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2023/09/14

社員・従業員へ株式譲渡する場合の4つの問題点とその後の影響

社員・従業員へ株式譲渡する場合の4つの問題点とその後の影響

事業承継を考える際、見知らぬ企業に譲渡するよりも共に仕事をしてきた信頼できる優秀な社員に事業を任せたい、と考える経営者は少なくありません。しかしそれには越えるべきハードルも多く、社員への事業承継は現実的かというと相当に難しいと言わざるを得ません。後継者がおらず、社員への承継も難しい。そのような状況で、第三者への承継(M&A)を選択する企業が増えています。

本記事では、社員へ株式譲渡をする際に起こりうる問題点や、他社に株式譲渡した際の社員への影響、基本的な株式譲渡手続きの流れなどを解説します。

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社員に株式を譲渡する際に起こりうる問題点

経営者が将来的に自社の社員に会社(株式)を譲渡するつもりであっても、難なく譲渡が成立することは多くは有りません。経営者にふさわしい人材がいない、借金や担保が引き継げない、株式を買い取るだけの資金力がない、などクリアしないといけない問題は複数存在します。

社員に株式を譲渡する際に、起こりうる問題点について、掘り下げてみましょう。

経営者にふさわしい人材がいない

株式を譲渡するということは、「その人材に会社の経営を任せる」ことを意味します。

社員としてはとても優秀な人材であっても、経営者としての適性があるとは限りません。経営者になるならば、同業他社や業界団体との関係、営業活動、従業員の労務問題、対銀行折衝など、対人関係スキルや経営センスといった広範囲のスキルを必要とします。経営者としての視点を持てる人材を探すことは、難しいでしょう。

優秀な人材を後継者として育成するにも、計画的に実施している企業はそう多くはありません。オーナーが体を壊すなど、急な社長交代をせざるを得ない場合に、後継者選びが対応できていないケースも目立ちます。また、経営者は社員の人生を背負う、非常に責任がある立場です。優秀な人材が必ずしも経営者になりたがるとは限りません。

借金や担保を引き継げない

社員が事業継承を行うことができない理由の一つに、「借金や担保を引き継げない」ということが挙げられます。中小企業の場合、会社の借入金を経営者個人が連帯保証しているケースが多くあります。事業継承をする場合、連帯保証も引き継ぐことになります。

しかし、せっかく経営者になると手を挙げた従業員がいても、連帯保証を付ける場合には個人と法人のそれぞれの返済能力から判断されます。個人信用や所有している資産、会社の資産から総合的に判断して、連帯保証を付けるには不十分と金融機関に判断されてしまう可能性も否めません。

また、連帯保証を引き継ぐということは、会社の経営に失敗すると個人の力で返済しなくてはならないということでもあります。特に家族がいる社員は、好んでそのようなリスクを取る人は少ないでしょう。跡を継いでくれる社員がいるのに連帯保証の引き継ぎができないとなると、元の経営者が引退後も引き続き、個人保証をとる形となります。
しかしそれでは、前オーナーがリスクを抱えたまま完全に引退することができないというデメリットが挙げられます。

株式を買い取る資金力がない

社員への事業承継が成立しにくい最大の理由として、「株式を買い取る資金力がない」ことが挙げられます。会社の経営を引き継ぐ場合、自社の株式を前オーナーから買い取らなければなりません。

しかし、社員には株式を買い取るほど資金力がないケースがほとんどです。平均的な収入の社員では株式を買い取ることが難しいケースが大半です。

社員へ事業承継するためには様々なハードルがある

上記のような問題から、株式は引き続き前オーナーが保有しつつ、経営を社員に任せる、という方法も選択肢としてはあります。

この場合、新たに経営者となる社員はいわゆる「雇われ社長」となりますが、最終的な意思決定の権限がない上に、相続の際にオーナーの身内との間でトラブルの火種になるなど、社員にとってはリスクの高い手法といえます。オーナーとしても、個人保証は引き続き残り、株式の売却による創業者利潤も得られないなど、デメリットが多くあります。

以上のように、「社員へ株式譲渡する」ためには数々のハードルがあり、全てを解決するには、よほどの条件が整っていないと難しいでしょう。このため、社員に多く株式を譲渡することは、あまり一般的には行われません。

他社へ株式譲渡した後の社員への影響とは?

社員・従業員へ株式譲渡する場合の4つの問題点とその後の影響

前述したように、社員への事業承継は現実的でなく、一般的にもあまり行われていません。親族に後継者がおらず、社員への承継も難しい中で、第三者への承継(M&A)が増加傾向にあります。その際の社員の処遇や雇用はどのようになるのでしょうか。

また、社員のモチベーションを維持しながら業務を継続するために譲受企業側がどのような点に配慮すれば良いかを解説します。

処遇と雇用の影響への配慮

他社へ株式を譲渡する際、経営者やオーナーが特に懸念するのは「譲渡後の社員の雇用や処遇」です。実際には、株式譲渡の交渉の中間プロセスにあたる「基本合意」と最終工程にあたる「最終契約」の段階で、譲渡後の社員の雇用と待遇について、双方の要望をすり合わせた上で契約を結ぶことが一般的です。

また、譲渡後に大量リストラや不用意な解雇が横行すると、労働法上思わぬトラブルを生み出す可能性があります。つまり、解雇を前提に株式取得をすることは、非常にリスクが大きくなってしまうのです。雇用の保証は、譲渡の最終決断をする譲渡企業オーナーが望むことが多いため、譲渡後に従来の社員が不当に扱われることは非常に少ないとされています。

モチベーションへの配慮

自分の会社が他の会社に譲渡されることは、実際に交渉が完了し「譲渡契約」を締結した後知らされることとなります。それまでには情報漏洩を絶対に避けるという目的のため、社員は何も知らされないまま、ある日突然、M&Aの成立を知ることになります。

この時、自分たちの雇用や給与の保証が不透明であったら、社員の内心は穏やかではありません。M&Aの発表後は雇用だけでなく、大きな環境の変化が起こるため、社員たちに心理的負荷を与えます。会社の経営者が交代する、社内の空気が代わるという見えない不安を抱えながら業務に就くことは社員のモチベーションにも影響するため、譲渡後の社員のケアは譲受企業が最も懸念することでもあるといわれています。

社会的責任を果たすために雇用を維持することはもちろんのこと、働いている社員のおかげで会社の価値が決まっている、という見方もできます。社員の離職を招いてしまうと、M&Aで期待されていたシナジー効果が発揮できなくなってしまいます。これは譲受企業にとっても損失ですし、社員の方も新しい職を探さねばならず、誰も幸せにはなりません。本人からの退職希望がある場合を除き、雇用の維持を前提として手続きを進めましょう。

▷関連記事:M&Aで譲渡された企業の社員は その後どうなる?

株式譲渡に必要な具体的な手続きの流れ

株式譲渡の具体的な流れ

本項目では株式譲渡の手続きについて解説します。株式譲渡の手続きは会社法で厳格に定められており、間違えてしまうと権利が正しく譲渡されません。しっかりと確認した上で進めるようにしましょう。

多くの場合、株式を譲渡する際には発行会社(この場合は譲渡企業)から承認を取らなくてはなりません。これは、企業にとってふさわしくない第三者による株式取得を防ぐためにあり、このような株式は「譲渡制限株式」と呼ばれています。

双方で株式譲渡を合意したら、譲渡制限がある株式なのかを確認した上で株式譲渡を行うことを合意し、譲渡制限がある場合には取締役会もしくは株主総会などでの承認が必要となります。

譲渡が承認されたら、譲渡企業は譲受企業へ株式譲渡が承認された旨を通知し、譲受企業が承認通知を受け取った後に「株式譲渡契約の締結」を交わして代金決済の流れとなります。

現在、ほとんどの企業では「株券」を発行しておらず「株主名簿」で「株主」として記載されていることが、株主としての証となります。取締役会や株主総会などで株式譲渡の承認を得ても株主名簿が書き換えられなければ、手続きは完了しません。株式譲渡が完了したら、株主名簿の書き換えを必ず実施しましょう。

その後は、臨時株主総会で役員交代決議、取締役会で代表者選任決議などの人事を行ったら、役員交代などの登記申請を行い株式譲渡が完了します。

詳しい流れについては以下のコラムにて解説しています。

▷関連記事:株式譲渡の手続きがわかる!具体的な手順をパターン別に完全ガイド

まとめ

大切な会社を信頼できる自社の社員に委ねられるならば、これほど頼もしいことはありません。
しかし、社員への株式譲渡するためには複数の大きなハードルがあります。そのため、社員への株式譲渡はあまり実際的な手段とは言えません。株式譲渡を考えている場合には別の手段としてM&Aを候補とするのが現実的です。M&Aには専門的な知識が必要とされるため、M&Aアドバイザーや弁護士、司法書士などの専門家に相談しながら進めるようにしましょう。

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