者

年収2,000万円の給与所得者は年末調整が実施されるため、原則確定申告は不要です。ただし、給与所得者でも、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計が20万円を超える場合は確定申告が必要です。

つまり、年収2,000万円以下かつ、キャピタルゲインを含めた所得が20万円以下の給与所得者であれば、確定申告は必要ありません。

所得が一定以下の主婦や無職の場合

所得税の控除には基礎控除といって誰でも受けられる控除があります。基礎控除は、合計所得が2,400万円以下だと48万円のため、キャピタルゲインを含めた所得が48万円以下の方であれば確定申告は不要です。

ただし、所得税と住民税の基礎控除は異なり、確定申告が不要でも住民税の申告が必要な場合があるので、注意しましょう。

なお、住民税は地方税のため、自治体ごとに若干異なりますが、目安として43万円以下だと申告不要です。

株式や不動産の譲渡損失は確定申告で控除可能

株式や不動産などの譲渡損失(売却損)が出た場合は、売却損について税金を納める必要がないため、確定申告をしなくても良いですが、確定申告をすることで損益通算が可能です。

そのため、他でキャピタルゲインを得ている場合は、確定申告をすることで節税になる可能性があります。

また、損益通算しても控除しきれない損失の金額は、翌年以後3年間にわたって、確定申告により繰越控除ができます。

ただし、株式や不動産などの損益通算や繰越控除は、原則同種のものにのみ適用されるため、注意してください。

例えば、株式の場合であれば「上場株式等の利子等・配当等」と損益通算をすることができ、控除しきれない分は、同じく翌年以降3年分の「上場株式等の利子等・配当等」から繰越控除できるということです。

なお、不動産に関しては長期譲渡所得で一定の要件を満たす場合は、他の所得からの損益通算と翌年以降3年間にわたる繰越控除ができる場合もあります。

海外移住をした際のキャピタルゲイン課税

金融資産を保有した状態で海外移住を考える方もいるはずです。ただし、資産を保有した状態で海外移住をする際は税金が生じる場合があるため、注意が必要です。

ここでは、海外移住に伴うキャピタルゲイン課税について紹介します。

日本の居住者と非居住者の個人所得課税の仕組み

所得税は1年間の個人の所得に対してかかる税金です。

一方、住民税は地域社会の費用の負担を住民が広く分かち合う「地域社会の会費」のような性格を有する税金で、1月1日にその市町村(都道府県)に住所のある方に課税されます。

所得税と住民税はどちらも所得に対してかかる税金ですが、それぞれ目的が異なるため、海外移住に関しては以下のように課税範囲が異なります。

税金の種類課税範囲
所得税国内居住者は全世界所得に課税され、
国内非居住者は国内源泉所得にのみ課税される。
住民税所得の生じた翌年1月1日時点に国内に住所を有する者に課税される。
ただし、翌年1月1日時点で国内に住所を有していない場合は、
前年に所得があっても課税されない。

海外移住した場合も、国内源泉所得に該当する金融資産で得たキャピタルゲインについては、所得税が発生します。ただし、住民税に関しては、海外移住後に得たキャピタルゲインに納税の義務は生じません。

国外転出時課税制度により資産の含み益も課税対象に

平成27年度税制改正により、「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」が創設されました。これは、国外転出をする方が1億円以上の金融商品を保有している場合などに、その含み益に課税される制度です。

キャピタルゲイン非課税国に移住することで、税負担から免れることを防止するための措置として創設されました。対象者と対象資産は以下の通りです。

対象者・国外転出時に所有等している対象資産の価格等の合計額が1億円以上であること。
・原則として、国外転出をする日前10年以内において、国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年を超えていること。
対象資産・有価証券(株式や投資信託など)
・匿名組合契約の出資の持分
・未決済の信用取引・発行日取引および未決済のデリバティブ取引(先物取引、オプション取引など)

なお、国外転出課税については、納税の猶予制度や帰国した場合の課税の取消(猶予分)もあるので、確認しておくと良いでしょう。個人で把握が難しいときは、専門家に相談するのがおすすめです。

キャピタルゲイン課税の節税方法

キャピタルゲインには税金がかかりますが、ケースによっては節税することができます。ここではキャピタルゲイン課税の節約方法を紹介するので、参考にしてください。

含み損を抱えた株式を売却する

前述したように、株式投資などのキャピタルゲインに関しては損益通算が可能です。例えば、大きな利益を得たタイミングで含み損を抱えた株式を売却すると、収益の相殺ができるため節税になります。

また、損失が生じた年に確定申告をしておけば損失分を3年間繰越控除できるため、翌年以降の節税になる可能性もあります。

ただし、損益通算や繰越控除には要件があるので、事前に確認しておきましょう。

非課税口座(NISA・つみたてNISA)で運用する

NISAや、つみたてNISAで得たキャピタルゲインは非課税のため、大きな節税になります。ただし、NISAやつみたてNISAは投資金額の上限や非課税投資額、非課税期間(2023年7月時点)が以下の通り決まっているので、注意しましょう。

種類NISAつみたてNISA
年間投資金額の上限120万円40万円
非課税投資額の上限600万円(5年×120万円)800万円(20年×40万円)

期間はNISAが最長5年、つみたてNISAは最長20年です。

なお、2024年には新しいNISAの制度が開始されますので、そちらも事前にチェックしておきましょう。

日本以外の主要国のキャピタルゲイン課税

海外移住を検討している方は、海外のキャピタルゲイン課税が気になるでしょう。以下では、日本以外の主要国のキャピタルゲイン課税(2023年1月時点)を紹介します。

アメリカ

アメリカでは、給与所得や配当所得などの所得とキャピタルゲインを合算して計算する方式を採用しています。申告分離課税で、所得に応じて0%、15%、20%の3段階で税率が決まります。

また、地域によっては、州・地方政府税が総合課税でかかる場合もあります。

イギリス

イギリスも、アメリカと同様に給与所得や配当所得などの所得とキャピタルゲインを合算して計算する方式を採用しています。申告分離課税で、所得に応じて10%、20%の2段階で税率が決まります。

なお、土地などの譲渡益と合わせて年間12,300ポンド(207万円)までは非課税です。

フランス

フランスは、一律30%の申告分離課税、または17.2%~62.2%の総合課税を選択できます。なお、どちらの方式にも社会保障関連諸税17.2%が含まれています。

シンガポールとマレーシア

シンガポールはキャピタルゲインが非課税のため、どの投資でキャピタルゲインを得ても税金はかかりません。また、マレーシアも不動産に関するもの以外は非課税です。このことから、シンガポールやマレーシアはタックスヘイブンとも呼ばれています。

まとめ

株式投資や投資信託などで得た所得はキャピタルゲインと呼ばれ、所得税や住民税がかかります。

投資の種類はさまざまですが、種類によって税区分や計算方法が異なるので、資産運用を始める方は把握しておきましょう。

また、海外移住する際は国外転出時課税がかかり、1億円以上の金融資産の含み益に対して課税されることがあるので、注意が必要です。

キャピタルゲインを大きく得る場合、税金がかかるのは仕方ないですが、節税できる部分は記事で紹介した方法も実践してみてください。

なお、金融資産への投資とは違いますが、M&Aによって譲渡を行う場合も税金が発生します。M&Aにかかる税金はスキームによって変わるため、専門的な知識が必要です。

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