創業者利益は創業者が株式譲渡などを行う際に得られる利益のことをいい、融資を受けずに新規事業の資金にできたり、精神的な余裕を持ってセミリタイアできたりします。
メリットもある一方で、M&Aと上場の場合はそれぞれにメリットやデメリットが存在するので、創業者は知っておかなければなりません。
同じように創業者にとっての収益となるキャピタルゲインとの違いやM&Aと上場の場合の比較、かかる税金についても解説します。
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目次
創業者利益とは
創業者利益とは一体どんなことをいうのでしょうか?勘違いしやすいキャピタルゲインとの違いについても詳しく解説します。
創業者利益とは
創業者利益は創業者利得ともいわれますが、簡単にいうと創業者が株式譲渡などを行う際に得られる利益です。
創業者が創業して育てた会社の「資本+株式資本」とM&Aなどをする際の「売却額」との差額が創業者利益となります。
【売却額-(資本+株式資本)=創業者利益】と考えるとわかりやすいです。
創業者利益とキャピタルゲインの違い
創業者利益と同じような表現として、キャピタルゲインという言葉があります。
どちらも創業者にとっては収益となりますが、キャピタルゲインはただ単に横文字にした表現というわけではありません。
厳密にいうと意味が異なるので違いを理解しておきましょう。
キャピタルゲインは、資産を購入した際の費用と売却額の差額をいいます。
会社を創業した際の資本や株式資本ではなく不動産など元々存在していた資産を購入後、売却した際に得られる差額がキャピタルゲインです。
つまり【売却額-資産を購入した際の金額=キャピタルゲイン】という構図になります。
ゼロから生み出したものを売る際に得られる利益が創業者利益で、元々イチの状態だったものを売る際に得られる利益がキャピタルゲインです。
創業者利益を得るメリット
創業者利益を得るとどんなメリットがあるのでしょうか?創業者利益を得るメリットは、以下の通りです。
・融資を受けずに新規事業の資金にできる
・精神的な余裕を持ってセミリタイアできる
・負債を抱えずに新しい生活を始められる
・従業員の雇用(生活を確保できる
M&Aなどで創業者利益を得られれば、創業時とは違い融資などの資金調達をせずに新しい事業資金に回せます。
また、セミリタイアをして毎日朝から晩まで考えてきた仕事からは解放されたいという場合でも、精神的な余裕を持って新しい生活を始められる点もメリットです。
それだけでなく創業者利益の面だけでなくM&Aによって従業員たちの雇用も確保されるため、一緒に会社を盛り上げてきた仲間の生活面の心配もいりません。大きな責任や不安から解放され、気持ちに余裕を持って新しい生活や事業を始められる点がメリットです。
IPO(株式上場)による創業者利益
創業者利益を得るためには、IPO(株式上場)とM&Aで会社売却の2通りの方法があります。
それぞれにメリットやデメリットがあるので、御社にとってどの方法が良いのか見極めなくてはなりません。
まず、IPO(株式上場)による創業者利益を得るメリットとデメリットについて、詳しく解説します。
メリットデメリット
IPOの場合には、払込額面金額と株式の時価との差額が創業者利益となります。
スタートアップで会社を創業したら「まずはIPO(株式上場)を目指したい!」という創業者もいらっしゃるのではないでしょうか。IPO(株式上場)によるメリットは、以下の通りです。
・会社の信用度があがる
・企業レベルがあがる
・知名度があがり注目度も高まる
一番のメリットは、なんといっても会社の信頼度や信用度があがることです。
企業の信用度や信頼度があがることによって、良い人材にも恵まれさらに企業の業績をアップさせられ企業の価値もあがります。
一方で、IPO(株式上場)によるデメリットは、以下の通りです。
・投資家からの厳しいチェックが入る
・激しい生存競争を生き延びなければならない
・責任が増える
これまで比較的自分の好きなように進められていた事業でも、投資家から厳しくチェックされることになり思うように進められないケースもあるかもしれません。
それだけでなく創業者が多くの株を売ると投資家からは「経営状況が良くないのでは?」と思われ株式が下落してしまう恐れもあります。
必ずしも全てが良い方向に進むとは限りませんが、一度でもIPOをした実績はその後の事業への自信にもつながるので目標とするのも良いでしょう。
M&Aで会社売却した場合の創業者利益
IPO(株式上場)ではなくM&Aをする場合には、株式売却額と株式の時価との差額が創業者利益です。
M&Aで会社売却した場合のメリットとデメリットについて、詳しく解説します。
メリットデメリットを把握しておいた方が、M&Aを有利に進めらますので参考にしてみてください。
メリットデメリット
M&Aで会社売却した場合のメリットは、以下の通りです。
・より多くの創業者利益を得られる可能性もある
・新しい事業に力を入れられる
・負債を抱えずにリタイアも可能
信頼できる相手へのM&Aであれば巨額の創業者利益を得られる場合や、得られた創業者利益を元に新しい事業に参入できるというメリットもあります。もしセミリタイアしたい場合にも、残った社員や自分の生活資金の心配を気にせずに、安心して現役からは退けるのも魅力です。
一方、M&Aで会社売却した場合のメリットはデメリットは、以下の通りです。
・経営陣が変わり、社員の負担が増える場合がある
・事業の方向性が変わる可能性がある
M&Aによって経営陣や事業の方向性が変わり、勤務体系や福利厚生面で残った社員への負担が増える場合も少なくありません。
そのため、M&A先の企業については創業者同士の話し合いや見極めは重要になります。自分や残った社員にとって「こんなはずじゃなかった」とならないためにも先方との話し合いや、書面はしっかりと確認しましょう。
創業者利益にかかる税金や計算方法
創業者利益に税金はどのくらいかかるのでしょうか?創業者利益にかかる税金や計算方法について詳しく解説します。
創業者利益にかかる税金
創業者利益にかかる税率は、20%です。また、2037年(令和19年)までの復興特別所得税0.315%を含めると2022年1月時点で20.315%です。詳しい内訳は下記の通りです。
・所得税:15%
・住民税:5%
・復興特別所得税:0.315%
例えば1億円の創業者利益があった場合には、20,315,000円(1億円の20.315%)が税金になる計算です。
創業者利益の計算方法
創業者利益の詳しい計算方法は、下記の通りです。
株式の譲渡価格-(設立時の出資額+M&A仲介会社へのサポート依頼費用)=創業者利益
例えば下記の金額の場合の創業利益を計算してみましょう。
なお下記の金額は一例であり、過去のお取引等ではありません。また、税込金額として想定します。
・株式の譲渡価格:5億円
・会社設立時の出資額:5,000万円
・M&A仲介会社へのサポート依頼費:2,500万円
・税率:20.315%
上記の金額を計算方法にあてはめると下記のようになります。
5億円-(5,000万円+2,500万円)=4億2,500万円
つまり4億2,500万円が創業者利益です。そして上記の創業者利益に対して税金が20.315%かかるため、税金は86,338,750円になります。
より高額な創業者利益を獲得する際の準備
より高額な創業者利益を獲得する際には、準備が重要です。では、どのようにすれば良いでしょうか?具体的には、以下の通りです。
【より高額な創業者利益を獲得する際の準備】
・業績をあげて売却額を増やす
・M&Aのプロに依頼する
・タイミングを見極めて売却する
より高額な創業者利益を獲得するためには、まずは売却額を増やすために事業の業績をあげましょう。
事業を拡大しながら優秀な人材を育成することでさらに業績もあがり、企業の価値を高められると売却額や創業者利益も期待できるようになります。
売却の際にはタイミングも重要になるので、実績もあり信頼できるM&Aのプロに相談しながら進めるのも効果的です。
まとめ
もう一度振り返ります。まず、創業者利益は株式譲渡などを行う際に得られる利益のことをいいます。
そして、創業者利益を得るためにはIPOやM&Aなどがありますが、創業者の目指す場所や理念によって異なるため一概にどちらが良いとはいい切れません。
企業の価値を高めることでより多くの創業者利益を得られるので、まずは業績をあげて社会からの信用を得られるように努めましょう。
またM&Aなどは、タイミングや相手先企業の選定が極めて重要です。
自分にとってどの方法で創業者利益を得るのが良いのか、どのタイミングで売却するのがベストなのか迷う場合には、ぜひ私たちfundbookにぜひ相談してください。