買収 プレミアム

買収プレミアムは買収価額の決定に欠かすことができない要素です。また、買収後に得られる効果によって判断する必要があるため、事前の算出が難しいケースもあります。

本記事では、買収プレミアムを活用することのメリットや買収価額の計算に必要な企業価値の判断方法について解説します。

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買収プレミアムとは?

買収プレミアムとは、買収価額と時価総額(市場価値)との差額のことを指します。例えば、時価総額が50億円の企業を買収する際に、80億円で買収した場合、買収プレミアムは30億円です。

買収プレミアムは、資本などの見える価値以外に対して支払われるものともいえます。例えば、売上の拡大、バリューチェーンの強化などの買収によって得られるシナジーや買収される側のブランド力といったものの価値が含まれます。

この買収プレミアムは実際に買収が行われる際に注目されることが多く、例えば、2015年6月の東京海上ホールディングス株式会社による米保険会社HCCインシュアランス・ホールディングスの買収時にも関心が寄せられました。

1株当たり78ドルでの買収となり、過去1ヶ月の平均株価から算出すると約36%のプレミアムが乗せられました。そのため、東京海上ホールディングスの株主から、プレミアムの額が適切であるか注目を集めました。

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買収 プレミアム

買収プレミアムを支払うメリット

買収の規模によっては、巨額になることもある買収プレミアムはメリットがあるため支払われます。ここでは、買収プレミアムを支払うメリットを見ていきます。

M&Aを短期間で行える

買収プレミアムを支払うことで、M&Aを短期間で行えることがあります。基本的に買収される側は、自社をより高い価額で売却したいと考えます。そのため、買収プレミアムによって買収価額が高くなることで、スムーズに進む可能性が高くなります。

また、ブランド力や独自の技術などの目に見えない価値であることから、高く設定することで買収される側や株主は自社の価値が高く評価されたと感じ、理解が得やすくなることもあります。

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M&Aにおける交渉を優位にする

M&Aの交渉が優位になることも期待できます。ひとつの企業を買収したいと複数の企業が考えている場合、高い買収価額を提示することで、他社より自社が選択される可能性を高められます。

また、買収プレミアムを高く設定することで、買収される側との交渉においても優位になることがあります。買収される側の株主は買収プレミアムによって、より多くの株式の売却益を得られるためです。

企業価値の適正な判断について

買収価額を算出するためには、対象企業の企業価値の判断を適切に行う必要があります。企業価値と買収プレミアムを合算した価額が買収価額になるためです。企業価値の算出方法は、主に「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つがあります。

コストアプローチとは、企業が保有している資産と負債をベースにして株式価値を算出する方法です。手法として、簿価純資産法、時価純資産法などが用いられます。企業の純資産に着目することから、中小企業のM&Aでは比較的採用されやすいです。

次にマーケットアプローチとは、買収対象の企業と比較できる企業の情報をもとに、企業価値を算出する方法です。類似企業比較法(マルチプル法)、類似取引比較法といった方法が使われます。

インカムアプローチは、対象企業に期待される収益をリスクを含め現在価値に換算し、企業価値を算出する方法を指します。DCF(Discounted Cash Flow)法、配当還元法などが用いられます。

上記の手法を用いて算出された企業価値に、買収プレミアムを加算して買収価額を算出します。買収プレミアムは、上述のように、ブランドや技術力、従業員の能力といった無形資産やシナジー効果を考慮して決められます。

シナジー効果とは、複数の企業が連携や協業をすることで得られる相乗効果のことを指します。具体的には、生産設備や研究機関の共有によるコスト削減やノウハウの相互利用、管理部門の統合による効率化などが挙げれます。

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買収 プレミアム

買収プレミアムを支払い過ぎたくない場合の考え方

買収プレミアムは高く設定することで、買収が短期間で成約できる可能性が高まるなどメリットがある一方で、買収後に見込んだ効果が得られない場合、買収にかけた投資が回収できない状況になり得ます。そのため、適切な買収プレミアムを算出することは買収を成功させるために欠かせません。

ただし、買収プレミアムを低く見積もった場合、買収が成立しない、買収される側からの不信感などに繋がる可能性もあります。そのため買収後に得られる効果を適切に判断し算出することが求められます。

買収プレミアムの算出は、業界知識や経済状況の把握、どういったシナジーが得られるのかといった専門的な知識が欠かせないため、M&Aアドバイザーなどの専門家に相談することも得策といえます。

また、買収する側が買収される側を調査するデューデリジェンスを適切に行うことも、買収プレミアムの算出には求められます。

例えば、工場を運営する企業を買収する際に、周辺環境への影響があるにも関わらず、デューデリジェンスで発覚せず、買収後に巨額の費用が発生することも考えられます。こうした状況になった場合、見込んだシナジー効果を超える負担が発生することもあります。

デューデリジェンスの結果を踏まえて、買収プレミアムを含めて、買収価額を調整することもあります。

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まとめ

買収価額の決定には企業価値の算出と買収プレミアムの判断が求められます。買収によって得られる効果や達成したいことを鑑みて買収プレミアムを決定しましょう。

また、買収価額、買収プレミアムの算出にはさまざまな専門知識が求めれられるため、不明点などはM&Aアドバイザーなどの専門家に相談することをお勧めします。