経営・ビジネス

2023/09/15

のれんの減損とは?現存の要因や事例、注意点

のれんの減損とは?現存の要因や事例、注意点

のれんの減損とは簡単に言うと「M&Aの失敗による損出」です。損失が大きいと、企業の経営そのものに影響が出ます。
今回は、のれんの減損が起こる要因や事例、注意点を解説しました。

日本ではM&Aがブームで、気軽に手を出してしまう企業が増えています。買収する前に、リスクをしっかり理解することが大切です。
のれんは理解しにくく、意味そのものを間違えている人もいます。誰でも理解できるように、簡単な言葉で解説しました。
のれんの減損について学び、計画に役立てましょう。

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のれんの減損とは

のれんの減損を解説する前に、基本的な知識を身につけましょう。
のれんについてのほか、減損と償却の違いも解説しています。

▷のれんとは

のれんとは「事業全体の値段」と「事業が使っている財産の値段」の差額です。
事業はさまざまな経営資源を持っており、値段がつけられる「有形財産」と値段がつけられない「無形財産」があります。

「有形財産」は、土地や建物などそれだけで売買が成立するものです。
しかし、事業はそれだけで価値は判断されません。
事業にとって技術やノウハウ、取引先との信頼関係など目に見えないものも貴重な財産です。これを「無形財産」と言います。

一般的な無形財産は、以下の通りです。
——————————
・ブランド・知名度
・人材・組織・社風
・技術・ノウハウ
・物流・取引先との関係
・顧客リスト・売上規模
——————————
例えば、ある企業に土地と建物を合わせて1億円の価値があったとします。
その企業は優れた技術があり、毎年2億円の利益を上げていました。

しかし、値段がつけられない無形財産を含めて交渉をしないと購入することはできません。
この企業に最終的に5億円の値段が付いたとします。
——————————
「5億円−1億円=4億円」
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この4億円の差額をのれんと言います。

▷のれんの減損とは

のれんの減損とは、 シンプルにいうと「M&Aの失敗による損出」です。

例えば、企業Aを購入したとします。
買収した企業の稼ぎで、企業Aを購入するために使った投資額を回収する必要があります。
しかし、経営がうまくいかないと投資額の回収ができません。

貸借対照表に載せていい資産額には上限があり、回収できていないと上限をオーバーします。
貸借対照表に載せていい上限額とは、将来回収の見込みのある売上額です。
しかし、見込み額がいつまでも回収できないと、固定資産に載せておくことはできません。
将来回収できない金額は貸借対照表に載せてはいけないルールになっています。

上限をオーバーした状態を減損状態と言い、貸借対照表に載せていい上限額を切り下げなければなりません。
その時に切り下げた金額は損失になります。
例えばM&Aで10億円の企業を買収したとします。しかし、経営が苦しく将来4億円しか回収できそうにありません。この場合、4億円がのれんの減損となります。

▷のれんの償却との違い

続いて、のれんの償却について説明します。
のれんの「減損」と「償却」は字面は似ていますが、別の話です。
のれんの減損はBS上が中心の話、償却はPLが中心の話となります。

M&Aによるシナジー効果は永遠に継続するものではありません。
例えば、シナジー効果が10年間企業の売り上げに貢献すると仮定します。これは「10年間売り上げを生み出す機械を購入した」と非常に近い状態です。そのため、のれんの償却をします。

のれんの償却を説明する前に、「固定資産の減価償却」について知っておく必要があります。
例えば、売り上げのために機械を購入したとします。
企業経営はずっと続いていきますが、会計年度は基本的に1年毎です。投資のために機械(固定資産)の取得にかかった費用の全額をその年の費用としてしまうと、会計上の費用が増えてしまいます。

そこで、減価償却として、設備投資の費用を耐用年数に応じて配分します。耐用年数を10年と仮定すると、年度毎に10分の1ずつ費用に計上するという方法があります。
機械をM&Aのシナジー効果に置き換えたものが「のれんの償却」です。
のれんの減損は「損失」ですが、のれんの償却は「費用を分割し計上すること」を指します。

のれんの減損が起こる要因・兆候

のれんの減損とは?現存の要因や事例、注意点

のれんの減損が起こる要因と兆候は以下の2つです。
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・回収できない高値購入してしまう「高値づかみ」
・買収後の経営の失敗「PMIの失敗」
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自分の計画に当てはまっていないか、チェックをしましょう。

▷①回収できない高値購入してしまう「高値づかみ」

いい会社は安い価格では購入できません。
世界中から買い手が集まり「うちの企業に買収させてほしい」と競争になります。

欲しい企業を買収するには、他の買い手よりも高い値段を提示しないと購入することができません。
M&Aで大切なのは、自分たちが回収できる額を超えないことです。しかし、見極めがとてもむずかしく業績が低迷することもあるでしょう。

のれんの減損を防ぐには、買収した事業の業績を改善し、将来的に利益が出るよう仕組みを整える必要があります。

▷②買収後の経営の失敗「PMIの失敗」

PMIとは、経営統合によるシナジーを最大化させ、長期的に成長する仕組みを作ることです。
PMIが不十分だと、予想したシナジー効果が得られません。

統合したばかりの会社は、システムの互換性がなく不安定になります。
2つの異なる企業文化をスピーディーに整えることが重要です。
PMIをおろそかにしてしまうと、従業員の離職や現場の混乱が予想されます。それをきっかけに、従業員がM&Aそのものに対して不満を持ってしまうでしょう。

PMIの失敗は、買収の前に予想されるトラブルを防止する準備が必要です。業務やシステムの統合、人事制度や法務を買収と同時に整備できる状態がベストでしょう。
PMIを整備するプロジェクトチームの発足など、優秀な人材の確保も必要です。

のれんの減損による株価への影響

ここではのれんの減損が譲受企業の株価に与える影響と株主に与える影響を解説します。

▷のれんの減損が株価に与える影響

のれんの減損は株価に大きな影響を与えます。
企業が減損処理を行うと、貸借対照表に記載されているのれんの金額が引き下げられます。
これは、企業経営において発生した特別損失と同じです。のれんの減損により資産が減り純利益が減少します。

のれんとは、将来会社の売り上げを生み出す資産です。シナジー効果やブランド力が利益を生み出します。
しかし、のれんという資産が減ってしまうと、得られるはずの売り上げに影響が出ます。

▷のれんの減損が株主に与える影響

のれんが減損すると株主への配当金が減少します。
株主は、出資したお金から会社への資金を肩代わりする義務があります。配当金は資本から支払っているため、のれんの減損は配当金を使って補うことになります。
のれんが減損の金額が大きい場合、配当金がゼロになるケースもあります。
株主になる前に、のれんの減損リスクについて学びましょう。
なるべくのれんの少ない事業に投資した方が、安全に投資することができます。

M&Aのブームにより、のれんの減損リスクを持った企業が増加しています。損をしないように、慎重に企業を選ぶことが大切です。

のれんの減損事例

のれんの減損事例を解説するにあたり、3つの企業をピックアップしました。「キリンホールディングス」「日本郵政」「東芝」の失敗事例からのれんの減損を学びましょう。

▷失敗事例①「キリンホールディングス」

キリンホールディングスは、2011年ブラジル国内でシェア2位のビール会社「スキンカリオール」を3000億円で買収。

しかし、2014年から販売数量が減り約1100億円もの減損損失を出してしまいます。その後もブラジル事業の業績低迷は続きました。
キリンは日本企業の中では積極的に買収を行なっていましたが、海外企業の動きはもっと早く、ビール市場の買収は一段落していました。

少ない買収案件の中で、焦って買収をしたことが失敗の原因だと言われています。

▷失敗事例②「日本郵政」

日本郵政は、オーストラリアの「TOLL」という物流会社を買収。
2015年に約6,200億円で買収しましたが、6年後に10億円で売却しています。

日本郵政は2015年にまさに上場準備を行なっており、同じく上場の準備を進めていたゆうちょ銀行から1兆3,000億円を調達していました。
そのうちの6,000億円は設備がかなり老朽化した日本郵便への投資にあて、残りの7,000億円は買収に使われました。

日本郵政はTOLLの買収をきっかけに海外進出を目標としましたが、買収後売り上げが悪化。
2年後の2017年に、4,000億円の特別損失を出してしまいました。

▷失敗事例③「東芝」

芝は、アメリカの原子力メーカー「ウエスチングハウス」を買収。
この企業は1950年代以降、加圧水型原子炉の開発と製造において先進的な技術を持っていました。
その後イギリスの核燃料会社に売却されましたが、財政の悪化により売却を決断します。

買収にはゼネラル・エレクトリック、三菱重工などが入札しましたが、事業規模が当時約2,000億円だったウエスチングハウスを東芝が6000億円で買収しました。
しかし、2011年の東日本大震災が原因で、福島第一原発事故が起こります。

原発の安全性を問う流れが世界中で起き、さらにウエスチングハウスの不正会計や原発事業の巨額損失が発覚しました。
6,600億円で買収しましたが、たった1年で約7,000億円の損失を出しました。

のれんの減損の注意点

のれんの減損とは?現存の要因や事例、注意点

のれんの減損を未然に防ぐには以下の注意点を知る必要があります。
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・本来の目的を忘れていないか
・デューディリジェンスでリスクを把握しているか
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それでは詳しくみていきましょう。

▷①本来の目的を忘れていないか

M&Aの譲渡は、目標達成への通過点です。
長期にわたって交渉続けていると、買収することそのものに注目してしまい本来の目的が見えなくなります。

買収は企業戦略のひとつであり、M&Aがベストな選択なのか疑う目線が必要です。冷静に分析をせず、失敗をしたケースがたくさん報告されています。

▷②デューディリジェンスでリスクを把握しているか

デューディリジェンスとは、買収する企業が投資する価値があるかどうかを調査することです。
決済状況はもちろん、財務から税務まで企業価値を正しく判定します。売却する側の経営者に何度もヒアリングし、弁護士、税理士、公認会計士に依頼をして調査をします。

デューディリジェンスを行う最大の目的は、買収する企業のリスクの把握です。
高いブランド価値を持つ企業でも、見えない場所にリスクが潜んでいるかもしれません。

M&Aを行う前に、じっくりとデューディリジェンスを行うことが大事です。のれんの減損を起こさないために、慎重に判断しましょう。

なお、M&Aを成功させるためには、専門知識が必要です。
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