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2023/09/29

会社法とは?経営者が知っておきたい会社法とM&A

会社法とは?経営者が知っておきたい会社法とM&A

M&Aを進めるうえで、会社法に関する知識は欠かせません。また、会社の運営に関するルールでもあるため、事業拡大や廃業、事業承継などさまざまな場面において必要となり、経営者にとって会社法を理解しておくことは重要といえます。

本記事では、会社法の基本的な内容や会社法施行規則、会社計算規則、電子公告規則の概要を解説します。

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根本 智人
この記事を執筆した専門家
弁護士 根本 智人
福島県出身。東京大学法科大学院卒。 都内大手法律事務所において企業法務、不動産、相続等を中心とする業務に携わり、平成29年1月より品川高輪総合法律事務所を開設。事務所開設後は中小企業法務を中心に一般民事まで幅広く担当している。
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会社法は会社経営の基本的なルール

会社法(平成17年法律第86号)は、会社の設立から解散の手続き、組織運営や資金調達、組織再編の手続きなど、会社運営のあらゆる場面を法律にまとめたものであり、会社経営に関するもっとも基本的なルールといえます。

会社法の成り立ち

会社経営に関する基本的なルールではありますが、実は「会社法」という法律は平成18年5月1日から新しく施行されたもので、それまでは商法第2編、株式会社の監査などに関する商法の特例に関する法律、有限会社法の3つの法律に分散した状態で会社に関するルールが規定されていました。

「会社法」制定以前には、このように規定している法律自体が分かれていたため非常に分かりづらく、活用しにくいなど不便な部分が多々あったため、分かりやすく一本化し、改めて会社運営に関するルールを再編成したものが「会社法」となります。

会社法の条文構造

第1編:総則(会社法(以下、法)第1条~第24条)

会社法における用語の定義や、会社の商号などに関する規定が定められています。M&Aに関係する部分では、事業の譲渡をした場合の競業の禁止なども定められています。

第2編:株式会社(法第25条~第574条)

株式会社設立、株式・新株予約権、会社法上の機関、会社法上の計算など、定款の変更方法、事業譲渡、解散や清算に関する規定などが定められていて、主要な条文です。M&Aに関する内容として、株式譲渡に関する規定が定められています。

第3編:持分会社(法第575条~第675条)

持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)は、第2編において定められていた株式会社に関する各種規定を、簡略化されたものとして整理されています。

第4編:社債(法第676条~第742条)
 
第5編:組織変更、合併、会社分割、株式交換および株式移転(法第743条~第816条)

会社の組織再編行為である組織変更、合併(吸収合併と新設合併)、会社分割(吸収分割と新設分割)、株式交換や株式移転の手続きの規定が定められています。
 
第6編:外国会社(法第817条~第823条)
 
第7編:雑則(法第824条~第959条)
 
第8編:罰則(法第960条~第979条)

M&Aは会社経営のあらゆる局面で活用ができる

M&Aとは、合併および買収(Mergers and Acquisitions)の略称であり、一般に企業、またはその事業の全部、もしくは一部の移転を伴う取引をいいます。

M&Aにより、譲受企業としては事業の多角化、新規分野への進出、既存分野や周辺分野の強化を迅速にできることで、事業成長のための時間的コストを削減するメリットがあります。

譲渡企業としては、会社や事業を譲り渡すことで資金を得られます。また、特に近年、後継者不足によって第三者に事業を承継する事業承継の手法としても注目を集めています。

M&Aは、会社の成長局面だけではなく、会社の事業に困難が生じた場合や事業承継を考える場合など、会社経営のあらゆる局面で活用することができる選択肢です。

▷関連記事:M&Aを行う目的とは?注目される理由をメリット・デメリットと共に解説

経営者にとって会社法やM&Aの知識は必須

このように、会社経営に関するあらゆる場面のルールとなる会社法、そして事業拡大や廃業、事業承継など会社のあらゆるステージで活用できるM&Aは、経営者にとって必須の知識といえます。

会社法に関係する規則の重要な項目とその内容

会社法は法務省令に約300の事項を委任していて、平成18年の会社法施行と同時に「会社法施行規則」「会社計算規則」「電子公告規則」が施行されました。

会社法施行規則は、会社法の規定により委任された事項について、必要な事項を定めています。それだけではなく、会社法の規定により法務省令に委任された事項のうち、会社計算規則や電子公告規則により定める事項も規定していて、会社法施行規則と会社計算規則および電子公告規則は、親規則・子規則という関係にあります。

それでは、まず会社法施行規則の重要な項目とその内容を確認していきます。

会社法施行規則の概要

第1編:総則(会社法施行規則(以下、会社則)1条~4条)

会社法施行規則の目的や定義が定められています。

第2編:株式会社(会社則5条~158条)

会社法の条文構造と同じように設立、株式、機関、計算など、事業譲渡など、解散、清算の細則を定めていて、会社法施行規則の主要な条文です。

株主総会の招集手続き(会社則63条1項)、取締役会の説明義務(会社則71条)、株主総会議事録の署名(会社則72条)、取締役の報酬決議の算定基準(会社則82条)、内部統制システムの体制など(会社則98条・100条・112条)、買収防衛策の事業報告への記載(会社則127条)など会社法の委任を受けて、細則を定めている重要な事項があります。

M&Aとの関係では、株式の譲渡に関する細則も定められています。

第3編:持分会社(会社則159条~161条)
 
第4編:社債(会社則162条~177条)
 
第5編:組織変更、合併、会社分割、株式交換および株式移転(会社則178条~213条)

組織変更、合併、会社分割、株式交換および株式移転を行う場合に必要となる各手続きに関する細則が定められていて、これらの方法を用いてM&Aを行う場合には、確認すべき内容となります。

第6編:外国会社(会社則214条~216条)
 
第7編:雑則(会社則217条~238条)

会社計算規則とは?

会社計算規則は会社法の委任を受け、会社の計算に関する事項を定めています。

会計のルールに関する細則ですが、M&Aという観点からみても、計算書類は会社の財務状態や経営成績を示す基礎的な資料であり、企業価値あるいは株式価値を算定する重要な前提となることから、非常に重要な事項です。

そのため、M&Aの契約においては、対象会社の計算書類などの正確性が表明保証の対象とされることが多くあります。

具体的な条文構造とその内容は下記の通りです。

第1編:総則(会社計算規則(以下、会社計算)1条~3条)
 
第2編:会計帳簿(会社計算4条~56条)

計算書類の基礎となる、会計帳簿に付すべき資産、負債および純資産の価額その他会計帳簿の作成に関する事項の細則が定められています。

第3編:計算書類など(会社計算57条~120条の3)

計算書類などの種類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書および個別注記表)、計算書類などの表示などに関する細則が定められていて、会社経営状態に関するもっとも基礎的な書類作成方法が規定されています。

第4編:計算関係書類の監査
 
第5編:計算書類などの株主への提供(会社計算133条~135条)
 
第6編:計算書などの公告など(会社計算136条~148条)
 
第7編:株式会社の計算に係る係数に関する事項(会社計算149条~161条)
 
第8編:持分会社の計算に係る係数などに関する事項(会社計算162条~166条)

電子公告規則の概要

電子公告規則は、会社法942条1項の委任を受けて、公告の手続きを電子公告により行う場合の手続きについて定められています。

M&Aの手続きにおいても、公告を行うことがありますため、その際に利用することがあります。

M&Aで知っておきたい会社法

会社法とは?経営者が知っておきたい会社法とM&A

M&Aの一般的な手法としては、株式を取得する方法(株式譲渡契約など)、事業譲渡、会社法上の組織再編によるもの(合併・会社分割・株式交換・株式移転)に大きく分類することができます。いずれの方法をとるかにより参照すべき会社法の規定が異なります。

▷関連記事:M&Aの仕組みとは?企業買収の手法とその種類について

株式譲渡契約

対象とする会社の株式を取得し、株主総会における議決権その他の株主権の行使を背景に支配下におさめる方法であり、中小企業のM&Aでは、もっとも多く利用される手法のひとつです。会社法上は、第2編第2章第3節株式の譲渡など(法127条~154条、会社則122条~126条)に手続きが規定されています。

株式は自由に譲渡できることが原則(法127条)であるため、基本的には自由に売買契約を締結できるとも思われます。しかし、中小企業においては、株式譲渡制限を設けていることが多く(法107条1項1号・同条2項1号、法108条1項4号・同条4項4号)、その場合には、会社の承認手続きが必要です(法136条~145条)。

なお、金融商品取引所に上場している会社の場合には、取引所の制度によって売買取引されることになりますが、非上場の中小企業においては、株式に関する売買契約を締結することになります。

▷関連記事:株式譲渡とは?中小企業のM&Aで最も活用される手法のメリットや手続き、事前に確認しておくべき注意点を徹底解説

事業譲渡

会社法上、事業譲渡に関する定義はありませんが、旧商法の営業譲渡に関する最高裁判所判例(最大判昭和40.9.22民集19巻6号1600頁)によると「一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む)の全部または重要な一部を譲渡し、これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に・・・競業避止義務を負う」ものとされています。

会社法上は、第2編第7章(法467条~470条)に規定されています(会社則は、第2編第6章(会社則134条~138条))。事業譲渡を行う場合の会社法上の手続きは下記のとおりです。

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事業譲渡の手続き


1.事業譲渡契約の締結
2.株主総会の特別決議(法467条)※いわゆる簡易事業譲渡(法467条1項2号括弧書、会社則134条)や略式事業譲渡(法468条1項)に該当する場合は不要
3.反対株主の株式買取請求手続き(法469条、470条)

(必要に応じて)免責通知(法22条2項)、債務引受広告(法23条1項)

会社法上の組織再編

会社法上の組織再編には合併(新設合併、吸収合併)、会社分割(新設分割、吸収分割)、株式交換、株式移転があり、会社法2条27号から同条32条に定義が規定されています。

具体的な手続きとしては、会社法第5編「組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転」(法第743条~第816条、会社則178条~213条)に規定されています。

吸収分割を例にあげると、事業を承継する会社(分割会社)と事業の承継を受ける会社(承継会社)のそれぞれが下記の通り、会社法上の手続きを経る必要があります。

▷関連記事:吸収分割とは?吸収分割の基礎と人的分割・物的分割の違いを図解で説明

分割会社の手続き

1.吸収分割契約の締結(法757条、758条)
2.事前開示書面の備置き(法782条、会社則183条)
3.株主総会の特別決議(法783条1項、309条2項12号)
4.反対株主の株式買取請求手続き(法785条、786条)
5.新株予約権買取請求手続き(法787条、788条)
6.債権者保護手続き(法789条)
7.新株予約権証券提出公告手続き(法293条1項4号)
8.登録株式質権者・登録新株予約権者への通知または公告(法783条5項6項)
9.労働者・労働組合への通知(労働契約承継等に関する法律2条)
10.事後開示書類の備置き(法791条、会社則189条)

承継会社の手続き

1.承継会社の手続き吸収分割契約の締結(法757条、758条)
2.事前開示書面の備置き(法794条、会社則192条)
3.株主総会の特別決議(法795条1項、309条2項12号)
4.反対株主の株式買取請求手続き(法797条、798条)
5.債権者保護手続き(法799条)
6.事後開示書類の備置き(法801条、会社則189条)
7.変更登記(法923条)

まとめ

会社法、会社法施行規則、会社計算規則および電子公告規則の概要はいかがでしたでしょうか。

経営者にとってM&Aは有力な経営方法の手段であり、会社法およびその法務省令(会社法施行規則、会社計算規則、電子公告規則)に従ってM&Aの手続きを行うことが、必要であることがご理解いただけたと思います。

もちろん、M&Aの手続きは複雑でここに挙げられた事項で網羅することはできませんし、それぞれの手段のメリット・デメリットを検討して進めていく必要があります。M&Aを検討している経営者の方は、会社法やM&Aに詳しい専門家に相談されることをお勧めします。

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