【2022年版】最新のM&A事例と動向

日本の中小企業では、帝国データバンクの調査によると調査対象の65.1%が後継者不在と回答している様に、後継者不在が深刻な課題となっています。
その様な背景もあり、近年、M&Aによる第三者承継を選択する経営者が増加しています。2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の影響もあり、M&A実施件数は前年比でマイナスとなりましたが、2021年は過去最大数のM&Aが実施されました。
本記事では最新のM&A事例をご紹介するとともに、M&Aを成功に導くために押さえておきたいポイントをお伝えします。
日本における直近のM&A動向
▷2018~2021年|M&A件数 年別推移
日本のM&A件数は冒頭に記載した様に増加傾向にあります。
MARR Olineの調査では、2018年は3,850件、2019年は4,088件、2020年は3,730件、2021年は4,280件と、2020年は新型コロナウイルスの影響から減少に転じたものの、基本的には右肩上がりで増加していることが分かります。
また2021年に記録した4,280件は過去最多のM&A件数となります。

▷2022年|M&A件数 月別推移
2022年に入ってもM&A件数は増加傾向が見られます。
前述のMARR Olineの調査では、2022年1月:319件(前年同月比:18.6%増/50件増)、2月:353件(前年同月比:7.0%増/23件増)、3月450件(前年同月比:3.8%減/18件減)、4月:388件(前年同月比:8.1%減/34件減)、5月:353件(前年同月比:8.0%増/26件増)と、1-5月のM&A件数は前年を上回るペースとなっています。

▷日本における後継者不在
中小企業における後継者不在は日本全体の課題となっています。
帝国データバンクが発表した全国企業「後継者不在率」動向調査では、2021年の全国・全業種 約26万6000社の後継者動向は61.5%が後継者が「いない」、または「未定」としたとしています。

また東京商工リサーチの2021年「後継者不在率」調査でも2021年の後継者不在率は58.62%(2020年 57.53%)となっており、60%前後で推移している事が分かります。
東京商工リサーチの同調査によると、代表年齢が80歳以上となる企業の22.6%が後継者が不在という結果も出ています。
この様な後継者不在率の高さなどを背景に、中小企業庁は2021年に中小M&A推進計画を策定し、M&Aを推進する方向性を打ち出しています。また中小企業がM&Aを実施する際の補助金なども拡充されている事からM&Aが増加傾向にあります。
引き続きM&Aは後継者不在の課題解決方法として、増加していくものと想定されます。
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2022年5月|M&A事例
▷ディー・エヌ・エーによるアルムの連携子会社化
2022年5月、ディー・エヌ・エー(DeNA)は医療ICT事業を営むアルムを連結子会社にすると発表しました。ディー・エヌ・エー(DeNA)は7月から段階的にアルム株式を取得し、持株比率を57.5%とすることを見込んでいます。なお株式取得価格は292億5400万円とされています。
アルムは医療・介護の現場等の様々な場面でDXを促進するソリューション・ヘルスケアサービスを提供しており、この知見を活かし、ディー・エヌ・エー(DeNA)は遠隔診療分野の事業拡大の加速を目指すとしています。
▷セコムによるセノンの子会社化
2022年5月、セコムは常駐・機械警備、空港関連、ビルメンテナンスなどを事業とするセノンの株式55.1%を取得し、子会社化すると発表しました。
取得価格は270億5900万円、取得予定日は2022年7月1日が予定されています。
セコムはこのM&Aにより、セノンのセキュリティ企業としてのノウハウや経験とセコムの技術力を掛け合わせ、より高品質なサービスの提供を目指すとしています。
▷リコーによるエリクサジェン・サイエンティフィック(米国)の子会社化
2022年5月、リコーはアメリカのエリクサジェン・サイエンティフィックの株式お過半数を取得、子会社化すると発表しました。
エリクサジェン・サイエンティフィックはmRNA医薬品のCDMO(医薬品受託製造)事業や幹細胞関連製品の研究開発・製造・販売などを手掛ける企業です。
リコーはエリクサジェン・サイエンティフィックを子会社とすることで高齢化やパンデミックなどの社会課題を解決する創薬基盤の整備や構築の加速を目指すとしています。
2022年4月|M&A事例
▷オリックスによるHEXEL Works(ヘクセルワークス)の連携子会社化
2022年4月、オリックスがHEXEL Worksの発行済み株式の過半数を、2022年6月を目途に取得する事を発表しました。金額は約400億円と見られています。
HEXEL Worksは集合住宅分野や米軍施設分野において、競争力の高い総合電機設備工事会社で、72年の老舗企業になります。
オリックスとHEXEL Worksは本M&Aを通じて密接に連携し、業容の拡大を図るとしています。
▷ニトリホールディングスとエディオンの資本業務提携
2022年4月、ニトリホールディングスが同年5月付でエディオンに資本参加する事を発表、資本業務提携を行いました。
ニトリホールディングスはエディオンの株主であるLIXILから発行済み株式の8.6%を102.7億円で取得し、その後市場から1.4%を取得することでエディオン株式を10%と保有します。
本M&Aの狙いは、家具・インテリアのニトリホールディングスと、家電のエディオンの経営資源やノウハウを相互で活用し、両グループの事業拡大を図ることとしています。
▷アウトソーシングによるサンキョウ・ロジ・アソシエートの子会社化
2022年4月、アウトソーシングはサンキョウ・ロジ・アソシエートの発行済み株式を全て取得し、子会社化することを発表しました。
アウトソーシングは総合アウトソーシング事業や人材サービス、シェアドサービスを展開している企業で、サンキョウ・ロジ・アソシエートは商品の仕分けや梱包、発送、管理業務の請負、倉庫内作業に係る人材派遣業を行っている企業です。
アウトソーシングは本M&Aの目的を、アウトソーシングの持つ営業力や採用力といった経営資源の活用や管理面の底上げによる成長加速としています。
▷東洋テック株式会社による五大テック株式会社の子会社化
2022年4月、東洋テック株式会社は5月30日付で五大テック株式会社の全株式を取得、完全子会社化を行うことについて決議したと発表しました。
東洋テックは警備事業やビル管理事業を展開している企業ですが、本M&Aでは五大テックの施設警備業務のノウハウやリソースを取得・活用し、東洋テックグループの警備・ビル管理事業との一体運営や人的資源の相互活用を目指すとしています。
2022年3月|M&A事例
▷横浜ゴムによるTrelleborg(スウェーデン)のWheel Systems事業の買収
2022年3月、横浜ゴムはスウェーデンのTrelleborg ABとTrelleborg Wheel Systems Holding ABの全株式を取得することに合意し、株式売買契約の締結を行ったと発表しました。金額は約2,672億円と見られます。
Trelleborg Wheel Systems Holding ABは農業機械用タイヤや産業車両用タイヤなどを生産販売している企業となります。
本M&Aを通じて、横浜ゴムは主力のタイヤ事業において、商品ブランド体系の完成やサービス体制、DXなどの強化を図るとしています。
▷麻生による大豊建設の買収
2022年3月、福岡県で医療関連事業やセメント事業を手掛ける麻生は大豊建設の買収を発表しました。
麻生を引受先とする第三者割当増資で850万株の新株を発行、7月19日付で約403億円の調達を行う見込みです。これにより麻生の大豊建設の持株比率は50.74%になります。また大豊建設は1株4,730円で885万株の自己株取得を実行します。
大豊の筆頭株主であるシティindexイレブンスは40%余りの全保有株について買い付けに応じる予定となります。
2022年2月|M&A事例
▷オムロンとJMDCの資本業務提携
2022年2月、オムロンはJMDCと資本業務提携を行うと発表、JMDCの大株西であるノーリツ鋼機の保有する株式1,864万株を1,118億円で取得すると発表しました。
株式1,864万株は発行済み株式の33.0%に当たります。
JMDCは医療統計のデータサービスを提供している企業となり、今後はオムロンとヘルスケアデータのプラットフォーム構築や両社の持つデバイスやデータを活用した病気予防支援サービスを開発、オムロンが持つ海外拠点を活用しJMDCの製品やサービスの海外展開を進める予定となります。
▷双日による日本ハム子会社 マリンフーズの子会社化
2022年2月、双日は日本ハムの子会社で水産食品加工食品の製造や水産原料の輸入販売を行うマリンフーズの全株式を取得すると発表しました。譲渡価額は約265億円となります。
マリンフーズは1964年に東京・築地で海外の水産原料の開発輸入会社として設立後、1981年に日本ハムグループに加わりました。
双日の保有するグローバルネットワークやリソース、新規事業開発能力と、マリンフーズの強みである顧客基盤や商品開発、加工機能を組み合わせることで海外展開の強化・拡大を図るとともに、コンシューマー向け新商品の開発やEC事業強化による新たな顧客基盤の構築を推進などを行い、両社んお持続的な成長を実現するとしています。
▷博報堂DYホールディングスによるソウルドアウトの子会社化
2022年2月、博報堂DYホールディングスはデジタルホールディングス傘下のソウルドアウトに株式公開買い付け(TOB)を実施、完全子会社化する事を発表しました。買付代金は最大195億3085万円となる見込みです。
ソウルドアウトはインターネットビジネス支援事業を手掛けており、2009年にオプト(現デジタルホールディングス)の100%子会社として設立、2017年にマザーズに上場、2019年に東証1部に移りました。
ソウルドアウトは地方企業や中小企業を多く顧客として抱えており、博報堂DYホールディングスはこれらの地方企業や中小企業の体制強化を目指すとしています。
▷ソニー・インタラクティブエンタテインメントによるバンジー(アメリカ)の買収
2022年2月、ソニーの子会社 ソニー・インタラクティブエンタテインメントはバンジー買収を発表しました。買収価額は約4100億円となります。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントは2021年だけでゲーム開発会社を5社買収し、PS向けソフト開発を強化していますが、バンジーはその中でも最大規模の買収となります。
本M&Aによりバンジーのゲーム開発や人材採用を強化するほか、ゲームで培った知的財産を様々なエンタメに展開するとしています。
2022年1月|M&A事例
▷ワールドによるナルミヤ・インターナショナルの買収
2022年1月、ワールドはナルミヤ・インターナショナルを買収すると発表しました。ワールドはナルミヤ・インターナショナルの25%の株式を保有する筆頭株主ではあるが、株式公開買い付け(TOB)を行い51.58%に高めます。買収額は33億円となります。
ナルミヤ・インターナショナルは子供服事業を展開しており、本M&Aによりワールドは子供服を強化し、仕入れや物流、店舗運営などで既存事業との相乗効果を見込むとしています。
▷ミライト・ホールディングスによる西武建設の買収
2022年1月、ミライト・ホールディングスは西武ホールディングス傘下の西武建設の株式の内、95%を取得、子会社化すると発表しました。取得価格は約620億円になります。
西武建設は1941年に設立し、鉄道関連工事や鉄道沿線・リゾートなどのエリア開発を伴う建築・土木工事を手掛けてきました。
ミライト・ホールディングスは本M&Aの狙いとして、街づくり関連やグリーン発電といった成長領域での事業展開を加速させることとしています。
▷エムスリーによる3Hホールディングス他3社の完全子会社化
2022年1月、エムスリーは3Hホールディングス・3Hメディソリューション・3Hクリニカルトライアル、およびその完全子会社である3HCTSの4社を完全子会社化すると発表しました。
エムスリーは医療関連サービス事業や医療従事者専門サイト「m3.com」を運営しています。3Hグループは医薬・医療分野において被験者募集や情報提供、アプリ・システム開発などをワンストップで提供しています。
本M&Aを通じて、創薬・育薬支援や最新テクノロジーによるDXの実現を図り医療現場の課題解決に貢献するとしています。
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