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2025/01/17

無償の株式譲渡とは?流れやメリット・デメリット、税金について

無償の株式譲渡とは?流れやメリット・デメリット、税金について

上場株式の株式譲渡と言えば、売買による金銭取引で行われることがほとんどです。しかし、贈与や相続などのために、無償で株式譲渡することもよくあります。
今回は、株式譲渡を検討している方に向けて、無償の株式譲渡にかかる税金や手続き方法を解説します。

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無償の株式譲渡とは?

株式譲渡には「有償」と「無償」の2種類があります。
有償譲渡では、買い手が対価を支払って株式を取得します。この方法は、第三者に経営権を渡すM&Aの手段として広く利用されています。手続きが比較的簡単で、対価を現金で受け取れることが多いため、スピーディーに現金化できることが特徴です。

一方で、無償譲渡は、対価の支払いが発生しない株式の譲渡方法です。主に事業承継や親族間の相続対策として使われるケースが多く、親子・親族間や親しい知人の間で行われることが一般的です。税制面の違いについては後述します。

無償で株式譲渡するメリット

無償で株式譲渡すると、譲渡側と譲受側の双方にいくつかのメリットをもたらします。それぞれのメリットを詳しく解説します。

譲渡側のメリット

「無償となると、譲渡側の手続きも実は面倒なのではないか?」と思うかもしれません。
しかし、実際の手続きは比較的簡単です。株式譲渡の契約を締結し、取締役会や株主総会での承認が得られたら、後は株式名簿の書き換えを行うだけとなります。
また、直接やり取りするのは株式のみなので、負債や資産のための追加手続きは必要ありません。事業の引き継ぎが必要とされる事業譲渡や、会社が消滅してしまう合併とは違い、事業や会社を途切れさせることなく継続できることもメリットです。

譲受側のメリット

譲受側は、対価が必要なく、無償で株式を譲受できる点がメリットです。例えば、子供や従業員へ事業承継する場合など、譲受側が株式取得に必要な資金を十分に保有していない時に有効な選択肢です。

また、株式公開買付(上場企業の場合)などの手続きが必要となる有償での株式譲渡と異なり、手続きが簡略であるメリットがあります。

無償で株式譲渡するデメリット

株式を無償で譲渡するメリットを紹介しましたが、デメリットも存在します。譲渡側と譲受側に分けて解説するため参考にしてください。

譲渡側のデメリット

譲渡側のデメリットは、無償譲渡だと、株式を売却していれば本来得られていたはずの金銭が得られないことです。

また、これは有償譲渡でも言えることですが、株式の過半数を譲渡すると支配権を失う恐れがある点にも注意しましょう。会社への影響を考慮するのであれば、譲渡方法の再考も検討してください。例えば、事業譲渡であれば、事業を切り出しての売却ができます。

譲受側のデメリット

譲受側では、多額の税務が発生する可能性が高いため、まずは税務について考慮すべきです。猶予・免除になる措置などはありますが、必ずしも活用できるとは限りません。

また、株式譲渡に伴い負債を引き継ぐリスクがある点もデメリットです。

株式譲渡は、資産や人材、取引関係だけでなく、負債も包括的に譲受します。貸借対照表上では把握できない簿外債務や、将来的に発生する可能性がある偶発債務を引き継ぐ恐れがあるため、事前に確認しておきましょう。

無償で株式譲渡する流れ

無償の株式譲渡は、前述のように手続きが比較的簡単に済みます。以下では、無償の株式譲渡を行う流れを説明します。

①譲渡承認請求

まずは、譲渡先に譲渡承認請求を行い、株式譲渡契約書を締結します。
無償株式譲渡の場合、親族間といった親しい間柄で行われることが多いため、契約書の作成をしないこともあるでしょう。
株式譲渡は、有償・無償にかかわらず口約束でも成立する諾成契約です。
口約束の場合は、「言った」「言わない」などが原因で大きな問題となることも可能性もあります。
トラブルを避けるためには、親しい間柄であっても、株式譲渡契約書を作成しておくことをおすすめします。

②株主総会・取締役会での承認

譲渡承認請求を経て、承認手続きへと進みます。
取締役会設置会社では取締役会で、取締役会非設置会社では株主総会で承認を得ます。
口約束としてではなく、議事録として承認の記録を残しておくことで、後々のトラブルを避けられるでしょう。

③決議内容の通知

株主総会および取締役会での譲渡承認を決議した後、承認請求日から2週間以内に決議内容の通知をします。
決議内容の通知が行われない場合でも承認されたとみなされ、正式な譲渡契約の締結は、会社の譲渡承認後に行われます。

④株主名簿の書き換え

企業の株主を一覧にし、名前や住所、株式保有数や株券の番号を明らかにしたものを、株主名簿と言います。
株主名簿を書き換えなければ、株式を取得した側が正式な株主として承認されたという証拠がなくなってしまうため、この手続きはとても重要です。
中小企業では株主名簿を作成していないことも多いですが、正式な株主として証明するためにも、忘れずに書き換えておきましょう。

株式譲渡を無償で行う際にかかる税金

株式譲渡を無償で行う際にかかる税金

税金面については、譲渡相手が個人か法人かによって、かかる税金が異なります。
以下の表に沿って、それぞれの税金に関する内容を解説します。

   譲渡側 譲受側
 個人→個人 課税なし 贈与税
 個人→法人 みなし譲渡所得税 法人税
 法人→個人 法人税 給与所得または一時所得
 法人→法人 法人税 法人税

個人→個人への譲渡

個人同士の場合、譲受側には贈与税が課税されます。
しかし、その年の1月1日から12月31日までの他の資産と合算した際、年間110万円を超えなければ贈与税の課税はされないため、しっかりと計算しておきましょう。
なお、計算方法は非常に複雑であるため、税理士のような専門家に依頼するのがベターです。
一方で譲渡側は、利益なく無償で株式を引き渡しているので、所得税といった税金は発生しません。

個人→法人への譲渡

譲受側は株式の時価取得であるとされ、受贈益とみなされるため法人税の課税対象となります。

また、無償の株式譲渡と有償の株式譲渡では、計上する際の勘定科目が異なる点に注意しましょう。株式の時価が1,000万円であった場合の仕訳例は以下のとおりです。

無償の株式譲渡の場合

借方貸方
有価証券10,000,000円受贈益10,000,000円

有償の株式譲渡の場合

借方貸方
有価証券10,000,000円現金10,000,000円

有償の場合は現金や普通預金などの勘定科目を用いますが、無償の場合は対価を支払っていないため、受贈益の勘定科目で計上します。

一方、譲渡側には「みなし譲渡所得税」が発生します。みなし譲渡所得税は、無償もしくは著しく低い価額で譲渡した場合に、税務上で時価譲渡をして、利益を得たとみなす税金です。
例えば、時価が800万円だった場合、譲渡所得税である20.315%が課税されます。20.315%の内の0.315%は、復興特別所得税(2037年までの特別措置)です。

法人→個人への譲渡

税務上では、譲受側が譲渡側と雇用関係にある場合には給与所得、雇用関係がない場合には一時所得としての扱いになり、所得税の対象です。
一方で、譲渡側から見て雇用関係であれば賞与、そうでなければ寄付金扱いとなり、いずれも法人税が課せられます。

法人→法人への譲渡

法人同士の場合には、双方に税金が課せられる可能性が高くなります。
譲受側としては、時価相当額の株式受贈の計上が税法上で要求され、法人税の課税対象として扱われるのです。
また、時価で株式を譲渡した側は、簿価よりも時価の値が大きい場合に受贈益として法人税が課税されます。

株式譲渡を無償で行う際の契約書

株式譲渡契約書の項目については、会社法で定められていないため、当事者同士の交渉次第となります。
ここでは、最低限記載しておきたいポイントを説明します。

譲渡に関する合意

株式取引の合意について記載します。
無償で株式譲渡することはもちろんのこと、双方の氏名・会社名や株式数といった基本情報を明記することで、認識の違いも防げます。
また、無償譲渡の交渉中に、第三者からの打診がある可能性も考えられるため、譲渡日までは他への譲渡を行わない旨も記載しておくと良いでしょう。

株式譲渡後の株主名簿書換の請求

株式譲渡契約成立後、株主名簿の名義書換をするために必要な手続きです。
名義書換の協力が得られない場合、裁判手続きによる名義書換請求が命じられ、単独での名義書換を行うことになります。
無用なリスクを回避するためにも、株主名簿書換の請求をする旨を伝えておきましょう。

表明保証

株式譲渡契約書の中でも、最も重要とされる部分が表明保証です。
表明保証は、譲渡側が譲受側に対して、特定の事項が真実かつ正確であることを表明・保証することです。
例えば、株式所有者が譲渡人でなかったり、開示された対象会社の資産状況が実際と相違していたりといったケースがあります。
予想していない不測の事態が起こった際に、譲受側が被害を受けないための役割を持つため、記載するほうが良いでしょう。
しかし、株式譲渡の目的や事情はそれぞれですので、内容によっては表明保証が不要とされることもあります。

契約解除について

どのようなケースの時に、株式譲渡契約が解除されるのかを明記します。
一般的には、相手方の契約違反や、表明保証への違反が解除事由となるでしょう。
契約解除の部分では、何らかの形で被害にあった当事者が相手方に対して損害賠償の請求をする旨を記載し、損害賠償の内容を定める条項を加えることもあります。

合意管轄

万が一、紛争や訴訟が起こった際に、双方の合意のもとで管轄裁判所を指定すると記載する条項です。
譲受側の所在地である都道府県に位置する地方裁判所とされることが多いでしょう。

無償の株式譲渡で注意すべきポイント

無償株式譲渡をするうえで、注意しておきたいポイントは2つあります。
まずは、契約内容や手続きを確認することです。
公的な手続きがない無償株式譲渡では、契約内容の有効性や手続きの正当さについて、当事者自身で確認する必要があります。
万が一、契約でトラブルがあった場合に双方でスムーズに解決へ繋げるためにも、手順に則って株式譲渡を行いましょう。

また、自社が定款で株券発行会社と定めている場合に留意しておくべき点があります。
それは、株式譲渡によって株主が移動する際は、あわせて新たに株券を発行しなければならない点です。
株券発行会社であれば、株券の発行・交付を経て初めて、株式譲渡が完了したことになります。
上記の点から、株券の発行を定めている内容は、事前にしっかりと確認しておくことを推奨します。

まとめ

本記事では、無償の株式譲渡を検討中の方に向けて、メリット・デメリット、手続きの流れから税金面までを解説しました。

比較的簡単な手続きで済むため、特に親しい間柄で行うにあたっては、前向きに検討できる方法だと言えます。しかし、将来のトラブルを防ぐためには、契約書の締結や株主名簿の書き換えといった手続きを抜かりなく行うことが大切です。譲受側と譲渡側の立場によって税金が異なるため、税務を専門とするプロに相談しながら、無償の株式譲渡を円滑に活用していきましょう。

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