現在、ゲーム業界は数少ない成長産業の1つといわれています。しかし、人材不足や競争の激化、コンテンツの寿命が短縮するなどの課題を抱えています。その解決策として注目されているのがM&Aです。

本記事では、ゲーム業界の市場動向、M&Aを行う目的、成功のコツや実際の事例を解説します。

ゲーム業界の市場動向

「ファミ通ゲーム白書2018」によると、2017年における国内ゲーム市場の市場規模は過去最高となる1兆5,686億円でした。

ひとことでゲーム業界といっても、幅広いジャンルがあります。
「ファミ通ゲーム白書2018」では、パズル&ドラゴンズなどのモバイルゲームやラグナロクオンラインといったPC向けオンラインゲームにあたる「オンラインプラットフォーム」市場、ポケットモンスターやドラゴンクエストなどの「家庭用ソフトウェア」市場、Nintendo SwitchやPlayStation 4などの「家庭用ハードウェア」市場の3つのカテゴリに分けられています。

2017年の世界全体のゲーム市場の規模は1,217億ドル(1ドル110円換算で約13兆3,870億円)となっており、2021年には1,801億ドル(約19兆8,110億円)になる見込みであり、国内と同様に成長が期待されるのがこのゲーム業界市場なのです。

このあとの事例でも紹介しますが、特に著しく伸びているオンラインプラットフォームに参入・事業拡大する目的でM&Aを行う企業が増えつつあります。

▷関連記事:国内M&Aの市場規模と現状。2018年のM&Aは過去最多の3,850件

ゲーム業界においてM&Aを行う目的

ゲーム業界においては、主に2つの目的でM&Aが行われます。

競争の激化に対応するため

先述の通り、オンラインプラットフォーム市場は成長を続けているため、さまざまな企業が参入しています。特にこの市場は、時代の変化に伴ってユーザーの期待値が高くなっているため、アプリ継続率は徐々に低く、アクティブユーザーが減少するまでの期間も短くなっています。長期的に収益を上げ続けるためには0から開発するだけでなく、M&Aによって既に収益を上げているコンテンツを取得するのが有力な手段といえるでしょう。

優秀な人材を確保するため

現状、ゲーム業界は慢性的な人材不足です。経済産業省が掲げている政策の1つである「IT人材の育成」の中で、オンラインプラットフォーム市場および家庭用ソフトウェア市場に属するIT人材の数と将来の予測を公表しています。

その中では、2010年からやや上昇傾向にありますが、2020年頃からは徐々に低下する見込みとなっています。主な原因としては、労働集約型の産業という性質上、新しいコンテンツの開発のための長時間労働などによって離職率が高くなることや、技術の変化が著しく、未経験人材の育成が追いつかないことが挙げられます。売上を上げ続けるためには生産性を向上させるか、新たな人材を確保しなければなりません。実際には、人材を一から育てるよりも、優秀な経験者を確保できるM&Aの方がコストがかからないため、M&Aを行う企業が増加傾向にあるのです。

▷関連記事:M&Aを行う目的とは?注目される理由をメリット・デメリットと共に解説

ゲーム業界でM&Aを成功させるには?

ここでは譲渡企業側、譲受企業側の視点に分けて、M&Aを行ううえで気をつける点、成功させるためのコツについて紹介します。

譲渡企業側が成功するためのコツ

譲渡企業側は主に「優秀な人材が在籍していること」「自社が保有しているコンテンツが売上を上げ続ける根拠」を譲受企業に伝えることが重要です。

譲受企業は主に人材確保やコンテンツのラインアップ強化を目的としてM&Aを行います。
海外マーケットでも売上を上げられることやインターネット以外のメディアでも売上を立てられるコンテンツであること、差別化要因、アクティブユーザーの数をアピールしましょう。

譲受企業側が成功するためのコツ

譲受企業側は長期的に安定した収益を上げ続けるためには「PMI」の成功が重要になります。譲渡企業の人材確保を目的に行う際には、M&A後も円滑に事業を行うために、企業文化や業務フロー、評価制度などを統合するPMI(Post Merger Integration)が欠かせません。M&Aの検討段階からPMIの計画を立てて進めるようにしましょう。

▷関連記事:PMIとは?M&A成立後の統合プロセスについて株式譲渡を例に解説

ゲーム業界におけるM&Aの事例

ここでは実際にゲーム業界においてM&Aを行った3つの事例を紹介します。

株式会社エニックスによる株式会社スクウェアの吸収合併

引用元:https://www.jp.square-enix.com/

2003年4月、株式会社エニックスが株式会社スクウェアを消滅会社とする吸収合併を行い、現在の株式会社スクウェア・エニックスが誕生しました。当時、ネットワーク機能を持ったPC、携帯電話を活用したモバイルコンテンツの登場により、ゲーム業界は変革期にありました。ハードウェアにとらわれずにコンテンツにアクセスできるようになり、顧客間でコミュニケーションを取れるようになるなど、産業構造の変化が起きていました。この産業構造の変化に対応するために、スクウェア・エニックスは以下の3つを戦略として掲げました。

  • コミュニティ・マネジメントの強化
  • 顧客間のコミュニティに資源を投下すること

  • ポリモーフィック・コンテンツ展開
  • 開発したゲームを小説やCD、DVDなどの他メディアにて二次利用するのではなく、最初から中長期的な複数のメディア展開を目的として、1つのコンテンツを開発すること

  • 新たなプラットフォームの組成
  • 産業構造の変化へいち早く対応するために、新しい構造をデザインすること

この3つを通して「最高・最大のデジタルコンテンツ・グループ」を目指すとしています。

グリー株式会社による米PerBlue Inc. の完全子会社化

引用元:http://corp.gree.net/jp/ja/

2016年10月、グリーの連結子会社GREE International Entertainmentは米PerBlueを完全子会社化しました。手法としては、まずGREE International Entertainmentが新会社Parrot Mergerを設立し、PerBuleを存続会社として、Parrot MergerとPerBlueを合併させる、いわゆる「逆三角合併」方式を取りました。取得対価は約2,800万ドル(約30億8,000万円)です。

このM&AはPerBlueが運営していたモバイルゲーム「Dragon Soul」の取得を主目的としています。グリーは2011年に北米に事業進出し、米国市場向けにモバイルゲームの開発・運営を行っていました。今後も成長が見込まれる米国市場により力を入れていくためにM&Aを実施したと公表しています。

株式会社アエリアによる株式会社サイバードの完全子会社化

引用元:https://www.aeria.jp/

2018年6月、アエリアは女性向けモバイルゲーム「イケメンシリーズ」を主事業とするサイバードを完全子会社化しました。譲渡対価は総額約70億円です。
アエリアは大きく以下の3つのシナジーを取得することを目的として、M&Aを行いました。

  • コンテンツの長期シリーズ化ノウハウ
  • サイバードが運営する「イケメンシリーズ」は2010年にサービス開始以来、累計1,700万ダウンロードを記録していました。ヒットタイトルをシリーズ化し、長期的・安定的収益を上げるノウハウの取得を目的としています。

  • コンテンツの周辺事業への展開ノウハウ
  • モバイルゲームに関するイベント開催、キャラクターグッズ販売、書籍・ドラマCDなど横展開を行うノウハウの取得を目的としています。

  • ゲームタイトルの海外配信ノウハウ
  • サイバードは国内だけでなく、中華圏・東南アジア圏などでも高い収益を上げています。海外進出のノウハウを取得し、アエリアが保有しているコンテンツをサイバードのプラットフォームで配信し、収益を拡大することが目的です。

まとめ

本記事では、ゲーム業界におけるM&Aの動向を紹介しました。特にオンラインプラットフォーム市場の成長に伴って、家庭用ソフトウェアを主な事業や様々なIT企業による参入が相次ぎ、競争が激化しています。その中で、優秀な人材の確保、生産性の向上、コンテンツのラインアップの確保を目的としてM&Aを行っています。M&Aの方針を決定する際には、実際の事例をもとに参考にすることをおすすめします。不明点があればM&Aアドバイザーに相談しましょう。

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