ITベンチャー M&A 事例

近年、新たなサービスが次々と世の中に登場し、最新のテクノロジーを活用したベンチャー企業の数も増加しています。そのような状況の中、大企業も新規事業を立ち上げたり自社のサービスを強化するために、最先端技術を保有したベンチャー企業を買収する事例(M&A)が増加しています。

M&Aといえば、ヤフーによるZOZOの譲り受けやZホールディングスとLINEの経営統合などが記憶に新しいと思います。

2020年1月に発表されたMARR Onlineの調査によると、2019年の日本のM&A件数は4,088件で、2018年の3,850件を238件上回り、過去最高を記録しました。2012年以来、8年連続の増加となっています。また、4,088件のうちベンチャー企業へのM&Aは1,375件と全体の33.6%を占めており、約3社に1社がベンチャー企業とM&Aを行っていることがわかります。

では、ベンチャー企業へのM&Aが増加している背景にはいったい何があるのでしょうか。

本記事では、ベンチャーM&Aが増加している理由と2019年の最新M&A事例を紹介します。また、FUNDBOOKに所属するIT業界専門のM&Aアドバイザーに今後のM&A動向の展望をインタビューしました。

今回話を聞いたM&Aアドバイザー
FUNDBOOK M&Aアドバイザー 田中哲
田中哲

株式会社FUNDBOOK
エグゼクティブセールス本部 ディレクター

2008年に株式会社三井住友銀行へ入行。
投資銀行部門にて金融債権の流動化業務に携わった後、法人営業に従事。
2015年に株式会社日本M&Aセンターに入社し、提携金融機関との協業におけるスキームを主に譲渡企業側のアドバイザーとして数多くのM&A案件に携わる。2015年入社メンバーで売上1位。2017年11月にFUNDBOOKへ入社。

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M&Aをご検討の方はもちろん、自社をもっと成長させたい方やIPOをご検討の方にもお役立ていただける資料ですので、ぜひご一読ください。

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目次

M&Aとは

M&A(エムアンドエー)とは「Mergers and Acquisitions」(合併と買収)の略で、資本の移動を伴う企業の合併と買収を指した言葉です。

狭義的な意味のM&Aにおいては、企業の「合併」と、株式譲渡、新株引受、第三者割当増資、株式交換などの手段を通じた会社・事業の「買収」を指します。広義的な意味では、事業の多角化などを目的とした資本提携(資本参加、合弁会社設立など)を含む、企業の経営戦略を指す場合もあります。

▷関連記事:M&Aとは?M&Aの目的、手法、メリットと流れ【図解付き】

2019年のベンチャーM&Aが急増した理由

上述の通り、2019年はベンチャー企業によるM&A件数が全体の約3割を占めています。

大企業が積極的にベンチャー企業を買収する理由としては、主に下記の2つがあげられます。

  • ベンチャー企業を譲り受けることによる効率的な新規事業の立ち上げ
  • ベンチャー企業の技術やノウハウを活用した既存事業の強化

要するに、大企業にとっては効率的に新しい技術やノウハウを獲得したいという意図があります。そのため譲渡企業の従業員数や売上、設立年数に関係なくM&Aが成立するケースが増加しているのです。

そこで、既存事業の強化の為に行われたM&A事例と、下記4つの切り口で事例を紹介します。

  • 従業員数が10名以下のベンチャー企業
  • 設立年数2年以内のベンチャー企業
  • 大学発のベンチャー企業
  • 赤字を計上したのに譲渡したベンチャー企業

専門家からのコメント(2019年のベンチャーM&Aの動向)

FUNDBOOK M&Aアドバイザー 田中哲

2019年は大企業によるベンチャー企業のM&Aが目立ちました。その背景としては、既存事業の強化や新規事業の立ち上げを効率よく行いたいということが挙げられます。
 
大企業としては自社の事業をより強化できそうな事業や独自に創出することが困難な事業があれば、例えベンチャー企業であっても、今後の可能性を見込んで買収(M&A)する傾向があります。
 
大企業に譲渡を検討しているベンチャー企業も増加基調です。事業を拡大・加速させるために資金調達を行いたいものの、そのための交渉に時間を要し本業への専念が困難になるケースも多いためです。
 
そのためM&Aにより大企業の傘下に入り、潤沢な資金力とリソースを駆使して事業に専念する企業が増えているのです。

【2019年ベンチャーM&A事例】
既存事業強化の為に行われたベンチャー企業へのM&A事例4選

①株式会社アズームによる株式会社ライナフから「スマート会議室」事業の譲り受け(譲渡金額:非公開)

株式会社アズームによる株式会社ライナフから「スマート会議室」事業の譲り受け(譲渡金額:非公開)引用元:https://azoom.jp/

IT技術を駆使した遊休不動産の活用事業を展開する株式会社アズームは、同じく不動産活用サービスを展開する株式会社ライナスから、同社が提供する「スマート会議室」を事業譲受しました。

「スマート会議室」は、会議室やレンタルスペースなどの空室予約・決済などをワンストップで管理できるサービスです。

アズームは空き駐車スペースの収益化を目的とする各種サービスを展開しており、「スマート会議室」を譲り受けることで、空き駐車スペースと空き会議室のそれぞれを活用し、より効率的な両者の収益化の実現を目指すとのことです。

②共同ピーアール株式会社によるTATEITO株式会社からマーケティング専門オンライン学習サービスの譲り受け(譲渡金額:非公開)

 
共同ピーアール株式会社によるTATEITO株式会社からマーケティング専門オンライン学習サービスの譲り受け(譲渡金額:非公開)引用元:https://www.kyodo-pr.co.jp/

総合PR事業を展開する共同ピーアール株式会社は、教育事業を営むTATEITO株式会社より、同社サービス「マナビト」を事業譲受しました。

共同ピーアールは、実践的な広報人材を養成する専門機関として、広報の学校を運営しています。

M&Aを行う背景としては、マーケティング分野へ対応する人材の育成に注力したいということが挙げられます。

昨今の状況として、広報の目的が従来の自社の認知・理解拡大から、ブランドの醸成・浸透・育成へと大きく変化しており、共同ピーアールは「PR」と「広告」の枠組みを超えるマーケティング人材の育成を急務としています。

そのため、デジタルマーケティングに特化した学習サービスである「マナビト」を活用することで、マーケティング分野へ対応する人材の育成に注力する予定です。

また同サービスを教材として活用するだけでなく、自社で運営する広報分野の教育講座と融合させることにより、新たなサービスの開発を目指すとのことです。

③株式会社アルクによるアメリカのベンチャー企業Okpanda, inc.から英語学習アプリ「OKpanda英会話」の譲り受け(譲渡金額:非公開)

 
株式会社アルクによるアメリカのベンチャー企業Okpanda, inc.から英語学習アプリ「OKpanda英会話」の譲り受け(譲渡金額:非公開)引用元:https://www.alc.co.jp/

OKpandaはボストン大学の教授をはじめとする英語教育の専門家が立ち上げた事業で、挫折せずに英語を楽しく学習できるコンテンツをアプリ上で提供する会社です。教材からレッスンの受講まで全て一つにまとまっているのが特徴です。

アルクが長年に渡り培ってきた英会話学習のコンテンツやノウハウ、OKpandaのテクノロジー力を生かして、オリジナルのコースを提供する予定です。

④エン・ジャパンによる外国人向け求人一括検索サイト運営ベンチャーのJapanWork株式会社を譲り受け(譲渡金額:2億2900万円)

 
エン・ジャパンによる外国人向け求人一括検索サイト運営ベンチャーのJapanWork株式会社を譲り受け(譲渡金額:2億2900万円)引用元:https://corp.en-japan.com/

HR事業を営むエン・ジャパン株式会社は、外国人向け求人事業を行うJapanwork株式会社の株式を2億2900万円で取得し、子会社化しました。取得比率は51%で、残りの株式はJapanworkの中期経営計画に合わせ、2022年4月期の業績に応じて取得を行うとのことです。

Japanworkは外国人がチャットで求人を探せるサービスを提供しており、Facebook上で永住者中心に15万人以上のユーザーを獲得している、国内最大規模の外国人向け求人サービスです。

エン・ジャパンは、中期経営計画において掲げるテクノロジー分野でのM&A強化に加え、今後市場の過熱が見込まれる外国人労働市場への参入という2つのポイントを踏まえ、このM&Aが実現しました。

【2019年ベンチャーM&A事例】
従業員数が10名以内のベンチャー企業へのM&A事例3選

①日立キャピタル株式会社によるベルギーのモビリティサービスベンチャー企業モビリースの譲り受け【従業員数:3名】(譲渡金額:推定数億円)

 
日立キャピタル株式会社によるベルギーのモビリティサービスベンチャー企業モビリースの譲り受け【従業員数:3名】(譲渡金額:推定数億円)引用元:https://www.hitachi-capital.co.jp/

日立キャピタル株式会社の欧州子会社であるHitachi Capital Mobility Holding Netherlands B.V.は、ベルギーにおいてモビリティサービスを展開するMobilease Belgium NV(以下、モビリース)を譲り受けました。

モビリースは売上高約5,720万円で従業員数3名のベンチャー企業です。自動車のリースやシェアリングアプリを提供しています。

日立キャピタルは、イギリスやオランダなどのヨーロッパ諸国でモビリティ事業を展開しています。EU本部のあるベルギーに拠点を置き、MaaS事業をさらに強化、拡大するためにモビリースを譲り受けました。

今後日立キャピタルは、MaaS事業を展開する欧州6カ国の事業基盤を強化するとともに、欧州地域におけるさらなる事業の拡大を通じて成長を図っていきます。

一部報道では譲渡金額は数億円とも言われており、従業員数3人のベンチャー企業でも、技術力やノウハウあれば大企業に高額で売却できるということがわかる事例です。

②ヤマハ発動機株式会社によるモビリティサービスを展開しているベンチャーのglafit株式会社との資本業務提携【従業員数:8名】(出資額:1億円)

 
ヤマハ発動機株式会社によるモビリティサービスを展開しているベンチャーのglafit株式会社との資本業務提携【従業員数:8名】(出資額:1億円)引用元:https://global.yamaha-motor.com/jp/

ヤマハ発動機株式会社は、モビリティベンチャーのglafit株式会社に約1億円の出資を行いました。

ヤマハ発動機は、二輪自動車の売上世界第2位を誇っています。2030年に向けた長期ビジョン達成のため、既存の技術と新技術の融合を進め協業やM&Aを積極的に行うと発表しており、同年には赤字上場企業2社をM&Aで譲り受けています。

glafit株式会社は従業員数8名の和歌山県発モビリティベンチャー企業です。同社がプロジェクトを実施しているハイブリッドバイク「glafit(グラフィット)バイク」は、2017年7月に当時の日本国内におけるクラウドファンディング史上、資金調達額1位の記録を樹立したことでも話題になりました。(約1億2,000万円)

今回の資本業務提携によって、glafitは製品開発と人員強化を図り、上場を目指します。

③株式会社ユーグレナによるヘルスケアベンチャー株式会社MEJの株式交換による子会社化【従業員数:2名】(株式交換のため譲渡金額はなし)

 
株式会社ユーグレナによるヘルスケアベンチャー株式会社MEJの株式交換による子会社化【従業員数:2名】(株式交換のため譲渡金額はなし)引用元:https://www.euglena.jp/

藻の一種であるミドリムシを活用し、ライフスタイル領域・バイオ領域を中心にビジネスを展開している株式会社ユーグレナは、ヘルスケアベンチャーの株式会社MEJを子会社化しました。

ユーグレナは東大発のベンチャー企業で、ミドリムシの屋外大量培養に世界で初めて成功した会社です。ミドリムシを使用した化粧品や健康食品などを手掛けています。

一方、MEJは化粧品や健康食品の商品開発、販売を手掛けており、健康食品・化粧品などをオンライン専門で販売していて、ヘルスケア領域のデジタルマーケティングや商品開発力に強みを持っています。

ユーグレナは、デジタルマーケティングのノウハウと商品開発力を組み合わせることによってオンライン分野での成長を加速させたいとの考えから、当時従業員数2名であったMEJを株式交換によって完全子会社化しました。

なお、本買収子会社化は株式交換を用いているため現金の受け渡しは発生していません。

株式交換については下記の記事をご参照ください。

▷関連記事:株式交換とは?メリットから株式交換比率、株価の変動と注意点までを徹底解説

【2019年ベンチャーM&A事例】
設立年数2年以内のベンチャー企業へのM&A事例3選

①繊維事業の株式会社ヤギによるヘルスケアベンチャーの株式会社Dream boxの完全子会社化【設立年数:1年5か月】(譲渡金額:非公開)

 
”繊維事業の株式会社ヤギによるヘルスケアベンチャーの株式会社Dream引用元:https://www.yaginet.co.jp/index.html

繊維事業を営む株式会社ヤギは、ヘルスケアベンチャー企業である株式会社Dream boxの全株式を取得し、完全子会社化しました。

Dream boxは2018年6月に設立されたベンチャー企業で、「フィットネス物販」、「健康サブスクリプション」、「パーソナル健康管理アプリ開発」、「デジタルマーケティング支援事業」の4つを主軸に事業を展開しています。

ヤギは2020年度から様々な健康・フィットネス領域の事業を段階的に開始する予定です。上記の主軸事業を通して、個人の健康データを収集・分析し、従来の繊維領域にとどまらないオンリーワンの商材とサービスの開発・展開に取り組んでいます。

そして、Dream boxが保有する個人の健康管理データを活用したBtoCヘルスケア事業への進出を中心に、既存事業に新たな付加価値を生み出す新領域事業の拡大を目指します。

②AR/MR技術の体験シェアリング株式会社がVRシステム開発の株式会社CanRを吸収合併し新会社設立【設立年数:9か月】(譲渡価額:非公開)

 
AR/MR技術の体験シェアリング株式会社がVRシステム開発の株式会社CanRを吸収合併し新会社設立【設立年数:9か月】(譲渡価額:非公開)引用元:https://ima-create.com/

AR/MR技術領域でビジネスを展開する体験シェアリング株式会社は、VRシステム開発を行う株式会社CanRを吸収合併し、体験シェアリングを存続会社とする形で社名を「イマクリエイト株式会社」に変更しました。

前身である体験シェアリングは2019年1月に設立され、AR/MR技術を用いて企業向けにMR研修、MRプロダクトを開発しています。

CanRは2019年3月に設立されたばかりのベンチャー企業ですが、世界初となるVR物理トレーニングシステムの開発に成功し、VRクリエイティブアワード2019ビジネス部門の優秀賞を受賞しました。

開発力の強化が課題であった体験シェアリングに対し、CanR側は営業力とXR領域の知見の少なさに不安がありました。そのため、両社の課題を解消し、お互いの得意領域をさらに拡大する目的として両社の合併という形となりました。

③デジタル証券の米Securitize, Inc.によるブロックチェーン技術の株式会社BUIDLの全株式を取得し子会社化【設立年数:1年3か月】(譲渡金額:非公開)

 
デジタル証券の米Securitize, Inc.によるブロックチェーン技術の株式会社BUIDLの全株式を取得し子会社化【設立年数:1年3か月】(譲渡金額:非公開)引用元:https://www.securitize.io/?redirected=%E2%9C%93

アメリカのデジタル証券プラットフォームを運営するSecuritize, Inc.は、ブロックチェーン技術の専門企業である株式会社BUIDLの全株式を取得し、完全子会社化しました。

BUIDLは2018年9月に設立され、銀行、保険、不動産、商社、暗号資産取引所など様々な企業のコンサルティングと開発を実施してきました。

Securitize, Inc.がBUIDLのブロックチェーン技術に関連する実績を高く評価し、日本での事業展開を進めるパートナーとして打診をしたことでM&Aが実現しました。

両社のシナジーを駆使して、日本ではまだ市場が形成され始めて間もないデジタル証券領域をより活性化させていく目的です。

【2019年ベンチャーM&A事例】
大学発のベンチャー企業へのM&A事例2選

①化学メーカーの株式会社日本触媒による大学発ベンチャーのレナセラピューティクス株式会社の譲り受け【東京医科歯科大学発】(譲渡金額:非公開)

 
化学メーカーの株式会社日本触媒による大学発ベンチャーのレナセラピューティクス株式会社の譲り受け【東京医科歯科大学発】(譲渡金額:非公開)引用元:https://www.shokubai.co.jp/ja/

株式会社日本触媒は、東京医科歯科大学発ベンチャーで、ヘテロ2本鎖核酸(HDO)技術(以下、HDO技術)を創薬基盤技術として核酸医薬の実用化を目指しているレナセラピューティクス株式会社を譲り受けました。

レナセラピューティクスは2015年に設立され、従業員はわずか10名ですが、IONIS PHARMACEUTICALS, INC., Carlsbad, California, U.S.A.や武田薬品工業株式会社とHDO技術の非独占的ライセンス契約を締結しています。

日本触媒は、新規事業を創出するため、これまでもアメリカの化学技術ベンチャー企業などを譲り受けています。今回も核酸医薬のDDS技術*1を強化する目的でレナセラピューティクスを譲り受けました。

また、レナセラピューテクスも日本触媒から事業支援を受けることによって、コア事業であるHDO技術の実用化を進め、新しい核酸医薬品の創製を目指すとしています。

*1 DDS技術:ドラッグデリバリーシステムの略で、体内の薬物分布を制御することで、薬物の効果を最大限に高め、副作用を最小限に抑えることを目的とした技術

②セイコーエプソン株式会社による大学発テックベンチャーの4Dセンサー株式会社との資本業務提携【和歌山大学発】(譲渡金額:非公開)

 
セイコーエプソン株式会社による大学発テックベンチャーの4Dセンサー株式会社との資本業務提携【和歌山大学発】(譲渡金額:非公開)引用元:https://www.epson.jp/

セイコーエプソン株式会社は和歌山大学発ベンチャーの4Dセンサー株式会社と資本提携を行いました。

4Dセンサーは、小型の電子機器部品や大型構造物などの物体の形状やひずみをリアルタイムで計測できる装置を製造するベンチャー企業です。エプソンは自社が掲げる長期ビジョンの実現のため、重要な役割を担う技術を保有する4Dセンサーと資本業務提携を結びました。

4Dセンサーは独自の技術・手法を用いた高速・高精度な形状・変形・ひずみ計測法を実用化するとともに、動体の3Dスキャンを可能とするOPPA法の開発を進めています。エプソン独自の技術と組み合わせることにより、社会課題への取り組みや製造プロセスの革新などを図る目的です。

【2019年ベンチャーM&A事例】
赤字を計上したベンチャー企業へのM&A事例2選

①株式会社イトクロによる株式会社センジュの譲り受け(譲渡金額:7億円)

 
株式会社イトクロによる株式会社センジュの譲り受け(譲渡金額:7億円)引用元:https://www.itokuro.jp/

株式会社イトクロは、子供向け習い事情報ポータルサイト「コドモブースター」や「comolib(コモリブ)」を運営している株式会社センジュを譲り受けました。

「コドモブースター」は、全国1万以上の子供向け習い事教室を比較検索・体験申し込みができる情報ポータルサイトです。サッカーや野球などのスポーツをはじめ、ピアノ、英会話、学習塾などの定番の習い事からプログラミングまで、様々な教室情報や口コミを提供しています。

また、子供を連れて出かけられる場所をまとめた子育て情報ポータルサイト「comolib(コモリブ)」の運営も行っており、小さな子どもをお持ちの方を中心に両サービスの利用者数は300万人を超えています。(2019年8月時点)

イトクロは、国内最大の学習塾予備校情報ポータルサイト「塾ナビ」や幼稚園から大学までの学校選びに役立つ情報を提供する「みんなの学校情報」をはじめとした、教育関連のポータルサイトを運営しています。

センジュは18年12月期の決算で約5,300万円の赤字を計上していましたが、サービス利用者がイトクロのターゲット層と同一であることから、さらなる教育メディアの強化を目的として本M&Aが実行されました。イトクロは実質的な減益となりますが、来期には「みんなの学校情報」が成長フェーズに入る予定で、その後の成長加速が期待されています。

②株式会社マネーフォワードによる「BOXIL」運営元のスマートキャンプ株式会社の譲り受け(譲渡金額:20億円)

 
株式会社マネーフォワードによる「BOXIL」運営元のスマートキャンプ株式会社の譲り受け(譲渡金額:20億円)引用元:https://corp.moneyforward.com/

株式会社マネーフォワードは、 SaaSマーケティングプラットフォーム「BOXIL」を運営するベンチャー企業のスマートキャンプ株式会社を約20億円で譲り受けました。

BOXILは月間PV数1,000万以上、登録会員数12万人を超える国内最大級のSaaSマーケティングプラットフォームです。(2019年10月時点)しかし、スマートキャンプは2019年の決算で1億900万円の最終赤字を計上しています。

一方のマネーフォワードも2019年の決算では、最終赤字25億円を計上しています。

お互い赤字が続いていますが、マネーフォワードは国内SaaS市場の急成長を踏まえ、SaaSマーケティング事業に参入して収益基盤を強化する狙いがあります。

スマートキャンプを譲り受けることにより、潜在市場規模は約2倍の1.9兆円に及ぶとのことです。

専門家からのコメント(2020年のベンチャーM&Aの展望)

FUNDBOOK M&Aアドバイザー 田中哲

ベンチャー企業がM&Aをするという事例は今後増えていくでしょう。
 
起業家としての成功の形は今までIPOが主流でした。しかしながら海外では既に、IPOに代わる成功の形としてM&Aが注目されています。ご存知の通り、IPOを行い上場できる会社は非常に少数であり、IPOによるイグジットは決して容易くはありません。
 
日本の企業は421万社あるのに対して、上場企業は3808社と、全体のわずか0.09%です。また、日本取引所グループによると昨年のIPO承認件数はわずか90件でしたので、上場審査基準のハードルの高さがわかると思います。
 
もちろん、IPOと比べてM&Aが簡単というわけではないですが、ある程度の利益と技術力、マーケットの環境が揃えば決して可能性が低いわけではありません。自社の現状を把握した上で、今後の成長戦略において「いつM&Aをするのが最適なのか」、機会をつくって考えておくことも大事ではないでしょうか。

まとめ

今後、大企業による最先端の技術を保有したベンチャー企業のM&Aは、ますます身近になるかもしれません。普段の生活をより便利にしてくれるサービスが、M&Aによってどんどん生まれる可能性もあります。

もしかしたら、あなたの所有している技術や開発したサービスが、大企業の目に留まるかもしれません。

今回解説していただいた田中さんの成約事例はこちら
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