「出張や旅行先でホテル・旅館を検索してもどこも満室で空いていない」と、宿泊先探しに困ったことはありませんか?

近年、訪日外国人の増加により東京や大阪などの大都市を中心とするホテルの満室状態が続いています。2020年の東京オリンピック時にも「ホテルの空きがない」といった理由で訪日外国人を取りこぼしてしまわないかが懸念されています。そのうえ、ビジネスホテルなどの宿泊主体型ホテルの増加や民泊の参入により、宿泊業界はより熾烈な販売競争が繰り広げられ、宿泊料金の上昇に歯止めがかかっていないのが現状です。このような市場動向に伴い、世界的なブランド力を誇る外資系ホテルやメイドインジャパンのおもてなしを掲げる国内老舗旅館など、ホテル・旅館を対象としたM&Aの動きは活発化しています。本記事では、M&Aに焦点を当てて宿泊業界の事業展開や後継者問題などをわかりやすく解説します。

~目次~
ホテル・旅館業界とは?最新の業界動向を紹介
中国企業のM&Aによる日本進出
国内におけるM&A事例
日本企業の海外企業に対するM&A事例
番外編:異業種の参入
専門家からのコメント
まとめ

今回話を聞いたM&Aアドバイザー


FUNDBOOK M&A 金田 祥一

金田 祥一

株式会社FUNDBOOK
営業戦略本部 エグゼキューション部
アソシエイト

早稲田大学政治経済学部卒業後、2010年に株式会社みずほ銀行に入行。中堅中小企業の法人営業に2年間従事し、2012年よりアセットマネジメントOne株式会社にて国内株式ファンドマネジャーとしてアクティブファンドの運用業務に携わる。その後みずほ証券株式会社に入社し、投資銀行部門にて主に上場企業のM&Aアドバイザリー業務に従事。2018年12月より当社参画。日本証券アナリスト協会 検定会員(CMA)。

宿泊業界(ホテル・旅館業界)とは?最新の業界動向を紹介

旅館業法によると、「旅館業」とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」を指します。

旅館業にはホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業及び下宿営業の4種があります。「ホテル営業」と「旅館営業」は、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業*1及び下宿営業*2以外のもの」という点で共通し、それぞれの違いは、構造及び設備が洋式であるか和式であるかという点です。

ホテルは、主として洋式の構造および設備を有し、客室10室以上、入浴設備、水洗式トイレ、暖房設備を有している施設を指します。一方、旅館は和室の構造施設を有し、客室5室以上、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有することと定められています。

2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響から、宿泊業界は長らく低迷していました。しかし近年では、震災からの復興が進んだことや2020年の東京オリンピックの開催、2025年の大阪万博の開催の決定などにより、再び活況を迎えています。日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客数の動向」によると、2017年の訪日外客数は2,869万1,073人と、前年と比べて19.3%増加の伸び率となり、過去最高を記録しています。

このような国内の宿泊需要の拡大に伴い、ホテルは施設数・客室数ともに増加の傾向にあります。しかし依然として続く東京・大阪エリアの客室不足などを背景に、外資系ホテル、異業種からの参入・新規出店拡大も進んでおり、競争は熾烈化しています。一方で、旅館の施設数は減少傾向にあります。厚生労働省の「平成29年度衛生行政報告例の概況」によると、2017年の旅館営業数は3万8,622施設と2016年から867施設の減少となりました。

*1 簡易宿所営業:旅館営業の基準に達しない4部屋までの施設や、2段ベッドなどの階層式寝台を設置している施設のこと。具体的に、民宿やカプセルホテル、山小屋などが挙げられる

*2 下宿営業:施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業のこと

参考URL:旅行業法概要
参考URL:訪日外国人の動向
参考URL:衛星行政報告例の概要
参考URL:宿泊・ホテル業界の動向

中国企業のM&Aによる日本進出

中国企業が温泉旅館を譲受けるワケとは?

昨今、創業から100年以上のおもてなしを受け継いできた老舗の旅館が減少しつつあります。

帝国データバンクがまとめた「老舗企業の倒産・休廃業・解散の動向調査」によると、2017年、創業100年を超える老舗企業は日本に約2万8,000社。後継者のいない老舗企業も多く、廃業件数は過去最多の461件でした。特にホテル・旅館の廃業は18件にも及び、業種別に見ると、2000年度以降の18年間のうち7度も最多の廃業件数となっています。

日本のホテル・旅館の廃業が増加する中、そこに注目したのが中国人投資家でした。2020年の東京オリンピックの開催や交通の利便性、生活・文化水準の高さ、清潔さ、中国からの距離、利益率、日本では外国人の不動産買収が禁止されていないことなど、中国企業にとって日本企業は大変魅力があります。中国企業は長年培われてきたメイドインジャパンのサービスを訪日外国人向けに特化させることで、一気に企業価値を高めていく見込みです。

参考URL:老舗企業倒産・休廃業・解散の動向調査
参考URL:「投資」だけが目的じゃない!?中国人はなぜ日本の温泉旅館を「爆買い」するのか―中国メディア
参考URL:中国人富豪たちの仰天告白「間もなく日本で中小企業を爆買いします」

中国企業が日本の温泉旅館を再建!?

中国人が日本の旅館を購入する目的は、利益を出すことだけではありません。中には経営に行き詰まった日本企業が中国企業に救われるケースもあります。

ホテルみかわは新潟県阿賀町が100%出資する第三セクター*3で、オープンから24年間赤字が続き、負債は7000万円を超えていました。経営難に陥ったホテルみかわを救ったのが中国資本の日本法人、日本山嶼海株式会社です。


引用:http://hotel-mikawa.com/

ホテルみかわは、旧三川村(のちに合併し現在は阿賀町)が竹下政権のもと行われた「ふるさと創生事業*4」による交付金を活用し、温泉を採掘したことがきっかけで1994年7月に開業しました。源泉掛け流しの大浴場や露天風呂、フィットネス施設、回流式の温泉プールを備えており、オープン当初は地元の人々で賑わいましたが、人口の減少とともに利用客も減少が続きました。

同ホテルを譲り受けた日本山嶼海は、中国・上海に拠点を置く旅行会社です。2017年1月、土地と建物を譲り受けた日本山嶼海は、本格的な経営改革に乗り出しました。老朽化した温泉の改修や中国人客のツアーなどを計画し、訪日外国人の獲得を見込んでいます。

*3 第三セクター:元々は地域開発や新しい都市づくり推進のため、第一セクター(国や地方公共団体)と、第二セクター(民間企業)が共同出資して設立された事業体のこと

*4 ふるさと創生事業:1988年から1989年にかけて、当時の総理大臣、竹下登氏が地域の振興をはかるため全国の市町村に対し、一律で1億円を交付税措置した政策

参考URL:日本も見捨てた温泉街を中国が買収、再生の行方に注目
参考URL:新潟の第三セクター「ホテルみかわ」、中国資本の日本法人が買収へ

国内におけるM&A事例

旅館の再建 大江戸温泉物語による旅館の再生


引用:http://www.ooedoonsen.jp/

日本の旅館の現状

昨今、宿泊需要が高まる一方で、そのニーズを取り込めていない旅館の姿が浮き彫りになっています。観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、2018年10月の旅館の宿泊施設タイプ別の客室稼働率全国平均は、シティホテルの81.9%、ビジネスホテルの79.2%、リゾートホテルの61.4%と比べて旅館は43.0%と、極めて低い水準となっています。

参考URL:宿泊旅行統計調査

大江戸温泉物語による旅館の再生

大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社は、2001年11月に創業しました。2007年から全国で温泉施設を運営しており「お台場大江戸温泉物語」をはじめ全国に30以上の施設を所有しています。同社は、経営が難しくなった地方の温泉旅館を取得し、再生するビジネスモデルで成長を続けています。2010年頃には四国の「レオマワールド」や、「ホテルニュー岡部」など、経営が立ち行かなくなったホテルや旅館などを格安旅館として再生する事業が注目を集めていました。

ホテル木曽路 リニューアルオープン


引用:http://kisoji.ooedoonsen.jp/

最近では長野県南木曽町の「ホテル木曽路」が大江戸温泉物語の35ヵ所目の施設として2018年8月にリニューアルオープンしています。

「ホテル木曽路」の元運営会社である特殊精砿株式会社は、ホテル経営のほかドライブイン「木曽路館」、オートキャンプ場、ホテル別館「桜苑」の経営を手がけていました。しかし、2014年に起きた長野県南木曽町の土石流災害や、御岳山の噴火の影響からドライブインを閉鎖したことなどにより、十分な資金繰りが困難になりました。特殊精砿はホテル事業の再生を目指し、2018年1月、会社分割により同事業を株式会社ホテル木曽路温泉に譲渡。2018年4月に大江戸温泉物語がホテル木曽路を譲り受けました。

参考URL:観光ホテル「ホテル木曽路」などを展開、ホテルは他社が経営へ
参考URL:大江戸温泉物語 長野県南木曽町の『ホテル木曽路』を取得
参考URL:大江戸温泉物語 ホテル木曽路 2018年8月1日 グランドオープン

大江戸温泉物語 外資系ファンドが全株式取得(2015年)

2015年2月、株式会社大江戸温泉ホールディングスは米国の大手投資ファンドのベインキャピタルに全株式を譲渡しました。

ベインキャピタルは全世界で総額750億ドルを越える運用資産を持ち、2006年に日本オフィスを開設しています。株式会社すかいらーくホールディングスを2011年に譲受し、経営を立て直した実績があることでも知られている世界最大級の投資会社です。

今後は、すかいらーく社への経営支援を通じて培った経験と実績を最大限に活かし、訪日外国人の需要の獲得も見据えた顧客マーケティングの強化、全国各地への大江戸温泉物語の新規出店加速、アジアを中心とした海外展開を通じた成長戦略を進めるとしています。

参考URL:ベインキャピタル、「大江戸温泉物語」の全株式取得で合意
参考URL:日本初の温泉リート 5年を目途に1,000億円超え目指す

名宿も抱える後継者問題 九州屈指の高級旅館「海里村上」


引用:https://okcs.co.jp/

株式会社温故知新による「海里村上」の事業承継(2018年8月1日)

2018年8月、株式会社温故知新は、九州屈指の高級旅館「海里村上」の事業を承継し、運営を開始しました。温故知新は、ミシュランガイドに掲載されている5レッドパビリオン(最高評価)のホテルのうち、国内系唯一の存在である「瀬戸内リトリート青凪」を運営しており、海里村上は同社として2つ目の直営施設となりました。

「海里村上」ってどんな旅館?


引用:https://www.kairi-iki.com/

長崎県壱岐に位置し湯本湾を望む海里村上は、かつて福岡の財界人が資金を出し合って作られた特別な会員制施設でした。2006年に前オーナーが同施設を譲受け、旅館「海里村上」としてリニューアルオープンしました。海を一望する源泉掛流しの露天風呂や、天然の黒アワビやウニをはじめ、新鮮な魚介類や壱岐牛を堪能できる料理などが評判を呼び、2009年度にはJTBのサービス優秀旅館・ホテルにて最優秀旅館賞を受賞をしています。

なぜ「海里村上」は事業承継をしたのか

九州で指折りの名旅館と評されていた海里村上は、決して業績不振ではありませんでしたが、前オーナーが体調面を理由に引退を決意し、突如後継者不在が課題となってしまいました。海里村上は前オーナーの「海里村上の良さを理解し、さらに磨き上げてくれるような人に売却したい」という考えのもと、売却を進めることとなりました。

▷関連記事:M&Aの事業譲渡とは?株式譲渡や会社分割との違いからメリット・デメリットまで解説

事業承継後も守られるオーナーの想い

海里村上は、2018年8月1日をもって温故知新が運営を承継し、継続して運営されています。海里村上の建物やスタッフ、取引先などはそのまま引き継がれ、前オーナーが大切にしてきた「すべてにほんのもの」「おもてなしの姿勢」などは、そのまま旅館の精神として残り続けることになりました。温故知新はオーナーの大切にしてきた部分を守りながら、時代に合わせた運営手法を導入していくことで、地域の「誇り」になるような宿へと磨き上げていくでしょう。

参考URL:九州屈指の高級旅館海里村上を温故知新が事業承継

日本企業の海外企業に対するM&A事例

国内市場と世界市場を比べてみると、海外市場は国内の10倍程の規模となっています。近年、外資系ホテルの展開が東京や大阪、名古屋などの大都市のみならず広島や沖縄、京都など、他地域にも広がりを見せているように、日本の企業も海外に進出し、規模を拡大しています。「あの海外の有名ホテルって日本の企業が経営しているの?」と意外に思うような事例を紹介します。

ハワイのハレクラニを経営しているのは三井不動産!?


引用:https://www.halekulani.jp/

ハレクラニはハワイを代表する老舗ホテルのひとつです。ハレクラニがあるワイキキビーチの側には、歴史のある名門ホテルや巨大ホテルが軒を連ねています。「モアナ・サーフライダー」や「ザ・ロイヤル・ハワイアン」、「シェラトン・ワイキキ」、「ハレクラニ」と名門ホテルが並びますが、これらのホテルはすべてM&Aを経て現在があります。その中のひとつ、ハレクラニはなんと日本の企業が所有しているホテルなのです。

1981年、三井不動産が譲受け


引用:https://www.mitsuifudosan.co.jp/

ハレクラニは、1883年にロバート・ルワーズ氏が2階建てのビーチハウスを建てたことが始まりです。1917年にホテル「ハレクラニ」として創業を開始し、ハレクラニの創設者クリフォード・キンバルの死後、残された妻とその2人の息子がビジネスを引き継ぎました。1962年の妻ジュリエット・キンバルの死後、息子たちはホテルをシアトル出身の資産家ノートン・クラップ家に譲渡。そして1981年、三井不動産株式会社がハレクラニをクラップ家から譲り受け、新生ハレクラニとして1984年にオープンしています。

「ハレクラニ沖縄」開業

2017年、ハレクラニは創立100周年を迎えました。三井不動産はこの節目の年に、ハレクラニと縁が深い日本、その中でも随一のオーシャンリゾートである沖縄に、2つ目となるハレクラニの開業を発表しました。「ハレクラニ沖縄」の開業は2019年7月26日に決定し、宿泊予約の受付は、2019年2月より開始する予定です。

参考URL:ハレクラニの魅力
参考URL:2019年7月26日「ハレクラニ沖縄」開業

HISがホテル事業で台湾に進出!?


引用:https://www.hishotelgroup.com/

2017年5月、株式会社H.I.S.ホテルホールディングスは、台湾最大手のGreen World Hotels Co.,Ltd.(以下GWH)を第三者割当増資により子会社化しました。

H.I.S.ホテルホールディングスは株式会社エイチ・アイ・エスの子会社です。ホテル事業を行っており、最先端技術を導入しワクワクと心地よさを追求したロボットホテル「変なホテル」を中心に事業展開しています。一方、GWHは台湾市内に16軒のホテルを経営している、台湾大手ホテルチェーンです。

世界初のロボットホテル「変なホテル」が海外へ


引用:https://www.hennnahotel.com

H.I.S.ホテルホールディングスはGWHを子会社化したことにより、台湾市内にある16軒のホテルを手にしていますが、そのうちの1軒を変なホテルに改装する予定です。H.I.S.ホテルホールディングスは、エイチ・アイ・エスの旅行事業とのシナジーを強化するにとどまらず、変なホテルをはじめとした日本国内で培った効率的なホテル運営やマーケティングのノウハウを活用し、ホテル事業の収益拡大を海外においても図っていきます。

2018年10月3日には、東京の玄関口である羽田空港の近くで「変なホテル東京 羽田」をオープンし、変なホテルの運営施設は合計9件となりました(2018年12月現在)。H.I.S.ホールディングスは今後5年間で国内外100軒の自社展開を目指しています。

▷関連記事:第三者割当増資のメリット・デメリットとは?増資全体のメリットとともに解説
▷関連記事:譲渡企業側こそ意識しよう。企業選定で欠かせないポイント「シナジー効果」とは

参考URL:「変なホテル」海外へ、子会社化で台湾に進出(HISグループ)

異業種の参入 

「ニトリ」が宿泊業!?その狙いとは?


引用:https://www.nitori.co.jp/

近年、楽天株式会社が携帯電話事業に、ダイソン株式会社がEV(電気自動車)市場に乗り出すなど、異業種への参入のニュースが様々な業界で増加しています。これは宿泊業界においても例外ではありません。昨今の訪日外国人の増加による国内の宿泊需要の拡大に伴い、近い将来に自社事業の市場が縮小することを見込んで、成長が著しい宿泊業界へ新規参入を図る企業が多くあります。ここで紹介する株式会社ニトリも、近年宿泊業界に参入した異業種のひとつです。

ニトリは『「お、ねだん以上。」の価値を』で知られる家具業界最大手の企業です。ホームファニシング事業のみならず、ショッピングモール事業やリフォーム事業など多彩な事業を展開しています。

ニトリが宿泊業に参入!創業の地・北海道でミシュランガイド4つ星高級旅館を譲受け(2018年8月20日)


引用:https://www.ginrinsou.com/

ニトリは、2018年8月、小樽の老舗料亭・温泉旅館「銀鱗荘」の所有権を、株式会社銀鱗荘及び東名観光開発株式会社から取得しました。

銀鱗荘は1939年に創業。平磯岬の高台に立つ建造物は、日本でただひとつの温泉付宿泊施設の鰊御殿*5として歴史的価値も高く、小樽を代表する旅館として永年親しまれています。ミシュランガイドの旅館部門では2回連続4レッドパビリオン(4つ星)を獲得しています。

2018年8月20日よりニトリの子会社の株式会社ニトリパブリックが旅館の運営を引き継ぎ、運営を開始しました。ニトリは、北海道文化財百選のひとつにも数えられ、宿泊施設としても第一級の銀鱗荘において超一流のサービスを提供し、道内外をはじめ海外からも観光客を招き入れていくことを目指しています。ニトリはこのM&Aを通じて、創業の地である小樽エリアでの観光発展に寄与することを狙いとしています。

*5 鰊御殿:第二次世界対戦前に北海道の日本海側に建てられた網元の住宅兼番屋

参考URL:「銀鱗荘」事業承継についてのご案内
参考URL:第47期中間株主通信
参考URL:銀鱗荘『道民割引プラン』のご案内

専門家からのコメント

FUNDBOOK M&A 金田 祥一

近年宿泊業界は、インバウンドでの観光客の増加などの影響もあり外国人宿泊客が増える一方、宿泊施設では人手不足が顕著に現れています。そのため、人材を確保するために外国人を雇用したり、地方では本業とは別に旅館業務の手伝いを行っている人もいるという状態です。
 
また、地方のホテルや旅館は人気の観光地や知名度のあるところでもない限り、固定の宿泊客を確保するのは難しいといった状況となっています。旅館業は、土日に関しては観光客などの一定の集客を見込むことが可能です。しかし平日に関しては、観光客などの集客が困難なケースが多く、必然的に稼働率が低くなってしまいます。また、地方のシティホテルでは大規模な宴会や結婚式を行うための大きなスペースを持っていることが多いですが、最近ではホテルがそのような役割を持たなくなっており、場所だけが残ってしまうということが起きています。
 
このような状況の中で、施設の修繕費や人件費に資金を回すことができず、施設の老朽化や人材不足が進行してしまうケースが多く見られます。その結果、宿泊客の減少にも繋がり、稼働率が下がる原因にもなり得ます。

 
これらの問題を解決するために、地方のホテルや旅館では事業再生のための選択肢の一つとしてM&Aが行われています。M&Aを行い大手のホテルや旅館に譲り受けてもらうことで、タオルやシーツといったリネン類や食材を一括で仕入れることが可能となり、その結果、ランニングコストを抑えることができます。また、食事の提供方法や業務の機械化など、譲受企業の成功ノウハウを活用することで業務の効率化や人員削減を図ることもできます。実際に今回紹介した事例のように、M&Aを実行して大幅なコストダウンを実現させたことにより、事業の再生を実現した企業も多くあります。

 
最後に今後の宿泊業界の展望ですが、インバウンドでの観光客の増加などの影響によって東京や大阪などの大都市を中心に観光客の増加がますます見込まれます。そのため、都市部に観光客が集中し、宿泊価格も上昇が続き、宿泊業界の競争はさらに熾烈化していくことでしょう。今後の施設運営や設備投資などに不安がある経営者様は早めにM&Aを検討してみてはいかがでしょうか。
 

まとめ

近年、震災からの復興が進んだことや2020年の東京オリンピックの開催、2025年の大阪万博の開催の決定などにより、再びホテル・旅館の宿泊業界は活況を迎えています。訪日外国人の増加による国内宿泊需要の拡大に伴う都市部の客室不足などを背景に、外資系ホテルや異業種からの参入・新規出店拡大が加速しています。しかしながら、その一方でニーズを取り込めていない旅館の姿が浮き彫りになっています。

今後さらに旅館・ホテル業界の競争が熾烈化し、生き残りをかけて新たなビジネスモデルを探る挑戦が求められる中、M&Aは有効な武器となり得ます。