経営・ビジネス

2023/09/29

上場企業とは?市場の種類や株式公開までの流れ、メリットやデメリットを解説

上場企業とは?市場の種類や株式公開までの流れ、メリットやデメリットを解説

上場とは、会社が自社で発行する株式を、証券取引所で売買できるように手続きをすることです。
経営者の方の中には、今後の会社の発展のための一手段として、あるいは新規上場(IPO)により創業者利益を得る目的として、上場を検討している方もいると思います。
上場する市場にはいくつかの種類があり、証券取引所が取り決めた基準をクリアしなければなりません。
また、上場するためには申請書類を揃えた上で審査を通過する必要もあります。

本記事では上場の基本的な仕組みや上場する市場の種類と審査基準、株式公開までの流れ、上場するメリットやデメリット、最近の上場事例等もあわせて紹介します。

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「上場」とは?上場企業と非上場企業の違い

上場とは、株式を証券取引所で売買できるようにすることです。
「IPO」や「株式公開」とも呼ばれます。株式会社は株式を発行して資金を調達しますが、上場すると企業は証券取引所を通じて株式を取引できるので、資金調達の額や選択肢の幅が広がり、調達自体も容易となります。

一方、上場するためには審査の通過が必要です。上場した企業の株式は世界中のさまざまな投資家により広く取引されます。
審査は投資家保護の観点から行われており、上場する企業が持続的な成長や経営の透明性等を備えていて、上場にふさわしいかの見極めがなされています。

▷株式会社の仕組み

そもそも株式会社は株式を発行して資金を調達し、調達した資金で商品やサービスを製造して利益を生み出します。
株主は会社への出資の見返りとして株式という証券を受け取りますが、この資本の証券化が株式会社の1つの特徴です。
資本の証券化により、株主は会社に出資したい場合は株式を購入し、現金が必要な場合や利益を確定したい場合は株式を売却すればよく、手続きがとても簡単になります。
この株式が広く公開されて売買されているところが「証券取引所」であり、証券取引所で株式を売買できるように手続きすることが「上場」となっています。

▷非上場とは?上場との違い

上場企業と非上場企業の違いは、株式を公開しているかいないかという点です。
上場企業は株式を公開しているので、株式は証券取引所で売買できますし、株式の多くは投資家等の株主が所有しています。
経営者の視点でみると、上場により資金を調達しやすいメリットがある反面、買収されるリスクがあるデメリットがあります。

一方、非上場企業は株式を公開していないため、証券取引所で株式を購入できません。株主の所有者は主に創業者や親族、関連会社となっています。
経営者の視点では、株式による直接金融での資金調達が難しい反面、株主に経営を左右されない、買収のリスクが少ない等のメリットがあります。

上場区分の種類

株式を上場する場合、「どの市場に上場するのか」は大切なポイントです。
日本には、東京証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所、福岡証券取引所の4つの証券取引所があります。
また、各取引所では、メインとなる市場に加え、新興企業を中心に取引が行われる市場等いくつかの区分があることが一般的です。
例えば、多くの株式が取引される東京証券取引所には下記のような市場があります。

・プライム市場
・スタンダード市場
・グロース市場
・TOKYO PRO Market

以下で、それぞれの市場のくわしい内容をご紹介します。
なお、東京証券取引所では、以前は「東証一部」や「東証二部」、「マザーズ」や「JASDAQ」の区分が採用されていました。
ただし、それぞれの市場のコンセプトが曖昧であり、投資家からみてわかりにくいという観点から、2022年4月4日に上記の区分へと変更されています。

▷プライム市場

プライム市場はグローバルな市場規模(流動性)、ガバナンス基準を備えた企業が上場する東証のメインの市場の1つです。以前の区分でいうと、東証一部に相当する市場となっています。
市場に上場するためには、数値で定量的に定められた「形式基準」と収益性や継続性等を判断する「実質基準」の2つをクリアする必要がありますが、例えばプライム市場の主な形式基準は下記のようになっています。

形式基準の主な項目新規上場基準
株主数・800人以上
流通株式数・20,000単位以上
流通株式時価総額・100億円以上
売買代金・時価総額の250億円以上
流通株式比率・35%以上
収益基盤・最近2年間の利益合計が25億円以上
・売上高100億円いじょうかつ時価総額1,000億円以上
財政状態・純資産50億円以上

表からもわかるように、流通株式の時価総額が100億円以上、純資産が50億円以上といった比較的厳しい形式基準が設定されています。
プライム市場には2022年12月26日時点で1,838社の企業が上場しており、具体的にはトヨタ自動車やソニーグループ、キーエンスやリクルートホールディングス等が上場しています。

▷スタンダード市場

スタンダード市場は、以前の東証二部を中心に、東証一部やJASDAQスタンダードの一部が上場している市場です。
国内向けの企業が多く、日本経済の中核とも位置付けられています。スタンダード市場の主な形式基準は下記のとおりです。

形式基準の主な項目新規上場基準
株主数・400人以上
流通株式数・2,000単位以上
流通株式時価総額・10億円以上
流通株式比率・25%以上
収益基盤・最近1年間の利益合計が1億円以上
財政状態・純資産額が正であること

スタンダード市場の上場基準はプライム市場と比較すると緩和されていることがわかります。
スタンダード市場の上場会社数は2022年12月26日時点で1,452社です。代表的なところでは日本オラクルや日本マクドナルドホールディングス、新生銀行やアコム等が上場しています。

▷グロース市場

グロース市場はこれからの成長が見込めるベンチャー企業や、創業後まもない新興企業向けの市場です。
以前の区分におけるマザーズやJASDAQのグロースからの移行が多い点も特徴でしょう。グロース市場の主な形式基準は下記のようになります。

形式基準の主な項目新規上場基準
株主数・150人以上
流通株式数・1,000単位以上
流通株式時価総額・5億円以上
流通株式比率・25%以上

グロース市場は企業の成長性を重視し、高い成長可能性実現のための事業計画が求められる反面、形式基準は比較的緩やかな側面があります。
上場会社数は2022年12月26日時点で513社です。ビジョナルやフリー、JTOWERやそーせいグループ等が上場しています。

▷TOKYO PRO MARKET

TOKYO PRO Marketとは、2009年に開設された「プロ向け」の市場です。
プライム市場やスタンダード市場のような一般の投資家向けの市場と異なり、取引に参加できるのは特定のプロの投資家に限定されています。
また、「J-Adviser 制度」が採用されており、審査もJ-Adviserが主体となって実施される点も特徴です。
プライム市場やスタンダード市場のような数値的な形式基準は設定されておらず、一般市場よりも柔軟な上場基準となっています。
2022年12月26日時点で63社が上場しており、新東京グループやTSON、動力等が上場しています。

企業が上場するまでの流れ

上場企業とは?市場の種類や株式公開までの流れ、メリットやデメリットを解説

企業が証券取引所に上場するためには、先述の形式基準にくわえ、「企業の継続性・収益性」や「企業経営の健全性」、「企業内容などの開示の適正性」等の実質基準の審査を通過する必要があります。
特に注意したいポイントは、上場には申請直前2期間分の監査証明が必要になる点です。監査証明は監査法人の監査により受けられますが、過去に遡っての監査は認められていません。
2年間の監査法人による会計監査を受ける必要があるため、申請する期から少なくとも2年以上前から準備する必要があります。

ここでは、上記のようなポイントを踏まえながら、上場するまでの大まかな流れをご紹介します。

▷株式公開の検討や上場のための準備

まず、上場(株式公開)するかどうかの検討を行い、上場することを決定したら、速やかに上場のための準備を行いましょう。
先述のように上場直前2期の会計監査が必要なため、上場の準備期間は少なくとも上場する3期以上前が一般的です。上場を行う際は、まず監査法人を選定し、ショートレビューを受けます。
ショートレビューとは予備調査のようなもので、今後上場のためにどこを改善していくかの方針等が記載された報告書です。その他、メインバンクとも相談し資本政策を策定する、社内に上場のためのプロジェクトチームを結成しスケジュールを決める等も重要です。

▷上場する2期前(直前々期)

上場する2期前(直前々期)は、上場するための社内体制の整備が重要な課題です。
監査法人による調査等を参考に、内部監査体制や社内規定の整備、事業計画の作成、販売管理等の業務管理の構築等が適正に行われているか確認し、問題がある点を改善します。
期末を過ぎたら監査法人による会計監査を受け、適正意見が受けられるような社内体制を整えましょう。また、株式公開の主幹事証券会社の選定や資本政策の実施も並行して進めていきます。

▷上場する1期前(直前期)

上場する1期前(直前期)は、直前々期に構築した管理体制や制度が問題なく運用されるかを実証していく期間です。
監査法人や証券会社ともよく相談しながら、上場に必要な管理体制を実施していき、問題がある場合は改善していきます。期末後には監査法人による監査を受け、適正意見を受ける必要があります。
なお、直前期は有価証券届出書や目論見書等の上場に必要な申請書類の準備、IR資料といった投資家向けの説明資料の準備にも取り掛かる時期です。監査法人や証券会社の指導を受けつつ、必要な書類を準備しましょう。

▷申請期

上場準備が整い、申請書類が完成したら、証券取引所に申請書類を提出します。
申請書類は最終的な書類を提出する前に事前チェックを受け、修正を加えてから提出する形が一般的です。
申請書類提出後は質問事項への回答やヒアリング等を含む上場審査が行われ、審査を通過すると晴れて上場となります。

企業が上場するメリット

上場は株式が広く一般に公開され、企業が経営者個人のものからパブリックカンパニーへと変化する重要な手続きです。
企業が上場すると、以下のようないくつかのメリットがあります。

▷資金調達を行いやすくなる

上場の大きなメリットは、資金調達を行いやすくなる点です。
証券取引所では日々数多くの取引がなされているため、株式の買い手が見つかりやすく、株式発行による資金調達がしやすくなります。また、公募による時価発行増資や新株予約権付社債の発行等、資金調達の選択肢が増えることも利点です。

▷社内の管理体制を強化できる

企業が株式を上場する際には、先述のような監査法人による監査や社内体制の整備が必要となります。
この株式上場のプロセスを経ることで、利益管理、販売管理、内部統制等さまざまな管理体制が強化でき、企業の競争力を高められる点もメリットです。

▷企業の知名度や信用力が上がる

上場するとニュースに取り上げられる機会も増え、企業の知名度があがるメリットがあります。また、会社への信用力が増し、銀行からの借入にも有利に働いたり、新たなビジネスチャンスが生まれたりする等の効果も期待できます。

企業が上場するデメリット

上場にはさまざまなメリットがある反面、上場に伴うデメリットや注意点があることも事実です。
上場を行うかどうかを判断する際は、事前にデメリットも把握しておきましょう。

▷上場には手間と労力がかかる

上場するには、先述のように手間と労力がかかります。
監査法人の選定や会計監査、上場に必要な管理体制の整備や主幹事証券会社の選定等、必要となる時間的・費用的コストは大きいものです。
また、上場を維持するためには構築した管理体制を継続して維持しなければなりません。そのため、上場するか判断する際には、必要となるコストに見合うメリットがあるか見極める必要があります。

▷買収されるリスクがあがる

上場すると株式は証券取引所でオープンに取引されます。
非上場であった時と比較し、株式を寡占され買収されるリスクがある点には注意しましょう。また、株主総会における悪質な株主による嫌がらせ等への対応が迫られる場合もあります。

上場企業の最新事例

上場企業数はリーマンショックを境に大きく減少していましたが、近年は復活傾向にあり、2021年は14年ぶりに100社を超えました。
以下では、2022年に上場した企業の最新事例をご紹介します。

▷株式会社あいちフィナンシャルグループ

2022年10月3日、株式会社あいちフィナンシャルグループが東証プライム市場に上場しました。
あいちフィナンシャルグループは株式会社愛知銀行と株式会社中京銀行の完全親会社となり、両銀行の共同株式移転により設立されています。上場に伴う経営統合により、愛知県を中心としたマーケットシェアを拡大し、両行の営業基盤をより拡充することが狙いです。

▷ダイワ通信株式会社

2022年12月26日、ダイワ通信株式会社が東京スタンダード市場に上場しました。
ダイワ通信株式会社はセキュリティ事業やモバイル事業を中心に運営されている会社で、特にAI顔認証システム等に強みを持っています。監査人は有限責任監査法人トーマツで、主幹事証券会社はみずほ証券となっています。

▷ビジネスコーチ株式会社

2022年10月20日、ビジネスコーチ株式会社が東証グロース市場に上場しました。
ビジネスコーチは経営層から社員までの「コーチング」のノウハウを提供する会社です。監査人はEY新日本有限責任監査法人で、主幹事証券会社はSMBC日興証券となっています。

まとめ

上場とは証券取引所で株式を公開し、自由に売買できるようにすることです。
資金調達を柔軟に行える、会社の信用力が向上するメリットなどがあり、例えば東京証券取引所にはプライム市場やスタンダード市場等の市場があります。

上場するためには、株主数や流通株式数等の形式基準をクリアする他、「企業の継続性・収益性」や「企業経営の健全性」といった実質基準を満たす必要があります。相応のコストが必要となるため、上場を行う際は事前に必要性を検討しましょう。

なお、近年では創業者利益を得るためのイグジットの手法として、新規上場(IPO)とともにM&Aが注目されており、特にアメリカではM&Aによる株式の売却が主流となっています。
M&Aを含めた相談を行いたい場合はfundbookまでぜひお問い合わせください。

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