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2023/09/26

調剤薬局のM&Aの現状や業界の動向を解説!加速理由やメリット・デメリットまで網羅

調剤薬局のM&Aの現状や業界の動向を解説!加速理由やメリット・デメリットまで網羅

1990年以降、医薬分業を背景に成長を続けてきた調剤薬局業界は、近年、その在り方に変化が見られはじめています。

調剤薬局数の大幅な増加を受けて市場は成熟化の兆しを見せており、異業種からの新規参入といった新しい変化も生まれました。さらに、国は政策方針の変更を打ち出しており、調剤薬局の業界ではM&Aが活発となる傾向にあります。

本記事では、調剤薬局のM&Aの現状と動向、調剤薬局業界でM&Aが加速する理由とともに、調剤薬局M&Aのメリット・デメリットや相場、最新のM&A事例を解説します。

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調剤薬局のM&Aの現状

調剤薬局は、医師の処方箋をもとに薬剤師が調剤を行い、適正な用法とともに患者へ薬を提供する薬局のことです。「保険薬局」の別名を持っており、都道府県にある地方厚生局から指定を受け、保険診療による処方箋の調剤を実施しています。

もともと日本では、医師が診療とともに薬の調剤まで行うのが一般的でした。しかし、欧米の医薬分業の考え方が浸透したことを受け、国内でも医薬分業が進んでいます。近年、医薬分業率は70%を超えていて、コンビニエンスストアを上回る数の調剤薬局が存在します。

調剤薬局業界の拡大に伴い調剤薬局のM&Aも積極的に実施されており、その件数は増加傾向です。なお、調剤薬局の設置には行政への許認可も関わってくることから、調剤薬局のM&Aでは株式譲渡による経営権の移行が一般的となっています。また、事業譲渡の手法もよく採用される手法です。

調剤薬局のM&Aの動向

調剤薬局業界の大きな特徴には、個人薬局が多い点があります。大手調剤チェーンや大手ドラッグストアの市場における占有率は、他業種と比較すると低い状態です。今後は大手調剤チェーンが事業拡大を図り、個人薬局や小規模店舗に対するM&Aが進む見通しです。

また、調剤薬局数の増加により飽和状態に近づきつつある点も、M&Aの増加を後押ししています。現在も新規出店は行われていますが、その伸び率は年々鈍化している状況です。新規出店数の伸び率減少と歩みを合わせるように、大手チェーンや中規模企業によるM&A件数は増加しています。

その他、異業種による調剤薬局業界への参入の動きも見逃せません。近年、コンビニエンスストアや家電量販店、鉄道会社の駅ターミナル内など、より消費者の生活に近い場所への調剤薬局出店が増えてきました。このような異業種の新規参入により、業界再編への動きはさらに加速すると予想されています。

調剤薬局業界でM&Aが加速する理由

ここまで、調剤薬局業界におけるM&Aについてマクロな視点から解説してきました。調剤薬局のM&Aが加速する理由には、調剤薬局を取り巻く環境の他、調剤薬局自体の変化もあります。

以下では、薬価改定や調剤報酬改定への対応など、3つの視点から調剤薬局業界でM&Aが加速する理由を紹介します。

▷薬価改定や調剤報酬改定への対応

国の医療費削減の方針により、薬価や調剤報酬はマイナス改定の傾向にあります。特に調剤報酬の改定を受け、多数の店舗を持つ大手調剤チェーンや病院に隣接された門前薬局では相対的に低い調剤報酬が適用されるため、収益減が予想される状況です。

上記のような状況を受け、大手調剤チェーンはM&Aにより事業拡大することで、スケールメリットによる収益性の確保を狙っています。また、経営資源に乏しい小規模な調剤薬局では、大手調剤チェーンに吸収されることで事業の存続を図っています。

▷かかりつけ薬局への移行

厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン」のもと、住まいの身近なところにある「かかりつけ薬局」へ移行する方針を打ち出しました。今後、かかりつけ薬剤師が一定要件で行った業務には、「かかりつけ薬剤師指導料」という名称の薬学管理料が加算されます。

ただし、かかりつけ薬局となるには在宅患者への対応や24時間での対応などが求められ、対応のための薬剤師の確保や人件費・設備費への投資が欠かせません。このような「かかりつけ薬局」への移行に対応するために、人材獲得や経営資源の集約化を目的としたM&Aが加速すると想定されています。

▷後継者不在の問題

近年、多くの中小規模の企業・会社が抱えている共通課題に、経営者の高齢化と後継者不在の問題があります。調剤薬局業界もまた同様の課題を抱えており、高齢となった薬剤師が経営する調剤薬局の事業承継をどのようにするかは大きな問題です。

事業承継には親族内承継と親族外承継、第三者承継の3つの手法があり、従来は経営者の親族が承継する親族内承継や、社内の役員や従業員が承継する親族外承継が一般的でした。近年では後継者不在の問題から、第三者承継であるM&Aの手法を採用する調剤薬局が増加しています。

調剤薬局のM&Aのメリット・デメリット

調剤薬局のM&Aのメリット・デメリット

調剤薬局をM&Aで譲渡・譲受する場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。ここでは、譲渡側と譲受側に分け、M&Aのメリットとデメリットをまとめました。

▷譲渡側のメリット・デメリット

調剤薬局を譲渡する場合、下記のようなメリットとデメリットがあります。

譲渡側のメリット譲渡側のデメリット
・事業の安定的な継続
・創業者利益の獲得
・後継者不在の解消
・事業拡大の機会獲得
・会社清算と比べ高額譲渡の可能性
・従業員の待遇悪化や人員整理
・経営における裁量の制限
・競業避止義務による新規開業の制限
・処方元医療機関との関係悪化の可能性

▷譲受側のメリット・デメリット

調剤薬局を譲受する場合のメリットとデメリットは下記の通りです。

譲受側のメリット譲受側のデメリット
・スケールメリットの享受
・人材(薬剤師やスタッフ)の確保
・短期間でのスムーズな開業
・顧客(患者)の引継ぎ
・許認可の手続きの省略(株式譲受の場合)
・経営者の変化による従業員(譲渡先)の反発や離職
・経営者の変化による顧客(患者)の減少
・経営統合の失敗のリスク
・簿外債務や偶発債務発生の可能性

調剤薬局のM&A価格相場

調剤薬局でM&Aを実施する場合、譲渡価額の相場は主に下記の2つの方法により決定されます。

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・営業権価格

・時価純資産価額

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営業権価格とは、調剤薬局の収益力をもとに算出する価格です。調剤薬局の営業利益に保有人材や将来性などの付加価値を加算し、経営上のリスクを差し引いて計算します。

時価純資産価額とは、調剤薬局が保有する調剤機器などの設備、ソフトウェア資産、不動産、売掛金などの資産を時価ベースで評価しなおし算出する価額です。

調剤薬局の相場は、上記の営業権価格と時価純資産価額の総和で求められます。一般的な目安は、時価純資産価額+純利益の3~5年分です。ただし、あくまで目安であり、実際の譲渡価額は調剤薬局の収益性や譲渡側・譲受側のシナジー効果も見込み、双方で条件交渉を重ねたうえで決定されます。

調剤薬局のM&A事例

最後に、近年実施された調剤薬局のM&A事例を紹介します。調剤薬局の譲渡・譲受を検討する際の参考にお役立てください。

▷ウエルシアホールディングスによるコクミンとフレンチのM&A事例

2022年1月、ウエルシアホールディングスは6月1日付でドラッグストアのコクミンと薬局運営のフレンチの株式を取得し、連結子会社化することを発表しました。

コクミンのドラッグストアのうち44店舗で調剤薬局が併設されており、子会社化することで調剤薬局事業の強化につなげる目的です。

▷ココカラファインによるイー・ウェルなど3社のM&A事例

2021年7月、ココカラファイングループは有限会社イー・ウェル、有限会社ウェル・サポート、有限会社メディカル・サポートの全株式を取得し、完全子会社化しました。

ココカラファインの中核事業であるドラッグストア事業と調剤薬局事業を拡充することを目的としています。

▷地域ヘルスケア連携基盤によるベストシステムのM&A事例

2021年7月、株式会社地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)は、グループ会社を介して株式会社ベストシステムの株式を取得しました。

ベストシステムが所有する調剤薬局との連携を進め、医療・介護領域において効率的かつ質の高いサービスを提供することが目的です。

まとめ

調剤薬局は薬の販売による利益と調剤報酬が主な収益である特性上、処方箋を発行する医療機関といかに緊密な関係を保持するかが安定的な経営をするために重要な課題でした。

しかし、厚生労働省の方針の転換を受け、調剤薬局に求められる役割に変化が見られています。また、調剤薬局数が大幅に増加し、市場が成熟しつつあることから、多くのM&Aが実施されています。

このような環境の中にある調剤薬局業界では、M&Aは今後の経営戦略を考える上で重要な選択肢の1つです。

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