よくわかるM&A

2023/09/26

二段階買収とはどんな手続き?流れや事例、スクイーズアウトの方法を解説

二段階買収とはどんな手続き?流れや事例、スクイーズアウトの方法を解説

二段階買収とは、株式を利用した会社の買収方法の一つです。
文字通り、買収対象となる会社のすべての株式を一度ではなく二段階に分けて取得する手法が二段階買収です。二段階買収は、複数の株主が存在する上場企業や、非上場企業でも従業員が株式を保有しているなど、一段階目の買収により対象会社の全ての株式を取得することができない場合に用いられることが多いです。

一般的には、一段階目の買付価格や期間・条件などの情報を開示する公開買付により、多数の株式買収を行います。一段階目の買収ですべての株式を取得できない場合、二段階目で強制的に株式を取得し排除するスクイーズアウトを用います。買収対象会社の株式を100%取得できれば、少数株主の反対意見に捉われない会社運営が可能になるでしょう。

そこで本記事では、二段階買収の基本概要や流れ・事例などを細かく解説します。

二段階買収の基本概要

ここでは、二段階買収の基本概要を説明します。

通常の買収との違い

二段階買収は基本的に100%株式取得を目指しますが、通常の買収では一定数の株式取得によって買収対象会社の子会社化を目指します。
議決権を保有する株式を過半数取得できれば、取締役員の解任や配当額の決定など、株主総会の「普通決議」が必要な議案を可決できます。さらに、2/3以上の株式を取得できれば、株式合併や株式交換など株主総会の「特別決議」が必要な議案の可決も可能です。
つまり、経営の目的によって100%株式を取得する必要がない場合には通常の買収が選択されます。

対して、二段階買収はすべての株式を取得しますが、これは少数株主に左右されず重要事項の決定もスムーズに行える経営を目指す場合に選択されることが多いです。

強圧的二段階買付とは?

強圧的二段階買付とは、公開買い付けを実施する際に二段階目の買付条件を不利に設定することで、公開買付時に勧誘をせずに株主からの株式売却を誘導させる手法です。法改正以前は、公開買付時に応募が多数あっても、すべての株式を買い取る必要がありませんでした。
公開買付時で議決権を有する株式を2/3以上取得できれば、特別決議が必要なスクイーズアウトを行使して強制的に株式を取得できます。
スクイーズアウトが可決されれば、残りの株主は不利な条件でも株式を売却しなければなりませんでした。このように、不平等な買付を防いで株主を守るために、2006年には法改正が行われました。

改正後は、公開買付で所有株式が2/3を超える応募があった場合、買収会社に対してすべての株式買付が義務化されたのです。

二段階買収の流れ

二段階買収は二段階にわけて株式取得を実施します。一段階目は買付価格や予定数・期間などの情報を株主に提示し、同意をもらったうえで買付を行う公開買付によって、多数の株式買収を行います。二段階目ではスクイーズアウトを用いて、残りの少数株式を強制的に取得します。
ここでは、二段階買収の流れを説明します。

一段階目:公開買付の実施

公開買付を実施する前に、買付を行う会社は株主に対して情報開示をする決まりがあります。情報開示の主な内容は、以下のとおりです。

・買付目的
・買付期間
・買付予定数量
・買付価格
・支配権取得を予定している場合の経営方針
・経営参加を予定している場合の計画

公開買付に同意した株主は、買付会社が委託した証券会社に口座を開き、株式を売却します。応募数が買付予定数量を満たせば公開買付が成立し、一段階目の株式買収が終了します。

二段階目:スクイーズアウト

一段階目の公開買付で応募がなかったり連絡が取れなかったりする株主から、強制的に株式を取得するために、スクイーズアウトを行います。少数株主が残ったままでは会社経営に影響を及ぼす可能性があるので、スムーズな経営を行うためにも少数株式を強制取得し、排除します。スクイーズアウトの可決方法は、株主総会の特別議決や取締役会での可決などがあります。

二段階買収におけるスクイーズアウトの方法

二段階買収におけるスクイーズアウトの方法は、主に4つです。ここでは、スクイーズアウトの手法をひとつずつ解説します。

全部取得条項付種類株式

全部取得条項付種類株式は種類株式のひとつで、買収会社は株主総会の特別決議によってすべての株式を取得できます。すべての株式を取得するには、すでに交付された株式を種類株式に転換できるよう、対象会社は種類株式発行会社になる必要があります。種類株式発行会社になった後は、交付済みのすべての株式を「全部取得条項付種類株式」に変更します。
その後買収会社が変更された株式をすべて買収できると、スクイーズアウトの完了です。一連の流れに関する変更は、会社の規則が記載された定款(ていかん)の変更となります。
会社の定款変更から株式の買収までは、株主総会にて議決権の2/3以上の賛成を得る特別決議で決まります。

特別支配株主の株式等売渡請求

90%以上の株を保持する特別支配株主によって、少数株式を強制的に買収する手法を「特別支配株主の株式等売買請求」と言います。4つの手法の中で唯一、株主総会の特別決議を必要としないスクイーズアウトです。取締役会決議や過半数の取締役の賛成を得られれば、少数株主の同意がなくとも株式買収が可能となります。
株式等売渡請求の手続き手順は、まず、特別支配株主が、株式の取得日や買付価格などの条件を決定します。その次に、買収対象の会社に株式等売渡請求を行う旨を通知し、承認を得ます。そして、買収対象会社は、少数株主に対して「特別支配株主による株式等売渡請求」を承認した旨を通知する(株式取得日の20日前までに)最後に、株式取得日に、少数株主から特別支配株主へ株式を移して完了となります。
株主総会を開く必要がないため、全部取得条項付種類株式よりも短期間でスクイーズアウトを完了できる利点があります。

株式併合

一定の株式を1株にまとめることを株式併合と言い、1株に満たない少数株式を排除してスクイーズアウトを達成させます。例えば大株主が30万株、少数株主が5万株の株式を保有したときに、10万株を1株に併合する場合で考えましょう。このとき、大株主と少数株主の株式数は3株と0.5株で、少数株主の株数は1株以下となります。1株以下の株式は端株(はかぶ)と呼ばれ効力がなくなるので、株主の権利は使えなくなり、スクイーズアウトが完了です。
株式併合は全部取得条項付種類株式と同様に、株式総会の特別決議によって可決されるので、完了するまでに期間を要します。

株式交換

買収会社が株式を100%保有する完全親会社になるために、対象会社の全株式と自社の株式を交換する手法が株式交換です。株式交換の成立で、買収会社は対象会社の株式を100%保有する完全親会社になり、支配関係が生まれます。
通常なら、対象会社の株式買収には対価が必要ですが、株式交換は自社の株式を使用するので、低コストで買収できる利点があるのです。資金が少ない会社が買収を行う際に、有効な手段と言えます。
しかし、交換により端株が生じた際は、会社法第234条により買い取る必要がありますので念頭におきましょう。株式交換の可決は、株式併合と同様に株主総会の特別決議で行われます。

二段階買収の事例

ここでは、実際にスクイーズアウトの手法を用いた株式買収の事例を挙げます。
「特別支配株主の株式等売買請求」の事例を解説しますので、参考にしてください。

2016年、日本生命はさらなる事業拡大のため、三井生命(現:大樹生命)を株式等売渡請求の承認を経て買収しました。
日本生命は公開買付の時点で、三井生命の普通株式・種類株式を96.34%取得し、種類株式を普通株式に変更する手続きを行います。結果、三井生命の株式の90%以上を保有する特別支配株主になりました。その後、三井生命に株式等売渡請求を行い、承認を得ることですべての株式を取得し完全親会社化を果たします。

まとめ

今回は、M&Aに用いられる株式の二段階買収について解説しました。
100%親会社・子会社化を図り、少数株主にとらわれない円滑な会社経営を行うために、二段階買収は有効な手段と言えます。
買付価格や買付予定数の設定は、綿密な計算によって算出されますので、M&Aのプロの力を借りての買収計を立てるのがおすすめです。

    【無料ダウンロード】自社の企業価値を知りたい方へ

    企業価値100億円の条件

    企業価値100億円の条件 30の事例とロジック解説

    本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。
    このような方におすすめです。

    自社の企業価値がいくらなのか知りたい
    ・企業価値の算出ロジックを正しく理解したい
    ・これからIPOやM&Aを検討するための参考にしたい

    は必須項目です。

    貴社名

    売上規模

    貴社サイトURLもしくは本社所在地をご入力ください

    お名前

    フリガナ

    役職

    自社の株式保有

    電話番号(ハイフンなし)

    メールアドレス

    自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談

    相談料、着手金、企業価値算定無料、
    お気軽にお問い合わせください

    他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認

    fundbookが厳選した
    優良譲渡M&A案件が検索できます

    M&A・事業承継のご相談は
    お電話でも受け付けております

    TEL 0120-880-880 受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)
    M&A案件一覧を見る 譲渡に関するご相談