経営・ビジネス

2024/02/07

有限会社とは?株式会社や合同会社との違いやメリット・デメリットを解説

有限会社とは?株式会社や合同会社との違いやメリット・デメリットを解説

有限会社は、2006年の法改正以前に設立可能な会社形態でしたが、現在は廃止されており、新たに設立することができません。ただし、現在でも特例有限会社として存続しているため、買収(M&A)によって経営権を得ることは可能です。

経営者やこれから経営者になる方の中には、有限会社と現在設立できる会社形態との違いや、有限会社のメリット、デメリットが気になる方もいるでしょう。

本記事では、有限会社の概要や現在設立できる会社形態との違い、有限会社のメリット・デメリットなどを解説するので、ぜひ参考にしてください。

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有限会社とは「特例有限会社」のこと

有限会社とは、2006年5月の法改正以前に設立できた会社形態のことで、現在は新設できません。

法改正に伴い、法改正以前に設立された有限会社には、以下2つの選択肢が与えられました。

・そのまま有限会社の名前を残した「特例有限会社」として存続する
・移行手続きを行い、「株式会社」や「合同会社」に移行する

つまり、現在「有限会社」の商号を持つ会社は「特例有限会社」ということです。

有限会社が廃止された背景には、法改正で新設された会社法によって株式会社設立のハードルが下がり、会社形態として有限会社の必要性が薄れたことが挙げられます。

法改正以前、株式会社の設立には最低1,000万円の資本金が必要でしたが、有限会社は最低300万円の資本金で設立できたため、ハードルの低さから多くの経営者が有限会社の設立を選択しました。

しかし、新会社法では、株式会社設立に必要な最低資本金の下限額の制限が廃止され、株式会社の設立要件が大幅に緩和されました。そのため、比較的容易に株式会社を設立できるようになっています。

なお、法改正により有限会社法が廃止されたため、現在、法律上では有限会社も株式会社として扱われます。

現在設立できる会社の形態

現在、日本で新たに設立できる会社形態は、以下の4つです。

・株式会社
・合同会社
・合資会社
・合名会社

上記のうち、株式会社以外の3つの会社は「持分会社」と言います。各会社形態の特徴を紹介するので参考にしてください。

株式会社

株式会社とは、株式を発行して投資家などから資金を集め、そのお金を用いて経営を行う会社形態です。

原則として、出資者である株主は一株一議決権を持っており、会社の運営は株主総会の多数決で決めます。

株式会社の主なメリットは以下のとおりです。

・知名度が高く遵守すべき法律が多いことから、社会的な信用を得やすい
・株式の発行で資金調達ができる

一方、主なデメリットは以下のとおりです。

・設立に費用と時間がかかる
・決算公告の義務がある

なお、出資者である株主は有限責任のため、倒産しても出資額以上の責任を負いません。

合同会社

合同会社は、法改正で新しく設けられた会社形態であり、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルに導入されました。

合同会社では、出資した全ての社員(持分会社における出資者)が会社の決定権をもち、経営を行います。

合同会社の主なメリットは以下のとおりです。

・設立に伴う手順が簡易で費用が安い
・定款で定めれば、社員の議決権や利益の分配を出資比率とは異なる割合で付与できるため、経営の自由度が高い

一方、主なデメリットは以下のとおりです。

・株式会社より知名度が劣るため、取引や人事採用で苦労する可能性がある
・上場できない

なお、合同会社も株式会社同様に、社員は有限責任となります。

合名会社

合名会社は、社員(出資者)全員が無限責任で構成された会社形態であり、複数人の個人事業主が集まって成り立っている会社と言えます。

合名会社の主なメリットは以下のとおりです。

・設立手順が簡易で費用が安い
・金銭以外に、信用・労務・現物出資などで会社が設立できる
・経営の自由度が高い

主なデメリットは、社員全員が無限責任のため、倒産してしまうと社員全員が負債を抱えるリスクがあることです。

合資会社

合資会社は、無限責任の社員(出資者)と有限責任の社員が最低1名ずつの計2名いないと設立できない会社形態です。設立に最低2名が必要な点は、同じ持分会社の合同会社や合名会社と大きく異なります。

合資会社の主なメリットは、以下のとおりです。

・設立手順が簡易で費用が安い
・金銭以外に、信用・労務・現物出資などで会社が設立できる
・経営の自由度が高い

一方、主なデメリットは以下のとおりです。

・無限責任社員は倒産時のリスクが高い
・1人で会社の設立ができない

なお、持分会社の中では合同会社が選ばれることが多く、合名会社や合資会社は設立される件数が少ない傾向にあります。

特例有限会社と株式会社・合同会社の違い

特例有限会社と株式会社、持分会社の中で設立が多い合同会社の特徴を比較してみましょう。

特例有限会社(現在は設立不可)株式会社合同会社
最低資本金300万円以上下限額の制限がなし(1円から可能)
出資者の責任有限責任
役員の人数原則1名以上業務執行者1名以上
役員の任期任期なし原則2年(例外10年)任期なし
株式の譲渡制限あり原則自由(定款により制限可能)制限あり
決済公告義務なしありなし

上記の表から、特例有限会社と合同会社が似たような特徴を有することが分かります。特に、合同会社は決済公告義務が不要なため、株式会社より維持管理コストの節約が可能でしょう。

特例有限会社のメリット

特例有限会社には、以下のようなメリットがあります。

・役員の任期制限がない
・経営の自由度が高い
・社歴が長く老舗のイメージを与えられる

それぞれ解説します。

役員の任期制限がない

株式会社の場合は、役員の任期が2年(または10年)と決まっていますが、特例有限会社は役員の任期がないため、無期限に継続可能です。

株式会社では、役員の任期満了から2週間以内に役員変更の登記をする必要があり、登記を怠った場合は100万円以下の罰金を課せられる可能性があります。

しかし、特例有限会社なら役員の任期制限がなく、役員の変更がない限り登記の変更も必要ないため、手間や費用の削減が可能です。

任期による役員の変更がないということは、会社のビジョンや戦略も中長期的に一貫して進めることができるので、会社の安定性も高められます。

経営の自由度が高い

特例有限会社に必要な役員の人数は取締役1名以上のため、役員数を柔軟に変更可能です。また、特例有限会社は、決算公告が不要かつ取締役会を設置することができません。

つまり、会社の財務諸表などを公開する必要がないため秘匿性が高く、意思決定に必要な役員の人数を減らせば経営がスムーズになるということです。

したがって、経営者にとっては、経営の自由度が高いと言えるでしょう。

社歴が長く老舗のイメージを与えられる

特例有限会社は2006年以降設立できない会社形態なので、2023年現在、有限会社として存続する会社は、最低でも17年以上存続していることになります。

ベンチャー企業の生存率は、創業から10年後で6.3%、20年後で0.3%と言われる中、会社形態だけで長続きしている会社とわかるのは、メリットと言えるでしょう。

特例有限会社のデメリット

特例有限会社にはメリットがある反面、デメリットもあります。主なデメリットは以下のとおりです。

・ワンマン経営になる可能性がある
・株式会社に比べて信用が低く見られやすい
・吸収合併ができない

それぞれ詳しく紹介するので、参考にしてください。

ワンマン経営になる可能性がある

特例有限会社は役員の任期がないため、役員を退任する必要に迫られません。そのため、ワンマン経営になりやすい傾向にあります。

ワンマン経営で陥りやすい傾向は以下のとおりです。

・社員が成長しない
・離職率が高い
・経営者に負担が集中する

近年は人的資源が重要と考えられる傾向があるため、特に自社の社員が成長しない、離職率が高いという傾向は大きなデメリットと言えます。

株式会社に比べて信用が低く見られやすい

特例有限会社は、株式会社に比べて信用が低く見られやすい傾向があります。

有限会社が設立できた頃は、設立資金が株式会社に比べて低かったため、有限会社は小・中規模の会社が多かったことが理由です。

現在、会社設立に必要な資本金の下限額はありませんが、未だに有限会社は中小規模の会社というイメージが残っている傾向があります。

また、決済公告義務がなく秘匿性が高い点も、信用が低く見られやすい理由の1つです。

吸収合併ができない

特例有限会社は、吸収合併ができない点もデメリットと言えます。

吸収合併とは、存続会社が消滅会社の権利義務の全てを承継することです。特例有限会社は、消滅会社になることはできても存続会社にはなれません。

存続会社になるには株式会社になる必要があるため、株式会社に比べてM&Aによる事業の拡大がしにくいです。

▷関連記事:【基本を網羅】吸収合併とは?メリットや手続き、登記について解説

特例有限会社を買収する際の注意点

有限会社とは?株式会社や合同会社との違いやメリット・デメリットを解説

企業によっては特例有限会社の買収(M&A)を検討するケースも考えられますが、買収するときは以下に注意する必要があります。

・株式の譲渡制限がある
・上場ができない

特例有限会社には株式の譲渡制限があるため、定款で変更していない限り、株主総会で承認を得なくては第三者に株式を譲渡できません。そのため、一般的な株式会社のM&Aより時間がかかってしまう傾向にあります。

また、特例有限会社は上場ができない点にも注意が必要です。

M&A後に上場をしたい場合は、株式会社への移行が必要ですが、移行してしまうと、特例有限会社のメリットが損なわれてしまうことを把握しておきましょう。

▷関連記事:有限会社買収のメリットや注意点は?株式会社との違いや譲渡事例を紹介

まとめ

有限会社は、法改正に伴って廃止された会社形態のため、現在は新規設立ができません。

しかし、現在でも特例有限会社として存続している会社はあるので、M&Aの実施は可能です。

特例有限会社には、役員の任期がない、経営の自由度が高いなど、株式会社にないメリットがある一方で、信用が低く見られやすい、吸収合併の親会社になれないなどのデメリットがあります。

また、特例有限会社をM&Aで買収する場合は、株式会社のM&Aより時間がかかってしまうことや、M&A後に上場ができないなどの注意もあるので、把握しておくとM&Aの検討時に役立つでしょう。

M&Aの実施は専門的な知識が必要になるため、特例有限会社のM&Aは、専門家と相談しながら行うのがおすすめです。

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