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2023/10/03

M&Aで経営者が事業承継を成功させる方法と第二の人生について

M&Aで経営者が事業承継を成功させる方法と第二の人生について

後継者不在のオーナーが、第三者に事業を承継するための手法として注目を集めるM&A(エムアンドエー)。

実際にどのような流れでM&Aが進んでいくかを把握している方は少ないのではないでしょうか。事業承継の手段としても活用されるM&Aの具体的な手順について、流れを理解することは経営戦略としても重要です。

また、後継者問題をM&Aで無事に解決されたオーナー経営者は、その後どのように過ごされているかは、皆さんも気になることかと思います。本記事では事例も含めて、M&Aの流れと事業承継後のオーナーの過ごし方について紹介していきます。

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幸せのM&A入門ガイド
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【主なコンテンツ】
・M&Aの成約までの流れと注意点
・提案資料の作成方法
・譲受企業の選定と交渉
・成約までの最終準備

M&Aによる事業承継をご検討の方に M&Aの基本をわかりやすく解説した資料です。
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賢く事業継承するには?M&Aでおさえておきたい重要ポイント

帝国データバンクが行った「2018年 後継者問題に関する企業の実態調査」によると、調査対象の中小企業、180万社のうち6割以上が後継者不在という調査結果が出ました。こうした後継者問題により、第三者への事業承継としてM&Aが活用されることが増えています。

従業員の雇用、事業を事業承継により継続していくためには、主に5つの手順があります。中小企業庁がまとめた「事業承継ガイドライン」に記載されている5つのステップがその指針となります。

1.事業承継に向けた準備の必要性の把握

後継者への引き継ぎには、準備に5年〜10年ほどかかるといわれています。親族や従業員などの後継者に引き継ぐ可能性がある場合であっても、後継者教育などの準備に要する期間がかかります。そのため、経営者が60歳になった頃には事業承継に向けた準備に取り掛かることが重要です。

2.経営状況・経営課題などの把握「見える化」

事業を後継者に円滑に承継するためのプロセスは、経営状況や経営課題、経営資源など会社の現状を正確に把握することから始まります。貸借対照表などの数字だけでなく、経営環境の変化、知的財産などの資産についても適正に評価し、それらの「見える化」を行うことが大切です。後継者候補の有無や、後継者候補の資質や意思、事業承継に必要となる金銭的な状況の確認も重要です。

3.事業承継に向けた経営改善「磨き上げ」

事業承継は、経営者の交代を機に事業を発展させる良い機会といえます。経営者は、次世代に承継するまで、事業の維持・発展に努め続ける必要があるため、親族内に後継者がいる場合であっても、現経営者は経営改善に努め、より良い状態で後継者に事業を引き継ぐ姿勢を持つことが重要です。

業績改善や経費削減、ブランド力の向上は、M&Aを検討した際に譲受企業からの評価を上げることにも繋がります。

4.事業承継計画の策定とマッチング

親族内承継でも第三者への承継でも、自社の将来性を把握するうえで「事業承継計画の策定」は重要となります。親族や従業員以外の第三者への承継を行う場合は、この計画によって「マッチングの実施」を進めます。事業承継計画の策定は、資産などの現状確認とあわせて会社の理念や経営者の想いを再確認する重要な行程です。

第三者承継であるM&Aを行う場合は、財務や税務、法務などの専門的な知識が必要となる場面が多々あり、自身のみで行うことは難しいといわれています。専門的なサービスを提供するM&Aアドバイザーが所属するM&A仲介会社に相談することが一般的です。

5.事業承継の実行

事前に把握した課題を解消しつつ、事業承継計画やM&Aの手続きに沿って事業承継を実行します。その際、社会状況や経営環境の変化などが生じることがあるため、関係者と意思疎通しながら、柔軟に事業承継計画を修正することも必要です。

ハッピーリタイアを目指すためのM&Aの流れ

経営者が会社や従業員を守りつつ幸せなリタイアを実現するには、M&Aの仕組みを理解し、どのように進んで行くのかを把握しておく必要があります。ここでは、M&A全体の流れについて説明します。

M&Aを行う前の事前準備

まず、達成すべき目的を明確にし、その目的を叶えるうえでM&Aが適切な手段であるかどうかを再考しましょう。事業承継においても、親族への承継、親族以外の従業員などへの承継、そしてM&Aによる第三者への承継の3つの方法に分類できます。

他の選択肢と比較検討しながら考え、どの選択肢が適切か判断することが重要です。また、M&Aの相談先の選定や、自社の利害関係者を把握しておくことはその後のM&Aをスムーズにします。

M&Aの条件について交渉、検討

M&A仲介会社に依頼する場合、仲介契約や秘密保持契約を締結し、どのようなスキームでM&Aを行うのか、希望する条件などを洗い出した上で、会社の情報を仲介会社に提出します。

その後、仲介会社によって譲受企業への打診が行われ、双方の意向が合致すれば、ネームクリアの後に企業概要書の提出を行い、両企業の経営者によるトップ面談が行われます。ここでは、書面ではわからないM&Aへの姿勢や守りたい条件、相手企業の雰囲気、人柄などさまざまなことをお互いに理解する場となります。

その後、M&Aを進める場合、譲受企業は意向証明書を提出します。そして譲渡企業、譲受企業の合意のもと基本合意を締結することになります。基本合意を締結すると、基本的に相手のみとの交渉を約束する独占交渉権が発生します。

M&Aの契約締結

譲渡企業に対して譲受企業がデューディリジェンス(買収監査)を行い、財務内容などの情報が正しいか、法的リスクはないかなどを専門家に依頼して確認をすることになります。

その結果を受けて条件や価格の調整を行い、最終契約の締結へと進みます。譲渡対価の決済や株券や会社代表印などの引き渡しなどがすべて終了して、クロージングとなります。

M&Aでは、契約書の作成や買収監査、クロージングといったさまざまな場面で、法律、財務、税金といった専門的な知識を必要とします。M&Aを検討する際は、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼することをお勧めします。

M&Aの契約締結

M&Aのサポートをしてくれる専門家とは?

M&Aを進めるには、さまざまな専門知識が必要になります。そのため、専門家に相談しながらM&Aを進めることが一般的です。ここではM&Aの相談ができる専門家や業者について説明します。

M&A仲介会社

仲介会社は譲渡企業と譲受企業の間に入り、M&Aを成約に導くための仲介業務を行います。M&A仲介会社の特徴は、原則として当事者双方に対して中立的かつ客観的である点です。またM&Aをクロージングまで一貫して支援することが多く、経験とノウハウを備えたM&Aアドバイザーが在籍しています。

FA

基本的にFAはM&Aの当事者のどちらか一方に対して、M&Aの成立に向けた助言業務を行います。FAの特徴は譲渡企業もしくは、譲受企業のどちらかとのみ契約をし、その企業の利益を最大限に考え、解決策を提示することです。

条件面で妥協することなく、理想通りのM&A実現を後押しすることがメリットとして挙げられます。同時に、それぞれにつくFAが双方の妥協できない条件を出し合って交渉を行うことで、条件がまとまりにくい、もしくは時間がかかる点がデメリットとして考えられま

金融機関

銀行や証券会社といった金融機関の特徴として、会計に関する知識を持っていることや、紹介できる企業の多さが挙げられます。M&Aの専門部署を持っていることもあるため、M&Aに関する高い専門性やノウハウを持っていることもあります。

会計士・税理士

M&Aでは、財務諸表の確認や企業価値の算出、税金の計算など会計や税務の知識が必要になります。そのため税務や財務上で発生した課題解決が見込めます。

商工会議所・自治体

地域に密着した情報や地元の企業のネットワークを保有しているため、地元の相手を探しやすいメリットがあります。また、商工会議所や自治体によっては、中小企業を支援するための助成金や補助金を提供していることもあります。

M&Aにかかる費用

M&Aを行う際にかかる費用は、M&Aアドバイザーに支払う仲介手数料・報酬や、デューディリジェンスの調査費用が挙げられます。ここでは、M&Aアドバイザーに支払う仲介手数料や税金について説明します。

M&Aコンサルティング会社に依頼した場合は仲介手数料がかかる

M&Aアドバイザーへの依頼にかかる料金としては、サポートを依頼した時点で発生する「相談料・着手金」や「月額報酬」「中間報酬」「成功報酬」があります。

相談料・着手金

M&A会社と契約を締結した際、最初に発生するのが相談料・着手金です。近年の傾向では着手金が無料という会社も多くあります。このように着手金がかからない会社もあるため、金額的には無料~数百万円とかなりの幅があります。

月額報酬

着手金のほかに、M&A成立時までに毎月支払うのが「月額報酬(リテイナーフィー)」です。毎月定額の場合もあれば業務内容に応じて支払う場合もあり、また月額報酬のかからない会社もあります。目安としてはこちらも無料~数百万円と幅があることが特徴です。

中間報酬

相手先が見つかり、M&Aの基本合意を結んだ時に支払うのが「中間報酬」です。一般的には、成功報酬の10~30%程度が発生します。

成功報酬

M&Aが成約し、M&Aの最終契約を締結した時点で発生するのが「成功報酬」です。成功報酬の金額は、一般的にレーマン方式という計算方法を採用しているところがほとんどです。この方式の場合、譲渡金額が高額になるほど、段階的に報酬料率は上がります。

取引金額報酬料率
5億円まで5%
5~10億円まで4%
10~50億円まで3%
50~100億円まで2%
100億円超1%

そのほか、M&Aの費用の内訳について詳しく知りたい方はこちらもご参照ください。

▷関連記事:M&Aの費用の相場・目安は?会計処理や仕訳、税務面まで解説

また、費用に加えて、M&Aにかかる税金について詳しく説明致します。

株式譲渡にかかる税金

M&Aの一般的な手法である株式譲渡では、株式の売却時に譲渡所得が出た場合には、その譲渡所得に対する税金である「譲渡所得税」がかかります。

①総収入金額(譲渡価額)-②必要経費(取得費+委託手数料等)=③譲渡所得

①総収入金額(譲渡価額)

株式の譲渡対価として得られる金額です。株主と譲受企業両者の協議のうえ、合意をして決定します。

②必要経費(取得費+委託手数料など)

売却する株式を取得した際にかかった「取得費」や、仲介会社などに支払う「委託手数料」などが、必要経費として認められます。

取得費
会社を設立した際に出資した資本金などが該当します。
取得費の算出が難しい場合には、譲渡価額の5%を「概算取得費」として処理することも可能です。

委託手数料

譲渡の際にM&A仲介会社などに依頼した場合に仲介会社などに支払う仲介手数料などが該当します。

③譲渡所得

①の総収入金額から②の必要経費を引いた残りの金額が譲渡所得となります。

株式譲渡に掛かる税金は、この譲渡所得から求めます。譲渡所得にかかる税金は20.315%(所得税および復興特別所得税15.315% + 住民税5%)となり、下記の式で納税する金額が求められます。

③譲渡所得 x 20.315% = 譲渡所得税

例えば株式譲渡で1億円の譲渡所得を得た際には、2千万ほどの譲渡所得税が発生します。

後継者問題をM&Aで無事に解決されたオーナー経営者は、その後どのように過ごされているかは、皆さんも気になる点かと思います。本記事では実際に弊社で担当した企業事例も含めて、事業承継後のオーナーの過ごし方についてご紹介していきます。

株式譲渡にかかる税金

従業員を幸せにするM&AのポイントはPMIを上手に行うこと

M&A業界にはPMIという言葉があります。PMIとは「Post Merger Integration」の略で、M&Aが終了した後の経営統合のプロセスを指します。元々別個であった会社を一つにまとめるM&Aには、擦り合わせるべき様々な事案が発生します。M&Aが成立して事業承継が完了しても社風や仕事の進め方等が揃わないままだといずれ破綻をきたします。そのような点では、M&A(事業承継)成功の可否はPMI(M&A後の統合プロセス)の可否に懸かっていると言えます。

そして、PMIをうまく行えるかは譲渡企業と譲受企業のオーナー同士がいかに円滑に引き継ぎを行うかがカギになっているのです。自分が引退するだけで終わらせるのではなくて自分が大切な従業員、そして従業員らと作り上げてきた事業をうまく継いでもらうためにも、M&Aを終えても引継ぎを終らせるまで会社に残るケースがほとんどです。

▷関連記事:PMIとは?M&A成立後の統合プロセスについて株式譲渡を例に解説

事業の引き継ぎを終えたら。経営者の「第二の人生」

引き継ぎを終えた後はどのような人生を過ごすのでしょうか。事業承継を行った後に、第二の人生を家族と過ごす方や、事業承継後も会社に残り、企業の成長に尽力する方、獲得した譲渡利益をもとに、新たな事業を立ち上げる方など、M&A後の選択肢は経営者によって千差万別です。以下では、クロージング後の経営者の人生の選択についてご紹介します。

M&A後も会社に残るケース:従業員とともに大好きな教育の仕事に関わる

事業承継後も会社に残るオーナーも少なくありません。有名大学を出て、外資系金融機関で勤めた後、かねてより興味のあった英会話教室を開校したNさんもその一人です。

駅前という好立地と講師陣の丁寧な授業解説によって、とても賑わっていました。しかしNさんの目標は常に高く、思い描く理想の教育を行うためには、単なる一企業として限界を感じ、以前から気になっていた M&A を行うことを決断しました。とはいえ、目標を持って経営に携わっていたため、M&A 後も自分が業務に携わること、そして従業員を当面雇用し続けることを条件にパートナー企業を探しました。

成約相手は有名な上場企業。M&A による新規事業の展開を模索しており、Nさんの会社はまさに理想だったそうです。契約もとんとん拍子で進み、あっという間に成約となりました。事業承継した後はパートナー企業からの資金をもとに自分の理想の教育を実現すべく、日々邁進しているそうです。

M&A後に会社に残らないケース:家族との時間を増やす

① 引退後、妻と二人で世界一周旅行

長野県の小さな町工場をお父様から継いだSさんは、奥様と二人順調に経営していました。しかしある時腰痛を患ってしまい、前線で活躍するのが厳しい状況に。夫婦二人とも60歳を超え、2人の子どもは名の知れた大企業に就職。順調に出世しているようで、今さら戻ってくる気もないようですし、業界再編によりこれからの経営難が予想される中、無理にお子様に継がせたくはないとお考えになったようです。しかしSさんのお父様の代から続いてきたこの会社を潰したくないとのこと。

負債もさほどなく、業績も好調だったため、譲受企業が殺到し、結果としてSさんも予想しなかったほどの金額で事業承継することが可能となりました。無事引継ぎもひと段落し、時間ができたSさんご夫妻はここまで頑張ってきたお互いへの労いも含め、世界旅行に行きました。奥様が大好きなウィーンに行きミュージカルを楽しんだ後、ヨーロッパを3か月かけて回り、これからアジア圏を回るご予定とのことです。

② 会社を売却し、支えてくれた家族に恩返し

人材紹介会社を経営しているYさんは誰もが知っているエリート企業に入社し、トップセールスマンになった後すぐ独立した天才肌の方です。Yさんの会社のサービスは、ありそうでなかったもので、競合他社の盲点もついており、独自に作成したアルゴリズムは業界問わず注目されていました。しかし、技術は非常に優れていましたが営業力が弱く、じりじりと業績は悪くなる一方。経営は苦しい方向へと傾き始めました。

家族から「応援しつづけるから頑張ってね」と言われ、家族と自分のプライドを守るために頑張り続けましたが、会社が上手く回らず、夜も眠れない日々が続いているとき、事件は起こりました。自分を支えてくれていた奥様が病気で倒れてしまったのです。

すぐに快方に向かったものの、自分の大切な人との時間をもっと取りたいと考えたSさんは、会社と家族の将来について考え始めました。弊社がSさんの会社のパートナー企業として推薦させていただいた会社は営業力が高く、Sさんが開発したアルゴリズムにとても関心を持ち良いシナジーが双方見込めると、めでたく成約となりました。無事に引継ぎを終え、自宅も会社名義から個人名義に変更した後は今まで自分を支え、後押ししてくれたご家族にために時間を使っています。最近のSさんの楽しみは週に一回の奥様とのデートと、ご子息との野球観戦だそうです。

事業承継後の人生はさまざま

ここで上げたのはほんの一例にすぎませんが、M&Aによってハッピーリタイアを実現し、第二の人生を送ることができます。後継者がいない、そろそろリタイアをして新しい人生を過ごしたいとお考えの方は一度、事業承継について検討してみてはいかがでしょうか。弊社では無料であなたの会社の状況診断を行っています。会社状況を客観的に把握することは今後の経営人生にとっても大きな判断材料となります。ぜひご連絡ください。

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