業界毎の事例

2023/10/03

これからの医業経営において求められることが増える「経営最適化」とは

これからの医業経営において求められることが増える「経営最適化」とは

本記事では、主に医療法人を対象とします。現在、医療法人の中には、過去の積極的な拡大路線、多角化戦略があだとなり、赤字が続く病院や老健施設など、不採算の施設または事業部門を抱える法人があります。これには、経営者としての判断の適否とは別に、国の医療政策の変遷に翻弄されてきた、やむを得ない面もあったでしょう。このような医療法人の経営者に現在求められているのは、一度立ち止まって、事業承継を含めて、これからの医療経営についての方向性を考えていくことではないでしょうか。その中では、広げすぎた事業ポートフォリオ(事業の組み合わせ)の最適化(ダウンサイジング)を図ることも、選択肢の1つとなるでしょう。

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医療法人を取り巻く外部環境の変化と拡大志向の見直し

戦後の日本では国民皆保険制度がとられ、すべての国民があまねく医療を受けられる体制を構築するため、医療施設の増設が積極的に推し進められました。国全体で、人口も産業も拡大していた高度経済成長期はもちろん、その後も、多くの医師がこの流れに乗って病院や診療所を開設・増設していました。ところが、医療体制が充実し、人口のピークも見えてくると、過剰な病床と総医療費を抑制するため、1985年に医療法が改正(第1次医療法改正)され、病床の総量を規制する仕組み(基準病床制度)が導入されました。この制度により、現在は、基本的に病院の新規開設は認められない状況となっていることは、ご承知のとおりです。その後は、急速な少子高齢化が現実化してきたことから、急性期の医療体制の整備から慢性期の医療体制の整備を重視する方向へと医療政策の舵が切られ、療養病床という分類を作ったり、老人保健施設(老健)を設けたりといった施策が行われてきました。さらに、2000年代に入ると、高齢者を社会全体で支えるという理念の下、介護保険制度がスタートしました。
ここでも、拡大志向の強い理事長が経営する医療法人は、これらの国の施策に乗り、老人保健施設や老人福祉施設、療養医療施設、グループホーム、デイサービス等をグループ内で展開するなど、事業の多角化を図っていきました。

▼拡大志向と理事長のメンタリティ

上記のような医療法人の拡大志向には、時代背景に起因した経営者(理事長)のメンタリティも大きく影響しているといえます。戦後の医療施設を支えてきた医療経営者の中心はいわゆる団塊世代の方たちでした。この世代の方々は、日本が経済的に大きく発展してきた時代が自らの働き盛りの時代だったこともあり、一般論として、事業の成長に貪欲である方が多い傾向があります。

また、働き方についても、現代のようにワークライフバランス、労働時間削減が声高に叫ばれるようなことはなく、とくに医師のような社会的な責任とステータスの両方が高い職業においては、仕事に人生をかけて働くことが当然視されていました。理事長の中には、1年の大半を病院で過ごし、家にはほとんど帰らないといった方も多かったでしょう。加えて、これは現在でも同様ですが、医療法人は非営利法人であることから、一般の株式会社において経営のゴールの1つとなるIPO(株式公開)をすることができません。そのため、拡大志向が強い経営者は、自ずと施設数や病床数の増加、事業の多角化に向かいやすいといった事情もありました。

▼拡大路線が転換期を迎えている

このように、拡大志向が強い医療法人は、国の医療政策を機会と捉え、遠隔地への進出を含めた病院の規模拡大や介護事業への参画などを積極的に進めてきました。しかし、そこには事業会社であれば通常行われる「フィージビリティスタディ(実行可能性調査)」のような視点が欠けていることも多く、率直にいって、成り行きまかせのような形で事業投資が行われていたと考えられるケースも多くありました。その結果、近隣の病院と機能が重複し、恒常的な赤字体質となっているケースや、理事長が高齢となって遠隔地にある病院の経営に目が届かなくなったというようなケースが頻出しているのが現状です。

また、そのような個別的な理由による経営悪化以外に、医療業界全体にかかわる収益性についての懸念もあります。国は、人口動態を見据えたあるべき医療・介護を実現のために、診療報酬や介護報酬を改定することによっても医療機関に変化を促してきました。昔は、診療報酬は基本的に上がり続けていましたが、2000年代以降、診療報酬は以前と比べて微増、もしくはマイナスが常態化し、人口減の影響と相まって、医療機関の収益性は全体として昔に比べ低下しています。このような状況を背景に、かつて拡大戦略に進んだ医療法人のうち一定数は、戦略(方向性)の見直しを迫られています。

内部環境についての見直しが必要

拡大戦略の見直しを迫られている医療法人は、今後の方向性を考えるにあたって、まず自身の状況をかえりみる必要があります。具体的には、以下のような観点から経営資源の確認、再配分を検討する必要があるでしょう。

▼理事長の経営意欲や体力は減退していないか

たとえば、遠隔地に病院があり、理事長や事務長の訪れる機会が減っているということであれば、今後統制が効かなくなり、何かしらの経営上の問題が生じてくる可能性が高いといえます。また、周囲の病院との競争に疲弊し、赤字が続いている病院がある場合にも、この状況を立て直す意欲とプランがあるか、改めて自分自身に問い直す必要があります。

▼人材は確保できているか

次に、人材確保の観点です。現在多くの医療施設は恒常的に人手不足に陥っています。医師や看護師はもちろんのこと、他業界との競争から、昨今では事務員の採用も難しくなっており、今後安定した経営をおこなっていくための人材を確保できる見込みがあるのかという観点での見直しは重要です。とくに、現在、理事長の年齢が60代半ば以上である場合は、理事長を支えている中核人材も高齢化していることが一般的です。たとえば、看護師長や事務長が今後数年で65歳の定年を迎えるなどといった場合、次の看護師長や事務長を外から連れてくるのか、院内(またはグループ内の)のだれかを抜擢するのか、早いうちから考えておかなければなりません。後継者候補がいる場合でも、各部門で自分を支えてくれる人材がいるかいないかでは、実際に承継するかどうかの判断に、大きく影響を及ぼします。

▼建物の建て替え(大規模修繕)への備えはあるか

さらに、病院の建て替えや大規模修繕も、検討しなければならない重要な課題です。病床の総量規制の仕組みができた1985年の数年前までに病棟を建設した医療法人が多数ありました。これらの建物は、現在、築40年程度経過しており、現在から数年後にかけて、建て替えや大規模修繕が必要な時期を迎えています。もしそこで、理事長の年齢が60代半ば以上であるすると、特に後継者が決まっていない場合には、多額の投資はためらわれるでしょう。また、後継者がいたとしても、もし建て替えとなれば、通常、多額の資金を金融機関から調達する必要があります。その負債に対する連帯保証が後継者にも求められることになると考えられるので、そのこと自体が事業承継のハードルを上げる要因になります。

身の丈にあった事業モデルに最適化する

上記のような状況を踏まえて、事業の規模や領域を最適化していく必要がある医療法人は、今後増えると思われます。

▼まずは後継者の意向を確認する

親族内承継、あるいは院内承継を予定している場合は、今後の医療法人や病院の経営をどう考えていくのか、後継者の意向の確認やすり合わせが重要です。当たり前のように聞こえますが、意外にこれが実行できておらず、事業承継の障害となるケースも多いのです。前述したように、一般論として、日本の高度経済成長期を肌で体感しながら拡大志向を貫いてきた現理事長と、低成長の時代しか経験していない後継者とでは、そのメンタリティに大きな違いがあると考えられます。このギャップを、早めに埋めていかなければ、土壇場で「やはり継ぐことはできない」となる事態や、承継後の後継者の経営方針をめぐり親子の関係が悪化するといった事態を招きかねません。
たとえば、現理事長が建てた介護老人保健施設があり、かつては収益源だったものの、現在は収益性が低下していたとしましょう。現理事長からすれば、この施設を手放すという発想はまったくなかったとしても、後継者からすると、自分は病院での診療に注力したいので、知見に乏しい介護事業の経営はできない(やりたくない)と主張されることなども十分に考えられます。このような場合、事業承継のためには、介護老人保健施設のみを切り離して譲渡するということも真剣に考えていく必要があるでしょう。

▼減収増益も選択肢として「GOING CONCERN」を考える時代に

現理事長からすると、自分が生み育てた(あるいは先代から引き継いだ)事業をやめることには抵抗があるのが一般的です。しかしもっとも重要なのは、医療法人が継続して地域医療に貢献していくこと(いわゆる、Going Concern)であり、そのためにはあえて事業の縮小=減収につながる意思決定が必要となることもあります。一般の事業会社でも、「減収増益」となるような事業ポートフォリオの最適化に関する意思決定は、経営者がおこなうべき重要な仕事の1つです。医療法人においても、今後同様の視点が必要となってくるケースは増えるでしょう。

▼事業ポートフォリオ最適化には、M&Aも有用

ダウンサイジングを含めたポートフォリオの最適化をすると決めたら、次は手法の検討が必要となります。この際、一部事業の「廃業」という選択肢もありますが、一部事業、一部施設をM&Aで売却する方法も有効な手段となります。M&Aであれば、廃業と異なり、顧客(患者や入居者の方など)への不利益を最小限に抑えることができ、原則的に従業員の雇用も守ることができるというメリットがあります。ここで、経営状況が芳しくない、赤字が続いている病院や老健施設等、あるいは、病棟の建て直しが必要な病院などでも売却が可能なのかというという疑問が生じるかもしれません。
この点については、個別の状況にもよりますが、買い手グループに入ることによるさまざまなシナジー(集患・送患、また、人材の流用)などにより、経営者が交代することで、経営状況が改善されることは、よくあります。医療業界にくわしいM&Aの仲介会社などを通じ、そのような買い手候補とうまくマッチングができれば、総量規制があるが故にM&Aは成約する可能性は高いといえる状況にあるのです。


●(参考)「事業ポートフォリオ」という考え方について
「事業ポートフォリオ」という考え方に馴染みのない方もいると思われますので、参考までに簡単に説明しておきます。通常、製品市場には、「立ち上げ期」から、売上が伸びていく「成長期」、市場が飽和状態になる「成熟期」、そして、市場が縮小していく「衰退期」、というライフサイクルがあります。これは、特定の市場全体においてもあてはまりますし、その市場における自社の事業や製品においてもあてはまります。そこで、市場全体のライフサイクルの段階が異なる、また、その市場における自社のポジション(市場シェア)が異なる、複数の事業を同時に運営していくことで、会社全体としてのリスクを低減するとともに、経営資源を最適に配分しようというのが、事業ポートフォリオという考え方です。事業ポートフォリオの分析は、もともと米国のコングロマリットを対象に分析した、ボストンコンサルティンググループの「プロダクト・ポートフォリオ・マップ(PPM)」という有名な分析フレームからスタートしました。複数の病院や介護施設を経営している医療法人の経営分析にも役立つ分析手法です。

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