M&A 個人

M&Aは、大手企業の間で行われることも少なくありません。M&Aの実行においては、会計や法律、税金などの幅広い専門知識が必要になるため、小規模の企業や個人事業での実行は難しいと考えられる方も多いのではないでしょうか。

しかし、昨今では小規模なM&A向けの支援サービスが充実し、中小企業同士や個人によるM&Aが増えています。M&Aによって後継者問題の解決、従業員の承継、新規事業への参入、既存事業の強化など多くのメリットが企業規模に関わらず期待できます。

本記事では、個人向けM&A案件の探し方から、個人でM&Aする際の注意点、個人による事業譲渡の事例まで、個人向けM&Aについて詳しく説明していきます。

個人事業など小規模案件のM&Aが増えている

中小企業によるM&Aの件数は年々増加しています。2017年の中小企業庁の発表では、中小企業のM&A成約数は、2017年には526件と2012年の157件から3倍以上の件数となりました。このように中小企業のM&Aは年々活発化しているのです。

中小企業など小規模のM&Aが増えている背景

中小・個人企業のM&Aの増加には経営者の高齢化による事業承継問題が背景にあります。現在、企業経営者の年齢分布は高齢化の一途を辿っています。2019年の帝国データバンクの調査によると、全国の経営者の平均年齢は59.7歳(前年度+0.2)で過去最高齢の結果でした。

経営者の高齢化が進む中、2016年の日本政策金融公庫総合研究所の発表によると、60歳以上の中小企業の経営者のうち50%超が廃業を予定していると回答しています。廃業の理由として「子供に継ぐ意思がない」、「子供がいない」、「適当な後継者が見つからない」などの後継者難を理由にする廃業が合計で28.6%です。

また中小企業庁の発表では、2015年時点の直近10年で親族内承継の割合が急減しています。親族内承継の割合34.3%に対し、社外の第三者に承継する割合が39.3%を占めています。そのため、中小企業・個人によるM&Aは、経営課題や後継者問題の新たな選択肢になっているといえるでしょう。

また、ITベンチャーなどのエグジット戦略として、IPO(新規株式公開)だけではなくM&Aという選択肢をとるケースが徐々に一般化していることも、M&Aの増加の要因でしょう。

▷関連記事:IPO(新規上場)とM&Aの違いとは?エグジットの手段としてのメリットとデメリット
▷関連記事:中小企業のM&A 企業の合併・買収をアシストする仲介会社の役割とは

個人がM&Aを実施する方法とは

M&A検討 経営者

個人がM&Aを実施する際には、「仲介会社」、「マッチングサイト」、「事業引継ぎ支援センター」や「商工会議所」などが活用できます。

▷関連記事:M&Aで企業が選ぶべきは仲介会社やFA、マッチングサイトのどれ?

個人向けM&Aの小規模案件の探し方

  • 仲介会社
  • 譲渡企業と譲受企業の間に入り、M&Aの仲介を行う会社です。譲渡側と譲受側の双方が納得するようなM&Aを行うため、利害関係者が納得するような助言を行い、M&Aを成約に導きます。法律、税金などの専門的な知識を持ったM&Aアドバイザーによって、M&Aの相談から成約までサポートを得られるというメリットがあります。また、譲渡企業か譲受企業の一方に着き、一方の利益のを最大化を考えたサポートを行う場合はアドバイザリー方式とよばれます。

    ▷参考:M&Aサービス(譲受をご希望の方)
    ▷関連記事:M&A仲介会社とは?業務内容をFAと比較しながら紹介

  • マッチングサイト
  • M&Aの相手企業を見つけることを目的としたマッチングサイトは、サイトを運営する企業は基本的には譲渡価格の交渉や手続きに介入しないため、手数料が安価であり、企業同士の直接交渉ができるメリットがあります。その一方で、交渉や手続きを自社で行う必要があるため、法律、税金などの専門知識が必要となります。

  • 事業引継ぎ支援センター
  • 中小企業庁が各都道府県に設立している事業引継ぎセンターでは、金融機関やM&A支援サービス会社などでの勤務経験のあるスタッフに基本的に無料で相談できます。場合によっては、相手企業が決まった後も契約書の作成など手続きの面で支援してもらえることもあります。

  • 商工会議所
  • 商工会議所にも、事業承継の相談機関が設けられています。地元企業のネットワークを保有するため、地域企業に強い相談先として活用できます。しかし、全国すべての商工会議所に設けられているわけではないことや、多くの場合、相手探し後の登記や税金の処理の手続きは相談することができない点は注意が必要です。

    ▷関連記事:個人事業M&Aを成功させる方法や具体的なM&Aの手続きの流れ
    ▷参考:事業承継・M&A譲渡案件一覧

    個人でM&Aする際の注意点

    M&A 調べる人

    個人事業主が事業を譲渡する場合には、法人企業の手続きとは異なる独自の手続きが必要になるなど、いくつかの注意点があります。ここでは個人のM&Aでの注意点について解説します。

  • 個人M&Aで活用可能な手法
  • M&Aには複数の手法が存在し、会社の状況などに応じて使用する手法が異なります。一般的な企業と異なり株式を発行していない個人の場合、「事業譲渡」のスキームが使用されます。

  • 必要書類
  • 個人事業を譲渡する際は「個人事業の廃業提出書」を所轄の税務署に提出する必要があります。提出期間は譲渡による廃業後1ヶ月以内です。また、譲受側が法人ではなく個人事業として承継する場合は「個人事業の開業提出書」を所轄の税務署へ提出します。

  • 税務面
  • 事業譲渡は事業の売買と考えられるため、場合によっては消費税が課せられます。また無償で譲受した場合は、贈与税が課せられることもあります。その他にも、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」などの提出が必要となることもあります。

    ▷関連記事:M&Aの課題と具体的な対策。中小企業のM&Aにおける懸念点とは?

    個人事業によるM&Aの事例

    個人によるM&Aは、企業間のM&Aと違い、事例として開示されているものは多くはありません。その中で今回紹介する事例のように、個人で開発したサービスが、大手企業に譲り受けられるようなケースも近年では増えています。

    俳句のSNSアプリ「俳句てふてふ」が毎日新聞に事業譲渡(2018年6月)

    俳句投稿アプリ「俳句てふてふ」が、2018年6月、毎日新聞に事業譲渡されました。開発者の伊藤氏は、慶應義塾大学在籍時に同アプリを個人で開発しています。俳句コンテンツに長年注力している毎日新聞が、既存の充実したコンテンツと同アプリの知名度やユーザーとのシナジーを期待してM&Aが行われました。

    また、毎日新聞が持つ俳句界での人脈、資本などを活用することで、サービスをより拡大させられるという点もポイントでした。譲渡の理由としては、伊藤氏が運営する株式会社PoliPoliにおける運用リソースが限られており、M&Aを行うことで安定したサービス運用が期待できるという点でした。

    まとめ

    中小企業や個人による小規模M&Aは、支援サービスの更なる充実がなされ、今後より身近な選択肢になる可能性があります。M&Aを行う際の注意点や、頼れるサービスを知っておくことで、円滑にM&Aを進められるでしょう。個人の事業などの小規模なM&Aであっても、会計や法律などの専門知識が欠かせないため、M&Aアドバイザーなどの専門家に相談することをお勧めします。